1. 変態ピエロ
結局何がどうなったのか全く分からない映画。主人公の死によって物語が何度もリセットされたり、俳優がカメラの方を向いて監督に話しかけたりと、なかなか悪意に満ちた作りではあるのだけど、特に目新しさは感じられなかった。やりたい放題やっていて、最後まで飽きずに観ることができたのでそれなりに満足。 [映画館(字幕)] 6点(2009-01-24 01:39:57) |
2. フローズン・タイム
アート系映画みたいに宣伝されていたような気がするけど、実際は単なるB級映画という感じだった。『人間人形 デッドドヲル』と同じ次元だと思う。 [DVD(字幕)] 5点(2009-01-03 19:42:00) |
3. 庭から昇ったロケット雲
《ネタバレ》 農夫が自力で宇宙に飛び立つという、夢いっぱいの物語ではあるのだけど、上映時間の大半は、主人公が当然予想されるであろう現実的な問題を処理していくのに割かれている。夢を追っていく上で、政府とか家族との衝突を乗り越えていくというのは、この手の映画では定石となっていることなのだろう。けれども、それで映画にリアリティが与えられているかといえば、決してそんなことはない。一観客としては、リアリティなどなくても、自作ロケットの素朴さとか、宇宙服と農場のミスマッチな感じが楽しめれば、それで満足だったんだけどなあ。それだとただのファンタジーになってしまうのか。 [映画館(字幕)] 6点(2008-08-28 23:07:12) |
4. ボブ・クレイン 快楽を知ったTVスター
ボブ・クレインが実在の人物であることを知らずに鑑賞。ビデオが一般に認知されていない時代にAVを自主制作した男の物語というふうに受け止めながら観ていたが、やはりそうではないことをラストで知らされる。冗談抜きに、クローネンバーグの『ビデオドローム』みたいなことをやろうとしていたのかな、などと思っていたので。 [DVD(字幕)] 7点(2008-08-25 21:12:16) |
5. 歩いても 歩いても
それぞれの登場人物の描写が丁寧で、最初から混乱することなく人間関係を把握できるところがすごい。直接画面に映ることのない長男にすら存在感が与えられているし。何気ない会話でつながれていく画面の間にも小さな綻びが見え隠れし、やがてはそれが決定的なものとなっていく。各人が違う事情を抱えていて当たり前なのに、どうしてこういう場では「普通」であることを演じてしまうのだろう。そんなことを考えさせられた。 [映画館(邦画)] 9点(2008-08-25 20:51:48) |
6. KOROSHI 殺し
フィルム・ノワールを期待していたものだから、ちょっと肩透かしを食らった気になってしまう。殺しのシーンはスマートではあるけど、特に凝った演出がなされているというわけではないし、監督の関心はあくまでも中年男の哀愁にあるように思えた。展開が簡単に読めてしまうのはいいとしても、全体的に弛緩した印象を受けた。 [DVD(邦画)] 6点(2008-08-25 20:30:10) |
7. フリック
《ネタバレ》 小林政広の監督作品は他にもいくつか観ているが、本作には監督のそれまでのフィルモグラフィの総決算という意味が込められているように感じた。独特の人物描写を保ちつつノワール的な世界観を構築するかと思ったら、後半でメタレベルの視点が導入されたりと、なんだか監督の頭の中を覗き込んでいるような感覚。それでもある種の押し付けがましさを感じないのは、監督が適度に自己抑制しながら映画を作れているからだと思う。何度も繰りかえされるパンニングが浮遊感を醸し出す映像も良かった。 [DVD(邦画)] 8点(2008-08-03 12:10:05) |
8. 人のセックスを笑うな
ストーリーはあってないようなものだったけど、美しい映像を堪能できてよかった。フレーミングや原色の使い方がうまいと感じた。俳優の演技と有機的に結びついた長廻しもすばらしい。何よりも驚いたのが、こういった手法を用いていながら、殺伐とした印象を与えることなく、かわいい感じの映画に仕上げていることだ。北野武や黒沢清にはちょっとできない芸当なんじゃないだろうか。井口監督はしっかりと自分のカラーを打ち出せていると思う。 [DVD(邦画)] 9点(2008-07-31 21:56:26) |
9. アフタースクール
物事の見かけをうまく利用してストーリーに揺さぶりをかけるところは、ルビッチの『生きるべきか死ぬべきか』に通じる面白さがある。ただ、演出面で意外な事実が判明するときの衝撃が弱く、頭の中で事の次第を並べ立てていかなければならないので、前作の『運命じゃない人』に比べると観終わった後の爽快感が薄くなったような気もする。 [映画館(邦画)] 7点(2008-06-07 01:02:01)(良:1票) |
10. 実録・連合赤軍 あさま山荘への道程
メッセージ性を前面に押し出した映画は苦手なんだけれども、これは観てよかったと思う。連合赤軍がどうというよりも、その理念が何であれ、権威主義的な組織に身を置くことの恐ろしさを改めて思い知らされた。 [映画館(邦画)] 7点(2008-06-07 00:39:00) |
11. コースト・ガード
キム・ギドクの作品の中では、軍隊に所属していた頃の監督自身の経験が最も反映されているのではないかと思わせるような内容。ある事件をきっかけに内面から徐々に崩壊していく軍隊の様子を、独自の世界観と並行させて描き出すことに成功している。昨年公開された『父親たちの星条旗』を思い出してしまった。 [DVD(字幕)] 8点(2007-09-02 15:08:18) |
