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 > アンドレ・タカシ さんの口コミ一覧
アンドレ・タカシさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2127
性別 男性
自己紹介 2022/3/26に以下のような自己紹介文をアップしました。
ロシアのウクライナ侵攻が始まってひと月経過。
映画は観ていますが、侵略戦争のせいでレビューする気になれません。
私の映画レビューと戦争は直接関係しませんが、
楽しく文章を考える気分じゃない、ってことですね。
ロシアが撤退するか、プーチンがいなくなったら再開します。


そして、
侵略戦争が膠着状態に入り、
いつ終わるか識者にも判断できない状況になりました。
まぁ正直、痺れを切らしたので、レビューを再開します。
ウクライナ、頑張れ!

2024年3月17日更新

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1.  下妻物語 《ネタバレ》 
牛久大仏でのケジメシーン。イチゴは桃子を「ダチじゃねえ」と言い放つ。馬鹿なイチゴは上手く表現できなかったが、自分と桃子の間柄は、レディース仲間の「ダチ」関係とは違うと言いたかったようです。何が違うのか。彼女の言葉を借りると桃子は「たった一人で自分のルールで立っている」。イチゴは桃子のスタンスを「尊敬」していて、それを認めた台詞が「ダチじゃねえ」でした。正反対にスタイルが違う相手を認めるピュアな気持ちが独特な映像と笑いのなかに浮かび上がり、私の涙腺は軽々と緩みました。実は初めて会った時からイチゴは桃子のことを認めていたと思います。最初は何だかヒラヒラの変な奴。コミュニケーションを重ねるうちに、尋常では無いヒラヒラのコンセプトを知る。そこで変人として切り捨てるのではなく、得難い個性として受け入れるイチゴの背景には彼女の過去が関係している。大声の啖呵やアクションで目立つのはイチゴだけど、精神的なイニシアチブを取っているのは桃子。大仰な映像を連ねながら、その微妙にしてアンバランスな関係から焦点を外さない手腕はこの監督の才能でしょう。桃子がヒラヒラブランドの仕事で行き詰った時、イチゴの携帯に「会いたい」と漏らします。不器用な短い台詞が友達がいなかった桃子らしい。また、桃子が本音しか口にしないことを知っているイチゴにとって、その言葉がどれほど嬉しかったことか。一本の電話にお互いの気持ちがたくさん詰め込まれた、私がとても好きなシーンです。ちょっと歪んだ少女たちの個性とその結びつきを情感豊かに描いた傑作。過剰に演出された画面も映像表現の新たな可能性を示唆しているように映りました。
[CS・衛星(邦画)] 10点(2011-12-14 21:51:23)(良:3票)
2.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 《ネタバレ》 
これは、テレビ版を知っている人のために作られた映画版ですね。オリジナルとの類似点と変更点の巧みな使い分けは、エヴァの世界を知っている人の方が魅力を堪能できる、という意見です。特に3号機の起動実験パイロットをアスカに変えたことは、オリジナルファンの緊張感を高めたと思う。全体に丸くなったキャラクター達は、感情移入しやすく自分には好印象。迫力が倍化したくらいに見える戦闘シーンには、いい歳して体を硬くして見入ってしまった。終始興奮して映画を観たのは久しぶり。ということで、自分の興奮状態に10点です。ただ、テレビ版エヴァは自己と他者との距離がテーマであり、誰もが持つ「心の壁」の具現化がATフィールドという設定に、SF作品としての煌めきとワンダーが集約されていました。キャラが丸くなりすぎると、その設定の意味性が希薄になる危惧があります。それとも、全く違うテーマで突っ走ってくれるのか。新しいエヴァの物語はまだ途上。次回作「Q」が待ち遠しいです。
[映画館(邦画)] 10点(2009-07-04 03:49:39)(良:1票)
3.  ブレードランナー/ファイナル・カット 《ネタバレ》 
ここのレビューを見てブルーレイで初めて映画を観た。「新しい発見があるぞ」。その通りだった。 この映画との付き合いは長い。1982年の劇場公開時は弱っちいハリソン・フォードに不満が残り、さほど評価していなかった。というか、よく解らなかったというのが正直なところ。でも何かが気になる映画で、レンタルやテレビ放送の録画を何度も何度も見返し、その度に新しい発見があり、やがて自分のベストSF映画に登りつめた作品だ。 なので、もういい加減に新しい発見はないだろうと思いつつも「もしや」という誘惑に勝てずにブルーレイを購入したが、これは正解だった。映像が綺麗なことはもちろんだけど、背景世界の細部の作りこみが良く見える。例えば、デッカードとレイチェルが初めて会うシーンのテーブルに盆栽が置かれているなんてこれまで気付いてなかった。細部が見えたからといって作品のテーマが変わることは無いけれど、これまでよりも演出の意図が明確になったシーンがいくつかあった。 余談だが、オリジナル版(最初の劇場公開版)のエンディングの空撮シーンが『シャイニング』のオープニングに似ていると思っていたのだが、なんとキューブリックに頼み込んでフィルムを借りたということが特典ディスクのメーキングから判明!
