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レビュー情報
原作は(ラヴクラフトのあからさまな模倣が多く、あんまり感心しない)怪奇小説家ロバート・ブロックの同名小説。だが、ヒッチコック先生はプロットだけ拝借して独自のショック映像に昇華させている。映画の黄金時代が過ぎた後の低予算製作を逆手に取ったチープなモノクロ画面が本作の場合、秀逸な効果を生む結果となった。ヒロインの恐怖の表情と振り下ろす刃物と排水孔に流れ込む水の色の変化を矢継ぎ早にカットバックさせてゆくバスルーム惨殺シーンは正に圧巻の一語。凡庸で下品な監督ならグサッとモロに突き刺したり、血みどろのヌードでショックを煽ったりするのが関の山だったハズ。いくらカット割りを真似ても、オリジナルの足下にも及ばなかったガス・ヴァン・サント版は哀れですらある。本当に、こういうのは「センス」の問題であって、才能の差が明暗をクッキリ分けることを心底実感。当時のアンソニー・パーキンスは若干落ち目とはいえ、好青年のイメージが未だ根強かっただけにノーマン・ベイツ役で観客に与えたインパクトがいかに凄まじかったか、はチョット形容不可能。ギラギラ脂ぎってハナっからイッてしまっているヴィンス・ヴォーンでは到底敵わないのも当然である。ヒッチコックにとってベストとは個人的に全然思わないが、後のホラーやスリラーに与えた影響を併せて考えると傑作であることは間違い無い。
【へちょちょ】さん 8点(2003-01-05 11:32:26)(良:2票)
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