かぐや姫の物語 の 民朗 さんのクチコミ・感想

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かぐや姫の物語 の 民朗 さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 かぐや姫の物語
製作国
上映時間137分
劇場公開日 2013-11-23
ジャンルファンタジー,時代劇,アニメ,小説の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》 アニメーション、ストーリー、共に素晴らしい作品だと思います。まずアニメーションですが、本作ではかぐや姫が泣きじゃくるシーンが二回ある。一回目は赤ん坊の頃で、二回目は月に帰りたくない心の丈をブチまける場面。姫は思い切り顔を崩して泣きじゃくる。その顔はとても写実的です。しかしその前後の例えば目の間に垂れてきた蜘蛛を寄り目で見つめるシーンや、成長した後の姫はとても漫画的な可愛らしさに満ちている。しかも背景は中国画に良く見られるような抽象的な画です。その写実的表現と漫画的表現、抽象的表現が完全に違和感無く同居している。見せ場でもあろう姫が宴を飛び出し野を駆けるシーンの疾走感も素晴らしかった。
ストーリーも申し分無いものでした。『竹取物語』は元来月の住人である姫と周囲の人間を通して、当時の貴族社会を風刺した作品なのですが、その"身分の差"という点も十分に描きながら、姫を主役にすることでオリジナリティも十分に感じられるものとなっています。新たに付け加えられた要素は"自由"について、もっと限定して言えば"生命賛歌"でしょう。月からの使者の容姿から容易に想像できるとおり、月の世界は謂わば極楽浄土です。老いもなければ苦しみもない。しかし姫は生や死が蔓延る地球に憧れて、罪人としてその地に落とされた。姫は帝から逃げ出す際に月に迎えの信号を発してしまいますが、 捨丸と再会して気づいたことはやっぱり生や死がある世界の方が素晴らしいということ。それは宮内で貴族的生活に辟易していた姫自身も反映している。そして観客も同時に気付いてしまうのではないでしょうか。「辛かったり、楽しかったり、生きたり、死んだりするから人生なんだ」ということに。何故なら誰でも"ここではないどこか"を目指して生きているのだから。現状がどれだけ肉体的にも精神的にも満たされているからと言って、そこに甘んじている事は本当の生の実感には繋がらないでしょう。監督は「今日性があるのかは分からない」とコメントしていますが、人が自由を求める限りいつの時代にも通じるテーマだと思います。
まさか『竹取物語』から話の大筋を変えずにこれだけ深いテーマに到達する作品とは思っていませんでした。
民朗さん [映画館(邦画)] 9点(2013-11-28 02:07:46)(良:1票)
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投稿日付邦題コメント平均点
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