1. サイコ(1960)
初見。監督以外の知識なく。 オープニングのタイトルデザインと音楽に「これは当たりかも」の期待を上回る紛うことなき傑作で固唾を呑んで魅入りました。 鳥の剥製が出てきた時点で「母親というのは・・・・・」予感がありました。 ノーマンの精神分析を示したところに恐ろしさの奥深さを感じるものでアンソニー・パーキンスの微笑みに凍り付きます。 キャスト、スタッフ、彼等をまとめる監督に惜しみない拍手を送ります。 [DVD(字幕)] 10点(2022-11-18 11:52:03) |
2. 夕陽のガンマン
《ネタバレ》 音楽はマカロニ・ウエスタンの最高傑作且つ私的勝負曲でありこれまで度々お世話になりました。本作はクリント・イーストウッドのマカロニ・ウエスタンという何となくの理由でスルーしてきました。リー・ヴァン・クリーフ、クラウス・キンスキー、ジャン・マリア・ヴォロンテ出演というのを知りこの歳での初見。「男は黙ってリー・ヴァン・クリーフ」 胸熱激熱激痺れ。彼が主役です。クラウス・キンスキーとの二度の対峙はお宝映像。共に息をするのも憚られるもんの凄い緊張感。ジャン・マリア・ヴォロンテとのラストの対決も忘れ難い。過去の因縁に於ける死者を悼む二人の思いが一言も語られることなく溢れ出る鳥肌ものの演技。若きクリント・イーストウッドは二人の引き立て役としてなかなかの味わいでした。永遠の曲であると共に永遠のマカロニ・ウエスタンとの遅ればせながらの出会いに感激です。 [DVD(字幕)] 10点(2020-06-12 13:26:19)(良:1票) |
3. わが命つきるとも
《ネタバレ》 初見。邦題が結末を端的に著しています。500年前から現在に至るまでこの世に溢れる「ご都合主義の」正義。誰が何と言おうとそれを否定し堂々と信念を貫き通した生き様にひれ伏すばかりです。夫と永久の別れを交わすウェンディ・ヒラー演ずる妻の姿に悔し涙が滲みました。重厚な傑作です。 2017.10.18 DVD購入して再見 妻子との別れのシーンを何度も見る。 娘に「一度誓ったら両手でしっかり支えるのだ。指を開けば自分を失ってしまうのだ」と尚毅然とするも 妻に「この思いをお前に解ってもらえず死ぬのがなお辛い」「実に美味しい、良い妻だ」と作中唯一苦しさを滲ませる。 王の離婚問題で何故こんな事になるのか、悔し涙が止まらない。 刑場での首切り人への言葉「お前を許そう、神の元に送ってくれるのだから」に只々ひれ伏すばかり。 私の棺に納めて欲しいリスト入りの作品。 [DVD(字幕)] 10点(2017-09-30 23:28:19) |
4. 夜の大捜査線
《ネタバレ》 初見。ロッド・スタイガーが絶品。曲折を経た末に見せた別れの際の笑顔と「元気でな」の一言はこの先も忘れることはないでしょう。1967年に本作を世に送り出した製作者の気概に脱帽。 [DVD(字幕)] 10点(2017-09-17 00:20:08) |
5. おしゃれ泥棒
犯行動機、計画立案、過程、首尾、結末、登場人物全員の一つ一つの身のこなしと台詞。全てがお洒落で軽妙洒脱。ウキウキ・ワクワク・ウットリし通しの素敵なひと時を過ごさせてもらいました。名セリフを拝借して「いやぁ、映画って本当にいいものですね」 [DVD(字幕)] 10点(2012-06-21 21:21:39) |
6. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
