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《ネタバレ》 “The Final Countdown”『最終秒読み段階』。原子力空母が嵐に飲まれて、真珠湾攻撃直前にタイムスリップする…こんな突飛なSF映画に、最新鋭の空母と戦闘機を惜しげもなく登場させるアメリカ海軍の懐の深さよ。
“アメリカ海軍の宣伝映画”とも言われていますが、これはこれで大成功だったんじゃないでしょうか?この当時の軍用機って、スーパーカーやガンダムのモビルスーツと同じくらい、強さと速さの魅力に溢れていたんですよ。本作は当時少年たちに大人気だったFー14の魅力を余す所なく観せてくれてます。それもドクロマークが印象的なVF-84ジョリーロジャースのトムキャット。着艦時のギアの出方、細かい尾翼の動き。桁違いの空戦能力。零戦が遅すぎて可変翼は開きっぱなし。なのに敢えて閉じたり開いたりして観せるサービス精神。攻撃も零戦の機関砲の「バババババ!」と違いガトリング砲は「ヴウーーーー!!」って怖い音するし。戦闘中のF-14は資料映像の寄せ集めでなく、きちんと機体ナンバー202と203の2機なのがお金掛かってる。 サービス精神は他の機にも活きていて、E-2ホークアイのレドームきちんと回ってるのが確認できるし、偵察機はマニアックなRF-8クルセイダー。旧型機A-7コルセアで緊急着艦の実演。あの海域で必要か疑問だけどKA-6イントルーダーの空中給油まで観せてくれる。パールハーバー基地には退役したばかりのA-5ヴィジランティをチラッと駐機。…まぁ解る人だけ解ってくれれば。 ニミッツ級の内部も結構細かく出てきます。ブリッジや格納庫はもちろん、食堂やら娯楽室、放送室まで。こんなの3隻(当時。今は10隻)も持ってるアメリカの、軍事力の誇示ですね。東西冷戦下だけにソ連の漁船(スパイ)も出てきますが“そんなに見たけりゃ、映画で好きなだけ観やがれ!”って感じでしょうか? 『宣伝部分は解った。じゃあ映画はオマケか?』と言われると、そんな事もなく、タイムトラベル“if”物としてきちんと面白いです。少しずつ置かれた状況が見えてくる上層部と、断片的にしか情報が入らず、第三次世界大戦の勃発と誤解する下士官。未知の兵器に驚く上院議員と日本兵。 帝国軍の機動艦隊を見つけてからの、上層部のタイムパラドックス議論も想像を膨らませます。アメリカにとって、真珠湾攻撃は“合衆国史上、唯一の屈辱(※後に9.11テロが加わる)”でした。突飛な事態で、思っても見なかった雪辱を果たすチャンスが訪れた。面白いですね。 イーランド艦長の決断は終始悩みつつも、一貫して「我々は、もしアメリカが攻撃を受けたら、過去や未来に関係なく、国を守るのが任務だ」でした。 実際の最終決戦が起きないことに物足りなさを感じるかもしれませんが、もし戦闘が起きても、ニミッツの一方的な勝利で終わるのは観るまでもありません。そして、まだ真珠湾攻撃を仕掛けていない帝国艦隊を、一方的に奇襲攻撃で撃退するというのは、パールハーバーの屈辱の上塗りになります。艦長の未来に帰る決断は、映画的に間違ってなかったと思います。 最後のSF映画らしいオチもいいです。40年の時を超えて愛犬チャーリーと再会するスコット。タイムパラドックス議論で「一度起きた事実は変えられない」と考えていたオーウェンスが、オープニングで、自分の体験した過去と同じく、やっぱりラスキーをニミッツに派遣したのも納得でした。そして過去の戦史を研究していたオーウェンスと野心家のスコットが、軍事産業タイドマン社を創って、歴史を変えること無く、陰ながらアメリカの防衛に尽力してきたんですね。 【K&K】さん [地上波(吹替)] 7点(2024-10-07 14:38:11)
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