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1.  戦争論
学生時代、近代史の勉強でどうしても腑に落ちないことがあった。欧米によりほとんどの国々は侵略され植民地と化し奴隷貿易が横行する・・まさにこの世の地獄のような有様だったのに、第2次世界大戦が終わるといつのまにか大半の国々が独立しとる・・何がきっかけで一体何が起こったんだろうか? またアジアの某発展途上国で幼少期を過ごした経験上、何故日本だけがここまで豊かになれたんだろうか?というのも昔からの疑問だった。 本作との出会いは「お盆も近いから戦争に関する本でも読もうか。できれば読み易いのを。」とたまたま手に取っただけ。「コペルニクス的転換」とは言葉としてはよく聞くけど、自分がモロにそれを味わう事になるとは思わなかった。上記の疑問に対して目からポロポロ鱗が落ちまくった。「認識」とか「史観」とか言う遥か以前の話、単純に「事実」を知らされていない事が多すぎる。本来ここに書かれてある事は義務教育の範囲内で教えられるべきだと思いますが、いずれにせよ作者氏には本当に感謝しています。 …ちなみに上にも見られるようですが、大空襲や原爆によって一般市民を「虫けらのように」殺したのは相手国。それなのに何故だか自分の国が悪い事になってしまうw こういう洗脳から覚めない人がいる限り、今後もベトナムやイラクのような戦争はまだまだ続くんだろうなぁ・・という暗然とした心持になります。
10点(2008-11-02 02:48:05)(笑:1票) (良:1票)
2.  BLAME! 《ネタバレ》 
「夢で見る風景/感覚を覚醒したまま再現する事」は美術、小説、映画、漫画において様々な試みがされてきましたが、舞台設定において画期的な漫画。 単純に言えば人気の無い巨大な建造物の中を上へ上へと昇っていくお話。夢の中を彷徨っているような①巻の雰囲気が特に好き。 しかし上ってきたつもりがラスト近くで世界の中心に出てしまう(…と地球の痕跡かとずっと思ってましたが、「直径14万7000km」というと木星の痕跡であって「中心」でもないかもしれない…)。 徐々に不明確に、間接的に明らかにされていく作品世界の構造。「ネットスフィアに接続できた=現実世界に戻る」のようなヴァーチャルリアリティ的なオチを予想してましたがハズレでした。 都市構造物の外枠が水で満たされているのは、都市が無限に拡張していくというイメージに合致して良。更にはその中で未来を担う新しい生命が誕生するという事で「原初の海から生まれた最初の生命」の寓意ともとれる見事なオチだと思います。
10点(2008-02-17 00:19:55)
3.  殷狼 《ネタバレ》 
終戦直後の日本を舞台にしたホラー漫画。古代から棲息する伝説の精神獣が、何故か敗戦直後の日本の首相に憑りついて世界滅亡を企むという話。作者の田中正仁という方はよく知りませんが、絵柄がとても好み。三山のぼる、池上遼一、大友克洋、かわぐちかいじ、神江里見、ヒロモト森一などを併せて割ったような感じ。おそらく他には例のないSFホラーに人形浄瑠璃を取り入れたセンスや、意識的に行っているであろうプチ・シュールな描写は魅了されます。物語自体は色々と残念な部分も多い。世界を滅亡させたいならアメリカやソ連の首脳に憑りつけばいい話だし、最後の最後に主人公が自分探しを始めてしまう展開(正当な目的と能力を与えられて生まれてきたというのは今の時代では羨むべき話で、何が「憎い」のか意味不明)等々…あのバブル時代ならではの頓珍漢な感覚が何とも。 しかし正直言って物語はどうでもよく、時折姿を見せる殷狼の物体Xな描写や、憑りつかれた首相の表情の様々な表現が実に素晴しい。何の変哲もないオッサンの表情でこれだけ見せるのは、比肩しうるのは初期のヒロモト森一氏くらいではなかろうか。
8点(2015-01-18 23:40:59)
4.  B'T-X
車田正美のSFロボット漫画。「リンかけ」ドイツ編の『なんちゃって高等数学/科学』と、「星矢」の『神話上の幻獣+メカ・フォルム』趣味に徹底的に特化したという感じ。おそらく氏の作品中で唯一、最初から最後までクオリティを高いまま維持した作品。(「リンかけ」は初期が全く別のマンガだし、「星矢」は白銀聖衣編や冥界編などで迷走が激しい。)アニメは見ていませんが、聞くところによると原作で最も面白い七魔将編の後半がまるまるカットされてるとか。(対バジリスク、キマイラ、ガルーダ戦) これは原作の盛り上がりにアニメがついて行けなかった事になるのかな?他の作品には見られない傾向であり、それだけ原作が充実している証なのでしょう。 クライマックスの盛り上げ方や、散々じらして登場したラスボスの最終形態と正体はお見事という感じ。 残念なのは「正義の側」がほとんど中国人な事。数々の捏造報道が明るみに出た今では考えられませんが、この辺は時代だな…と思ってしまいます。
