1. 彼岸花
“親バカ”とよく言うけれど、その意味でバカでない親なんて多分いないんだよね。有馬稲子がキレイ。情感豊かに、哀愁たっぷりに物語を紡ぎつつも、ベトベトしない小津のストーリーテリングはさすがという他は無い。僕はこれが日本映画の最高傑作のうちの1本であると信じて疑わない。 10点(2004-05-04 03:29:35) |
2. 遠い空の向こうに
心から良いと言える映画、誰にでも薦められる映画ってそう無いと思う。60年代アメリカのテイストを見事に再現している点も素晴らしい。空を見上げながらリフトで降りてゆくホーマーのショットは、映画史に残る名シーンだと思う。 10点(2004-04-16 20:53:32) |
3. ユージュアル・サスペクツ
《ネタバレ》 定期的に見直すたび、その完璧さに鳥肌が立つ。時間軸をも巧みに操る緻密で練りこまれた構成は、バラバラなジグソーパズルをまず提示し、ようやく組み合わさったところでまたバラバラにする。今までも、これからも、“これと同等”はありえても僕にとって“これ以上”のサスペンス映画は無いだろう。他に特にコメントする必要性を感じないぐらい、優れた映画。 10点(2004-03-04 09:26:18) |
4. シティ・オブ・ゴッド
空気を吸うようにドラッグを呷り、おもちゃを扱うように銃を撃つ。欲望と暴力が渦巻くその街で生きていく為には、ただ己の力を信じ、暴力の連鎖に身を任せるしかない。そうしたやるせない無機質な現実をドキュメンタリー・タッチで描きつつも、一方ではスタイリッシュでハリウッド的な映像スタイルを多用し、ラテンの陽気なリズムに乗せて情感溢れるストーリーを描く。リアルでありながら、同時にアンリアルでもあり、独特な雰囲気の映画である。急速な工業化が生む社会の歪み。規則正しく並んだ“神の街”の小奇麗さが、怖い。画面からはみ出す程のエネルギー、パワーに圧倒された。 10点(2004-03-04 09:22:10) |
5. ライフ・オブ・デビッド・ゲイル
極上のサスペンスでありながら、大変な問題作。一晩寝たら心に何も残らない映画が跋扈する昨今、こうした深い余韻を残す映画こそ高く評価したい。ベースにあるものが中立的とは程遠いと思うが(会話の端々に出て来るデータなどに意図を感じてしまう)、ゲイルらの選択に対して偏ったスタンスは取っていない点に注目したい。人権に敏感でありながら死刑制度(それも絞首刑)を持つ国の国民として絶対に見て欲しい1本。 10点(2004-02-26 15:51:11)(良:1票) |
6. サウンド・オブ・ミュージック
サイコサスペンスを見ていたとき、ある人が”古き良き映画”みたいな話をし出した。その人曰く、昔の純粋で、素朴で、健康的(?)な映画が良かったと。その時話に出た映画がこれでした。血を出さなければ映画が売れない。そんな時代だからこそ、こういう映画に満点を付けたい。大好きです。 10点(2004-02-21 18:58:45) |
7. ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
CG技術の進歩は、一方では表現の多様性を狭め、つまらなくしてきたと思うが、名作ファンタジー文学の世界を見事に映像化したこの3部作にはそうしたアンチ・ハリウッドみたいなものを蹴散らすぐらいの圧倒的なパワーがある。直球勝負、万歳。最後まで指輪の負の要素を描ききった点も評価したい(原作を改悪しなかったってことなんだろうけど)。3部作まとめて、満点。本当は1がダントツで好きで、後はちょっと残念な部分もあるんだけど。 10点(2004-02-21 18:18:11) |
8. めぐりあう時間たち
