1. ボーン・アルティメイタム
《ネタバレ》 いまだかつてここまで興奮しながら観た映画はない(劇場で観たのもプラスになっているでしょうが)。 このシリーズは基本的に好印象だったのですが、前作、前々作ではいびつな構成、記憶の回復で状況解決するなど、減点せざるを得ない内容があり、半端な点数しか投じることができませんでした。 しかし、見事な有終の美を飾ってくれたシリーズ完結作。大々満足です(思わずサントラCD買って帰るほど)。 演出の匠もさることながら、ゲーム性だけで突っ切るなんともパワフルな脚本。 こういう潔い勝負をしている作品は少ないですし、実際満足に至ることも難しいと思います。 シリーズ徹してこの水準に仕上げることが出来なかったのが残念でならないですね。 1作目、2作目で見切りをつけてしまった人は、とりあえず最後まで観ることをお勧めします(是非、劇場で)。 [映画館(字幕)] 10点(2007-12-17 18:54:23)(良:1票) |
2. マンダレイ
《ネタバレ》 「ドッグヴィル」の続編ということで心理展開で物語られる内容なのだろうという身構えで観賞していると、構成(仕掛け)によって物語られる内容で裏切られ、驚嘆。 これは監督が「ドッグヴィルの続編」という情報を意図的に利用したのでしょうか。 だとすれば、なんとも狡猾。 本作で自身の罪に直面したグレース。 しかし、彼女の理想主義はそれすらも正当化してしまうのでしょうか? 果たしてどうケリをつけるのか。三部作完結編が楽しみ。 [DVD(吹替)] 10点(2007-10-20 17:57:27) |
3. アマデウス ディレクターズカット
《ネタバレ》 「才能は過信により齎される。故に慢心を改めてはならない」というのが持論。 これ系の話はきまって途上で生き様を悔い改めさせるのだが、クリエイターにとってそれは決して成長と呼べないと思う(処世術ぐらいは備えてないとまずいでしょうが)。 才能の取り扱いとドラマの処理をごちゃまぜにして万事解決としてしまうような不条理をよく見掛けますが、「才能」を扱い徹す今作にとってこの内容は理想的。 [DVD(字幕)] 10点(2007-09-06 13:47:46)(笑:1票) |
4. アヒルと鴨のコインロッカー
《ネタバレ》 ドルジがボブ・ディランを口ずさむ椎名に出会ったシーンが私にとってのクライマックス。 結果的に復讐の後押しとなる出会いでしたが、ドルジには神の赦し(ひいては自身の肯定)を受けたようなことで、さぞ心地よかったことでしょう。 あの出会いで彼は随分と救われたと思います。 作品の構成をただ「やってみたかっただけ」じゃないかと、このシーンに至るまでは思っていたのですが・・・浅はかでした。 あのシーンの彼の笑顔に涙っ。 他者との出会いは、いつも何かを残していくものだなあ~、と感慨深い。 ワンアイデアものにも拘わらず、ここまで突き刺さる作品が作れるなんて。勉強になりました。 [映画館(邦画)] 10点(2007-08-01 18:27:21)(良:1票) |
5. バーバー
「いつか死ぬのに生きている」 この圧倒的な絶望を知りながらも尚生きている。 宗教に傾斜する者もあれば、自ら死を選ぶ者もいる。 どちらにも向かない者は、静かに首肯するのみだ。 ※コメンタリー視聴で、よりテーマの深淵をうかがえると思います。 [DVD(吹替)] 10点(2007-07-14 20:58:19) |
6. ジョゼと虎と魚たち(2003)
文芸作品なので自分の評価基準から外れてしまい、採点は難しいのですが、映画館に3度足を運び、映画に恋をするという体験を初めてさせてくれた作品。 世間知らずの身体障害者と行動の責任意識の希薄な今風の学生。 どちらの設定を変えても、すぐに違和感が起こりそうな繊細な作品。 それでいて、なんとも力強くテーマを打ち出している。 ラストの恒夫の判断はリアルにするか、ファンタジーにするかの分かれ目でしょうが、この設定ならああ終わるのが(厳しいですが)、自然なことだと思う。 テーマをより強く出せますしね。 [映画館(邦画)] 10点(2007-06-25 11:36:10) |
7. アダプテーション
私たちは社会に適応(アダプテーション)するべく、多くの選択を迫られる。例えば恋愛を取るか、仕事を取るか。どちらも有益であると判断しても時間という有限な流れの中ではどちらかに決めなければならない場合がある。それは合理化である一方で選ばれなかった可能性を切り取る作業でもある。しかも、それはそういった社会的な態度の限定だけに留まらず、内面的な部分にまで侵食する。自らの行動を納得させるべく「主義」へと姿を変えた選択は意識のカスタマイズ作業であると同時に制御可能な世界へと自らを隔離する。しかし、当人にその自覚はないだろう。それは処世術であり、オリジナリティとして解釈してしまうからだ。そして、ついにはこのように設定された世界「ワタシ」を主張する。 一度設定してしまった世界は容易に変更できない。それまでの自分を否定することでもあるからだ。無闇に刃向かおうものなら、その設定にそぐわないと敵意すら示すだろう。「ワタシ」という枷こそが限界をも設定し、他を拒むファクターとなる。即ち、世界は「ワタシ」によって整理され、限定されているのだ。 本作では他を知ることで広がる可能性とともに「世界をつまらなくしているのはお前だよ!」。そして、「世界は君のものだ!」と提起されているのではないだろうか。 [DVD(吹替)] 10点(2007-06-25 11:04:24) |
8. ニューオーリンズ・トライアル
