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《ネタバレ》 見事なダメ人間。清々しいい程のクズ人間。全くブレない貫多に釘づけでした。彼の行動原理の根底にあるのは“諦め”だったと思います。犯罪者の息子。家族崩壊。刹那の快楽にしか価値を見いだせない。そんな主人公が唯一“将来”を語るシーンがあります。それは作家になること。でも漠然と思いを口にするだけでは意味がありません。寝てみる夢と変わらない。しかしTVの中で歌うかつての同僚や、友人達の幻を目の前にして、彼の中の何かが弾けました。夢を口にしてから、実に3年後。“夢への一歩”と呼ぶのも烏滸がましい最初の半歩。希望と言うにはあまりに儚い種火。でも貫多は初めて目的を持って動き出しました。その試みは徒労に終わる可能性大でしょう。努力は日々の鍛錬。怠惰な生活に慣れた体が、いきなり努力を受け付けるはずがありません。でも、だからと言って彼を蔑むのは間違いです。努力する人間を笑う権利など誰にもありません。それに貫多はまだ22歳。若さという武器は何物にも代え難いのですから。森山未來の演技は完璧でした。完璧過ぎて今後の仕事に影響が出ないかと心配になるくらい。マキタスポーツも如何なく持ち味を発揮してくれました。高良も雰囲気抜群。前田はオイシイ役を手堅く演じました。ナイスヘッドバッド賞。キャストは文句なく100点でしょう。描写も気に入りました。前田の手舐めや猿真似強要など一見意味不明な場面も、しっかりテーマに繋がっています。砂浜の落とし穴からゴミ捨て場直行シーンは、小説では描けない映画ならではの場面転換。思わず唸りました。その後、貫太の表情を一切映さなかったのも大正解。余計な情報は要りません。貫多の背中だけでいい。観客の想像力を信用した優れた演出でした。役者の熱演と監督の手腕。両方揃っている映画が、面白くないワケがありません。
【目隠シスト】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-06-22 17:56:45)(良:1票)
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