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ザ・チャンバラさんのレビューページ
プロフィール
コメント数 32
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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1.  ハウス・オブ・カード 野望の階段 《ネタバレ》 
多少の中弛みが気になったシーズン3の反省からか、本作は怒涛の展開の連続で度肝を抜かれました。しかも話の風呂敷の広げ方がうまいために「そんなアホな」と思わせないギリギリのところで踏み留まっており、そのバランス感覚は見事なものでした。「フランク大統領・クレア副大統領のアンダーウッド夫妻政権を目指します!」など現実的にはまったくありえない話なのですが、視聴者が理解可能なイベントの積み重ねの末にこのトンデモ展開を受け入れさせてみせた力技に、本作のショーランナーであるボー・ウィリモンの非凡さが表れています。 シーズン3では鳴りを潜めていたパワーゲームも本作では復活。まず、シーズン3の敵であったヘザー・ダンバーを、フランクの身に起きた不幸を逆手にとって葬り去り、続いて共和党大統領候補ウィル・コンウェイとの一騎打ち。またこいつがフランク並みの腹黒さであり、キツネとタヌキの化かし合いがとにかく熱くて面白くて最高でした。 細かい点では、数シーズンお休みしていた懐かしのキャラクターの再登場等、本シリーズが持つ資産が実に効果的な形で再利用されているという点にも感心させられました。豪快な展開の中にも細かい技が光っており、今のところの最高傑作はこのシーズン4だと思います。
[テレビ(吹替)] 9点(2017-06-15 22:39:44)
2.  FARGO/ファーゴ 《ネタバレ》 
1996年にアカデミー脚本賞を受賞した名作『ファーゴ』とタイトルと舞台を同じくしているものの、映画版と交錯する設定を一点だけ持つ以外は年代も登場人物も別物であり、本作は続編でもリメイクでもありません。そのため、映画版を未見であっても本作の鑑賞にあたって特に問題はなく、名作の看板を借りながらも間口の広い作品となっています。 主人公は田舎町で保険セールスマンをやってるレスター・ナイガード。レスターは40歳になった今でも高校時代のイジメっこから侮辱と暴力を受け続け、しかもそれに対して何もやり返せないという、超絶気の弱い男です。ただし一定の自尊心は残っているのか、「あんな奴と揉めても仕方ないから好きにさせてんだよ」なんて言って自分自身を納得させています。そんなレスターですが、病院の待合室で出会った謎の男(正体は殺し屋ローン・マルヴォ)から「あんた、そこまでされて怒らないの?」と言われ、「そのイジメっこ、代わりに俺が殺してあげようか」と冗談なのか本気なのか分からない提案を受けます。そして数日後、イジメっこが本当に殺されてしまうので驚くのですが、この一件をきっかけにレスターは本能のままに生きるマルヴォに感化され、それまで抑え込んできた自我が一気に開放されてどんどんバイオレンントな方向へと突き進んでいきます。稼ぎが悪いだの、役立たずだのとさんざん自分をバカにしてきた奥さんを撲殺し、イジメっこの巨乳の奥さんを寝取り、イケメンで金持ちで美人の奥さんをもらってる自分の弟を犯罪者に仕立て上げようとします。まさにやりたい放題なのですが、視聴者はアウトローと化したレスターの姿からある種の爽快感を得られます。 平凡な中年がバイオレンスに目覚めてむかつく連中を片っ端からなぎ倒していく様は『ブレイキング・バッド』のウォルター・ホワイトに通じるし、ルールや常識に囚われず自由に生きる殺し屋マルヴォは『ハウス・オブ・カード』のフランク・アンダーウッドを彷彿とさせます。むかつく相手を容赦なくなぎ倒すことで視聴者をスカっとさせるという傾向が近年のヒットドラマに見られますが(日本で大ヒットした『半沢直樹』も同様)、本作はその傾向をきっちりと踏まえて作られているので面白くて当然なのです。 さらには、イジメっこは隣町のマフィアに関係した人物だったことから、その殺害を抗争と勘違いしたマフィアが殺し屋を送り込み、殺し屋vs殺し屋の血みどろの展開を迎えます。ボンクラ中年が覚醒する物語と、殺人マシーンが暴れ回る話という、僕らの大好きなものがふたつもぶちこまれた超贅沢な内容で、中盤以降はドラマからまったく目が離せなくなります。 また、コーエン兄弟は脚本や演出に直接関与していないものの、兄弟特有のブラックなユーモアは本作でも健在であり、上記の通りかなりハードな内容でありながら語り口には独特の間があって、とんでもないところで笑わせてきます。この辺りの空気感の作り方も絶妙であり、秀作が多い近年の海外ドラマの中でも、本作は頭ひとつ抜けた出来だと思います。