《ネタバレ》 核の抑止力を痛烈に皮肉っています。計り知れない自国民の被害を容認できない出来ない事で成り立つ均衡。その均衡が崩れる事は起こり得ないのか? 本作では一狂人が破滅の引き金を引き、一握りの政府高官が回避にあたります。大小取り混ぜたギャグで笑い飛ばしながらも、容赦の無い視線で登場人物を描き、一度もブレーキを踏まず、アクセルを目一杯踏み込んだラストシーンに至る展開。1964年に世に送り出した監督の凄みと心意気に脱帽です。昨今の核にまつわるニュースに鬼才の名作の不滅さを感じてしまいます。ところで、事情を知らずに一人三役と分かる者はいないのではと思うピーター・セラーズのプロフェッショナルな仕事振りにも脱帽ですが、監督が三役(当初は四役を打診したそうです)をさせた理由が分かりません。引き続き考えます。 [DVD(字幕)] 10点(2006-10-18 02:26:55) |
7. まぼろしの市街戦
《ネタバレ》 戦争の狂気がこのような形で描かれている事に驚きました。「現実の世界は苦しいことばかりよ」 確かに生きる事は苦しみもありますが、苦しみながらも現実の中で皆生きているのではないでしょうか。患者達の御伽噺の如く戯れる様子は現実逃避の卑怯者のように最初は感じました。そうではありませんでした。プランピックにラスト彼らのもとへと門を叩かせたのは、その方法でしか現実から逃れられない、そうまでしてまでも居られない戦争という現実の世界だったのですね。皆様ご指摘の通り、命令のもと個人的に何の恨みも無い者同士が破壊し合い殺し合う戦争という行為、そして、己と家族は絶対安全な場所に身を置いた上で、己の欲望を正義と言う美名で覆い、警察官気取りで戦争を起こし、苦しみ・悲しみ・痛みを何にも感じない指導者こそまともな神経を持たない狂った輩であると言えます。素晴らしい作品でした。 10点(2004-11-15 15:32:04)(良:1票) |
8. 飢餓海峡
《ネタバレ》 三時間の長さを全く感じなく、片時も目が離せませんでした。十年ぶりに再会したシーンに考えさせられます。願いを叶える事を心の支えに生きている時の幸せは成就した時に終わりとなる。ままある事なのでしょう。犬養の涙は八重を思ってのものではなく自身を思ってのものでしょう。犬養の自ら幕をひいた行為に、人の一生は大小の差はあれ飢餓の中で過ごすものであり、如何なる時においても貪り尽くす行為は身の破滅を招く事を知らしめられます。日本映画ここにありの作品です。 [ビデオ(邦画)] 10点(2004-07-13 17:10:41) |
9. Z
《ネタバレ》 脚本・演出・撮影・音楽・キャスト、全てが素晴らしい。自分の欲を満たすために、相容れない主義・主張を国家権力を駆使して抹殺しようとする権力者達。身の危険に動じないイブ・モンタンや、検事に良心を問われてそれに起訴で応えたジャン・ルイ・トランティニャンの静かな怒りと気迫(渋すぎる)に、信念を持った人間の強さを感じた。ラストで実話を元にした作品のせいか、国家の力が個人の力よりも圧倒的に優位だという絶望的な現実を見せつけられる中での僅かな希望、ナレーションの『Z』の意味が胸に響いた。 10点(2004-05-26 22:31:51)(良:1票) |
10. 求むハズ
《ネタバレ》 ヘンテコな邦題でソフィア・ローレン、ピーター・セラーズ、ヴィットリオ・デ・シーカとくればドタバタギャアギャアコメディを想像して乗り気無く鑑賞。アラステア・シム、デニス・プライスも出てるのに、ちょっぴり期待。この時代のイギリス映画というのに気づき座り直す。ローレンのギャアギャアぶりは抑えめながらもイライラッ、相手をするセラーズ(インド人医師・・・インドって、ついこの前・・・)の石部金吉具合が彼以外に出せない味わいで、こちらにもイライラジリジリと。 バーナード・ショーの原作だという起承転結が見応え満点。デ・シーカが自分の店を持ちたいというシーンが人の価値観幸福感について考えさせられる印象深いシーン。 展開での重要シーンにもれなく顔を出すアラステア・シムも魅力たっぷり。デニス・プライスもやっぱり素敵。これにて一件落着な結末が心地良し。 特筆もののローレンのファッションショーさながらがらの着こなし+1点にいちいち惚れ惚れと。衣装担当はピエール・バルマンでありました。 観て良かったと心底思える快作です。 [DVD(字幕)] 9点(2024-03-27 20:02:56) |
