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《ネタバレ》 原作漫画『100日後に死ぬワニ』のことは、伊集院光氏のラジオ経由で情報を入手しました。伊集院氏も指摘するようにこの漫画がウケたのは偏に「100日後に死ぬ」という枕詞が秀逸な発明であったからと考えます。何気ない台詞や行動のひとつ一つに自動的に深みが与えられました。タイムリミットの設定が絶妙だったのでしょう。先過ぎず、近過ぎず。普段は忘れていられる。でも意識から消えることはない。私たちが漠然と抱いている「死」の姿を100日後というゴールを明確にすることで浮き彫りにしました。映画ではタイトルが『100日間生きたワニ』に変更されています。『100日後に死ぬ』と『100日間生きた』では日本語的に意味が異なりますが、『死』という言葉が殊更センシティブに捉えられていたコロナ時世を考慮した苦肉の策だったと思われます。
前置きが長くなりました。感想に入ります。まず驚いたのは原作(実はあまり読んでいませんが)に映画オリジナルパートが多く追加されていたこと。その分量実に半分!物語後半は完全オリジナル「ワニ君が死んでから100日後」のエピソードでした。原作のある映画は余計な手直しを嫌うものですが、本作については改変部分に価値があったと考えます。というより、映画オリジナルエピソードは原作の続編であり、この映画のメインパートでした。ワニ君が居なくなっても、世界は続いていく。残された者に焦点を当てた主役不在のドラマには、喪失感を乗り越えることの大切さが描かれていました。タイトルは、死んでなお皆の心の中で『100日間生きたワニ』という意味だったのかもしれません。故人のことはきちんと忘れて今を大切に生きよう。少し寂しい気もしますが、ずっと立ち止まってもいられません。ふとした時に思い出せば、それで充分な供養。またいつの日かワニ君には会えるのですから。 原作終了直後から始まった商業路線が世間から批判を浴び、本作品も興行的に振るわなかったとお聞きしました。しかし原作の『100日後に死ぬワニ』を愛していた方ならば、この映画で描かれた後日談の中に希望を見いだせる気がします。 【目隠シスト】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-05-19 19:42:21)
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