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《ネタバレ》 松本清張原作小説の映画は、「霧の旗」に続いて2作目の鑑賞であり、すでに小説の清張ファンであった私が、映画の清張ファンとなる衝撃的な映画であった。
普通の不倫ドラマは、夫と妻と愛人の三角関係である。その普遍的関係を男と女と子どもという、三角関係に置き換えている。したがってこの映画の妻役の小川真由美は何もしないし、夫を疑うことのないまま事件後知らされるだけ、そしてそれは映画の描写すらない。極端に言えば、小川真由美の妻は誰が演じてもよかったのである。 しかるに、愛人岩下志麻の子どもはまさに主役級、演技力がどうこうではなく、役作りした松本清張、野村芳太郎に頭が下がる。つまりこの映画は子どもの目から見ているわけで、それがラストの加藤剛の子ども時代6歳のときの魚釣りシーンと繫がって、この映画の主題となっている。子どもは本当に斧で殺そうとしたのか、それとも斧は持っていただけで、殺そうとしたのは妄想だったのか。 この映画の素晴らしいのは、加藤剛、岩下志麻の演技力もさることながら、事件後どうなったかを一切表現していないことである。小川真由美が団地にいられなくなって実家に帰ったこと以外、すなわち加藤剛の罪がどうなったのか、岩下志麻やその子どもがどうなったのか、すべてを視聴者の想像に任せていることにあると思う。 また蛇足ながら、今日DVDで再鑑賞するにあたり、映画の中の会話に出てくる「シャロン・テート事件」「三億円事件」「宇宙船アポロの月着陸」など、当時話題になったニュースに懐かしさを感じる。 【ESPERANZA】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-05-11 13:28:29)(良:1票)
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