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《ネタバレ》 公開当時は“イーストウッド最後の映画出演”と世界が騒めいたけど、12年経った現在では『人生の特等席』そして自作の『運び屋』と二作も主演してるんだからなんともはやです。だいたい、あのハリウッド・レジェンドがそう簡単に枯れるはずないでしょう。それよりも衝撃的だったのは、イーストウッドが劇中で初めて死んだということなんじゃないでしょうか。そういうこともあって“最後の出演作”という伝説に信憑性が付いたんだと思います。 個人的には本作と『許されざる者』『ミリオン・ダラー・ベイビー』はイーストウッドのセルフ・セラピー三部作だと思っています。その中でも本作は彼の内面やジレンマが最も投影されている感じで、ウォルト・コワルスキーこそが変な表現ですけどイーストウッドが感じている自身の内面を擬人化させた存在なんだと思います。演技としても『スペース・カウボーイ』のフランク・コービンに通じる飄々とした頑固ジジイで、毒舌を吐いてもあの表情ですからペーソスすら感じてしまうんです。最後まで狂言回し的な存在だったけど、若い神父もいい味出してました。人種対立と言っても白人キャラはポーランドやイタリア系、信仰はカトリックでいわゆるWASPと呼ばれる連中とは縁遠いマイノリティばっかで、さらにマイナーなアジア系モン族と同じコミュニティだというところがいかにもアメリカ的な現実なんでしょう。 イーストウッドはハリウッドでは少数派のトランプ支持でバリバリの保守なんですが、彼の政治指向は決してタカ派ではなく柔軟性に富んでいて時にはリベラルかと思わせるところもあります。じゃないと『ミリオン・ダラー・ベイビー』や『アメリカン・スナイパー』みたいな作品を撮りませんよ。軍務経験はあるけど実戦に参加したことはないイーストウッドがコワルスキーが苦しむ戦場体験のトラウマに託したことは、スクリーンでは途方もない数の人殺しを重ねてきた自分の贖罪なのかもしれません。それが最後の無抵抗の死になった様な気がしますし、同じ保守でもガチガチのタカ派だったジョン・ウェインが存命だったら決して容認しない結末だったと思います。
【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-11-30 21:03:49)(良:1票)
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