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《ネタバレ》 横道から入りますが、米国兵士が戦場で敵兵と鉢合わせした際に銃の引き金を引く割合を語っている小説がありました。二次大戦では20%(低い!)。たとえ戦場でも、目の前の人を殺せる者は少ないってことです。それがベトナム戦争では95%に跳ね上がる。二次大戦の引き金率の低さを問題視した軍部が、改善(?)策を施したからです。前々から、ベトナム戦の兵士のPTSDを扱った映画はたくさんあるが、二次大戦には無いことが不思議でした。二次大戦の兵士がPTSDに罹らなかったと云うより、ベトナム戦の兵士に特筆されるほど多かったからでしょうが、本作の前半の描写がその疑問への回答です。戦闘マシ―ンの養成パート。内実は人格を奪うことです。出兵する前に、すでに心的外傷の因子を充分に植え付けられている。後半はその戦闘マシーンが実戦に配備されると何が起こるかの証明パート。引き金率の高さは勿論ですが、それ以外にも色々な異常が見られます。まず、言ってることがみんな変。前線にまともな会話はありません。ヘリから無差別にベトナム市民を銃撃する兵士を誰も咎めない。そして、あの少女狙撃兵ひとりを殺す為に何発の銃弾を使ったのだろう。1000発? 1万発? 散った命を含めて戦闘が極めて非効率です。戦果を実感できない戦闘に戦争の大義が失われて行く。キューブリックなりに演出されたドライな映像が、概念的な意味性を排除して愚かしいことをそのまま愚かしく見せる。心を蝕まれた兵士の後日談ではなく、「完全徹甲弾」になった兵士たちの戦場での「不経済」が描かれる。面白いかどうかは別にして、ベトナム戦を扱った映画の中では最も実像に迫っているのではないだろうか。
【アンドレ・タカシ】さん [映画館(字幕)] 7点(2012-01-07 05:37:13)(良:2票)
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