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《ネタバレ》 家族や土地に振り回され閉塞感に苛まれていた主人公が、ハウストマトへの情熱と結婚を機に自分の行き方を肯定していく様子が原作では丹念に描かれている。作中、主人公は次第に自分に気を使い始めた母を目にし、「自分の時代になっていると満夫は折にふれ感じるのだった」と語る。それは閉塞感からの解放であり、そしてその思いはクライマックスの祝言で極まっている。
実は原作では、祝言中にひっそりと死を迎えた祖母を前に「生まれてくること命を引換えに祖母は逝ったのだ」と考えるところにその思いが凝縮されている。ところが映画ではそのシーンはカットされ、代わりに友人に囲まれて新妻と2人「わたしの青い鳥」を歌うシーンが挿入されている。原作にほぼ忠実に作られた映画の中で唯一このシーンが大きく作り替えられているのは、おそらく祖母の死を背景にしたのでは、映像では主人公の思いを描ききれないと監督なり脚本家なりが感じたからだろう。そして作り替えの試みは成功し、「わたしの青い鳥」を涙ながらに歌う主人公の姿には、自分の時代がやってきたことを感じ、閉塞感から解放されたという思いが充分に表現されていると思う。 いかにも文藝作品調な冗長な映像と無駄に多いセックスシーン、そしてセンスの悪い中途半端な音楽など、今の時代にこの映画を鑑賞することの意味があるとは正直思えないが、原作に対する製作者の尊敬と理解に感心させられた、そんな映画。 【ぽん太】さん [DVD(邦画)] 5点(2006-06-03 17:08:07)
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