1. ソウ
《ネタバレ》 こういう映画を語るときには、文学的な評価をしてはいけないと思う。登場人物の深みとか、動機とか、気にしてはいけない。エラリー・クイーンのミステリのような、作者と客との知恵比べが肝であると思う。勝負の結果は私の完敗でした。登場人物の少なさゆえ、あからさまに怪しい人物にすぐ気づいてしまうけど、途中のあるシーンで効果的に使われて疑惑が昇華されてしまう。これが最大の引っ掛けであると思う。いわゆるミスディレクションというもので、まんまとしてやられた。伏線の張り方もそれなりにやっているとは思うし、展開もスピーディーで飽きずに見られました。一つ野暮な疑問を言うと、犯人が悪趣味なゲームに使った道具の数々ですが、ほとんど全てが年季の入った古臭いもので、そこらには売ってないような非日常品。それらの証拠品を全て現場に置きっぱなしにしてあるわけですから、骨董屋などの入手ルートから足が付くんじゃないかと思いました。 [DVD(字幕)] 8点(2006-04-30 23:50:57) |
2. オーシャンズ11
《ネタバレ》 ビデオを使ったトリックや現金の持ち出し方法は結構やるなあ、と感心した。テンポも悪くなく、とても楽しく見ることができた。しかし映画全体として見ると、中身の無い古いタイプのヒロインとその高すぎる位置付け、ラスト近くのレトロな音楽に合わせた美しい噴水のシーン等、古き良きハリウッドを懐かしむような、悪く言えば未来の無い懐古主義でしかなかった。 [DVD(字幕)] 7点(2005-03-30 10:40:50)(良:1票) |
3. 10ミニッツ・オールダー イデアの森
割と素直なつくりの人生のメビウスに対して、これはやけに哲学的というか、芸術的というか。10分てこんなに長いのか、と実感した。最初のベルトリッチ作品だけは良かった。 6点(2005-01-22 17:23:35) |
4. 10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス
人生とか10分とかいうテーマはさほど関係なく、10分という制限で監督たちが好きな映画を撮ったという感じの短編集。ビクトル・エリスの肩スカシのテクニックやチェン・カイコーの素朴かつ幻想的な映像にうならされた。一つ気になったのはヴィム・ヴェンダース監督の作品。主人公に独り言で事情を説明させるという荒業はちょっと卑怯じゃないかと。話そのものは良いだけに異常に気になった。見方としては、全話通じて何かを読み取るというよりは、一話一話を楽しんで見ることをおすすめします。 9点(2005-01-22 17:11:13) |
5. ドッグヴィル
《ネタバレ》 ニコール・キッドマンってこんなに美人だったっけ?とまず驚いた。作品見る度に違う顔に見える。すごい女優だ。その美しい闖入者であるキッドマンに関わる村人たちが、とにかく言動がリアル。自分自身の過去の言動を嫌でも思い起こされてとても沈んだ気分になる。甘えや欲望に正直ならまだいい。もっとも正視に堪えないのは「本当はこんなことしたくないんだ」という変な言い訳。最低の行いをしながら、まだ表面的にはいい顔をしていたい、嫌われたくない、自分は悪くない、という最悪のエゴ。ラストのキッドマンが自分一人の正義のために断罪する時の最も重い罪状は、偽善ではないかと思った。 [DVD(字幕)] 8点(2005-01-11 00:50:45) |
6. Mr.インクレディブル
ピクサーというだけである程度期待して見に行き、期待通りに面白かった。ただ、アクションに力を注ぎすぎたのか、家族愛という題材はありきたりだし、ピクサー独特の皮肉というか毒の効いた笑いは若干少なめな感じでやや食い足りなかった。吹き替えの役者さんたちはとても良かった。 8点(2004-12-23 18:03:14) |
7. クリスティーナの好きなコト
