1. 紐育の波止場
前半はサイレント音楽特有の背景音楽が映像とほとんど無関係に流れていたのにちょっと違和感があった。というよりクラシック音楽ファンの私には眼をつぶって聴いていた方がよいほどで、ドタバタと進む映像に付いていけなかった。だが後半一夜明けてからが実に映画としてすばらしく、音はなくて表情や態度で感情がびんびん伝わってくる。涙で針の穴に糸が通らないシーンでは私も一緒にジーンと来てしまった。サイレントのすばらしさを実に感じる映画だった。蛇足ながら男の名前はビルと早々にわかるのに女の名前は最後になってようやくわかる。 [DVD(字幕)] 8点(2015-09-29 21:01:33) |
2. ラヴ・パレイド
「メリィ・ウィドウ」のモーリス・シュヴァリエとジャネット・マクドナルドのコンビは何とその5年前の「ラヴ・パレイド」で共演していたのだ。しかも監督も同じエルンスト・ルビッチだからこれは見ないわけにはいかないと思った。戦前の音楽映画の看板スターとなったマクドナルドはパラマウントのオーディションに落ちたものの、ルビッチに見いだされ映画初出演となった。さてこの映画結婚を夢見る女王と女性問題を引き起こしてばかりいる伯爵という組み合わせ。また彼らの秘書と小間使いをも絡めてなかなかおもしろい。国を治める女王とその夫問い関係は命令する者と従う者の関係かさて・・・。 [DVD(字幕)] 7点(2015-09-15 20:55:43) |
3. ウィンダミア夫人の扇
小説は情景を思い浮かべ、サイレントは会話を想像しながら楽しむものかもしれない。だが想像力に乏しい私にはどうも苦手だ。この映画もおもしろそうな舞台劇に思えるのだが、映画としてはおもしろく感じ取れない。平均点を下げて申し訳ないが、私の点数は作品自体のできや良さではなく、私の理解度として勘弁してもらいたい。 [DVD(字幕)] 5点(2014-07-11 05:59:21) |
4. ゆすり(1929)
元々サイレント映画として撮られていたらしい。それが途中で刑事たちの会話が入ってびっくりした。サイレント映画の場合、印象に残る映像や心理状態すら音楽で表現する巧みな効果などが見られる。この映画もそうだ。ところが台詞が入るとどうもそっちの方に神経がいってしまって、せっかくの緊迫感が薄らいでしまったように感じられた。 [DVD(字幕)] 5点(2014-04-25 06:13:04) |
5. 十誡(1923)
《ネタバレ》 サイレントの十誡だからさぞや古典劇と思いきや、モーゼらの歴史上の人物が出てくるのは第一部のみ、しかもそれは母親が二人の息子に語る十誡の物語の中だけである。だからこの映画は歴史劇と言うより現代劇というべきで、背景になっているのがモーゼの十誡ということだろう。神を信じ十誡の教えに従おうとする母と兄、それに対して弟は無神論者で十誡なんて古くさいという現代青年。しかし掟に背いたために・・・というようなストーリーだ。サイレントにしては長大な物語になっていておもしろい。 [DVD(字幕)] 6点(2013-08-06 12:06:57)(良:1票) |
6. 椿姫(1921)
これまで私が見たサイレント映画といえば、オーバーなジェスチャーとアクションで笑わせるコメディがほとんどだった。その対極にあるような「椿姫」という悲恋の物語を、サイレントでどう表現するのか大変興味深かった。するとどうだろう、台詞字幕と音楽だけで実にうまく表現しているではないか。特に映画に付けられた音楽は雰囲気や細かな感情面まで実に多彩で、原作や歌劇あるいはガルボの映画と同等いやそれ以上のものを感じさせてくれた。愛する人から贈られた「マノン・レスコー」の本、それを胸に抱き死んでいく姿は涙なしで見ることができない。下の【クロエ】さんに感謝、DVDは持っていても特典として入っているとは知らなかった。 [DVD(字幕)] 8点(2013-02-09 07:18:34) |
7. キートンの即席百人芸(一人百役)
《ネタバレ》 指揮をしているのもキートン、楽器を演奏しているのもキートン、幕が上がって舞台にいるのもキートン、それどころかお客さんも皆キートンだらけ、男も女も大人も子どもも・・・。この冒頭シーンから驚かされるが、それは夢だったのか。後半はチンパンジーになったり、ひげが大火事になったり、相変わらずのおもしろさだった。 [ビデオ(字幕)] 7点(2013-01-05 08:37:47) |
8. キートンの船出(漂流)
船出するまでが大変だが、嵐に遭ってからはもっと大変。奮闘ぶりもすごいが何と言っても落ちが良い。最初のでかいボートが嵐のシーンではすごくちゃちに見えたのが難だけど・・・。 [ビデオ(字幕)] 6点(2013-01-05 06:30:57) |
9. 肉体と悪魔
グレタ・ガルボの映画として評価は高い(特に淀川長治さんがべたほめ)が、私にはどうもストーリーが馴染めない。夫のある身で一度ならず二度も裏切る魔性の女としか思えない。サイレントなので音楽が入るのは仕方ないのかもしれないが、だんだん耳障りなってくる。 [DVD(字幕)] 5点(2012-12-07 20:11:22) |
10. キートンの大列車追跡
CGも特撮も何もないサイレントの時代に、平然とやってのけるキートンにはただただ脱帽。何回も何回も撮り直したのかどうかは知らないが、いつも絶妙なタイミングで笑いを誘い、そしてあっと驚くどえらいことをやってのける。何度見てもおもしろい映画だ。最近は久石譲音楽のリマスターDVDも見たが一長一短で少しせわしい。 [映画館(字幕)] 7点(2012-11-25 12:55:13) |
11. じゃじゃ馬馴らし(1929)
シェークスピアの有名な喜劇であり、この映画は舞台劇のおもしろさを最大限に発揮していると思う。エリザベス・テイラーが演じた後の映画よりずっとコンパクトでおもしろい。後半を思いきりカットして説教臭さを排除し、コメディに徹したのが好きだ。 [DVD(字幕)] 8点(2012-07-26 21:02:44) |
12. チャップリンのゴルフ狂時代
1910年代の短編時代と1930年代以降の長編時代の半ば、1920年代のチャップリン映画って結構おもしろいものが多いと思う。このゴルフ狂時代もそのひとつ。 スボンをはいていないのを隠すシーンやゴルフボールを打つシーンなど、数えだしたらきりがないがない。ほとんど笑いっぱなしだが、チャップリンの放浪紳士なところをちゃんと見せてくれる。 [DVD(字幕)] 8点(2012-07-09 20:03:58) |
13. サーカス(1928)
テンポ良く、とてもおもしろい映画。だけどラストはちょっぴり寂しそう。 [映画館(字幕)] 8点(2012-07-08 10:48:50) |
14. キートンの探偵学入門
サイレントで音が出ない代わりに、動きはスピーディで展開が早い。走ったり車に乗って追いかけっこになったらキートンの真骨頂。本当はすごくはらはらするようなことだけど、それを何事もないかのように平然とやってくれる。夢のような話しと思ったら、本当に夢だった。DVDの最初に淀川さんの話が入っているが、映画を見終わった後でもう一度見直すとなるほどと感嘆する。 [DVD(字幕)] 7点(2012-06-13 21:56:21) |
15. 戦艦ポチョムキン
評判の高い映画らしいが私には合わない。有名な「オデッサの階段」のシーンだけは見るべきものがあったが、あとはまったくおもしろくない。それにウジ虫が出てくるなんて生理的に嫌だ。 [DVD(字幕)] 4点(2011-11-17 23:17:10) |
16. チャップリンの給料日
短編はさすがに笑いが凝縮されている。次々と起こる愉快なシーン、中でもレンガを積み上げるシーンは最高、ここの誰もが認めているようだ。給料日の一日(翌朝まで)が描かれるが、一抹の寂しさを感じるのは私だけだろうか。 [DVD(字幕)] 6点(2011-09-05 07:10:01)(良:1票) |
17. チャップリンの黄金狂時代
《ネタバレ》 アラスカの雪深い山に入り金鉱を探し求める男達、蟻の行列のように連なる姿は一攫千金を夢見る者を皮肉っているようにさえ見える。その行列とは別に、一人普段とさほど変わらぬ格好で臨むチャップリンの危なっかしい姿はまったく対照的だ。 もちろん金鉱は簡単に見つかるはずもなく、チャップリンと偶然であった同業者の二人は寒さと悪天候で食うものにも困る苦境に陥る。幻想で鶏になるなど皮肉が込められた笑いの中にあって、靴を料理して食べるシーンは非常に痛烈である。 それこそ大変な苦労の末ハッピーエンドとなるが、ようやく報われたという想いがある。 [映画館(字幕)] 8点(2011-07-14 07:14:02) |
18. キッド(1921)
サイレント映画の傑作であり、チャップリンはもちろん子役の演技が光る。あのハンモックでミルクを飲む赤ちゃんですら演技をしているようだ。ただ結末は意外とあっけなかった。 [DVD(字幕)] 7点(2011-07-13 20:51:58) |
19. オペラの怪人(1925)
《ネタバレ》 いろいろな「オペラ座の怪人」を見たが、ミュージカルでなくサイレントの「オペラの怪人」は初めてであった。むしろこの映画の方が原作に近く、後世の映画やミュージカルの方が改変されているという。その意味でこの映画を見たことは大変意義深かった。 この映画のファントムは「音楽と奇術に明るい、脱獄した猟奇犯罪者」であり、物語もミステリアスな怪奇ロマンとして描かれている。 前半部分のクリスティーヌとファントムの関わりは物足りないが、後半部分のクリスティーヌを救出する展開は、仕掛けやトリックが数多く出てきて楽しめる。 [DVD(字幕)] 7点(2011-04-12 05:48:18) |
20. キートンのセブン・チャンス
《ネタバレ》 チャップリンやハロルド・ロイドと並び世界の三大喜劇王と称されたキートン、彼の数多くの傑作は世界中にフィルムが散逸してしまったが、1960年代に入って発掘修復され世界で再び日の目を見ることになった。 私は1973年に「警官騒動」と併せて再上映された「セブンチャンス」で、笑わぬキートンのあの独特な表情を見ることができた。 走りまわり、逃げまくるキートン、続々増えてくる花嫁候補、超アクロバットな追走劇、おもしろいと思う人もなんだこりゃと思う人もいるだろう。 27歳の誕生日の午後7時までに結婚すれば700万ドルの777にあやかって、この映画の点数も7点・・・。 ある人が花嫁候補の数を数えたら、777人だったとか・・・ [映画館(字幕)] 7点(2011-03-13 09:12:39) |