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《ネタバレ》 庵野秀明と樋口真嗣がゴジラの新作を撮ると聞いてあまり不安に感じなかった。ビジュアルはそれなりに見せてくれるだろうと思ったし、特撮オタクの彼らが作ってもダメならこれからもきっとダメだろうという思いがあった。いわゆる最後の砦のような感があった。
不安要素は人間ドラマの方だったが今回のゴジラは人間ドラマと呼べるものはない。ゴジラという脅威に対応しようとする人間は数多く登場するが彼らの間にドラマはほぼない。高速で早口で行われる政治家、官僚、専門家の会議ややり取りがただただ積み上げられる。一人一人が積み上げていったものが最終的にゴジラを倒す力になりうるという構成は人間ドラマとしては乏しいが非常にドラマティックに感じられた。偏った作り方だがこれしかないと思えるほど今作にはマッチしていると思う。 「あれ?ゴジラ以外にも怪獣が出てくるの?」とは初めて現れるキモいクリーチャーを目にして思ったこと。進化していくゴジラとは思いもしなかったが今作のゴジラはただただ「異形」。ギョロっとしているが小さな目は何を見ているのか分からない。何をしようとしてるのかも分からない。ゴジラが動く度に緊張感がある。安い人間ドラマが入り込む余地が無い。これは本当にゴジラなのか?使途じゃないのか?いやイデオンじゃね?ゴジラが炎を吐き出す前の動作が良い。吐き出した炎が収束してレーザー状になっていき大惨事を巻き起こす。あのシーンだけでハリウッドのゴジラを吹き飛ばすくらいのインパクトがある。ビジュアルはそれなりに見せてくれるという予想は覆された。見事に期待以上のものを見せてくれた。 石原さとみが浮いているだの、エヴァをゴジラに持ち込んだ感、この音楽まんまエヴァ!等言いたいことがないわけではない。会議シーンの多さに辟易する人もきっといるだろう。だが今の日本でこの作品を作った意味は大きいと感じる。日本に大災害や脅威が起こった場合のシミュレーションとしても楽しめるが、積み上げていくことを否定しない物語は現代日本にとっては希望ある物語だと言える。それと同時に現代日本への問題提起をしている作品にもなっており意外と懐の広い作品になっているのではないだろうか。今作のゴジラは何のモチーフかを考えるだけでも人の心に何かは残るでしょう。今という時代を切り取ったまさに日本にしか作れない「ゴジラ対日本」お見事でした。 【⑨】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-08-04 01:21:40)(良:4票)
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