[ブルーレイ(字幕)] 10点(2008-09-05 03:53:58)(良:1票)
4.  スクール・オブ・ロック 《ネタバレ》 
ロックとは「反抗」らしい。その辺、ロッカーで無い私には良く分かりませんが、少なくともこの映画は管理教育に対する反抗なんて狭い料簡のお話ではないです。子供たちがバンド練習を始めるあたりから、俄然盛り上がって行きます。自由に表現することの楽しさがビンビンと伝わって来ます。共同作業が主体性を生み、疾走感を伴なって突破力を獲得する。タイトル通り、立派な教育にもなっている。サイコ―です。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-08-16 01:37:40)(良:1票)
5.  ぼくのエリ 200歳の少女 《ネタバレ》 
私が怖かったのは、血まみれのエリでもプールでの惨殺でも無く、二人で列車に乗り去って行くシーンだ。冒頭では父娘としか見えなかった関係の真相がオスカーに置き換わったことで判明し、その真実に戦慄する。同時に二人の、特にオスカーの行く末に複雑な思いを巡らせる。【共棲】という単語を辞書で引くと「異種類の生物が同じ所に住み、密接な結びつきを保ち、利害を共にしている生活様式」とある。ヴァンパイアは不完全な生きもので誰かと共棲しなくては生きて行けない。オスカーの籠絡がエリの計画だったのか、自然な流れだったのか。そこはストーリーからは判別しがたい部分だ。では、オスカーはエリに何を求めたのだろう。いじめられっ子にとっての唯一の味方? 友達がいないさびしん坊の遊び相手? それは間違いではないが表層でしかない。自分だけがエリの秘密を知っているという特権。そして、自分の庇護が無くては生きられない者に対する優越と自身の存在意義の確認。それが仄かな恋慕とフュージョンし、共棲相手の獲得として快感に達したのではないかと思う。その意識は献身と言うより、むしろ独占欲に近い。SとMが混濁した複雑なモーメントが見える。壁越しのモールス信号から始まったコミュニケーションはまさに二人だけの世界を形作ったと言える。萩尾望都「ポーの一族」が証明するように、ヴァンパイア作品とジュブナイルの相性は悪くない。それを冷厳な空気感の中にまとめた演出を高く評価したい。この厳粛な見応えはオスカーの「運命」を描いているからだと思う。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2011-10-25 23:13:46)(良:2票)
6.  川の底からこんにちは 《ネタバレ》 
こりゃ凄い作品でした。監督の個性が如実に出ています。まず、前半の煮え切らない会話。グダグダ。だけど可笑しさがこみ上げる。この味付けは秀逸です。その会話にも飽きた頃に「中の下」というテーマが浮上して、ギアを入れ換えて疾走する。「中の下」、つまり自分たちは平均以下と定義する。そのスタンスは正直だけど、「下の下」と言わないところに少しプライドを感じたりもする。「所詮、たいした人間じゃないんだから頑張るしかない」って台詞は別に「中の下」だけの専有ワードでは無い。「開き直り」が発揮する迫力に圧倒され、ちょっと頑張らなきゃと思ってしまいました。満島ひかりは「愛のむきだし」から注目している女優さんですが、絞り出す感じが好きです。全編を通してちょっとブラックな笑いに満ちていて、でも決して寒々しい訳ではなく、言うべきことはしっかり言う。この映画、私には「上の上」です。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2011-08-24 23:09:17)
7.  ゆれる
法事で久しぶりに帰省した弟に、密かに恋慕していた女を軽々と攫われる兄。そのことを感付きつつも、まだ内側に秘めていた兄の憤りが、吊り橋で兄を拒絶した女の態度によって噴出する。そこに殺意があったかどうかは、自分には大きな問題では無かったです。あの状況に至る兄、弟、女の関係性だけでお腹いっぱいでした。真面目によく働くがモテないオーラを出しまくって女性に縁のない実家暮らしの兄。実家を顧みずにカタカナ商売で都会に暮らし、遊び人のオーラを出しまくる女好きな弟。そして、実家を出て一人で暮らしながらも地元を離れず、土地柄と日常への倦怠と抱える女。見かけは幼馴染みとしてバランスを取っていた関係性が、弟と女のセックスによって崩れる。具体的には、弟とセックスしたことで、兄への嫌悪感が表面化した女の態度の変化で崩れる。都会と地方、継いだ仕事と獲得した仕事、個性と能力、優越と劣等など、様々な格差が引き起こした崩壊とも言える。それを映像で暴いたこの監督の構成力に感心しました。その後の裁判は、兄弟の心情の検証でした。タイトルの「ゆれる」は肉親に対して抱く心情の幅を指した言葉です。幼少時は信愛だけで成立していた兄弟の関係が月日とともに薄れて行く現実。昔の映像を観て当時を思い出しても、崩壊した関係が元の鞘に収まるとは自分には思えなかった。しかし、兄がバスに乗るシーンを見せなかったのは「ゆれる」心が希望を掴む解釈もアリとする監督の優しさのような気がします。兄役の香川照之が発する緊迫感から目が離せなかった。過去に観た彼の出演作の中では、これがイチバンです。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2011-05-17 22:41:42)(良:3票)
8.  少林サッカー 《ネタバレ》 
オマージュという言葉が映画で使われる時は、他の映画のシーンや台詞の借用を指しますが、それをこんなカタチで表現した映画を他に知りません。本作では、チャウ・シンチー自身がブルース・リーのオマージュでした。体の向きや肩のラインや首のめぐらし方、顎の角度や視線の送り方。何気ない所作がブルース・リーそっくりで、そこに彼がいるような錯覚を覚えます。これはブルース・リーの映画に熱狂したことのある人にしか分からないこと。チャウ・シンチーが無意識にやっているとは思わないが、彼はもうキ○ガイレベルのブルース・リー崇拝者ですね。ゴールキーパーの死亡遊戯スタイルはオマケみたいなものでした。本編の方は、このノリに付いて行けるタイプなのでとんでもなく楽しかったです。マンガのような映画と言ったとき、ハリウッドではマーベル系のヒーロームービーになりますが、本作が正しい姿でしょう。同時にこれはハリウッドでは創れないタイプの作品で、バカバカしさにも色んな種類があることを教えてくれます。この「キャプテン翼」のような世界観を日本では実写映画にできなくて、香港でやられてしまうところが悔しくもありますね。
[DVD(字幕)] 9点(2011-01-15 14:12:57)
9.  96時間 《ネタバレ》 
