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「脱獄もの」では、脱獄に正当性を感じさせるようなエピソードを付け加えたくなります。何故なら普通は「脱獄=悪いこと」だから。観客が物語に感情移入するためには、脱獄に“納得できる理由”があった方がいい。でも本作にその理由付けはありません。ここで活きてくるのが主演のイーストウッドの存在です。今までの出演作品の役柄から、イーストウッドにはワイルドさと正義のイメージがあります。観客は彼から犯罪者としてのワイルドさを感じると共に、根拠のない“正義”も勝手に感じ取ります。これが“納得できる理由”の代わりに感情移入の手助けになるのです。まさにベストキャスティング。だから脱獄の理由を省略できた。ただ単に脱獄でよかったわけです。そこに山があるから登るがごとく、そこが監獄だから脱獄する。ドラマ性を極力抑えた結果、脱獄そのものに焦点を当てることに成功しています。脱獄までの道程は遠足前の準備の時の気持ちに似ています。さらに脱獄のための準備が進めば進むほど、増して行く緊張感。脱獄ものというジャンルのひとつの完成型が本作だと思います。
【目隠シスト】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2006-07-21 18:13:02)(良:3票)
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