[DVD(吹替)] 9点(2016-05-25 00:33:03)
3.  センス8
8か国9都市でロケーションを行い、イギリス・アメリカ・アイスランドはウォシャウスキー姉妹が、メキシコシティ・ムンバイはジェームズ・マクティーグが、ベルリンとナイロビはトム・ティクバがそれぞれチームを率いて監督し、それらをアメリカにいるJ・マイケル・ストラジンスキーのチームがひとつにまとめあげるという極めて高コストな作品となった上に(一説によると、ゲーム・オブ・スローンズをも超える製作費がかかっている)、複数の感応者がシンクロする部分では同じ場面を各国でバラバラに撮影して編集で繋げるという異常に複雑なプロセスで作られた作品なのですが、優秀なクリエイター達がそれほどのコストと労力をかけて作り上げたことから、かつて見たことがないと言い切れるほどの斬新な作品に仕上がっています。 やはり、ウォシャウスキー姉妹の物語をまとめる力・伝える力は凄いと感じました。映画『クラウド・アトラス』でも複雑に絡み合うエピソードを混乱なく見せるという驚異的な仕事を披露していましたが、本作では主人公8人の個別のドラマが時に交錯し合いながら同時に走り、その上に闇の組織との対決というシリーズを貫く大きなドラマが乗っかっているという、さらに複雑な構成となっています。これを視聴者の側でさほどの苦労をする必要もなく理解できる形にまで落とし込めているのだから驚かされました。 また、SFでありながらセクシュアリティや信仰といった現実社会のテーマが深く描かれているのですが、これらのテーマを視聴者にも理解させ、問題提起をするということにも成功しています。特に性的マイノリティが抱える苦悩をここまでわかりやすく、かつ、感動的に描いた作品はそうそうないと思います。 さらに、『マトリックス』のクリエイターだけあって、バカバカしくもかっこいい見せ場もきちっと作れており、要所要所でエンタメ要素も効いています。リトがワイヤーアクションで銃撃戦を繰り広げる場面なんて劇中劇であることは分かっていても興奮させられたし、ヴォルフガングが親友に重傷を負わせたマフィアに復讐する場面なんて、ベルリンの街中でロケットランチャーをぶっ放すというありえない見せ場ながら、ここまでエモーションが高ぶった場面であれば少々の無茶をやっても視聴者は受け入れてくれるだろうという計算がきちんと働いています。見事でした。 難を挙げるとすれば、チーム戦としてはやや洗練されていないことでしょうか。八者八様の能力で互いの不足分を補い合いながら困難に挑むチーム戦を期待しながら見ていたのですが、チームに貢献するメンバーと貢献しないメンバーがはっきり分かれていた点はちょっと残念でした。アベレージの高い戦闘スキルに加えて窮地の仲間を救うために出張もこなすという行動力も持ったウィル。高い殺傷スキルを持ち、いざという場面での突破口を作る役割を果たすヴォルフガングとサン。得意のハッキングで作戦の立案と後方支援を担当するノミ。基本的に役立っているのはこの4人であり、カフィアスとライリーはトラブルに巻き込まれては仲間に救われてばかりだし、カーラとリトに至っては個人のエピソードが中心で仲間と絡む場面がそもそも少ないという状況になっています。戦闘能力の高い4人にも弱点はあり、戦闘では役に立たなかった残りの4人はその点を補うという関係性があればより良かったのですが、特にカフィアスとライリーは助けられてばかりなので、今んところ要らない人のように見えています。
[テレビ(吹替)] 8点(2018-06-29 19:03:07)
4.  TRUE DETECTIVE/二人の刑事 《ネタバレ》 
