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《ネタバレ》 自然以外、何も無い片田舎の寂びれた風景は、現役を引退した彼の孤独な心象風景と重なり、その静謐な自然の景観と四季の移ろいは、そのまま人間の人生の盛衰を象徴している。そうした情景描写が抜群にうまい。
それにしても含蓄に富んだ、様々な解釈が出来る作品だと思う。本当に存在するかどうかも定かではない真犯人を追うことで、現役を退いたことによる心の空白を埋めようとした男の妄想なのか、それとも、正しい道筋に立っていながら運命のいたずらに翻弄され、人生を見失って行く男の物語なのか。 それらしい伏線も多い。カーニバルの途中で、第一発見者の少年と凝視し合うシーンは何を意味するのだろうか。ただ単に「あ、あの時の刑事さん」とか、「あ、あの時の少年」と思っていただけなのか。しかし、人間の意思疎通や認識の問題として、どこまでも相手の本音(すなわち客観的な真実)は分からない、ということの暗喩なのかも知れない。 私も最初は、このまま犯人を捕まえて、疑っていた皆が「やっぱり本当に犯人はいたんですね、疑ってごめんなさいm(_ _)m」という展開のハッピーエンドだろうと高を括っていたので、こういう現実の残酷さを突きつけられる展開には驚かされた。 努力や正しいことをしても、必ずしも報われるわけではないという、人生の真理の一部を説いた残酷な現代のおとぎ話。傑作。 【FSS】さん 9点(2004-09-05 17:05:05)(良:4票)
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