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《ネタバレ》 雷蔵初の現代劇映画での主役だったんですが、撮影開始前には市川崑やスタッフおよび雷蔵本人までもがミス・キャストだと感じていたという信じられない逸話があるそうです。なるほど、髷を結ってない雷蔵がスクリーンに登場するのは初めてだったので無理もありませんが、 “喜久ぼん”を軽妙に演じきって雷蔵はまさに新境地を開拓したわけです。翌年には『好色一代男』の世之助で最高の演技を披露するのですから、やはりこの人は天才です。 市川崑は増村保造とは逆の作風で、日本的な様式美を尊重しながらも内容では現代的なモダニズムを追求する監督です。彼の視点からこの題材を料理すると、男と女はまるで違う種類の動物みたいに冷徹な眼で観察しています。焼け残った土蔵に喜久ぼんを取り巻いていた女たちが集まってくるシーンはなかなか強烈なインパクトがあります。そこで吐露される祖母の真情、つまり彼女らにとって商売は男の世界、本当に大事だったのは商売でも暖簾でもなくて女系家族として男たちを支配する生活が続くことだったんですね。 若尾文子と雷蔵はやはりゴールデン・カップルです。本作では二人の絡み芝居が多くて堪能させて頂きました。あの有名な女たちの入浴シーンも見事な演出で、京マチ子に越路吹雪まで一緒に入っているんですから最高です。気弱な女を演じる山田五十鈴というのもまた珍しい光景で、やはり女優のアンサンブルを撮らせたら市川崑はピカイチですね。テンポが速い編集術も物語のスピィーディな展開に良くマッチしていると思います。
【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2014-11-01 20:12:51)
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