8点(2015-01-18 23:04:44)
5.  ヒカルの碁
主人公の真剣さや成長がじっくり丹念に描かれており読み応えありました。これがジャンプ連載というのに少しビックリ。佐為を失った喪失感からヒカルが立ち直っていく様は「あしたのジョー」(w)の対力石戦後のエピソードに匹敵する名展開ではなかろうか。 絵が凄く上手いな…と思っていたら「サイボーグじいちゃん」の人だったんですか。遥か昔、自分がジャンプ購読してた頃「北斗の拳」や「キン肉マン」に混じって、この人や井上雅彦氏の作品が掲載されては打切りになっていて「これだけ上手くてセンスあるのに、何て厳しい世界なんだ…」と子供心に思った記憶があります。(…でも当時に人気作家になってたら、碁石が燃えたり、一手打つごとに技の名前を叫びながら天井までジャンプする漫画描かされてたかもw) 惜しいのは、他の方も言われてますが囲碁のゲーム自体を読ませる所がほとんどない事。私も最後までルール覚えられませんでした。 あと、ラスボスの某国代表…今読むとギャグにしか見えないw 連載時期を見ると、日韓ワールドカップ前夜であり、拉致事件発覚もなく、オウムをマスコミが擁護していた時代…振り返ると、ある意味恐ろしい時代だったんだなと思います。今の日本人が本作読んで、「必死にやってきた挙句、最後の相手がこんなんかい」と、逆に囲碁離れに繋がりそうな気がしてちょっと不安。
8点(2013-10-26 08:32:50)
6.  死びとの恋わずらい
氏の短編集という事でコメントさせて頂きます。本作品も含め初期短編/連作はコミックスの刊行ごとにタイトルや収録作品が異なるようなので。 氏の作品はホラーとしてだけでなく「不条理漫画」として秀逸に思います。個人的には「ねじ式」や「伝染るんです」、初期の「BLAME!」或いは安部公房や筒井康隆の短編小説群などと同じカテゴリーな感じ。特に傑作は「道の無い街」「あやつり屋敷」「路地裏」「首吊り気球」「落下」「四重壁の部屋」など。 絵柄もデッサン力があってシンプルというある意味理想的なものだし、一つ一つのエピソードに出てくる登場人物の描写がリアル。俗に言う「人間が描けている」という事なのか、例えば「路地裏」のメンバーで普通に小津安二郎の映画みたいな話が展開されてもそれはそれで読めてしまいそう。ホラーや不条理などの非日常は、こういうリアルな描写力があってこそ生きるのだな…と実感します。
8点(2013-06-23 17:14:07)
7.  要塞学園 《ネタバレ》 
ギアナ高地のような山のてっぺんに建設されたブレードランナー的世界の少年刑務所…ヒロモト氏のキャラクター造形力、舞台描写力が最良の形で出た作品という感じ。氏のこういう部分はホントに好きだ。キャラクターのネーミングも美鳥川(みどりかわ)、來間田(くるまだ)、白怒火(しらぬい)など独特のセンスで良。(原作者のセンス?)。残念なのは最終話が無茶苦茶になってしまった事。伏線もなく登場する究極人類(しかもテキトーなデザイン)、脱出不可能なはずの断崖に都合よくある抜け道、凶悪犯が大量脱獄してメデタシメデタシ・・・等々、何か酷い。「終わり良ければ全て良し」の逆パターン。
8点(2011-12-29 09:18:50)
8.  ブルーミント・ホテル
動物と宇宙人と黒人とジャズが何の違和感もなく同居する不思議世界。クオリティの高い大人の童話という感じ。独特な絵柄も併せてかなり好き。タイトルが異なる為か最初の一話目が収録されておらず冒頭が解りにくい事や、単行本の装丁が内容と今1つマッチしていない気がするのが残念。
8点(2008-12-28 02:45:24)
9.  キャプテン翼 ワールドユース編
前作で未登場だった強豪ブラジル、オランダをラスボス的に設定した本作。連載上の都合かオランダ戦がまるまるカットされてしまったのが残念。(今からでも書き下ろしで描いてくれないかな・・)ブラジル戦はさすが当時の欧州最新のサッカー戦術組み入れたりして読み応えがありました。少年マンガだからといって無理矢理「必殺シュート」を設定するのは無理があったような。あと、中盤の大一番であるはずのアジア予選決勝:韓国戦がどうでもいいような感じであっさり流されてしまったのに当時は??でしたが、その後行なわれた日韓W杯を観て「成程」と得心行ったのが印象に残っています。