とても興味深い映画。女性の視点から見たコメディということで、出てくる女性は男の理想とは全くかけ離れた人たち。その代わり登場する男性はハンサム=性格がいい、ブサイク=ただのスケベ、というまるで血の通ってない設定。女性の本音らしきものは下品な発言も含めて出てくるものの、そもそも下品な冗談というのはシャイな心理から出るもので、その向こう側にある弱くてカッコ悪い女性の本心は数秒しか見られない。正直さで言えばブリッジット・ジョーンズに遠く及ばない。しかし本物の本音を上辺のジョークで必死に隠し、他人に見せても良い余所行きの本音をだらだら並べ立てて現実の自分から逃げ続けるプライドの高さと卑怯なところは、この映画自体の性別が正しく女性であるとはっきり証明している。そういう意味でとても興味深い映画かと思う。 6点(2004-12-11 03:35:24)(良:1票) |
8. アダルト♂スクール
こんなにも心に響かない作品は珍しい。コメディの割りにあまり笑えるシーンも無かった。それでも見終わった後に何となく面白かったな、と思うのは登場人物がとにかく本音丸出しで行動している下品なまでのバカ正直さ。建前やキレイ事にうんざりしている時はおすすめの映画かも。 6点(2004-12-08 10:29:34) |
9. シュレック
主人公はたまたま怪物という分かりやすいコンプレックスを持っていたけれど、これは何か心に劣等感を抱えていて、自信を持てず素直になれずどんどんひねくれて孤立してしまう、世に山ほどいる男たちの象徴ではないか。しかし勇気を持って一歩踏み出すと、相手の女性も一人の人間として悩みや苦しみを持っていることが分かる。それは踏み出さなければ永久に分からなかったことであり、親友がいなければできなかったことでもある。女性を喜ばせるための男性型ロボットしか出てこない商品としてのインチキラブストーリーが無価値に見える、真っ当なラブストーリー。現実に自信と勇気を持って好きな女性にアタックしたら両思いになれるかどうかは、また別の話だが。 9点(2004-11-28 00:24:05) |
10. おばあちゃんの家
小さい頃、この作品の子供のようなガキだった私にとっては、他人事とは思えない話でした。異なるのは、おばあさんがこんなに優しく穏やかな人では無かったこと。だから少しうらやましく思ってしまいました。おばあさんと孫の交流もさることながら、田舎の人々と都会の人々とのギャップや、いかにも自分のことで精一杯というダメ女と、ほったらかしにされて金や物だけ与えられて育った孤独なひねた子供、という現代に見られる病巣のようなものも垣間見えました。頭がスッキリしてしまうほど泣きましたが、ただ泣かすだけの映画ではないです。ちなみにメイキングではおばあちゃんがごく普通にしゃべっていて、拍子抜けして笑ってしまいました。 9点(2004-11-20 03:25:35) |
11. スチームボーイ STEAM BOY
スケールのでかい親子ゲンカを2時間見せられた。期待がかなり大きかっただけにものすごくガッカリした。悲しい。声担当の役者さんたちや迫力のある映像、科学と人間の幸せの関係等良いところもあったけど、あまりにもストーリーが無さ過ぎる。宮崎作品のできそこないとすら呼べない。 3点(2004-07-25 04:03:59) |
12. 溺れる魚
多分、「堤ワールド」とかいう監督のセンスが合うか合わないかが全てだと思う。私はちょっとなじめなかった。笑いのシーンを「ここ笑うとこですよー」って感じで映されると非常に萎えてしまう。あざとさを飲み込んだネタと解釈できるほどベタではないし。一番痛いのは、監督自身が「俺って面白いでしょ?」って本気で思ってそうなところ。勘弁して下さい。 2点(2004-06-04 23:42:12) |
13. ビッグ・フィッシュ
《ネタバレ》 父のホラ話は、すべてがホラというわけではなく、現実の出来事にたくさんの尾ひれをつけたもの。その尾ひれの中身はともかくとして、なぜ尾ひれをつけるのか。その理由の中に本物の愛情があればそれが真実なのだな、と。とても優しくて素敵な話だった。 9点(2004-05-24 05:52:10) |
14. ザ・ロイヤル・テネンバウムズ
