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《ネタバレ》 長年うろ覚えでしかなかった名作をちゃんと観直してみました。おおこれはたしかに名作だ。そして後の派手な大作群とはまったく違う、とても地味で心のこもった丁寧な作品。
まず若いスタローンが美しい。まるでギリシア彫刻のようで、それがしゃべるとまったく学のない粗野な、しかし根は悪くなさげなイタリア移民の若者そのものになる。もしこの映画がスタローン自身の企画だと知らなかったらよくこんな役者を見つけてこられたなと思うところだ。そして物語も当時の売れない俳優スタローンの境遇をなぞる。 初代『ロッキー』のロッキーは大した才能もなく、さらにはやる気すらなく底辺の生活に甘んじている、ただ友人の妹の地味ぃ~な店員に恋するだけの若者。ミッキーは名伯楽どころか罵詈雑言ばかり吐き捨て、あげくビッグマッチが転がり込んでくると手のひらを返してすり寄ってくる。その「ビッグマッチ」の相手、アポロはボクサーとして完璧なら頭も切れて茶目っ気がありプロモーターの才もある。ロッキーを指名してしまったのはうかつだったが、彼に落ち度はない。 この映画には悪役はいない。そしてロッキーもエイドリアンも無名のセコンド陣もみんな本物。その本物が織りなす重苦しさの中でバート・ヤング演じるポーリーが唯一「上手い俳優」っぽさで軽やかな風を吹かせてくれる。そういう奇蹟のバランスで成り立っている。仮にもし『ロッキー』1作で終わっていたらこの映画自体の価値はさらに高いものになっていたかもしれない。ただそうならなかったことでロッキーはただの名作映画の地位に収まらずあらゆるカルチャーに影響を与えていく存在になった気がする。 【tubird】さん [インターネット(字幕)] 9点(2019-08-18 21:53:27)(良:3票)
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