<ネタバレ>打ちのめされた。ただただ打ちのめされて涙すら出ない。無駄に描 .. >(続きを読む)[良:3票]
<ネタバレ>打ちのめされた。ただただ打ちのめされて涙すら出ない。無駄に描き込まない柔和な絵柄と、ユーモアを交えた軽妙なエッセイの中に、戦争という暴力の足音が少しずつひた歩き、ある日突然、ささやかな日常をあっという間に蹂躙する。戦争に組み込まれた庶民には不可抗力でしかなく、すずたちの失った痛みが自らの痛みとして伝わってくる。後悔、慟哭、喪失、絶望・・・それでも笑わなければならない、飯の美味しさを噛み締めなければならない、消えることのない深い傷痕を抱えて過去に囚われても前を歩かなければならない。並行世界で生き残った"姪"を家族に迎え、互いに失ったものを補い合うように、さして豪華ではない夕食で締める何気ない日常の数々に、見えない力強さを感じた。この映画は二度と見たくない。安易に人に薦めたくない。当たり前に過ごせる日常は、感謝を言動で示したり強制したり自ずと気付くものではなく、ただ"そこに在るもの"に過ぎないのだから。きっと、現在の"この世界の片隅に"暴力の足音が世界中に再び広がり、同じ轍を踏んだとしても、そうやってのらりくらり、なるようになるしかないんじゃないか。多分、いつの時代、世界各地にいる"すず"は、未来を描けるはずだった失った右手を見つめて現実に引き戻されても、ちょっとしたことで笑顔になっているのだろう。[良:3票]