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《ネタバレ》 『新・平家物語』といいましても保元の乱以前の『ザ・レイズ・オブ・平家』とも言うべき清盛の青春時代が描かれていると言って間違いはない映画です。何故に?と申しますとこれは大映が平家物語三部作として企画した第一作で、溝口健二は他の二作には関わっていない、というか本作が溝口のラス前作で予定はあったのかもしれないがすでに彼はこの世にはいなかったというわけです。また、二本しかないカラー撮影作品の一本でもあります。 主演の雷蔵は映画デビューして二年目、世評では雷蔵は本作で演技開花したとされています。とはいっても、まず若人あきらかイモトアヤコかというぐらいの強烈なインパクトのある眉毛メイクに、眼が釘付けになっちゃいますよね。時代考証にうるさい溝口だけど、これにはなんか拘りがあるのかと訝しむばかりです。平清盛というと『平家物語』のせいでどうしても傲慢な悪役イメージがつきまといますが、考えてみれば公家政治を終わらせて武士の時代を切り拓いた人、織田信長の吉法師時代みたいな描き方もこれはアリでしょう。また自分の出自に悩み苦悩する清盛像も、ある意味現代的で斬新な感がありました。余談ですが、私の中では大河ドラマ版『新・平家物語』の仲代達也が、史上最高の平清盛だということになっています。 「女を撮らせたら溝口」というのが定番ですが、観れば納得できるように群衆や僧兵の大群などモブ・シーンの映像も素晴らしい迫力があります。それは名カメラマン宮川一夫の技量もありますが、これは長年コンビを組んで息が合った末に完成した名人芸でもあるでしょう。惜しむらくは保存状態のせいかフィルムの発色が劣化しているところで、貴重なカラー版溝口作品なのでぜひデジタルリマスターしていただきたい。
【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2020-02-23 22:17:31)
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