1. 誰かに見られてる
《ネタバレ》 御大R・スコットといえど慣れないことをするもんじゃないですなあ。リドリー・スコット味を感じるのはクレア邸の豪勢な内装くらいなもので、全体像は「三流ラブサスペンス」といったところ。 展開も演出も凡庸でこれといって見どころ無し。 犯人の立ち回りが話に都合よすぎる。刑事の家族を人質に取ってどうなるというのだ。 途方もなくヘタレな男を演ってるトム・べレンジャーが全然かっこ良くない。ミミ・ロジャースのスタイルだけ良かった。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2024-11-15 23:29:29) |
2. ザ・フォッグ(1980)
《ネタバレ》 舞台がカーペンターらしからぬリアルな海沿いの街なんですね。小さくてちょっと田舎で皆顔を見知っていたり、教会が地域の拠点だったり。住民挙げての〇周年イベント規模の絶妙な「中くらい感」が、街の印象を決定付けます。 ちょっと寂しめの地方の街。そこに変な霧が漂ってきて怖いことが起こる。街も人も平凡な佇まいなだけに、白い霧が確実に迫ってくるという気持ち悪さはなかなかの臨場感でした。 人々に連絡する手段が地方のミニFMというのも、もどかしくて良いです。 80年代にありがちな「血にまみれた死体」を映さずにいるのも好感します。見えない方が怖い、ということを分かっているカーペンターさすがです。もっとも霧の中に鉤爪人型が現れるのにはちょっとがっくり来ちゃったりもするのですが。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-08-19 23:57:47) |
3. ゴースト・ハンターズ
《ネタバレ》 や、ちょっと待ってくれ。80年代てこんなチープやったっけ?うそだCGだってもう少し頑張れたはず。この脱力系の安っぽさはやっぱカーペンター御大の独自のセンスによるものだろうな。 作り物感丸出しのセットはともかくも(いつものことだし)、CG演出には手を出さない方が良かった。あのTVアニメみたいなバリバリって電気描写は一体。 虚無僧笠みたいの被ったいで立ちや、アイイイッという気合といい「中国人」への西洋人の見方を知りました。日本人の描かれ方もたいがいだったけど。いや、でも西洋人のカート・ラッセルだってけっこうひどい目にあってる。タンクトップの妙なキャラ絵が気になって仕方ない。女性陣のファッションも絶妙にダサい。特に記者の彼女。 時空を超越した規模の冥界(?)への入り口をネオン管で縁取るのもやめた方が。格安バーじゃないんだから。 ストーリーなんかもうどうでも良くなってツッコミ疲れしたところにエンドロールで流れるは監督自前の歌声ではありませんか。とどめ刺された。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2024-08-01 23:23:20) |
4. クリスティーン
《ネタバレ》 クルマが人を襲うって設定からして荒唐無稽ながら、けっこう見せます。なんか狂い方が腹が座っているといいますか、あ、コイツは全く話が通じないという怖さがあります。それがクリスティーンとアーニーの二人(?)がかりで狂気を加速させるものだから、怖さが二乗されるのです。(計算間違ってるかも) 古い髪形や幼稚すぎるいじめっ子らの造形など80年代の野暮ったさ全開。けど、その古臭い環境の中、まるでトランスフォーマーのごとく自らの形を再生してしまうアメ車という画ヅラが妙にハマってちょっとした中毒性をはらみます。カルト作品として生き残っているのも納得です。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-07-30 22:56:38) |
5. 真夜中の虹