3人の女性を中心とした、宿命にも似た異なる時代の1日を描いた人間ドラマ。それぞれのストーリーを途切れなく、過不足無く、くどくなく描くその様は美しく、鮮やかで、また詩的だが、しかし残酷である。その映像美と残酷さのコントラストにまず、舌を巻いた。たとえ例えば同性愛が許容される時代であっても、人生は表層的な自己満足の連続に過ぎない。そのことを悟り、自分の為ではなく、生死を超えて本当に自分らしくあることを望むとき、過酷な選択が待ち受ける。ヴァージニアやローラやリチャードの選択を自己中心的であると責めるのはたやすい。しかし、この映画を見終わってカタルシスにも似た感覚を覚えるのは、彼らの選択に誰しもが心に秘める部分があるからではないか。ジュリアのようにローラを抱きしめてあげたいと思ったのは、僕だけではないはずだ。逆に言えば、静寂を覆い隠す為にパーティーを繰り返すダロウェイ夫人にも、誰もが自分自身を投影する部分があるだろう。そして、意識的であれ無意識的であれ、誰かを”殺している”のかもしれない。ストーリーや演技は言うまでもないだろうが、それを支える演出、音楽の完璧さ(確かに音楽はややでしゃばり感が否めないが、それによって醸し出されている統一感は特筆すべきだろう)。この映画の見事さには、溜め息が出た。文句なしの満点。 10点(2004-02-19 19:12:25)(良:2票) |
9. シカゴ(2002)
セクシーながら力強いキャサリン・ゼタ・ジョーンズのパフォーマンスから見事に引き込まれる。ミュージカルの部分をキャラクターの心情を表すものとし、物語の進行と完全に分けた展開が新鮮。レニー・ゼルウィガーをここまで魅力的に撮るとは!風刺がきいていて毒がありながらも、本当に楽しめる。後味の良さは不思議なくらい。ミスター・セロファン大好き! 9点(2004-08-31 12:34:15) |
10. 殺人の追憶
激動の時代は、得てして迷宮入りに終わるおぞましい事件を生む。日本とて例外なく同じ経験をしているんだよね。最後に無垢そうな子が言う犯人像には、やられた。現代的な捜査法を否定している刑事が最後に頼るのがまさにそれであるというのも、過渡期である時代、新しいものが生まれゆく時代の象徴であろう。変わるものと、変わらないもの。失ったものと、得たもの。パク刑事の家庭の描写も、また象徴的である。 9点(2004-05-04 05:16:48) |
11. 猟奇的な彼女
エンターテインメントのツボをしっかり押さえながら、ちゃんとホロリとさせてくれる。オーバーでシンプルな演技、プロットが逆にすごくいい。終盤の韓国のラブストーリーに多いネチネチ感は個人的に好かないが、全体としてみればラブコメの傑作だと思う。男がそれ程カッコよくないのが良いね。 9点(2004-05-04 03:05:29) |
12. バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3
今度は西部劇テイストと、客を楽しませる為に都合良くタイムスリップしたもんだと思わざるを得ないが、やっぱり面白いので許せる。運命なんか無い、というのはタイムトラベルものには陳腐なメッセージであるが。 9点(2004-04-16 20:10:01) |
13. バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2
1週明けのテレビドラマよりも不親切な、前作から直結させるオープニングはある意味挑戦的であるが、1との有機的なリンクの暗示であるとも言える。異なるストーリーを見事に交錯させる巧みさが、本作を極上のエンターテインメントとすることに成功させている。 9点(2004-04-16 20:08:04) |
14. 28日後...
