皇帝のいない八月 の ESPERANZA さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > コ行
 > 皇帝のいない八月
 > ESPERANZAさんのレビュー
皇帝のいない八月 の ESPERANZA さんのクチコミ・感想
作品情報
レビュー情報
骨太な社会派作品を数多く世に送り出した山本薩夫監督の映画だけあってさすがである。これは単なるアクション・サスペンスではない。戦後警察予備隊として発足し、憲法論議を醸し出した「自衛隊」の存在の是非を問う映画でもある。
今日自衛隊はその地位を確立したと思われるが、この映画が生まれた70年代後半は安保闘争や大学紛争の跡が見られた頃でもあった。
そしてちょうどその頃起こったのが「三島事件」と呼ばれるものであった。右翼の小説家三島由紀夫は、自衛隊の決起とクーデターを呼びかけ失敗した。そして割腹自殺を遂げたのである。この映画がその三島事件をヒントに作られたのは言うまでもない。
「自衛隊」というものは本当に日本の国を守るために存在するのだろうか。日米安保を背景に大きくなった「自衛隊」はもはや軍隊ではないだろうか。この三島事件と重なるのは戦前の5.15事件や2.26事件である。その頃の日本はそれらの事件を経て急速に大東亜戦争へと突き進んでいったのではなかったか。これらの諸事件を思い起こしながら映画を見ないと、単におもしろかった、格好良かったの低次元のレベルになってしまう。
戦争は惨たらしいもの、あってはならないものである。戦争を知らない世代がほとんどとなった今だからこそ、この映画の価値があるというもの。自衛隊を右翼のテロリストや腐敗した政治家が握れば再び戦争となるだろう。
今日の竹島や尖閣の領土問題などで紛糾する時代だからこそ、世界に平和を呼びかける日本の存在があるというもの。
前置きがずいぶん長くなってしまったが、この映画の渡瀬恒彦、吉永小百合、山本圭らは見事にその役柄を演じている。実に見応えのある映画だと思う。
ESPERANZAさん [映画館(邦画)] 8点(2011-04-28 00:53:12)
ESPERANZA さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2018-08-27海街diary7レビュー6.62点
2018-08-138年越しの花嫁 奇跡の実話7レビュー6.14点
2018-08-12オリエント急行殺人事件(2017)4レビュー5.95点
2018-05-28質屋8レビュー6.57点
2018-05-14ちはやふる 下の句4レビュー5.95点
2018-05-14ちはやふる 上の句6レビュー7.00点
2018-04-24傷だらけの山河8レビュー7.66点
2018-03-24フライト・ゲーム4レビュー6.50点
2018-03-23メル・ブルックスの大脱走8レビュー8.21点
2018-03-18生きるべきか死ぬべきか7レビュー7.89点
皇帝のいない八月のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS