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おんぼろバスの窓の外を流れてゆく、のどかな夏の甲州の景色(これが昭和16年制作の映画だなんて)。ニワトリを追いかける下駄履きの車掌さん。「要求というほどのことじゃないんですが、ちょっと要求したいことがあるんです」(笑)の運転手。露天風呂でばた足している作家先生。みなその真面目さや一所懸命さが、可愛らしくてどこか可笑しい。高峰秀子はまだ表情もしゃべり方も初々しくて、ラジオの名所案内に聴きいる姿など、少女らしくて微笑ましい。終り方は「流れる」に共通するものがありますが、こちらはヒロインが若く堅気でもあるせいか、さわやかでほろ苦いラムネのような後味の映画になっています。原作は「少女の友」という雑誌に連載された井伏鱒二の短編小説「おこまさん」。運転手の「要求」のセリフなどは原作そのままですが、「フランス映画のにんじんて子に似て、、、」というセリフは原作にはなかったので、成瀬監督のオリジナルなのでしょうね。大好きな作品です。
【あまみ】さん 10点(2005-03-06 00:04:02)(良:1票)
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