1. アメリカン・ビューティー
この作品は近年のアカデミー賞作品賞受賞作の中で、イングリッシュ・ペイシェントに並んで、ふさわしくないと捉えられそうな作品だと思う。しかしながらこの作品は適度に奥が深い。単純に言えば、大人向けの作品でありながら、若い感性も巧みに採り入れているし、死という重い結末を持ちながらも、作品全体はそうした結論を予感させながら、しかし重くなり過ぎていない。むしろ浮揚感さえ持ち得ている。この作品が受賞したのは、アメリカ人にとっての現実感が伴っているからなのであろうが、私にはくるまを高速で跳ばしている時に、百分の1で起き得る事故を許容できる様な気分になることへの共感に近い。歴史に残る傑作とは思わないが、CGを用いない作品で、時代を切り取り得た作品として、人々の記憶に残るものと考える。 9点(2003-06-17 23:59:28)(良:1票) |
2. アマデウス
フォアマンは人間を描くのがえらく巧い。カッコーの巣の上でも素晴らしいが、リアルに描かれ過ぎていて、繰り返し観るには辛く、悲し過ぎるので、この作品をNo1に選んだ。モーツァルトにある程度興味を持っている方には、この作品のストーリーにはちと無理があると感じられると思うが、そこはフォアマンの力量で、歴史をも変えてしまおうかという勢い。選曲も良く、それが説得力をもたらしている。 10点(2003-05-31 23:49:26) |
3. 8 1/2
フェリーニのこの作品と甘い生活の2作品の持つ都会性には圧倒される。さすがイタリアン。広げるだけ広げておいて、ラストはいったいどうするのかと思わせておいてあの大団円。その演劇的手法も見事。ハリウッド映画漬けの若い世代には退屈な部分もあるだろうが、映画を知るには欠かせない傑作。 10点(2003-05-31 23:33:19) |
4. ブレードランナー
この作品には本当に味わいがある。SF作品にこれだけ味わいを持たせることができるのは、スコット監督だけだろう。繰り返して観る度に新たな味わいを感じるのもすごいところ。ヴァンゲリスの音楽も、今聴いても新鮮。 9点(2003-05-31 23:15:29) |
5. 気狂いピエロ
ゴダール監督は余り好きではないが、この作品は評価せざる得ない。この作品が公開されて10年以上経過した時点以降に、この作品を始めて観た人は、世評ほど新鮮さを感じないと言われているが、それはその後世界中で撮られた映画が、この作品のまねをしている為、この作品がオリジナルだと知らない世代は、どこかで観た様な気がしてしまうのだ。とにかく色彩感覚だけでも圧倒的。 10点(2003-05-31 23:07:35) |
6. 日の名残り
アイヴォリー監督は独特の感性があって良いと思う。中でもこの作品は静かに描かれている点でNo1に挙げたい。ホプキンスの演技も最高。時代性があって、それが流転する作品に私は共通して弱い様だ。 8点(2003-05-31 22:55:49) |
7. マンハッタン
この作品はファンが多いでしょう。当然アカデミー賞受賞作のアニー・ホールの方が知名度が高いし、私もおもしろいと思うが、アレンのファンならこちらを選ぶと思う。この作品の最大の美点は都会性。2番目は少女に慰められてしまうという、男性が持つ脆弱性にあると思う。 9点(2003-05-31 22:46:48) |
8. レオン/完全版
グラン・ブルーが日本で初公開された時に観て、潜水シーンのゾクゾクする様な美しさと、ベッソン監督の新鮮な感覚に痛く感動し、職場の人間に推薦しまくったが、どうした訳か全くヒットせず、わずか3週間で上映打ち切りになったのが、その後1年半後位に再評価され、それ見たことかと、まるで自分が発掘した様な気分になれる唯一の監督。しかしながらグラン・ブルーは劇場で観ないと、しかもかなり大きなスクリーンでないと真価が発揮されないことと、いかんせんベッソン監督は未だ若かったので、完成度が低いことが難点。その後彼は世界へと旅立ち、かなりの作品を撮って来たが、私はこの作品が彼にとってちょうど良い様に思う。シリアスさと遊び心が巧くバランスされている点、特撮に頼っていない点、しっかり人間が描けている点を評価したい。 9点(2003-05-31 22:35:20) |
9. ベニスに死す