11. ツイステッド・ナーブ 密室の恐怖実験
《ネタバレ》 「マダム・グルニエ」監督作という事で鑑賞。ゲテモノホラーに身構えさせられた副題は「何も実験してませんね、作品を観てからつけなさい、愚か者」な鑑賞史上屈指の酷さであり、傑作サイコサスペンスです。再生直後に出るダウン症に関する断り書きを示すシーンは今では発禁ものです。その部分以外での丹念な語り口が見事。病気のふりをして偶然出会った女子大生宅に入り込みその母親をも取り込み継父殺害を企む性格異常者の青年にじわりじわりと浸食される母娘の姿は次の展開が怖くて一服しながら(ヘタレました)の鑑賞となり、最後は「早く!!」お祈りポーズに。キャスト全員の好演、不穏な音楽も併せての大当たり掘り出し物の逸品です。 [DVD(字幕)] 9点(2021-07-04 00:02:19) |
12. 黒いチューリップ
初見。ゾッコンだった小学生時分に観たら感激のあまり卒倒していたでしょう。この歳になっても匂い立つような美しさでの立ち居振る舞いにクラクラするばかり。それが一人二役で二人が向き合っていて(見事な撮影技術)喜びが二倍二倍! 更に双子の兄弟の性格の違いを演じ分ける演技力が特筆もので「顔だけと違うのね」心底驚きました。(+1点)愛馬ヴォルテールまでカッコ良い。起承転結も見応えある華やかな活劇に唯々感動の傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2021-05-08 00:56:22) |
13. スパルタカス(1960)
《ネタバレ》 初見。カーク・ダグラス出演以外の知識無し。スパルタカスは別格として、グラッカス、クラサス、バタイアサス、ティグラネス、それぞれが強烈な存在感。鑑賞後誰が演じたかを知り心底仰天、続けてもう一度観直しました。MIPはチャールズ・ロートン。古狸でありながらの潔い敗者ぶりが実に味わい深い。同じく敗者であったスパルタカスの妻子との再会シーンは反則です。無言のカーク・ダグラスにボロ泣きです。キューブリック、トランボらしからぬものの、壮大なスケールの歴史超大作を堪能させて貰えました。 [DVD(字幕)] 9点(2020-03-02 02:17:14)(良:1票) |
14. ファニー
お目当てである映画界一の伊達男シャルル・ボワイエ62歳のお姿は、素晴らしい齢の重ね方にうっとり。モーリス・シュヴァリエとの丁々発止のやりとりは、二人とも芯から楽しんでいるようでこちらも心地良さに浸り切ってしまう。そんな楽しい物語において「愛されずとも愛する」「愛されても愛せない」パニース、ファニー、マリウスの心模様がほろ苦い。余韻の深い快作。 [DVD(字幕)] 9点(2018-12-26 01:10:26) |
15. ブルー・マックス
《ネタバレ》 WW1に於けるドイツ空軍が描かれた物語。地べた這いずり回る歩兵のシュタッフェルが上空の戦闘機を眺める胸中に共感を。技量に出身は関係なくとも、勲章が欲しい、欲しい、欲しい! 飢えた姿に貴族と平民の育ちの違いがある事を実感。更に将軍の妻と火遊びに興じるのには「図に乗るな。このままで済むと思うな。罰が下るぞ」(これは欲求不満気味の妻にも言える)と眺めていました。騎士道精神を持つ隊長以外まともな人物がいない中での真打がクルーガーマン伯爵・将軍。保身>空軍の体面>甥の敵且つ間男への鉄槌を表現するジェームズ・メイソンをたっぷり堪能させてもらいました。終盤の元帥からの電話以降は彼の独断場であり、「うわ~そうきたか、頭いい~、しかし悪いやっちゃなぁ」と思った途端の Sit Down !!!!!!!!! に椅子から思わず立ち上ってしまいました。「えらいすんません」怒髪天を衝く鬼の形相での野太いベルベットボイスはジェームズ・メイソン名場面集の1つとなりました。やるせなさが募る異色の戦争映画。傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2018-07-30 16:19:39) |