「刑事」に該当する言葉をご丁寧に二つも重ねた邦題が示す通りの内容でした。 家族を失った悲しみから生への執着を失い、どんな危険な捜査でも厭わなくなったはみだし刑事・ラストと、職場での評価も家庭人としての評価も安定した平均点刑事・マーティン。『リーサル・ウェポン』のリッグスとマータフを彷彿とさせる、この手の刑事ドラマとしては類型的ともいえるコンビなのですが、この二人のドラマを見せるうえでの過去パートと現在パートを行き来する構成がなかなかの効果を上げています。 過去パートはソリの合わなかった刑事が徐々に信頼関係を育みながら猟奇殺人に挑むという、これまた刑事ものとしては類型的な内容ではあるものの、現在パートにてどうやら二人の関係性は断絶しているらしいことが分かり、何か重大なことがあったことが暗示されるために、物語への興味をかなり強く惹かれました。 また、ラストとの関係性の中でマーティンが悪い意味でも変わっていく様も見どころとなっています。家庭と仕事の間に愛人を挟むことで心のバランスをうまくとっていたマーティンが、ラストに引っ張られる形で仕事に没頭するようになり、酒と女に弱く、また理性を失うと暴力的になるという弱みがどんどん露になっていきます。マーティンってしょーもない男だなぁと思いつつも、仕事を頑張りすぎていることを奥さんから責められる様は可哀そうだなぁとも思いました。しかしこのマーティンがやたらモテることは気になりましたが。奥さんがミシェル・モナハン、最初の愛人がアレクサンドラ・ダダリオ、バーで逆ナンしてくる二番目の愛人がリリー・シモンズって、なんで美人ばっかなんだよ! 配役も面白く、はみだし刑事にマシュー・マコノヒー、平均点刑事にウディ・ハレルソンと、普通なら逆でやらせるべきトリッキーな配置がハマっています。突如演技に開眼した当時のマコノヒーの大胆な演技と、その受け手となるハレルソンのベテランらしい安定した演技の組み合わせが、見事に化学反応を起こしているのです。 物語はゆっくりと始まるのですが、第4話の目の覚めるような大銃撃戦からは、ものすごい勢いでドラマ全体が疾走を始めます。あまりに情報量が多いため一度見ただけでは全体を把握できず、たまに固有名詞を見失うこともありましたが、大筋はさほど難しくないので問題はありませんでした。 問題点は、ミステリーとしてはすっきり終わってくれなかったことでしょうか。捜査の過程で、地元の政治や行政機関にまで深く入り込んだ変態カルト集団の存在が浮上してくるものの、ドラマはその下っ端を一人殺しただけで終わり、変態カルトとの闘いは決着しません。圧力と戦いながら巨悪を追い詰める様を期待した私としては、ちょっと残念でした。
[テレビ(吹替)] 8点(2018-04-26 18:50:30)
5.  ナイト・マネジャー 《ネタバレ》 
同じくジョン・ル・カレ原作を映画化した『裏切りのサーカス』には、あまりの分かりづらさにいささか辟易とさせられたのですが、本作についてはテレビシリーズという媒体が素材にぴたりとハマっており、格式の高さを残しつつも見やすい仕上がりとなっています。 合法企業の違法取引を暴くためにその経営者の懐に潜入したスパイの物語なのですが、ジェームズ・ボンドやイーサン・ハントのような派手な大立ち回りは皆無であり、ひたすらにジリジリとした心理戦が繰り広げられます。映画でやられると少々退屈しそうな内容ではあるのですが、一話45分程度に細分化されたテレビドラマであればこの内容でも視聴者側の生理に合っています。また、アカデミー外国語映画賞受賞経験もあるスサンネ・ビア監督の演出力が非常に高く、視線のわずかな移動のみでとんでもない緊張感を生み出しているという点も評価できます。特に最終話直前の異常な緊張感や、クライマックスのカタルシスには圧倒的なものがあり、かなり満足度の高い視聴となりました。 主人公がターゲットの愛人との色恋に走るという展開についても、普通に考えれば「命がけのミッションの最中に何を色ボケしてるんだ」となるところですが、こちらもテレビシリーズの強みで二人の関係性をじっくりと描けたことで、きちんと悲劇の恋となっています。また、トム・ヒドルストンとエリザベス・デビッキの上品な美しさによっても低俗化が避けられており、映像化が実にうまくいっています。 役者で言えば、敵役のヒュー・ローリーのハマり具合も見事なものです。カリスマ性と洗練性に溢れていると同時に、「こいつに正体がバレるとどんな目に遭わされるか分からない」という威圧感を終始漂わせており、スパイものの悪役としてはほぼ理想形とも言える仕上がりとなっています。シーズン1の好評を受けてシーズン2も製作されるとのことですが、ヒュー・ローリーが演じたリチャード・ローパーに肩を並べるほどの敵役を作ることが製作陣にとって最大の課題ではないか。そう思わされるほど、本作のヒュー・ローリーは完璧でした。
[テレビ(吹替)] 8点(2017-08-10 22:25:09)
6.  闇金ウシジマくん 《ネタバレ》 