《ネタバレ》 勤め先の炭鉱は閉鎖、父親は自殺するわ出てきた都会で強盗に遭うわ、仕事は見つからないトコロに情状を一切酌量してくれない司法によって牢屋にぶち込まれるわ。 こう書き出すと目も当てられないほどに悲惨な主人公の境遇なのに、なぜこんなにユルくて悲壮感ゼロなのでしょう。 不運は呼んでもないのに来る。けれど幸運も「ちょっと気が向いたので」的にやってくるんですなカウリスマキワールドは。 “こんなことがありました”と、ぼそっとエピソードを差しはさんですぐ画面が切り替わる独特のリズム。会話より行間を汲んでコミュニケートする寡黙な人物たち。全部がザ・カウリスマキと呼びたくなる唯一無二の空間。 なんもかもパッとしないのよ。のっけから譲り受けたコンバーチブルの幌は北欧の冬だっていうのに閉じない(!)し。子持ちの彼女と3人でドライブしに出かけた先の海辺も岩場ばっかりの岸に波が愛想無く打ちつけるような映えないロケーション。音楽も絶妙にダサい。 だけどもね。収監された先で出会う妙な先輩マッティ・ペロンパーはもちろんのこと、外でも本を手放さない連れ子の男の子も愛さずにいられない。 人生の上手く行かなさも野暮ったさも何もかもが近しく親密に感じられる、好きすぎる一本。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2024-07-18 18:44:46) |
6. パラダイスの夕暮れ
サエないなー。役者もサエないし(北欧は美男美女ばかりとのイメージが覆る)話も地味だし音楽までイカサナイ。 なぜにあんなに表情筋を使わないのやら。寒すぎて(体感のほう)固まりがちなのか、日照時間が少ないと笑えなくなってしまうのか。 男も女も欧米映画の十分の一ほどのエネルギー量で恋愛してる。興味深いなあ。 観る側に緊張を強いないし、羨望ももたらさないし説教もされない。ただただゆるめの共感に心をゆだねるこの安らぎ。これぞカウリスマキ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-06-22 22:26:12) |
7. レディホーク
《ネタバレ》 中世ファンタジーを形作るうえでの美術は立派だし、映像がくっきりとキレイ。騎士と令嬢のお二方も美々しくハマっている。変に芝居がかった終盤の司教との対決は、護衛やギャラリーののんびり具合がちっともリアリティが無いのだけどそこはまあ「中世劇」としての様式であると思って観れば悪くはないです。 だけども80年代のダサい演出がどうにも感性を逆なでします。オープニングの後光を背負った鷹がコントみたいだし、多くの方が指摘済みの音楽センスが致命的。石塔も衣装も中世してるのに、突如ジャカジャーン、と80'sロックミュージックが流れるのでは雰囲気台無し。ついでにM・ブロデリックのつるんと呑気なアメリカン・フェイスも中世ヨーロッパ顔ではない。 物語の骨格は切ないダーク・ファンタジーでいい線行ってるので刺さる人には刺さるでしょう。わたしは今いちでしたが。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-05-28 16:22:48) |
8. ゼイリブ
《ネタバレ》 いやあ~~けんか長い。せっかく「資本主義社会のひずみを皮肉る社会派作品」的なインテリっぽい方向に持ってったのに。後々この映画を思い出すに「サングラスをかけろかけないで延々殴り合うヘンな映画」としか。そのへんてこぶりがカーペンターをしてカーペンターたらしめる評価に繋がってるというのも興味深いなあ。 [ビデオ(字幕)] 5点(2024-04-22 23:34:40)(良:1票) |
9. ニューヨーク1997
マンガの二次元キャラをそのまんま三次元に(無理やり)造型したかのようなカート・ラッセル。チープなセット。予算が少なかろうが、やりたいことをやるカーペンターらしさが炸裂。 少年漫画の良いアホっぽさを臆することなく画面にはっちゃけさせたのが本作で、何を思ったかその世界観をより突き詰めた(暴走させた)のが96年版、ということでよろしいですかね。 ああ、痛恨なことに先に「エスケープ・フロム・LA」を観ちゃったのですよだいぶ前に。オリジナルにたどり着くまで時間かかっちゃった。なのでまた「エスケープ~」を観なくては、の今ここ。カーペンターの世界に人生の一部を確実に割いている気がする。どうなんだこれは。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-03-28 23:03:06) |
10. 日曜日が待ち遠しい!
