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《ネタバレ》 隠れた名作ではある。コロンボ作品の見せ場である犯人への効果的なほのめかしがこの作品ほど執拗に効果的に繰り返されるのは他にはないと思う。ラストの悪どさも実は「ロンドンの傘」並の反則で、またこれが見事に決まってしまう……んだが、どうも何か一つ二つ物足りない。なぜだろう? 「犯人が憎たらしい奴なのにコロンボと激しくやりあわない」ことがその大きな原因になっていると思う。犯人が探偵で、警察と平行して事件の捜査にあたるという設定上、コロンボが事件についてネチネチ持ち出してくることを犯人は正面から突っぱねることができない(それどころかコロンボを自分の社に高給で迎え入れるとまで言い出す)。つまり犯人が他の作品のようにブチ切れないのだ。もちろん犯人が比較的温厚・冷静な作品の場合ブチ切れることはないが、それはそういう性格だから納得できるのに比べてこの作品の犯人は「カッときて殺した」ほどの短気な性格なので派手にブチ切れていいのに、設定上それができないところに物足りなさが出てくる。だからコロンボはやりたい放題だ。「犯人に聞かせてやりたい……必死に証拠品を探すところを見て笑ってやりたい」というコロンボの言葉通りにありもしないコンタクトレンズを探して「指輪すら見つかりそうにない」ふかふかの絨毯を徹底的に調べるところなど、犯人に憐れみすら感じられないだろうか。ただ被害者の夫がそれなりの立場の人物で「迷宮入りしたら容赦しない」とまで言っているのでこの方面からコロンボに圧力がかかればまだ不満が解消されるのだが、大して文句を言うでもなく墓の場面では犯人に比べてコロンボに明らかに軍配を上げてしまうのも「コロンボ楽勝」に傾いてしまう原因になっている。「憎ったらしい」犯人の話の場合、コロンボは犯人から罵声を浴びせられ、嫌がられ、時には理不尽な圧力をかけられながらもそれを見事に跳ね返してしまうのが面白いのであって、それあるからこそラストのトリックも「してやったり」となるのだが、この作品はコロンボに余裕がありすぎる。それが物足りなさにつながってしまうのだろう。逮捕された後の「殺すつもりはなかった。奧さんはいい人だった」も、むしろ犯人に対して「ふーん。そんなに悪すぎる奴でもないんだな」という印象を持たせてしまうのでさらに逆効果だと思う。
【空耳】さん [DVD(吹替)] 6点(2009-03-17 03:21:41)
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