1. マグノリア
《ネタバレ》 この群像ものというのは、けっきょく個々の話題の深掘りが苦手なのだろうか。ありそうなモンダイをいくつか配置して浅いまま終わってゆく、バラバラな印象をカエルで強引にくっつけましたぁ、で。 [DVD(字幕)] 5点(2025-04-13 09:45:07)《新規》 |
2. 神曲
《ネタバレ》 『神曲』におけるビッグな「意味」のキッチュなまでの露出(それはそれで印象的)で勝負、を見れば、『家路』があって本当によかったと思う。後者は、突如身辺の巨大な不幸により空虚の中に放擲されその空虚の必然として、新たにかろうじて生の「意味」(さりげない「意味」)を探ることになる。 [DVD(字幕)] 6点(2016-02-24 09:53:09) |
3. ロスト・ハイウェイ
《ネタバレ》 無い話はいらんなぁ。出先でメフィストみたいな怪しい人物が目前でささやく、「俺今おまえの家に忍び込んでいる、嘘だと思うなら電話しろ・・・な、ほんとだろ」、これには倒れ込むほどの恐怖がある。この辺で十分で、あとはいらんなぁ。 [ビデオ(字幕)] 5点(2015-11-18 22:33:52) |
4. カップルズ
《ネタバレ》 この監督の並行編集癖は、突出した特徴だ。誰が主人公というのではない、あるとき偶然の切り取りで、とりあえずの主人公が産み落とされる。とはいえ、この映画では、ヤクザに追われる実業家の息子というのが一応中心人物だったはずだ、が、激烈な行為に及んだあと、映画の終わりの段階では妙に除けられる。とにかく、並行編集がこの監督の魅力だ、と再度。 [ビデオ(字幕)] 7点(2015-05-09 23:33:41) |
5. トカレフ(1994)
《ネタバレ》 長回しだ、長い、魅力的に長い。相米慎二との違いってなんだろう、と考える。阪本監督のほうがまだ説話的かな、相米はもう破れている味なので。それにしてもこの主人公が死ぬ必要はないわけでね、しぶとく生き抜ぬくべき、説話的なカッコヨサの要請に背いても。 [ビデオ(邦画)] 7点(2015-04-21 23:50:56) |
6. ミラーズ・クロッシング
《ネタバレ》 カフカの『城』を彷彿させる作品は多い。『ミラーズクロッシング』もそれで、見るからにカフカ似の主役が、何やら懸命なのだがほんとうに何をしたいのかほんとうは何を求めているのかは不明で、価値が相対化し尽くされている。「相対化」のなかでのあがきなのだコーエン兄弟のブラックな魅力は。 [ビデオ(字幕)] 8点(2015-03-29 17:54:58) |
7. リバー・ランズ・スルー・イット
《ネタバレ》 ハワード・ホークス的な語りのスピーディーなテンポとは真逆の、もちろん意図された間延びにつぐ間延び。もはや語りのメリハリを見せるのではなく、河の流れの方を見せるかのような、「長い」映画だ。 映画は通常、語る主人公の視点を超えたものも大いに映して、観客に高みの見物をさせるのに、この映画は違う。語る兄(優等生)の視点からすれば、弟ブラピに何があったのか、なぜあのように破滅的なのか、は一切分からない(観客にも)。ブラピの死に様すら、その両親も(観客も)、語る兄の言葉によってのみ接し得るにすぎない、というラディカルさだ。何をどういう目的で特に見せたいかという絞り込みを行って、もう一度作り直してほしいくらいだ。 [ビデオ(字幕)] 5点(2015-02-27 01:51:41) |
8. バートン・フィンク
《ネタバレ》 たったこれだけの設定でこの引き込む力はたいしたものだ。「バートン・フィンク」という固有名詞はユダヤ系だなという台詞とともに意味ありげに急浮上したりするのに(古典的ハリウッド映画はことごとくユダヤ人起業家に支えられていたしこの映画の舞台たる1941年でもまだその事情に大きな変化はなかったはずだとしたら、この映画のハリウッド批判は時代考証的にはちょっと的外れかもしれない)、隣人の親ナチであることがやがて判明する暴力的な大男とはずっと奇妙に共存していたことになる。預けられた小箱の中身がついに明かされないのも作品全体の意図された曖昧さを象徴している。 [ビデオ(字幕)] 8点(2015-02-17 14:36:49) |
9. ザ・プレイヤー
《ネタバレ》 重役プロデューサーが主人公で、ハリウッド流プロデューサー方式の集客主義をリアルに見せる。映画の映画。が、まさにこのリアルゆえの「退屈さ」を酷評する人は、自身がこの映画に対してネガティブなプロデューサーを演じてしまうわけだ。映画の映画の映画・・・ [DVD(字幕)] 8点(2014-10-25 06:34:44) |
10. タイタニック(1997)
《ネタバレ》 長蛇の列の観客をあの今は無き大きな映画館(『京都スカラ座』)が悠々と呑み込むことができたこと自体がすでに、映画の一部だった。私たちは喜々として映画館に「乗船」したのだった。空間的な大きさを時間的に捉えるやり方がいい(つまりカメラの前をこの大きな船に通り過ぎさせる)。 [映画館(字幕)] 6点(2014-03-14 10:06:22) |