《ネタバレ》 クライム・ストーリーには興味のある方だけど、まんまと騙された。巧い。傑作。 単なる悪党どもの攻防劇だと思っていたら・・・。 しかも、正義に着地するなんて・・・恐れ入りました。 [地上波(吹替)] 10点(2007-06-07 23:17:01) |
9. メメント
冒頭の謎、中盤のサスペンス、ラストの意外性という三拍子を時間軸をいじることで構成する。思い付いたところでなかなかやろうと思いませんよ、こんな内容。 それをここまでわかり易く作り上げるなんて・・・拍手。 物語ではないので、ミステリー好きでなければ辛い人もいるでしょうね。 [DVD(吹替)] 10点(2007-03-21 16:08:42) |
10. スナッチ
「ロック・ストック~」のような(父親の)説教臭いシーンがない分好きではあるのですが、こちらの方が評価低いんですね。複数の話を絡ませすぎなのかな。 [映画館(字幕)] 10点(2007-03-18 07:34:41) |
11. ソウ
《ネタバレ》 通常プロットの最後の方だけをピックアップしたような内容。 こんな遣り口もあるのかと感心しきりです。 自分自身の足を自ら切り落とすなんて、相当のことと思うのでもっとドラマ描写が欲しいところです。しかし、主人公の内的変化を要す展開として用意されているので満足。 「2」にはこのように主人公へ決断を迫る内容がないので評価は下がってしまいます。「ゲーム」という趣向しかなくなりますからね。 [地上波(字幕)] 10点(2007-02-26 14:23:52)(笑:1票) |
12. 16ブロック
オーソドックスで教科書的な作品ですが、こういうちゃんとした脚本を書ける人って殆どいません。 このスケール、このサイズの作品としては満点っ。 DVD収録の別エンディングバージョンもなかなかですよ。 [DVD(吹替)] 10点(2007-02-11 02:33:48)(良:1票) |
13. 時をかける少女(2006)
漠然と変わらないと思っていたものは脆く、些細な変化でさえ世界を変える。 自身の行動も世界を変える力を持つ。 可能性は目の前に数多広がり、全ては行動を契機とする。 世界を、自身を肯定し、行動する勇気をくれる作品です。 [映画館(邦画)] 10点(2006-12-26 15:45:15)(良:3票) |
14. エターナル・サンシャイン
同じであることで親近感が生まれる。 さらに、同じであることは楽だ。 しかし、同じであることは退屈である。 刺激を求めて違うものを欲しても恋愛の中に安らぎや癒しという観念があるためにやがて疲れてしまう。 相反する「同じであること」と「違うこと」を同じ人物との関係の中に求めてしまい、その狭間を幾度となく往来する。 まさに恋愛そのものを描いた傑作だ。 [映画館(字幕)] 10点(2006-12-26 15:23:14) |
15. ユナイテッド93
あの事件をわざわざ脚色した作品など観たいなんて思っていませんでしたが、「ボーン・アルティメイタム」の出来に感動して、監督の手腕目当てで鑑賞。 観賞後は自分の認識の甘さに反省しきりでした。 あれだけ乗客と外部が接触できる状況であるのなら、現実を随分再現されているのでしょうね。 そして、当日の混乱をここまで想像できていなかったのを痛感。 やはり対岸の火事にしか思えていなかったんだな・・・。 多くの概念を覆す一大事であったのをよりリアルに実感させてくれる良作。 [DVD(字幕)] 9点(2007-12-18 21:28:38) |
16. ドッグヴィル
どんな事柄も正当化できる。 故に誤解や争いは生まれ、絶えることはない。 自分が正しいと思っているのと同じように相手もそう思っているということを忘れなければ、対立が生じるとともにどこに過ちがあるか気付けるかもしれない。 ドッグヴィルの住民が不幸だったのは、対立さえも恐れたからか・・・。 [DVD(吹替)] 9点(2007-10-19 20:22:04) |
17. 花とアリス〈web〉
アリスのエピソードが挿入されていない分、物語としての意図が明確に。 劇場公開版の記憶喪失エピソードも面白いですが、こちらは美しい純文学な趣。 [DVD(邦画)] 9点(2007-10-10 11:57:18) |
18. それでもボクはやってない
《ネタバレ》 ただの「HOW TO」ものだったらどうしようと思っていたら、しっかりと構成されていて高評価も納得の逸品。 ただ、あの段階で目撃者を出してしまうのでは、作りとして有罪判決しか選択肢がなくなり、最後の判決まで維持するべき緊張感が逸れてしまう。 しかし、加瀬亮の言動が彼の立場に立って観ていた自分といちいち同じ反応であったのには感心させられました(あまりにも同じだったので笑っちゃうほど)。 [DVD(邦画)] 9点(2007-08-24 00:21:56) |
19. サマータイムマシン・ブルース
《ネタバレ》 傑作脚本。 ただ、小劇場で上演された作品の映画化だけあって、一方的な「面白いでしょ」的ネタが邪魔している。 もっと一般受けを狙う方向にまとめて欲しかった。 あと、神様とか、運命うんぬんのまとめもいらない。 [DVD(邦画)] 9点(2007-07-17 19:06:41) |
20. マッチスティック・メン
クライム・ストーリーだと紹介されるとそれなりに展開が読めてしまうような内容なのですが、ちゃんと主人公のドラマ処理に繋げているので天晴れな仕上がり。 [DVD(吹替)] 9点(2007-07-10 21:55:17) |