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少々長くなりますが、吹奏楽部(以下「ブラバン」と略)を経験し、その後もいくつかの楽器を経験し、音楽に対して割とクソ真面目なタイプの人間からの感想を・・・まず、ブラバンにおける象徴的な苦悩が一切描かれていないのが×。「そんな難しいことは言わずに気楽に観れば?リアルなブラバンを表現したかったわけじゃなくて、題材を拝借しただけなんだから。」と制作者側は言うのだろうけど、これはあまりにもヒドイ。そもそも管楽器というのは「歌」に似ていて、激しい音程の変化や極端な高音・低音を出すこと自体が難しく、ピアノならその音に対応した鍵盤を叩けばいいだけのことが管楽器では至難の業だったりするのです。だから、ブラバンで日常的に繰り広げられる光景、顧問やキャプテンに幾度となく言われる言葉・・”出せない音があるなら全体練習には来るな。そんなのは個人練習でやってこい。”・・・そして、悔し涙をこらえてひとり、校舎の片隅でその音が出せるようになるまでマウスピースを持って自分の唇と格闘・・・っていうシーンが全くないというのはあまりにもリアリティに欠けている。それこそ戦争映画で一滴の血も見せないほど非現実的だと思う。そして私を最も呆然とさせたのはスーパーマーケットの前?での路上ライブのシーン。鍵盤楽器や弦楽器は音楽理論を学び、自分の指の動きや押さえるべき鍵盤の位置を視覚的にとらえてさえいれば「音」そのものを理解できていなくても何とかアドリブでの演奏が出来てしまうものなのですが、管楽器だけはそうはいかない。鍵盤楽器、弦楽器、打楽器、管楽器の中でアドリブ演奏が最も難しいのは管楽器なのです。それなのに、たまたま遭遇した場所で、しかもいったんは離脱し、かなりの期間練習をしていなかった高校生たちが集合してセッション・・・絶対にありえません(笑)。メンバー全員がよほどの天才でもないかぎり。・・・なんでこういう意地悪なツッコミをするのかと言うと、楽器経験者、ブラバン経験者なんて世の中に腐るほどいるでしょ?この映画のように「音楽」をかる~く描いている、もしくは何かを描くための材料として利用しているっていう部分に対して嫌悪感を抱く人も結構いるんじゃないかと思ったものですから・・・。
【長毛】さん [地上波(字幕)] 2点(2006-06-18 01:27:53)(良:5票)
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