わずか90分に詰め込まれた破天荒な愛情。ひっさしぶりの快作でした。まず出だしが秀逸です。娘の誕生パーティのシーンだけで主人公と娘・元妻・元妻の現在の夫の関係を見事に描写します。その関係性は後のストーリーに全て活かされ無駄がない。娘を誘拐した実行犯を携帯越しに「必ず見つけ出して殺す」と凄むシーンに痺れ、その後の展開に期待が高まる。「!!! 」 その暴れっぷりは期待以上。そこに正義や倫理や道徳はありません。目指すのは自分の娘だけ。他の誘拐被害者には目もくれず、自分の娘だけ。かつての友人の妻なんて、旦那に口を割らせるために腕を撃ち抜かれる。とばっちりも甚だしい。拷問で情報を吐かせた実行犯は開放せずに電流を流しっぱなし。きっちり公約を守ります。ここまで徹底したキチガイじみた追走の動機は娘への愛情。自分にとって大切なものを守るという一念。その純粋な一念に、娘のいない自分でさえ感情移入し、娘が「来てくれたのね」と言った瞬間に頬に伝うものがありました。そこまで揺らされると、やってることは無茶苦茶でも誰かのためにエゴを貫くことの意義に首肯せざるを得ない。リュック・ベッソン、やれば出来るじゃん。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2010-12-19 20:07:01)
10.  キサラギ 《ネタバレ》 
「十二人の怒れる男」などと同様、閉鎖空間の真相追及ミステリー。面白い。二転、三転、四転、五転、転、転・・・。めまぐるしく変わる状況に、前のめりに惹き付けられる。笑わせたり、呆れさせたり、しんみりさせたり、考えさせたり。観る側の態度をストーリーに合わせてジェットコースターなみに昇降させてくれる。立場の違う5人のそれぞれのキサラギ像が一人のアイドルに収束して行く。それは、アイドルに限らず人の記憶に残る誰かの「像」が他者との関係性の総体であるという普遍メッセージを包含する。その偶像概念の検証で終わると思っていたら、なんと土壇場で如月ミキを登場させる。微妙な容姿と歌と踊り。たしかにD級アイドルだけど、ちょっと得した気分になる。それがこの変な映画に、さらにブラックな色彩を付加する。「原作もの」の安易な映画化が多い邦画界で、舞台ベースとは言え、書き下ろしのオリジナル脚本の強さを見せてくれる映画である。アイドル文化をトレースしていることを評価するなら、アカデミー外国語映画賞くらい授与されて良いくらいの見応えだった。これはケッサク。宍戸錠の蛇足は見なかったってことで・・・。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2010-10-24 01:50:16)(良:1票)
11.  第9地区 《ネタバレ》 
すごく面白かった。最近に観た映画の中では、最も幸せな2時間だったかも。正体不明のものをしっかりとストーリーに組み込めれば、面白い映画ができ上がる。それはフィクション創作物の本質であり、醍醐味だろう。平均的なエビ偏見を持っていたヴィカスの心情描写と、エビであるクリストファーの「人道的」スタンスの絡み合いが今作の骨格。特に「3年待て」と言うクリストファーを殴り倒したヴィカスより、必ず人間に戻してやると言い続けるクリストファーに、醜悪な容姿を越えて感情移入させる構成が見事です。あえて難点をあげるなら、クリストファーが人間的過ぎたところだろうか。地球外生命体が、人間と同様の道徳基準を持っていることにストーリーのご都合を感じます。もう少しエビなりの思考構造があったら、もっと痺れたと思います。でも、SFとして、アクションとして、そして倫理的な視点を持つドラマとして、ハイレベルにまとまっている傑作。差別や偏見などの社会問題に、通常とは違った次元と角度から光を当てることもSFの使命です。こんなのが観たかったんだ。3年後、クリストファーは仲間を引き連れて戻って来るはず。彼は、実験台になっている仲間を救出する前に、ヴィカスを捜すはず。さて、その時ヴィカスは人間に戻ることに同意するだろうか?
[映画館(字幕)] 9点(2010-04-14 19:01:19)
12.  青い鳥(2008) 《ネタバレ》 
重いテーマと誠実なメッセージに射抜かれました。吃音症の教師の言葉は、数こそ少ないがひと言ひと言が重く響く力を持っている。ストーリーは中学のイジメ問題を中心に展開するが、学校の中に限られた話ではなく、もっと普遍的に意識されて然るべき問題の核心を突いていると思う。「反省」自体が持つ曖昧なニュアンスを反省文の枚数で計ることは、事象に形式的な決着を付けるための詭弁にすぎない。仕事上の事故などを「始末書」で決着させるのは仕方がないとしても、教育の場に相応しい方法論とは思えない。ではどうすれば良いのか? 教師は「責任を持て」と言った。これには、自分の目からも鱗が落ちた想いでした。大事なことは、忘れて終わらせることではなく、抱き続けること。それが事実の中身を反芻させ、傷付いた者の心情を汲むことにもなり、再発の抑止以上の意味をもたらすのでしょう。転校した生徒の机を教室に持ち込んだ一連の行動は、無骨ではあったけれど、教師と園部君の会話シーンで納得しました。この映画の良いところは、回答に絶対性を持たせていないことだと思います。ラストの反省文も全員が提出した訳ではない。学校側が書かせた5枚の反省文も否定している訳ではない。メッセージの受け取り方を観賞側に委ねている。だから尚更、考えさせられる。きっと肌に合わない人もいることでしょう。大人になっても悔やむことは起こります。若い頃に比べて、塞ぎ込む心を早めに戻す術も身に付けました。でも、悔やまれたことのエッセンスを抱きながら暮らして行きたいものだと、この映画を観て思いました。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2010-03-13 01:37:59)
13.  Ray/レイ 《ネタバレ》 
レイ・チャールズは知っていたけれど、もちろんリアルタイムでその活動をトレースしていた訳じゃない。でも、ストーリーの流れに織り込まれるヒットナンバーは聴き覚えのあるものばかり。あぁ、これも彼の曲だったのかと、今さらながらに教えていただいた。ジェイミー・フォックスのパフォーマンスも凄い。歳を重ねるごとに、晩年のレイ・チャールズの仕草に徐々に近づくように配慮していたのが分かりました。幼少の頃の母の記憶、弟の死のトラウマ、女性関係、ドラッグ、人種差別、ショービジネスの裏側、そしてなにより光を失ったこと。全てが褒められたものでもない伝記的ストーリーだけど、映画としての見応えは満点に近い。それを支えているのはレイ・チャールズの人生というより、音楽の力だと思いました。その時々の彼の心境とシンクロしているように聞こえる歌詞やメロディの起伏。それが、物語に、彼の生き様に、素晴らしい深みと説得力を与えている。楽曲自体に聴き応えがあるからこそ、可能な構成だろう。ミュージカルではありませんが、偉大なミュージシャンの映画らしい、音楽に溢れた作品でした。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2010-03-01 23:18:36)
14.  アバター(2009) 《ネタバレ》 
かつてここまでリアルに別世界を堪能させてくれた映画があっただろうか。その別世界は美しく、驚異に満ちた自然の宝庫でした。植物も、動物も、そこにコミュニティを作るナヴィも、生あるものすべてがひとつの世界観のなかに完結していて違和感がない。3Dは「飛び出す」ようなキワモノではなく、大きく豊かなパンドラの自然にナチュラルな奥行と風格を与えていました。ストーリーはシンプルですが、テーマもまたシンプル。それは自然賛歌という言葉以外に思いつかない。巨木が倒された時の悲痛はナヴィたちだけのものではなく、自分も体の一部を失うような喪失感を味わいました。かつて発展の為に躊躇せずネイティブを駆逐した西部開拓時代の反省も入っているようです。共棲という視点に限れば、今作は今の時代を背負った大きな映画とも捉えられます。12年間のブランクはキャメロンにとって、とても意義のある時間であったことを確認した印象です。また、ラストの大佐の頑張りには、キャメロン節が健在であることも確認できて嬉しかった。世界観を構築するうえで彼が「ナウシカ」と「もののけ」のエッセンスを取り入れたことは間違いない。それを実写で実現させたことに脱帽します。3Dに関してひと言。実はときどき3Dメガネを外して確認していましたが、字幕が付けられている場所(奥行の階層)もカットごとに変えてありました。つまり字幕にも3Dの演出がなされている訳です。基本はかなり手前側に字幕を置いていますが、室内などの近景で多階層に渡る奥行を持つシーンでは、少し画面が見づらかった。そこはまだ研究&改良の余地ありだと思います。でも、みなさん仰っていますが、自分もこの映画は絶対に3Dで観るべき作品だと思います。どんな体験が出来るのかとワクワクして劇場に向かい、何ひとつ裏切られずに劇場を後にしましたよ。