登場人物は全員キャラが立っているし、複数エピソードを同時進行させるという構成をとりながらも、そのすべてのエピソードが面白いという神業的な内容となっており、このseason1を基礎として長期シリーズ化したことにも納得がいきました。 金に絡んだドロドロを題材としつつも、時に人間の良い部分を見せるという匙加減も素晴らしく、特に久美子と健介のエピソードにはかなり感動させられました。高額に膨れ上がった借金の返済ができなくなった健介は、恋人の久美子を沖縄の風俗に売るか、自分自身がロシアンマフィアに売られて漁船で死ぬまで働かされるかの選択を迫られ、久美子を売るつもりで彼女の部屋を訪れます。すると、前々から自分が欲しがっていた高額なスニーカーを誕生日プレゼントとして久美子が買ってくれていたことに気付き、自分の不義理を反省。健介は黙って漁船に乗る道を選択しました。ゲスな人間が人間性を垣間見せる一瞬の輝きほど美しく感動的なものはありません。本作は、そうしたものがちゃんと描けているので素晴らしいのです。
[テレビ(日本ドラマ)] 8点(2017-01-31 01:01:35)
7.  Billions
近年のアメリカテレビ界はどんな職業でも堂々たる娯楽作に仕立て上げることに強みを発揮していますが、本作ではヘッジファンドをテーマに据えています。毎回、難解な金融用語が登場するために若干敷居を高く感じられるのですが、実際にはそれらはあくまで雰囲気作りのための装飾のようなものであり、その意味を特に理解しなくてもドラマは問題なく理解できます。こうした作りの堅実さはさすがだなと感じました。 インサイダー取引や市場操作といった犯罪行為に手を染めながら巨額の利益をあげるヘッジファンド創設者と、その不正を暴こうとする検事のバトルがこのドラマの軸となるのですが、そこに大上段に構えた正義や、社会啓蒙的なメッセージなどはなく、負けず嫌いの男2人が双方消耗しながら泥仕合を繰り広げる様が延々と展開されます。中盤以降になってくると当事者達も視聴者もそもそものバトルの目的すら忘れがちとなってくるのですが、この不毛さ、熱い応酬戦の裏側にある突き放した冷たさこそが本作の味であり、ある種のコメディとしても機能しています。 また、本作の強みは主人公二人が非常に魅力的なことであり、視聴者はそのどちらにも感情移入しながらドラマを見ることができます。ヘッジファンド創設者であるボビー・アクセルロッドは一時期のホリエモンの如く札束で他人の頬を叩くようなマネをしており、表面上はイヤらしい成金そのものなのですが、その背景には彼自身の貧しい生い立ちがあり、一連の過激な行動は支配階層への復讐行為であることが明らかになると、視聴者は彼のすべてを肯定したくなります。二手先三手先を読んだ上での行動に、相対した人間の心の奥底を見透かしているかのような言葉遣い、スリムな体形にラフなファッションと、彼のすべては洗練されており、多くの人が憧れるダークヒーローとして造形されています。演じるダミアン・ルイスは次期ジェームズ・ボンドの最有力候補とも言われている人物なのですが、彼の雰囲気や風貌はこのダークヒーロー役に見事にハマっています。 対する検事・チャック・ローズはウォール街では知られた名門一族の出身にして、一流大ロースクール卒、公判では生涯無敗を誇るNY検事局のトップにして、次期NY市長候補とも言われているエリート中のエリート。しかし、そんな華麗な経歴とは裏腹に彼の見た目は普通のおじさん、日常生活も地味なもので、庶民的な中華料理屋のテイクアウトを食べながら残業をしたり、奥さんの稼ぎがないと私立学校に通う子供の学費を払えないと言って悩んだりと、サラリーマンっぽさ全開なので思わず感情移入してしまいます。また、勝負に執着して熱くなりすぎる余り墓穴を掘ることがたまにあるという人間臭い部分もあって、終始冷静で超人の如く振る舞うアクセルロッドとは何もかもが対照的なキャラクターとなっています。 残念ながら本シーズンでは二人の勝負の決着は着かないのですが、この魅力的なキャラクター達が健在なのであれば来シーズン以降にも大いに期待ができます。
[テレビ(吹替)] 8点(2016-12-15 17:20:25)
8.  ブラッドライン