16. 脱走特急
《ネタバレ》 一瞬も目が離せないスリル満点の物語でフランク・シナトラ、トレヴァー・ハワード、ウォルフガング・プライス、オリアリ大尉、コンスタンゾ大尉それぞれ味わい深いキャラクー達が輝いていました。とある所でライアン大佐が死ぬ事を知ってしまった上での鑑賞が何とも残念ですが、最後の一歩が踏めなかった全力疾走に鳥肌が立ち、ラストの台詞に涙が止まりませんでした。脚本・演出・撮影共に一級品で「大列車作戦」と並び称される傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2018-06-16 23:01:31) |
17. ミクロの決死圏
小学生の時に観ていてハサミを落としてしまうシーンのみ記憶。50年近く経て再見。小宇宙人体を舞台にした冒険SFは見応え十二分。奇想天外なアイデアを形にした製作に携わった方々と最高傑作の邦題をつけた方に敬意を表します。件のハサミのシーンの後の彼女を助ける際の男性三人の目がランランとしていたのに凄腕監督の茶目っ気を感じました。 [DVD(字幕)] 9点(2018-04-30 23:26:46)(良:1票) |
18. 何がジェーンに起ったか?
幼少時から憎しみ合った二人の密室劇で、山姥のようなジェーンがブランチの思惑を一つ一つ潰してゆく様は丹念なカメラワークもあいまってホラーであり心底恐ろしい。踏み躙られてもジェーンを思うブランチの心境が理解し難かったのが、「何がジェーンに起こったか?」が告白するラストで明らかになり、胸が塞がる。隣人とピアニストがもっと話に絡んでくれれば。ジョーン・クロフォードとベティ・デイヴィスは犬猿の仲だそうで、本作で二人を制御できるのはアルドリッチ監督ならではか。撮影現場の緊張感も半端なかったと想像できる。全編が異様なオーラに包まれる傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2018-02-21 16:51:39)(良:2票) |
19. 大列車作戦
《ネタバレ》 操車場の爆撃、単機による列車掃射、機関車の衝突、全てのシーンが臨場感に溢れる息を呑む迫力で撮影の困難さが想像出来ます。 「わが命つきるとも」で信念を貫き通したポール・スコフィールドが演じる悪役は、絵画に対する異常な執着心を持ち、やはり偏執的な信念を貫き通しておりました。一言の抗弁も許さぬ無言の目力に見惚れてしまいナチス式の敬礼までかっこいい。バート・ランカスターとの最後の対決は圧巻。盗人猛々しく価値観をまくしたてる威風堂々とした大佐に無言で引き金を引くラビッシュ。転がる多数の木箱と多数の射殺体が戦いの虚しさを漂わせます。傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2017-10-15 01:07:45) |
20. 奇跡の人(1962)
初見。食卓での長回しシーン。共にオスカー受賞も納得のアン・バンクロフトとパティ・デュークが体現する究極の「迫真の演技」が圧巻。獣の調教ではなく、世界を知り自身で考えて行動出来る為の教育を施すというサリバンの尋常ならざる信念が、自身の悲惨な境遇に起因しているところが感慨深い。 [DVD(字幕)] 9点(2017-09-16 23:57:27) |