ビスコンティーの作品を全部観ている様なファンは、恐らく山猫をNo.1に挙げると思うが、私はこの作品を選びたい。ビスコンティー監督は余り幅のある監督とは思わないので、テーマは各作品間でそれ程差がないように感じている。山猫はそのテーマを重厚に描いているのに対し、この作品はそこに現代的センスが加わっていることを評価したい。特にカメラワークは、安定した構図を好むビスコンティーにしてはかなり動きを伴い、私は好き。 10点(2003-05-31 22:13:42) |
10. ゴッドファーザー PART Ⅱ
まずこのHPでは若い方の投稿が多い様なので、ゴッド・ファーザーを全く観たことがない方は、ゴッド・ファーザー1.2を経時的に編集した完全版をお勧めする。この2作を分離して評価するならば、私は完成度の高さでこちらを選択する。しかしながらゴッド・ファーザー1あっての2なのは否定できない。社会の敵マフィアにこれ程思い入れを抱かせてしまうコッポラ監督の手腕は見事。日本の山口組の在り方が彼等ファミリーと類似性が高いにも拘らず、コッポラの作品と日本のやくざ物がどうしてこんなに異なってしまうのか! この作品の成功はアルパチーノ、デニーロという個性的な2大スターを配し、ゴッド・ファーザー1での記憶が新しい処を利用し、一大叙事詩を形成しているところにある。またアメリカの歴史的背景を巧く織り込むことによって深みを増している。これだけの作品を撮ることのできたコッポラが、その後佳作に止まる作品しか創り上げることができなかったことは、ごく一部の例外を除いて、映画監督は、生涯で本当の傑作は1作ないしは2作しか撮ることができないという大原則論に当て嵌まってしまっているのが悲しい。 10点(2003-05-31 21:59:29) |
11. タクシードライバー(1976)
粒が揃った作品を、長年に亘りコンスタントに贈り続けてくれるスコセッシ監督は貴重な存在。今回敢えて10点の作品を一本に絞った結果、この作品に決定した。この作品は低予算映画で、無駄にフィルムを回すことができない為、全篇に於いて画コンテを描いた上で撮影に入ったと監督自身がインタビューで回顧している。その甲斐あって、非常にタイトな仕上がりとなっている。もちろんデニーロの存在があっての成功とは言えども、作曲家の選定等スコセッシのセンスが光っている。 10点(2003-05-30 20:14:17)(良:1票) |
12. 市民ケーン
謂わずと知れた名作中の名作。こんなすごい作品を20歳代で創り上げたオーソン・ウエールズが、その後通受けする作品しか残せなかったのは多分彼の意志ではないでしょう。色んな意味で素晴らしいが、敢えて挙げれば撮影の見事さ! 撮影技法は黒白フィルム時代に既に完成していたとの話を聞いたことがあるが、この作品を観れば納得行くはず。 10点(2003-05-30 19:57:41) |
13. 2001年宇宙の旅
繰り返し観ているが、最近やっと旧いかなと思える部分が出て来た程先進的なセットが最高。宇宙空間では音声は伝達しないという当たり前のことが実践されていることだけでも素晴らしい。作品の解釈についてはキューブリック監督自身が望んでいない様に考える。四半世紀以上が経過して、嘗てはこれだけ広がりがある作品が撮影できた(出資された)ことだけでも驚異的。 10点(2003-05-16 23:19:57) |
14. 七人の侍
人間が描けている作品は古くとも説得力があり、永遠とも思える力を持つとの原則論を代表する作品。個人的には人間が描けていない、描こうとしていない作品にも愛着を持つが(例えば2001年宇宙の旅)、この作品はほぼ完璧でしょう。 10点(2003-05-16 23:02:04) |
15. イングリッシュ・ペイシェント
公開時に友人の薦めで鑑賞。いたく感動し、VIDEO発売時に購入。その後4~5回観ているが、飽きが来ない。アカデミー作品賞受賞作品として観た人には納得できない要素があることは否定しないが、最高の作品です。 10点(2003-05-16 22:22:28) |
16. マウス・オブ・マッドネス
5年ぐらい前に深夜放送で見て、妙に強い印象が残ったこの映画のタイトルを探そうとネットで調べていて、ようやくここにたどりつきました。ばあさんが、じいさんを食べようとしていたところや、斧か何かもって走ってきた人の顔など印象的なカットがいくつかあった作品。サム・ニールでないと、この映画はまとまらなかったと思う。もう一度見ようと思う。 8点(2003-02-23 17:45:07) |