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《ネタバレ》 所謂、ゲイ&レズビアン・フィルムの一本と言っていいでしょう。それらの過去の映画と大きく異なるのは主人公がテキサスの生粋のホモフォーブなこと。ロデオに興じ、避妊はせず、強烈に同性愛者を口汚く攻撃する、ステレオタイプのカウボーイと考えていいと思います。また、その最低な主人公を演じるマシュー・マコノヒーの演技が素晴らしく、彼の振る舞いから目が離せなくなる。しかし、一見すると過去の映画に良くある生き急ぐ破天荒な人間を描いた映画に見えますが、そうではない。
彼は一般的な人々の無意識にでも持っている感情を非常に鋭角化したキャラクターなのだと思います。HIVに感染していると告げられた時に彼は「でまかせを言うな!そんなわけあるか!」と激昂し病院を飛び出しますが、数日後には「やっぱり感染してるのかな……」と不安になり病院に顔を出す。AZTを手にする手段も失い宣告された余命が間近に迫ると泣き喚く。彼はとても人間臭いのです。だから彼は私たち観客そのものと考えるのが正しいと思います。彼の持つホモフォビアもそうで、誰しもある種の偏見は必ず持っている。ゲイ・レズビアン、ユダヤ人、黒人、中国人、韓国人、朝鮮人、被差別部落民、etc...、ある作家が書いていましたが、現在の世の中は「ユダヤ人や黒人は差別してはいけません」と規定しているに過ぎない。誰にも差別意識は確実に存在する。 そんな主人公がビジネス・パートナーであるトランスジェンダーのレイヨンの為にスーパーマーケットで激昂するシーン、レイヨンと遂に友人として抱擁するシーン、薬を求める同性愛者たちのために車を売り払って薬を都合するシーン、最後に同性愛者たちに拍手で迎えられるシーン、それらが如何に偏見を氷解させるカタルシスに満ちていることか。 ラストカットで暴れ牛に跨るロンの姿は非常に印象的且つ象徴的です。振り落とされればタダでは済まず、端から見れば単に生き急いているだけの行為に見えるロデオ。しかし彼のそんな生き様は無駄であったか?間違いなく否である。 決して派手な映画ではないですが、静かなカタルシスを感じられる素晴らしい映画だったと思います。 【民朗】さん [映画館(字幕)] 9点(2014-05-04 08:46:54)(良:3票)
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