8点(2008-09-28 23:49:51)
10.  虹色のトロツキー 《ネタバレ》 
満州国が舞台という事で興味を持って読みました。実際の関係者から色々取材したんであろう綿密さが良です。ただ何で主人公がこの人なのか。日本人が知らない、というか日本人がほとんど歪曲した形でしか知らされていない話だからこそ、日本人を主人公にして当時の日本人の立場から描いてほしかった感じ。結局どんどん話の焦点がぼやけて、何だか陳腐なクライマックスになってしまったのは残念。またアニメ出身の人だからなのか(必ずそういうわけでは無いんだろうけど)描き込みの希薄な絵柄がいかにも「ストーリーを進めるためだけの絵」という感じで、一つ一つの絵をじっくり味わいたい自分としてはそういう部分も不満でした。
7点(2011-12-29 09:07:28)
11.  深く美しきアジア
おそらく「画力」という点ではこの作者の右に出る人は居ないと思う。中国歴史漫画家として有名な人ですが、本作はイマジネーションの限りを尽くして描いたSF/怪物もの。機械元帥や北魔天など、意外とオリジナルな造型センスも突き抜けていて凄いです。ただ、ストーリーは完全な行き当たりばったり。また、絵が上手い代わりにコマ割が不得手という感じ。特にアクションシーンなど動きがぎこちなく、どことなく「天は二物を与えず」という言葉が浮かんできます。それにしても原題は「Magical Super Asia」なのにまるで一昔前の映画みたいな邦題のつけ方だ。「愛と追憶のアジア」とか「青春と旅立ちのアジア」とかでもよかったかも。
7点(2010-10-10 01:15:46)
12.  SINGLE ACTION ARMY
おそらくブレードランナー的世界をもっとも上手く消化した漫画だと思う。荒涼とした近未来都市にジムノペティを響かせるセンス。動き、コマ割、風景と人物の絡み等、多少荒いがこの頃の氏の絵がとても好きだ。 同じ時期モーニングに「LOVEWARS」という同路線の短編が掲載され、シリーズ化を心待ちにしていたものですが(個人的には「1」だけなら10点満点)・・続かず残念。
7点(2008-11-02 02:55:49)
13.  寄生獣
MITに関する本に載っていた話。UFOが地球に着陸し、都市やダムや運河や電力供給網や走り回る車を観察し調査する。宇宙人の一人が感に堪えたような声を上げる。「あぁ自然は偉大だ。」…つまり人間が「人工」と呼ぶものは、第三者から観てみれば自然界における蜘蛛の巣や蜂の巣などと同じという話。元々人間も自然の設計図の範疇に有る存在なのに、なにゆえ人間の技術を「自然」と分けて考えないといけないのか昔から疑問に思っていたので、この文章を見た時得心行きました。こういう観点から見ると本編のテーマらしき「人間は自然界の寄生獣」というのは、あまりに自虐が過ぎるように思う。もちろん自分は公害は困るしエコロジーにも基本的には賛成。だけどそれは「地球の為」ではなく「人間の為(物質的にも精神的にも)」。例えば絶滅動物を救う事にしても、「ある種が絶滅するような環境は最終的に自分達に還ってくる」という事が本能的な智慧としてあるから保護を行っている。・・・こういうような感じで、個人的には本作品の思想的なものにはあまり共感できません。ただし「決闘モノ」としては傑作。ただ単に頭か腕が刃物に変形して戦うだけなのに、1つとして同じパターンの戦いが無い。こういった手腕は見事だと思います。
7点(2008-09-29 00:30:28)
14.  無限の住人
時代劇史上ここまで卑怯な主人公も居ないだろう・・「勝った」と思って相手が背を向けた途端、背中からズブッという勝ち方がほとんど。単に「市井で傾き者同士が争う」という話であればかなり面白かったと思いますが、中途半端に幕府を持ってきたのが失敗。武士階級は「お家や領地の存続の為にどういう死に様ができるか」が人生のテーマ。中国の皇帝じゃあるまいし、将軍やその取り巻きが不死の為に(しかも市井人を犠牲にしてまで)躍起になると言うのは武士の考え方としてまず有り得ない。この辺りは中国・朝鮮人系の戦時中の捏造話を連想しウンザリしてしまう。また逸刀流の面々はその出立ちからしてかなりの遊び人。しかも「いつも生活の為に市井を駆けずり回っている」のであれば修練の時間がほとんど無いわけで、彼等の強さに説得力がまるで無い。絵も語りも力のある人だけに何か勿体ない感じ。
6点(2008-12-28 00:11:46)
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