人類滅亡を目前の危機としても、利害を一致させず殺し合う人間の哀しさ。前衛的な映像感覚と手持ちカメラのリアルさが人間の底にある欲、本能を暴き、“人間らしさ”とは何かを問いかける。10点と迷う。 9点(2004-04-16 20:01:25) |
15. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
《ネタバレ》 この映画の最たる“黒い”おかしみは、1.1人の軍人の行動が分断されていた2国に共通の利害を生み、結果としてその関係を改善させている点、2.しかし最終的にその行動の前に2国は無力に陥り、数十年に及んだ冷戦の歴史が数時間のうちに世界の終焉に至る点、3.そして本作が世界を核戦争一歩手前まで追い込んだキューバ危機の翌年に製作されている点、の3点にあるように思う。ピーター・セラーズの1人3役には当初全く気づかず。Dr. Strangeloveの英語訛りは演技とは思えない。。。映画史に残る怪演でしょう。(余談だが、彼の名前は“全面核戦争推進論者”という意味で一般名詞化している。)ポスト冷戦と言われながらも独裁国家やテロリズムによって緊迫の色を隠せない今、手放しで笑えないのが怖い。キューブリックが逆説的に思い描いたであろう世界に思いを馳せた。 9点(2004-03-19 09:50:24) |
16. キング・コング(1933)
古い特撮を見るのはそのチープさ、あるいはその裏にある知恵を見て楽しむ為としか思えなかった僕にとって、現代でも充分迫力を感じられるこの1本は衝撃的な出会いとなった。素直に、すごい。鳥獣が、大蛇が、キングコングが、生きている。自然v.s.人間の象徴とも言えるキングコングの偏愛は、人間と動物との一方的で独善的な関係に鋭い疑問を投げかける。高度文明の象徴であるエンパイアステート・ビルで最期を迎えるとは、何とも示唆的である。 9点(2004-03-19 09:47:00)(良:1票) |
17. バック・トゥ・ザ・フューチャー
本来一方向にのみ流れる時間を自由に行き来できたらと、H.G.ウェルズの“タイムマシン”を始めとして様々な話が紡がれてきたが、タイム・パラドックスをその中心に持って来たという点においてこの映画は革新的であり、高く評価されるべきであろう。余分な説明や人物描写を省き、テンポを重視した構成は、アイディアが良ければ時代を経ても映画はエキサイティングであり続ける、全くチープに見えないのだということを教えてくれる。ドクって30年経っても見た目ほとんど変わってないように見えたのは気のせいか。まあでも、そんなことどうでも良くなる、極上のエンターテインメント性がこの映画にはある。 9点(2004-03-19 09:34:04) |
18. リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い
平均の低さにびっくり(笑)。アイディアだけでも充分高評価に値すると思うのだが(もちろん原作ものなわけだが)。まず素直に楽しめたし、何よりドリアン・グレイの苦悩や、ジキル博士の葛藤といった、それぞれの原作文学のエッセンスをきちんと描いていて、それらがある程度ストーリーに関わってくるのが好印象。もちろん表層的な描写であることは事実だが、それぞれのキャラクターをじっくり描くのは時間的にも不可能であるし、もともとそれら内面的な機微を映像化するのは他のジャンルの映画が専売特許とするところであろう。むしろ、“分かる人に分かってもらえれば”という姿勢はこの映画においてプラスに働いていると思う。背景知識を持たなくてもきちんと楽しめ、知っている人はニヤリと出来る。ただ、透明人間の白塗りには思わず失笑。 9点(2004-03-19 09:13:41)(良:1票) |
19. チャーリーズ・エンジェル フルスロットル
適度に深みのあるストーリーもいいし、何より30手前、あるいは越えている3人の女優、ちょっと悪い言い方をすれば“色気で売るには賞味期限ギリギリ”なエンジェルたち(ついでに言えばデミ・ムーアはみんなとっくに賞味期限切れだと思ってたでしょ?)をここまで画面の中でイキイキとさせているのは本当にすごいと思う。キャメロン以外は“チョーきれい”って程ではないと思うのだが、それをとてもチャーミングな、魅力あるキャラクターに昇華させている。作り手が楽しんで作っている、少なくともそう感じさせられるし、所々にミュージック・クリップやCMでその才能を認められたMcGの映像センスが光る。時にアヴァン・ギャルドな形で。そして何と言っても、ユーモアやパロディーのセンス。言葉遊びなどは字幕では分かり辛いが、テレビだったら放送禁止になるようなギリギリのギャグが、いい。あのドリュー・バリモアに“処女だと思ってた”って。。。もうこれだけで一瞬10点を付けそうになりました。大好きです。 9点(2004-03-06 05:42:34) |
20. ロッキー・ホラー・ショー
自分の存在意義はどこにあるのかとか、そういったコムツカしい映画と一緒に見るのが乙。一方の映画がどうでも良く感じられるから(笑)。10点を付けたいが、人格疑われそうなので-1点で。つーか大学の図書館のDVDコーナーにこれがあったときはショックだった。。。芸術とは爆発なんですよ、きっと。ヌーベルバーグだってある意味ではそうだったわけで。 9点(2004-02-21 18:26:07) |