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《ネタバレ》 エコや勧善懲悪な話が多いジブリから突然生まれた宮崎監督の実質的引退作品。今までナウシカやラピュタで魅力的な悪役や自然保護を繰り返し観客に提示してきた宮崎映画としては若干異色の作品となっている。本作は「これは善、これは悪」として物語を単純化していない。一応観客は自然をもののけ達から奪う人間を悪として解釈できますが、実は決して人間が一方的に悪としては描かれている訳ではない。エボシ御前はシシ神の森を奪う侵略者だが、エボシは無闇に森を切り崩している訳では無く、身売りにされた娘達や当時人として扱われていなかった業病の患者達、そしてタタラ場を守る為に木を切っているにすぎない。タタラ場にすむ者達からすればエボシは生涯の救世主に違いない。彼女は人間の残酷さを併せ持った聖母なのだ。
つまり両者ともに"守る"為に戦っている。人間はタタラ場を、もののけはシシ神の森を。そこに明確な善と悪の境が無いからこそ観客はこの映画を観た後も迷ってしまう。非常に考えるのが辛い問題を直に投げかけてくる。現代でも環境破壊問題が良く取り上げられるが、別に誰も地球が嫌いで木を切っている訳ではない。それでも地球を破壊する人間が100%悪いと言えるのか。 宮崎監督が今までの勧善懲悪のスタイルを大きく変えたのには意味がある。今の映画界に溢れている、「正義が勝つ、悪は滅びる」という観た後に何も残らない様な映画と、観客に決して解ける事の無い「問い」を投げかける映画と、どちらが価値のある映画と言えるだろう。私は後者の「もののけ姫」の様な映画にこそ価値を感じる。 【民朗】さん [DVD(邦画)] 10点(2008-08-06 16:43:08)(良:4票)
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