ライムライト の 空耳 さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > ラ行
 > ライムライト
 > 空耳さんのレビュー
ライムライト の 空耳 さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 ライムライト
製作国
上映時間137分
ジャンルドラマ,コメディ,モノクロ映画,音楽もの,ロマンス
レビュー情報
《ネタバレ》 全編を流れるのは老いがもたらす悲哀である。かつてどんなに勢力を誇っても、老いからくる衰えはどうしようもない。必死で過去の栄光を取り戻そうとする主人公の芸人がチャップリン本人と重なって見えるのも自然なことだと思う。
が、考えてみると不思議だ。普通の老人ならともかく、チャップリンは世界の喜劇王ではないか。確かにアメリカを追放されるなど困難な時もあったが、それで没落して死んだわけではなし、金銭的にも名声も人からうらやましがられることはあっても、他人をうらやむ必要はない。悲嘆にくれる必要はないのだ。それにカルベロは年の若いヒロインとの結婚を最後まで拒絶して死んでいくが、チャップリン本人は何度も結婚・離婚を繰り返し、最後の妻は30歳ほども年下であった。だから同じ芸人でもカルベロはチャップリンとは似ても似つかないとすら言えるのである。
これはひょっとすると「仮定」なのかもしれない。現実のチャップリンは大成功をおさめ、世界の喜劇王となった。だがもし芸人として名前がそこそこ売れても、それだけだったとしたら……? 
成功した途端周囲を見下し馬鹿にする人間がいる一方で、どんなに出世しても苦しく貧しかったときのことを忘れないという人もいる。現実のチャップリンと劇中のカルベロは正反対の境遇にあるが、チャップリンが重なって見えるのはチャップリンがもちろん後者に属していたからだろう。
本作でもっとも感動的な場面はヒロインが歩けるようになる場面である。もうとっくに怪我自体は治っているが、ヒロインには歩くだけの勇気がない。カルベロがいかに励まそうと心を閉ざしてしまっている。だが、あるときカルベロが珍しく失意のどん底に落ち、ヒロインは彼を何とか励まそうとする。いつもの役割が逆になるわけだ。そして心から相手を励まそうとしたときに、自分でも思いもしない力がわき出て、ふと気がつかないうちに歩けるようになる。もっとも力強い勇気は他人を思いやることによって生まれるものなのだと教えているのである。「I'm walking!!!!」の絶叫とともにこの場面は忘れられない。
空耳さん [地上波(字幕)] 10点(2008-08-24 14:49:18)(良:1票)
空耳 さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2024-02-04アウトブレイク4レビュー6.39点
2024-02-01M3GAN ミーガン9レビュー6.48点
2023-09-16オリエント急行殺人事件(2017)5レビュー5.95点
2023-08-25ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬7レビュー5.96点
2023-08-21エスター ファースト・キル6レビュー6.00点
2022-11-19シン・ウルトラマン5レビュー6.31点
2022-09-29カウントダウン(2019)3レビュー5.28点
2022-09-28グリーンランド -地球最後の2日間-3レビュー5.05点
2022-09-10千と千尋の神隠し2レビュー6.41点
2022-09-10アース9レビュー5.91点
ライムライトのレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS