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暗い森を抜ける道で、ふと惑う。この道は果たして向かう場所につながっているのだろうか。地方都市で高速道路を降りて、近道をしようと山道に入る。入念に下調べをしたつもりだったが、その道筋ではなくふと記憶に残っていた筋を選んだ。記憶の脇の方にブラブラと垂れ下がっていたそれを何となく選んだのは、ちょっとした冒険心だったのだが良くなかった。
正解の道筋でさえ数時間かかる道と大差ない程度の近道だったその山道は、暗く曲がりくねっていて木の枝がちらほらと落ちてさえいたが、幸い舗装はされていた。 分岐する小道は時折現れ、もしかして今、曲がるべきだったのではと考えるとハンドルが湿ってくるのだった。 当然の如くガソリンスタンドなどはなく、コンビニも民家もない。もしガソリンがなくなったらと冷や汗をかくが、メーターを観て安心する。 20世紀末に都内から地方都市に向かってこれだ。半世紀前に日本からサンフランシスコに向かうなどと言う大冒険の恐ろしさはただ事ではなかっただろう。劇中で起こったトラブルなど実際はその程度の恐怖感ではなかったはずだ。何しろ木造のヨットで62年に太平洋横断である。敬意を表するどころの話ではない。 私などは、夜遅くになって着いてみれば予定時刻より10分前にきっちりと目標を達せていた。漂流した気分になっているだけで、国交省の敷いたインフラを利用していたに過ぎないのであった。 今、もう一度同じ道を同じ時間に走ったとしても、何の恐怖もない。全く道が分からなくても、風景が同じでもだ。ナビがきっちり目的地まで連れて行ってくれる。 【黒猫クック】さん [地上波(邦画)] 7点(2012-10-20 14:34:32)
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