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《ネタバレ》 実のところは相当ヤバげなハナシなのである。絶対悪のなくなった社会で、セッセと「絶対善」を追求する刑事たち。そうでなければならないように、入念にシナリオが組まれているので、刑事達と一緒に犯人追求の醍醐味を味わえる訳だが、最後の犯人対面シーンでその醍醐味がドカーンとブチ壊れてしまう。山崎務の迫真の演技で、映画自体の存在価値がひっくり返ってしまうのだ。このラストでは天国と地獄が絵的にキッパリ分かれているが、地獄の方に漂いまくるリアルな不条理が、見る者の心を捉えて離さない。ごく普通の生活から、普段目にする些細な風景によって人生を狂わせて行く犯人の姿。この映画で徹底して貫かれてきた「社会正義」はここでものの見事に崩れ去って、日常生活に漂う不安がシュールに浮かび上がって来る仕掛け。悪への同情はなく、悪への憐れみがある映画だ(そしてこの作品への徹底したアンチテーゼとして天藤真・岡本喜八の『大誘拐』がクリアに浮かび上がって来る)。
【エスねこ】さん 7点(2004-05-30 03:37:47)
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