| 作品情報
レビュー情報
《ネタバレ》 日本ほど特撮怪獣が沢山創られた国はないでしょう。主にウルトラ怪獣ですが、ゴモラ、ゼットン、バルタン星人と、きっとどの世代でも名前くらいは知っているんじゃないでしょうか?そんな中で、元祖であり王者と言える怪獣がゴジラです。
私はちょうどゴジラ空白の世代でした。小さい頃、ウルトラシリーズは沢山再放送されていましたが、ゴジラ映画は観たことなくて。子供向けの雑誌などから『人類の味方として、悪い怪獣と戦う正義のゴジラ』なんてイメージがあった程度でした。そんな中“まだ白黒映画の時代、最初のゴジラは人類の敵だったんだよ。そして今度公開されるゴジラ('84)も、悪者なんだよ。”なんて聞いて、何かとても不思議な感じでした。 本作を最初に観たのは20歳くらいの頃です。街の焼ける様子、逃げ惑う人々から、まだ戦後間もない印象をとても強く感じました。公開年は、戦争が終わって僅か9年。でも僅か9年でここまで復興している日本の逞しさと、ゴジラという巨大なモンスターを創り上げた日本の受けた傷の深さが感じられました。 アメリカの水爆実験が生んだ怪獣ゴジラが、本土に上陸して無目的に都市を破壊する。令和に入った現在に至るも、唯一無二の被爆国として、当事者のアメリカ人を主要人物に出すことなく、原水爆を表現した作品と言えるでしょう。 どうしても後年のシリーズ化したゴジラのイメージに引っ張られていたため、今回始めてゴジラのデザインが理解できた気がしました。モノクロ映像のゴジラの、黒くゴツゴツしたあの皮膚は、水爆の高熱で表皮が焼け焦げてたんですね。 背中のヒレは皮膚に刺さったガラス片でしょうか。そしてゴジラは苦しみの叫び声を上げながら、自ら焼け野原にした東京の街を彷徨います。 本作公開の僅か9年前に、他国により自分の国が焼かれる地獄を観た人々が作った地獄絵図。この映画からは、他国に国を焼かれた恨み節より、日本をここまでしてしまった、原爆が落ちるまで戦争を続けてしまった、自ら国を焼け野原にしてしまった、そんな自責の念が感じられます。 山根教授のゴジラを保護し、生命力の研究をするべきだという主張は、今なお放射能被害に苦しむ被爆者たちを救うことが出来たらという気持ちからでしょう。そう考えるとオキシジェン・デストロイヤーは、例えるなら苦しみから逃れるための安楽死に思えます。 芹沢教授がオキシジェン~の研究成果ごと死を選んだ結末は、どんなに苦しくても前だけを見て生きていく。そんな日本の決意にも思えます。 本作を観てどう思うかは人それぞれですが、戦争で受けた傷を娯楽映画にしてしまう日本人のパワー。創意工夫。結果本作は、世界でいちばん有名な日本映画の一つになりました。 【K&K】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2024-04-03 23:51:41)(良:5票)
K&K さんの 最近のクチコミ・感想
|