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《ネタバレ》 三人の仲間はすっかり大きなお友達になってしまったが、放課後に「ムー」を囲んでギャーギャーと探偵団を作っていたあの頃と脳内年齢はあまり変わっていなかった。免許を取り立てだった僕は海岸から黒い車を北に繰り出して、厚木基地に向かった。タッチアンドゴーを懸命にこなすF/A18には興味は無く、米軍がエイリアンと共同で作り出した未知のテクノロジーが詰め込まれたUFOを追っているのだった。
もし米軍に見つかって黒い服の男達に記憶をけされたらどうするかとか、サングラスを必ず持って行った方が良いだとか、頭の痛いお兄さん達である事は間違いないのだが本人達は知ってか知らずか、いや分かっているけどやめられないのだが、とりあえずは真夏の夜中にキャンプ座間の付近で落ち合う事にした。 この日中、猫を探して欲しいとか何とか言う幼なじみの言う事に付き合って、町内の隅々までニャーニャー言いながら二人練り歩いたのだが、その夜の計画を彼女に打ち明けると思う様腹を抱えて笑う彼女に、 「バーカバーカ、絶対やばいんだからな。いつか誘拐されるぞ」 とか半ばそんなはずは無いだろうという事を言い放ったり、馬鹿馬鹿しい話をした。 そうなんだ、僕も僕の仲間も彼女もとっくに宇宙人なんか信じていなかったのだけれど、何となくモラトリアムの中で楽しい記憶にすがっていたかった。そんな最後の子供の頃だった。 この夜、僕らは日本からはもうグレイを使った実験は引き上げているだとか、新型の飛行物体が厚木に埋まっているだのファミレスで話し合いながら夜更けを過ごした。到来して間もなかったインターネット社会はこの後容赦なくステルス戦闘機の存在を誰でも調べられる日常にしてしまったし、UFOなんていないと言う事もしぶしぶながら受け入れさせてしまう事になる。だけど、世紀末のあの空気は21世紀の今ではもう触れる事の出来ない宝物だった。 数年後、ふとあの頃の事を思い出して見たメンインブラック2はドットコムバブルの残滓のような映画だった。世紀末の異世界も新しい世界観を作り出す事も無く、単なる題材だけ借りた映画だった。だけど、一種のノスタルジーを僕に喚起させたのも本当の事だったりして、華やかな雰囲気が妙に寒々しく感じられたりもするのだった。 【黒猫クック】さん [映画館(字幕)] 5点(2013-01-07 03:24:44)
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