[映画館(字幕)] 9点(2009-12-31 12:45:29)(良:1票)
15.  花とアリス〈劇場版〉
観ていて楽しく、面白い。いい感じの映画です。強いメッセージやテーマは見えないけれど、主演の二人の少女のやりとりの機微に引き込まれる。この、特に何も言っていない映画のどこがそんなに魅力的なのか? 自分はあだち充のマンガに似ているな、と思いました。あだち充の作品はキャラの大半が高校生。基本的に運動神経が突出している男の子が主人公だけど、作品のテーマはほとんど総て高校生のラブストーリーであり、好き嫌いの感情が台詞ではなく彼独特の記号表現とユーモアで描かれる。感心するのは、その描写の中で友情や約束といったデリケートな概念をとても大切に丁寧に扱っていることだ。突飛な喩えになったけど、この映画の主人公たちの日常を切り取る様は、あだち充の文法を彷彿させました。オーバーアクション気味の芝居や感情の抽出の仕方も良い意味でマンガ的。観ている方が恥ずかしくなるような青さに満ちている。でも微笑ましい。いや、大笑いもたくさんあった。それに合わせて、映像も出来る限り生々しさを排除し、ファンタジックな世界観でまとめている。自分の愛すべき映画がひとつ増えました。見応えという意味では、やはり蒼井優ですね。バレエの下地が「フラガール」のダンスシーンに繋がっていたことも分かりました。間違いなく若手女優のトップを走る彼女の原石部分が覗えます。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2009-10-28 14:28:04)(良:1票)
16.  亀は意外と速く泳ぐ
確かに! 以前から、上野樹里の顔はとっても平凡だと思っていました。でも、亀に似た愛嬌があって好きです。愛しい映画です。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2009-09-19 14:06:24)(良:1票)
17.  the EYE 【アイ】 《ネタバレ》 
最近のホラー映画で繰り返し観た映画はこれだけだ。それ程に見応えがありました。角膜移植によって視力を取り戻した女性の視界に普通の人には見えないものが見える。最初、彼女はそのことに気づかない。手術前は何も見えなかった訳だから、見えるものに正常と異常の区別が付かない。その特別な視覚能力が徐々に実感されて行く過程が上手い。ホラーらしく驚かすシーンも多少はあるが、主人公の戸惑いを丁寧に追いかけて行く流れはホラーというより文芸作品に似た空気さえ漂い、しっかり主人公に感情移入できる。病院で励まし合った少女があの世へ誘われる場に立ち会ったことを契機にして霊視能力を受け入れ始めた矢先に、鏡で見ている自分の顔と実際の自分の顔が違うことに気づく。この映画で最も怖いシーンはここだ。足元から自分の存在が突き崩されて行くような戦慄。じっくりと主人公の心情を追って来たことが実を結ぶシーンでもある。鏡に写る女性の顔を求めて、ストーリーは新たな展開を見せる…。主演のアンジェリカ・リーは美人だけど、韓国ホラーなどにありがちな美貌だけを飾っている主演じゃなく、しっかり演技に芯があってこの映画を悲哀で支配している。心霊現象を描いているが、悪意・怨み・祟りと云う負のエネルギーが根源にあるタイプのホラーではないので、恐怖の純度自体は決して高くない。しかし、それを代償として通常のホラー映画には見られない整合されたロジックを構築し、完成度の高いストーリー性を獲得した。結果、自分が観たホラー映画では最高点をつけることになりました。
[DVD(字幕)] 9点(2009-09-05 02:52:20)(良:1票)
18.  ダークナイト(2008) 《ネタバレ》 
