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《ネタバレ》 2001年から2011年までの10年間、アメリカはイラク戦争と対テロ戦争によって疲弊していった。キャスリン・ビグロー監督は前作『ハート・ロッカー』でイラク戦争によりアメリカが正義を喪失していく様を描いたが、最後にはどん底の中の希望を見せて終わった。しかしこの映画はそんな一縷の希望すら与えていなかった様に感じます。
主人公のマヤは序盤ではCIA内で行われる拷問に目を背けていましたが、徐々に徐々にテロとの戦争に疲弊し神経をすり減らし、最終的にはビン・ラディンを殺すことを第一優先とするようになる。これは10年間に同じく消耗していったアメリカを象徴しているのでしょう。そして最後に大きな輸送機にひとりポツンと座り一筋の涙を流すマヤは、9.11の報復というには余りにも大きな犠牲を払ってしまったアメリカそのものの様に見えました。そんな国を体現するかのような難しい役柄を演じたジェシカ・チャスティンは素晴らしい演技だったと思います。 ビン・ラディンの暗殺は対テロ戦争において一応の節目となった。それでも今なおテロは世界各所で続いている。クライマックスの途轍もない臨場感で描かれる突入作戦で、両親を目の前で殺された子どもたちが描かれますが、彼らが新たなテロの芽となっているのかも知れません。 2005年から2008年にかけてはアルカイダのテロ活動が特に活発になった年だったと強く記憶しています。イギリスのダブルデッカーが粉々に爆破され、欧米人が滞在するホテルは片っ端から自爆テロの標的にされた。新聞の国際面には毎日の様にアルカイダによるテロの記事が載り、無関係の命まで容赦なく奪うテロという行為に暗澹たる気持ちになった。その時の恐怖を本当にリアルに思い出さされた作品でした。正直観ていて自爆テロのシーンは神経に応えまくったし、もう二度と観たいとは思えませんが観るべき作品だったとは強く感じます。 【民朗】さん [映画館(字幕)] 9点(2013-03-11 23:21:42)
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