《ネタバレ》 いやあ・・微妙。はっきり言うとサスペンス部分は設定も演出もポンコツ。人物の相関も分かりづらいし、誰が何の動機で行動してるのか後になって考えてみてもピンと来ない。オマージュだというヒッチコックばりのどきどきは皆無です。 まあ脚本が死んでても雰囲気でなんかいい感じに仕上がる作品もありますよ。本作だってファニー・アルダンとトランティニヤンですからその可能性も多分にあったのに、キャラ付けが失敗しちゃっているのでせっかくの逸材がパアではありませんか。 アルダンの役どころはもっと軽くて若い「探偵ごっこ大好き」なお嬢さんが務めるべき。アルダンでは分別のある大人にしか見えないので、なんでそんな馬鹿な行動をするのか観ててしっくりきませんし、トランティニヤンは単なる粗暴な頭の悪いオヤジ設定しか与えられてません。こんな男にアルダンが惚れるわけない。 つまり話がすっと入ってこないうえ、人物らのやってることはさらに?が付きまくる残念映画なのですがそこはトリュフォー、画は綺麗に撮れています。女性の脚をやけに映すのにはスケベ根性も伺えるけど、アルダンのプロポーションは素晴らしくて眼福ではありました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-03-21 23:07:58) |
11. ライトスタッフ
《ネタバレ》 宇宙開発黎明期のアメリカ。フロンティア・スピリット旺盛な男たちのドラマはガッツに溢れてて元気いっぱい。英雄を求める世間と、それにちゃんと応えようと張り切る飛行士たち。数年時代が下っての月面着陸ミッションを描いた「ファーストマン」では任務が命がけの悲壮感に変換されていて、時代が変わるとずいぶんとテイストが変わるものだなあと思いました。 5~6名ほどのメインキャラクターは各々個性的に描き分けられていて(その奥様も)、競争心や連帯感などが程よい塩梅に散りばめられて観易いドラマに仕上がっています。 ソ連への対抗心丸出しではっちゃきになるホワイトハウス高官らのドタバタは完全に喜劇。ジョンソン副大統領がめちゃくちゃ笑。 一方、NASAとは別のところですでに人類の偉業を成し遂げていた一団がいたのだよ、という二本骨のシナリオにもなっているのですね。 わたしは寡聞にしてチャック・イェーガー氏のことはこの映画で初めて知ることになり、新しい感動を覚えました。華々しい米国のロケット技術、そこに至るまで万人の各地での努力・功績があったことをちゃんと織り込んだ脚本には品格を感じます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-03-15 21:23:05) |
12. ファミリービジネス
レビュワーの皆さんの言ってる総合評価のまんまな感想です。即ちコメディとしてもドラマとしても出来が良くない。もっさりしていて笑わせどころも緊迫するとこもキレが悪いので、話がダラついたまま盛り上がらず終わってしまった。 名監督と名優たちを取り揃えてこの出来とは、責任は一体どこにあるのでしょうか。マシュー・ブロデリックは置いておくとしてもコネリーもホフマンも芝居としては良い仕事をしているので手抜きとは思えないし。下手な脚本を監督に押し付けた映画会社が悪いのか? [CS・衛星(字幕)] 4点(2024-02-14 23:12:10) |
13. スペースボール
この頃のアメリカン・コメディって、一時も気を抜かずにずーっと馬鹿やってるんだよね。一場面一場面がもれなくツッコミ待ちなの。よくこんなに思いつくなあ。体力あるなあ。 賢い(ズルい)ことに元ネタありきのパロディなので笑いの賞味期限がわりかし長い。今でもちょいちょい笑える。ヘルメットのバランスが間違ってるとどうしてあんなに可笑しいんだろうね? [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-01-23 23:57:05) |
14. ランブルフィッシュ
《ネタバレ》 なんというか、青春の苦悩を描いている「ぽくて」、深「そう」で、繊細な「感じ」がする。けど、そんな大層な出来でもないような気もする。評価に困る「ぼんやりした」映画だけど、雰囲気が抜群に良いのですな。なので心に残る。 一体何が素敵なのかしら。一躍スターダムに上ったマット・ディロンが眩しいからか、秘密主義っぽいミッキー・ロークがそれほど深遠なキャラでないとバレる前だったからか、それともモノクロの映像が80年代の技術で美しく撮れているせいかしら。 尺が短めなのは大抵の場合歓迎なのだけど、この映画に関して言えばカリスマ兄の心を映すエピソードや飲んだくれの愛すべきデニス・ホッパー親父の話をもう二つ三つ入れてストーリーに厚みを持たせてくれれば傑作の域に入ったのでは、と思う。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-10-10 22:45:38) |
15. AKIRA(1988)
《ネタバレ》 わたしの知る(そんなに数は多くないけど)日本アニメの中で一番‶かっこいい”のが本作。 猥雑なネオ東京のブレードランナー味、狂気の度合い強めな暴走族、政治屋。一見無秩序な近未来都市を疾走する金田のバイクの鮮烈さ。 カオスで暴力的な社会にさらに暗い影を落とす圧倒的エネルギーの存在と、その中にあっても尚信じるに足る金田の熱さ。対照的に心に刺さる鉄雄の卑屈。 硬質で容赦無くて美しい。どこに連れていかれるのかどきどきした。 クール・ジャパンの代名詞のようなAKIRA。30年経ってもこのジャンルでAKIRAを超える作品をわたしは知らない。 空を切る真っ赤な金田のバイクを、わたしは本当に東京オリンピックの開会式で体感したかった。MIKIKO案が見たかった。 [ビデオ(邦画)] 8点(2023-10-06 23:19:31) |
16. キング・オブ・コメディ(1982)
《ネタバレ》 やあ、怖いですねえ。こんなに怖い話なのにライトなタッチで描けているのが驚異的。 もうデ・ニーロの顔が怖いもん。なんかぬめっと粘着質な顔つき。このしつこさ。ちょっとリアルにその辺にいそうでざわざわしますね。 ジェリー・ルイスの被る迷惑なこと、心からお察ししますよね。きっと現実でも経験あるんじゃなかろうかこのリアルな演技を見るに。 自分の才能を信じるのは良いとしても、なぜだかこの手の人たちは下積みをすっ飛ばそうとする。ライブで客の前に立って力試しをしようとせずに、ジェリーのようなトップにいきなり押しかけるんですな。 この話ではイカレた奴に珍しくも相方、それも女がいてこれがまた自分の思いばかり通そうとする完全なるストーカー。デ・ニーロとはまた別種の暴力タイプでげんなりします。もっともこの女の頭の悪さがコメディ感に一役買っているのですが。 ラストは呆気にとられたのだけど、どなたかがパプキンの妄想であると指摘していて目から鱗が落ちました。ううむなるほど。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-07-16 19:01:52) |
17. すてきな片想い
「りぼん」とか「別マ」に載ってたマンガみたい。片思いの甘酸っぱさ、賑やかな周囲と自信が無くて不器用なヒロイン像とか。もう王道すぎて話は至って平凡。 こういうのって読者が主人公にいかに共感できるか、が大事だったのです。モリー・リングウォルドという逸材を見出したジョン・ヒューズの慧眼には唸りますね。 一般の女子が共感するには美人すぎてはいけないし。ブロンド以外が望ましく、でも小顔でスタイルは均整がとれていて、ふくれっ面をキュートに演じられる。 「わたしでもモリーにならなれそう」このあたりの支持を獲得したモリー。大ブレイクしても、凄く洗練されもしなかったのがなんともいえず貴重で尊いのでした。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-05-22 20:34:23) |
18. ハンナとその姉妹
《ネタバレ》 大きな起伏も事件もないのにどうしてか見入ってしまうアレン作品。人間てこんなもんだよね大悪人ではないけど日常にちょこちょこ魔が差す時があるし、気持ちの揺れは自分でもどうにもならない。 次々やってみる仕事は上手く行かないし、良かれと思って一生懸命日常をこなしても嫌味だと言われる。人物らの経験する事柄がわかるわかる、となるには観る者もそれなりの人生経験が必要だったりするのだなアレン映画は。わたし自身二十代にこの映画を観たときはおじさんおばさんばかりのつまんない映画という感想を抱いたものでした。 アレン監督、本作では肝の小さい病気恐怖症の男を演って笑いを取ってますが、いやあまるで自分を見ているようでした・・。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-05-16 23:14:59) |
19. 北の橋
うん、分からん。現実と想像の入り乱れるドン・キホーテ型作品と聞いておいて良かったな。まともに取り組んですべての謎解きをラストに求めたら大怪我するところだった。 ジャック・リヴェットですから、‶分からない”ままでも良いんです。持ち味といいますかね。でも、かの「セリーヌとジュリー」のような「分からないなりの納得感」というのが乏しい。おいてけぼり感が半端ないです。 もっとも、パリの街は中心も郊外も雰囲気があって素敵でした。演じる二人の母娘女優もなんだかクセになるような魅力があります。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-04-21 23:15:24) |
20. 旅立ちの時
《ネタバレ》 親の支配から精神的な自立を遂げようとする18歳の苦悩といえば、かのジェームズ・ディーンを想起してしまう。今作のリバーは時代が進んだせいか随分と親に優しいです。ハッキリ言ってこの両親は毒親以外の何者でもないと思うけど。 ちょっとプロットが現実離れし過ぎている感があって、あまり彼らの切迫状況に共感できなかったなあ。 長男が普通に恋をして親離れを望んで、両親もそれを受け入れざるを得なくなる。それだけのお話でした。もう少し山場を作るなり、盛り上げてもらいたかった。けれど若きリバーフェニックスが、その輝きを永遠に留めた一本として記念碑的な意義があります。存命であったなら、どんな役者になっていたかな。弟のように迫力あるクセ強な中年になったでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-04-08 23:22:05) |