面白い映画とはどんな映画か? それに対するひとつの答えが今作にある。ほとんどの映画はフィクションだ。だけど、そこにどれだけのリアリティを感じさせ、観る者の共感を得るかが全ての映画が持つ命題となる。このバットマンシリーズはヒーローコミックが元にあり、バットマンが出てくるだけでリアリティという部分で大きなビハインドを負う。ジョーカーの登場も巨大なハンディになって、ちょっと気を抜くだけですぐにお話が絵空事になってしまう。が、今作は最後まで緊迫した空気の中でストーリーから現実味が消えることは無かった。これは緻密な計算の結果だ。前作に比べてバットマンは微妙に弱く、時には雑魚敵に苦労する。満身創痍で自分で傷口を縫う。ヒロインに選んでもらえない。でも、選ばれたと云う哀しい思い込み。時間が経つと剥がれてくるジョーカーメイク。バットマンを「ならず者の自警団」として非難する声、等々。これらはすべて、映画をリアルへ引き戻すための演出です。この映画の設定自体が持ち合わせる大きなフィクションのベクトルを、脚本と演出の努力によってリアル方向へのベクトルで相殺する。結果、ヒーローアクションムービーならではの吸引力に硬質で奥深い説得力を加えることに成功している。これこそ面白い映画の見本である。ちょっとだけ残念だったのは、フェリーに仕掛けられた爆弾を囚人の親玉みたいな人が船外に投げ捨てたシーンだ。あそこだけは、ご都合色が顔を覗かせた。そこにマイナス1点。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2009-08-24 01:28:39)(良:4票)
19.  グラン・トリノ 《ネタバレ》 
哀しく心地よい余韻、とでも言うのだろうか。とても完成度の高い映画でした。印象に残っているのは、吐血の検査結果を見ながら息子に電話したシーンです。あの局面に、ウォルトのこれまでの人生と生き方が象徴されていました。生死に関わることなので、肉親にだけは伝えるべきかと思って電話をしたはず。でも、肉親にさえ、自分の弱みを見せるようなひと言が切り出せずに受話器を置く。あれは突っ張って生きて来た代償なのだろう。今さらそれを覆すには、頑固な生き方を貫き過ぎた。でも、後悔はしたくない…。その想いがラストシーンへ繋がって行きます。あのラストシーンは一種の自殺です。病気が進行しても、肉親の世話になるような自分を許せなかったのだと思います。タイミング良く、自らの命を差し出すことで助かる友人がいることを天佑とした最期だった。自分は自己犠牲では無く、若者たちの未来に自らの転生的な希望を重ねていたのだと思います。それがグラン・トリノを贈った意味でしょう。そのラストシーンは、同時に演技者としてのフィナーレでもあった。過去に数え切れない程の弾丸を放ってきたイーストウッド。だから今作でも、最後は「make my day」を炸裂させるのかと少し期待していたのだけど、実に見事に裏切られました。拳銃を持たないことで、かえって誰もが「ハリー」を始めとした過去の出演作を意識したのではなかろうか。その回想自体が俳優イーストウッドへのカーテンコールであり、そして、あの「自殺」はイーストウッドが表現してきた正義や勇気と同じ底流を踏む表現だと思います。見事でした。
[映画館(字幕)] 9点(2009-06-11 02:47:44)(良:1票)
20.  時をかける少女(2006) 《ネタバレ》 
あの原田知世の、かなり個性的な映画をアニメにすると聞いたときは、どんなものになるのか恐ろしかった。でも、タイトルは同じですが、ストーリーもテーマも全く違う作品です。こちらの方が良い作品に仕上がってると思います。 まずなにより、ロボットが出なくても、爆発シーンがなくても、ここまで見応えのあるアニメが作られたことに感心します。絵的な見どころは真琴の表情の豊かさでしょう。アニメならではの誇張とデフォルメを存分に使って、飽きない主人公を作り出しています。アニメとしてはギネスブック級に特筆してあげたい感情表現です。 次に、原田知世版はタイムリープによって喪失する映画でしたが、こちらは獲得する映画になっています。あの軽薄で安直なタイムリープの繰り返し。誰もが勿体ないと思う。でも、その行動の結果として真琴は「私は馬鹿だ」と号泣の反省をします。そして「待ち合わせに遅刻してきた人を走って迎えに行く」という直情行動型の性格に、他者の想いを思案する精神的な成長が加わりました。若さの特権とは、失敗から学ぶのであれば、大目に見てもらえる余地があることです。この映画のストーリーはその理屈のまんまです。そのシンプルで潔い流れがあの格別の爽やかさを生んでいるのだと思います。 最後に「未来で待ってる」の解釈。未来へ戻った千昭は未来時間で歳を重ねます。その千昭が例えば10年後に、真琴時間の10年後を目指してタイムリープすれば、二人の時間は再び重なります。それも「未来で待ってる」と言えますよね…。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2009-04-01 00:06:28)(良:4票)
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