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アクションというより、むしろサスペンス、ホラーとして観たほうがいい。この映画最大の特徴は、不気味すぎる敵役の造型にある。平凡な家庭を営む善良な一般人のような顔をして、地味な、しかし冷酷な犯罪に手を染める。動機は単純にお金。生活費の足しにでもするつもりか、大それた目的はない。なんというか、淡々と仕事をするように、平然と残酷なことをするのだ。普通の人の仮面を被りつつも、まったく良心というものがない。貴志祐介の『黒い家』を思わせる、異様な犯人像だ。 ストーリーは運のない主人公が犯罪に巻き込まれ、孤立無援の窮地に追い込まれるという一見『ダイハード』的な流れ。だが圧倒的不利をどのように挽回するかという娯楽的な面で孤立を描く『ダイハード』に対し、こちらはひたすら恐怖を煽る。助けはどこにもなく、主人公は刑事でもなんでもないごく平凡な男。いつ殺されてもおかしくない状況下で、針の穴を通すようにぎりぎりで危機を乗り越えていく。おまけにとことん地味で、リアルである。 『ジョーズ』公開の翌年には海水浴客が減ったそうだが、この映画を観た後ではアメリカの片田舎を自動車旅行する気にはなれない。荒れ果てた広大な土地に、だだっ広い道路が一本だけ。助けを求めても誰にも届かないのだ。 アクションの棚ではなくサスペンスの棚にあったならもう少し注目されていたであろう、秀作。
【no one】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-11-08 13:53:45)(良:2票)
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