《ネタバレ》 設定が極端だからこそ、どこの家庭にもあるような感情のしこりがはっきり際立つ。心理描写も細やかで丁寧。監督の性格がシャイなのかは分からないけど、一番の泣かせどころであるラストで最高に笑かされてしまった。ジャージが・・・。 9点(2004-05-23 02:12:27) |
15. リトル・ダンサー
見つけた夢に向かって走る少年ももちろん良いですが、やはり一番印象に残るのは意地を捨てて未来を息子に託す炭鉱系頑固親父と、別れの直前で素直に「寂しい」と告白する兄貴。この二人に涙腺干されました。 9点(2004-05-23 01:37:59) |
16. 春の日は過ぎゆく
《ネタバレ》 この映画はずるい女の逃避が主題だと思う。心の深い部分でつながっていた(多分)、夫と離婚し、それでも平気だと思って次の恋愛へ。軽い気持ちで「一緒のお墓に入れたらいいね」などと甘えたりしてみたものの、いざ現実に結婚の気配がすると過去の失敗という恐れが顔を出す。結果、表面的なスカした男との浅い楽しい付き合いに逃げる。別れ話を切り出した時「僕を愛してる?」と男に聞かれて「愛してない」とはっきり言えない。言えるわけがない。終盤、腕を払って花を返すシーンは、男が成長したのではなくやせ我慢で拒絶した感じで、そこがまたいい。多分あの女性は人生において幸せになることを放棄してしまったのだろう。ラストの、男の幸せそうな顔に救われる。 10点(2004-05-23 01:12:18) |
17. 息子の部屋
何度も何度も後ろを振り返って妄想してしまい、前に進めない。悲しみというよりも、自分が許せないというやり切れない気持ち。出口が無いように見える脳内の地獄も、自分が苦しんでいたことに対する他人の何てこと無いリアクションに「あれっ?」と一瞬思い、気が付いたら自然と抜け出ている。そんな、目をそむけたくなるくらいリアルな心理を描いた秀作でした。 7点(2004-05-23 00:36:11) |
18. APPLESEED アップルシード
RPGのポリゴンムービーイベントシーンで一本映画作ったような感じで、序盤はかなり不安になった。でも乳は良かった。キャラクターの人柄が定着しないまま話がどんどん進んでしまうので、終盤の展開についていけないところも少々。でも乳は良かった。プライドの高い軍人の考え、未来に絶望した老人の考え、情で動く若者達の考えと、立場の違う三者の分かりあえなさはとても良く伝わった。希望あるハッピー・エンドや泣かせどころも実にすがすがしいストレート勝負で、たまにはひねくれたところのない映画を見るのもいいな、と爽やかな気分になった。それにしてもいい乳だった。 7点(2004-05-14 18:09:43) |
19. キル・ビル Vol.2
《ネタバレ》 復讐劇のそもそもの発端が実はビルの復讐劇だったという、復讐という行為の真理をついたような展開。両方の言い分がそれぞれ分かるだけにやりきれなさが増幅し、心に響いた。そして行き着く先は男にとって最大最強の存在である母の愛。タランティーノ監督個人の内面世界を1、2通じてたっぷり堪能させてもらいました。 10点(2004-05-13 02:05:38) |
20. タイタンズを忘れない
よくある感動もののようで結構深い。黒人への差別意識は、言ってみれば親がやっていることを小さい頃から見ていた中で心の中に培われていくもので、いきなり政治的な理由で「差別をやめましょう」と押し付けられてもできるわけがない。それは親を否定することにつながる。ではタイタンズのメンバーがなぜ差別意識を超えて分かり合えたかと言えば、合宿という閉鎖された空間の中で分け隔てなく鬼のように接するコーチという共通の敵がいたから、という理由が大きいように思う。結局今までの意識を変えるには努力でも外圧でもなく、インパクトのある出来事であると。一番心に残ったシーンは、自分は厳し過ぎたかと反省したコーチの「勝っても負けてもいいからベスト尽くせ」という言葉に対し、部員たちの方がいつのまにか厳しくしっかりしていた、という試合前のロッカールーム。ジーンと響いた。 9点(2004-05-13 01:55:17)(良:4票) |