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《ネタバレ》 歴史的傑作をド変態監督ウィリアム・フリードキンがリメイク、編集権を持っていなかったので三十分もカットされたバージョンで劇場公開されて批評家からは酷評、おまけにこれまた歴史的大ヒット作『スター・ウォーズ』とモロにぶつかって興行的にも大惨敗、思えばこれ以降彼はハリウッドの裏街道を歩くハメになってしまったのでした。この人、出世作は『フレンチ・コネクション』だしジャンヌ・モローと結婚していた時期もあり、おフランスには思い入れがあるみたいですね。 ところがどっこい、この完全版を観てみるとオリジナルとは違ったテイストではありますが、決して引けをとらない傑作じゃないですか。まずニトロを運ぶ運命になる四人の男たちが転落してゆく顛末を、ソリッドに見せてくれる冒頭20分がフリードキン風味で展開するのが良い。彼らが流れつく地もオリジナルのような乾燥した土地ではなくスコールの降りしきる密林地帯、油井に通じる道に至ってはトラックを走らせるなんて無謀の極みのジャングルの中の獣道にすぎません。劇中で二回ある橋を渡るシークエンスではどちらの橋も壊れかけの吊り橋で、良くこんな撮影が出来たなって呆れてしまいました。そこは“映画を撮る狂人”とハリウッドでも恐れられたフリードキンの面目躍如、おまけに脚本を書いたのが『ワイルドバンチ』のウォロン・グリーンですからねえ。オリジナルでは巨石だった道路をふさぐ巨木をニトロで吹き飛ばすシークエンスも、四人のなかにかつての爆弾テロ犯がいるという納得がいく脚本なのもさすがです。油井火災発生で住民が暴動を起こしたりするのもリアルです、そりゃあんなに酷い環境じゃ暴れたくもなりますよ。 フリードキンですから50年代のオリジナル版と違って情緒で引っ張るような意図は毛頭なく冷たいタッチで物語は終息するのですが、ラストでロイ・シャイダーがダンスをするところには、オリジナルへのリスペクトが感じられます。オリジナルでイヴ・モンタンを破滅させたのもワルツのリズムでしたからねえ。そしてロイ・シャイダーを追ってきたマフィアが店に入ってくるアン・ハッピー・エンド、信じられないことに短縮バージョンではここがカットされているとのこと、そりゃ酷評されたのも当然かもしれませんね。
【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2022-04-17 21:55:29)
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