12. ソウ2
《ネタバレ》 前作と比べると、とりあえず犯人の正体が分かっているため怖さは半減。次々といろいろなことが起こるけど、それぞれの関連性が希薄だったのも残念なところ。まあ、次の3も観たいと思わせるだけの良さはある。注射器の山に放り込まれるシーンは痛そうだった。 [DVD(字幕)] 6点(2007-09-02 14:42:54) |
13. 着信アリ Final
いじめによる自殺が問題となり、メールで嫌がらせをするといういじめの陰湿化が指摘されたことを考えると、なかなか批判的精神に富んだ映画だと思う。死にたくないがために携帯を奪い合う若者の姿は滑稽だった。ただ、解決の糸口を見つけてからはものすごく退屈。内容的には90分以内におさめてほしい。 [DVD(邦画)] 5点(2007-08-25 15:02:15) |
14. 雨の町
冒頭のシーンでは、すりガラスを通して子どもを撮るだけでここまで怖くなるのかと感心したが、後は怖いというよりも滑稽なだけだった。最終的には下手なモンスターパニックみたいになってしまったし。ホラーコメディとしては結構楽しめる。 [DVD(邦画)] 5点(2007-08-25 14:47:47) |
15. キサラギ
脚本が良い。普通なら説得力を持たない展開であっても、そこからさらに別の出来事につながっていくことによって、隙間をうまく補うことに成功している。『サマータイムマシンブルース』と似たような印象を受けたが、こちらの方が断然好きだ。 [映画館(邦画)] 7点(2007-08-25 14:21:46) |
16. 夕凪の街 桜の国
《ネタバレ》 ものすごくベタな演出。しかし、唐突に挿し込まれる妹の声だとか被爆者を描いた絵は、その不自然さゆえに原爆の不条理さを表し得ていた。残念なのは、もう少し細部までこだわって作ってほしかったということ。例えば、プロポーズという重要な場面の背景の中に看板に書かれた「不法占拠禁止」の文字がでかでかと映し出されていたり。ベタな演出なだけに、そういった所が嫌でも気になってしまう。 [映画館(邦画)] 6点(2007-08-25 14:06:51) |
17. カリスマ
《ネタバレ》 僕たちは絶えず何を生かし何を殺すか選択しながら生きているのだと思う。それは当然のこととして受け入れられていて、その選択自体を拒否することは許されない、かのように見える。役所広司はそのことにぼんやりとした違和感を覚えていたのではないだろうか。だから、序盤の人質事件において、何もすることができなかった。しかし役所は、森での出来事を通して、何を生かし何を殺すかが問題なのではないことを悟る。そもそも、そのような問題が成立してしまうのは、何かが生き何かが死ぬということが法則とか力関係のもたらす結果として捉えられているからではないか。ならば、法則とか力関係といったものを度外視してしまったらどうなるか。そこに残るのは、何かが生き何かが死ぬという表面的な事実のみである。そのように世界を認識することによって、役所は、何を生かし何を殺すかという選択から解放され、世界をあるがままに受け止めることができるようになったのだと思う。全ての物事があるがままでいい。たとえそれがどんなことであったとしても。だからこそ役所は、終盤の人質事件に迷うことなく対処することができたのだろう。ただ、そんな境地に達することは現実的には不可能だし、それは想像を絶する世界である。だから僕たちは、大金を出したり、爆破しようとするなりして、恣意的に選択されたカリスマに追随するしかない。そこには必然的に対立が生じる。そのことをラストの戦火が表していたのではないだろうか。この映画ははっきりとした解答を提示しているわけではない。しかし僕は、その潜在性において一縷の希望を見出すことができた。 [DVD(邦画)] 10点(2007-08-22 21:25:36)(良:1票) |
18. ロスト・イン・トランスレーション
《ネタバレ》 前半はビル・マーレーとスカーレット・ヨハンソンが部屋の中に独り佇んでいる所が印象的。二人がお互いのことを意識するようになり、脱獄と銘打って街に繰り出す後半は、ウォン・カーウァイの映画みたいに奔放に揺れ動く映像が続く。一時の現実逃避がもたらす高揚感のようなものを描きたかったのかなと思った。二人が肉体関係を持つことなくお互いの生活に戻っていくというのが、現実逃避を美しいものにしているようで良かった。 [DVD(字幕)] 7点(2007-08-21 23:56:14) |
19. あしたの私のつくり方
《ネタバレ》 高校生くらいの女の子にとって、家庭とか友人関係というものはママゴトのようなものなんだろうか。主人公たちはママゴトの役を降りて本当の自分を生きることを選んだが、現実ではそこで「本当の自分って何?」という問題が浮上してしまいそうだ。 [映画館(邦画)] 6点(2007-08-18 11:11:14) |
20. ツォツィ
《ネタバレ》 紋切り型のストーリー展開とやたらと流れる音楽は、ハリウッド映画の模倣以上のものを生み出しているわけではないが、ツォツィの怯えたような目とぎこちないしぐさが良い。盗んだ車に赤ん坊がいることを発見したときに聞こえる犬の鳴き声や、父親に蹴られて歩けなくなった犬の姿が、社会になじめないツォツィのイメージを強調していたように思う。彼の表情やしぐさは、人間によってトラウマを与えられ、野良犬にも飼い犬にもなりきれない哀れな犬を見事に体現していて、その点ではとても力のある映画だった。 [映画館(字幕)] 7点(2007-08-13 01:03:04) |