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キューブリックは難しい。この作品の背景も意図もよく分からない。とても素人考えな解釈だけれど、オレンジは有機的で不安定で腐敗しやすいもの、つまりは人間と暴力のメタファーで、時計は無機的で硬質で正確なもの、つまりは規律や規範や管理や束縛のそれなのだろうか、と思った。時計を仕掛けられたオレンジ。その無理なコントロールはいつしか両者に破綻をもたらす。時計はオレンジの酸で侵食され、オレンジは静かに腐って行く。そう見受けた。この作品には、その「オレンジ」にも「時計」にも凶悪で不愉快なほどの暴力を感じる。キューブリックの確信犯的な企み、高尚で硬質で無機的な「キューブリックの暴力」。計算された暴力、キューブリックの私室の中の整頓された暴力。その部屋の椅子に座り、1人ほくそ笑んでこっちを見ている彼の姿が浮かぶようだ。とことん観客を高みから見下ろす監督だと思う。あと、全くの蛇足だけれど、ある友人が、私が下睫毛にもマスカラをバリバリに塗っているのを見る度にこの作品を思い出すらしい。確かにあのアレックスの目元は印象的。
【ひのと】さん 9点(2004-01-24 15:01:39)(良:4票)
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