11. ブレア・ウィッチ・プロジェクト
《ネタバレ》 映画は見せてなんぼの世界(「怪現象」を見せないならせめてそれと向き合ったはずの人間たちの味のある芝居を見せなければならない)なので、こういうあるぞあるぞと誘いながら何もない映画は犯罪だ。映画館で観たのでチケット代を返してもらいたいくらいだ。テクニックとしては、三脚を据えて撮るシーンには客観的視点(この映画の主観的視点の檻から出ようとするも、出られない)へのほのめかしがあってそれがわずかな救いで、1点。 [映画館(字幕)] 1点(2014-03-06 12:43:46) |
12. ミザリー
《ネタバレ》 グリフィス風のクロスカッティングによる救出はハリウッドでもすでに徹底的に古臭く(外部による都合の良い救出は無効)、この映画でも内部からの体を張った自力脱出のみである。するとどうしようもなく血みどろになるので、むしろヘイズコード(暴力表現への制限)が懐かしい。 [DVD(字幕)] 4点(2014-02-24 18:18:43) |
13. ハートに火をつけて
《ネタバレ》 気位の高いはずの「フィルム・ノワールの女」があっさり殺し屋に従属するのはなさけない。大安売りの暴力なんかより他者性(思い通りには決してならない他者というもの)ほど怖いもはないという描き方でなければ駄目である。遊びの映画ならなおのこと、本質的な他者性のゆえにかるーく凍りつくような感じでなければならない。 [ビデオ(字幕)] 4点(2014-01-19 19:35:14) |
14. ファーゴ
《ネタバレ》 物象化を扱う名画の一例として『ファーゴ』はほんとうに怖い(誘拐請負人を斡旋した同僚が計画変更の不可を冷淡に告げるのは、物象化、つまり人間関係が行方不明であること、のほんの一例)。拝金的なうわついた生き方では容易に生活を失うという、これは警告の映画とすら思える。婦人警官夫妻の「人間的な」関係を挟み込む意図がちょっと甘いかもと思わせるが、物象化を浮き彫りにするためのものか。 [DVD(字幕)] 9点(2013-05-05 13:09:51) |
15. めぐり逢えたら
《ネタバレ》 『ユーガットメール』同様よく出来ている。ルビッチュのようなお洒落な感じだ。二人の間にこれでもかと入る中間組織が充実している。 [DVD(字幕)] 6点(2013-03-17 17:15:13) |
16. デッドマン(1995)
《ネタバレ》 眼鏡をかけたジョニー・デップがまず映像的な要諦であり、その見た目(主観ショット)として淡々と風景が流れていく。が、ジョニーととりあえず同一化はできない。やがて、相変わらず淡々と、次から次へと暴力がある。ジャームッシュの一見「無意味な」ロードムービーだが、無意味ぶりに師匠ヴェンダースとは違った硬派な何かがある。ところで、「意味」はある、ネイティブアメリカンとの親近性こそが、それ。白人の眼鏡は「交換」され奪われなければならない。あとは眼鏡をはずしたジョニー・デップの顔で映画は進むが彼が「主体」では、ほぼ、ない、という凄さ、がこの映画の凄さ。 [DVD(字幕)] 5点(2012-07-02 14:29:54) |
17. メリーに首ったけ
《ネタバレ》 上手なラブ・コメ。メリーの「大切なもの」に襲いかかる男がメリーその人ではなくその靴を獲得しようとしたり(換喩への位置ずらし)メリーに首ったけの男たちの競争であったり(悪事の数々の相対化、みんな一生懸命なんだし、と)。下ネタの濃厚さは、かつてのヘイズコード(映倫)のハリウッドでは考えられなかったもの。 [DVD(字幕)] 5点(2012-05-26 19:24:52) |
18. シザーハンズ
《ネタバレ》 長所は、異形の主人公がほとんど違和感もなく家族の一員として受け入れられる筋、である。この「越境」の有り様のみがオモシロイ。あとはすべて子供向け「アトラクション」映画である(非道の敵対者に対する死の報復もまた子供レヴェルのカタルシスである)。 [DVD(字幕)] 3点(2012-05-09 18:23:05) |
19. 素肌の涙
《ネタバレ》 性的虐待を行う父は二重人格のなかに罪意識を隠していたことがやがて判明し、被害者たる娘の主体性は隠れてしまっており、この犯罪を追及する弟の探偵的な自律性もなんともひ弱である。各人の主体性のこのような隠然たるありようは、あくまで暗く美しい画面とともに、たいへん映画向きなのである(演劇的ではないという意味で)。 [DVD(字幕)] 5点(2012-05-05 23:35:33) |
20. 東京日和
《ネタバレ》 旅先で行方不明になった奥さんは小舟の中にいた。そのとき主人公のカメラマンがそれにカメラを向けたというショットはないのに、のちに死んだ奥さんを回顧するシーンで、小舟の中に横たわる彼女の写真が出てくる。これがうまいが、それだけ。竹中の映画はスタティックすぎる。 [映画館(邦画)] 5点(2011-03-25 17:41:00) |