真綿で首を絞められるように緩やかに崩壊していくことがこのドラマの味なんですよねぇなんてシーズン1ではレビューしましたが、続くシーズン2は一転して怒涛の展開を迎えます。そこいらの海外ドラマを凌ぐほどの勢いでサスペンスとドラマが疾走し、シーズン1が序章に過ぎなかったと言えるほどの急加速を見せるのです。その圧倒的な勢いと熱量には圧倒されたし、二転三転しつつも破綻を来さない緻密な作りには感心させられました。 前シーズンのクライマックスにてジャックはダニーを殺害したものの、直後にジャックが心臓発作を起こしたことから偽装工作が不完全なものとなっており、そこにはいくつもの綻びが残っていました。他方、地元の名士であるがゆえにレイバーン家には様々な思惑を持つ者が出入りしており、そうした者たちに思わぬことからダニー殺害に係る糸口を掴まれそうになります。そうして問題が起こる度にレイバーン3兄弟は付け焼刃での対応を迫られるのですが、良かれと思ってとった行動が余計に穴を大きくしたり、かと思えば、ある人物による要らん行動が巡り巡って良い結果をもたらしたりと、展開がまるで読めないため見ているこちらまでが冷や冷やさせられます。 そんなギリギリの状況下でレイバーン3兄弟は精神的に疲弊していくのですが、芸達者揃いのキャスティングゆえにそのやつれっぷりも見事に表現されています。「あの時、お前が〇〇したのが悪いんだろ!」という血縁者同士の罵り合いは極めてリアルで、関係の悪い家庭内でしばしば見られる光景がまんま切り取られています。”Bloodline”というタイトルは、本作でも健在なのです。ただし、この3兄弟がいるのは殺人や麻薬取引が発覚するか否かという非常事態の真っただ中。親の介護や遺産で揉めることが関の山と言える普通の家庭とはまったく状況が違うのです。どれだけムカついても、自分は巻き込まれただけだと思っていても、運命共同体である3人は支え合わねば全員で倒れることとなるのですが、極度の疲労と緊張感の中で正常な判断能力を失っていき、最終的にはバラバラに分解して崩壊を待つしかないという状況にまで追い込まれます。この3人には、限定ジャンケン開催中に内輪揉めを起こす仲間に向かってカイジが言った「一頭のライオンが三つに分かれて生きてけるかって言ってんだ!」というセリフを送りたくなりました。 また、前シーズンでは「どうやらマイアミで事業に失敗したらしい」ということしか語られなかったダニーの過去が明らかにされ、それに伴いダニーの元嫁(『オブリビオン』でトム・クルーズの相手役を務めたアンドレア・ライズブローが脱ぎまくってます!)とその彼氏(ジョン・レグイザモが脱ぎまくってます!って、こちらは有難くないか)、そしてダニーの息子・ノーランが新キャラとして登場します。特にスポットを当てられるのがノーランなのですが、彼は父・ダニー同様、家族からまともな愛情を受けられなかったことで道を踏み外す一歩手前にいます。サスペンス面でもドラマ面でも彼が本シーズン最大のキーパーソンであり、彼を救うのか、ダニー同様に放り出してしまうのかという選択がレイバーン家の命運を左右することとなります。彼のドラマは大変に見応えがあったし、回想場面においてそもそもダニーが里帰りをするきっかけを作ったのがノーランだったことも明らかにされ(ダニーが里帰りしなければ、レイバーン家は表面上は幸福なままでいられた)、本作は複雑な因果に包まれたドラマであることがさらに強調されます。
[テレビ(吹替)] 8点(2016-07-11 13:03:05)
9.  ハウス・オブ・カード 野望の階段
最近のハリウッドは中国市場向けの超大作か低予算のドラマしか作られなくなり、大人の鑑賞に耐えて、かつ、それなりの娯楽性も確保された中規模予算の作品が壊滅状態になっています。その影響から、思うように作品を撮れなくなった映画界の人材がテレビドラマへ移動するという現象が起こっているのですが、そんな中でもとびきり豪華な布陣で製作されているのが本作です(ネット配信のみでテレビ放送されていない本作をテレビドラマと呼ぶべきかどうかは微妙なところですが)。 デヴィッド・フィンチャーとケヴィン・スペイシーが製作総指揮を務め、フィンチャー、ジェームズ・フォーリー、ジョエル・シュマッカーといったハリウッドの一流監督達が各話の演出を手掛けるという、史上最高とも言える人材により支えられているドラマなのです。これだけのメンツが揃えば視聴者側の期待も否応なしに高まるところだし、しかも本作は有料会員向けサービスの目玉コンテンツとして位置付けられていたこともあって「普通に面白い」程度では許してもらえない作品なのですが、本作にはそうして極限にまで高まった期待にきっちり応えるだけのクォリティが確保されているのが凄いところ。知的で面白く、そして深いのです。 主人公・フランク・アンダーウッドは剛腕で党をまとめあげる縁の下の力持ち的な役割を担ってきたという、イケイケ時代の小沢一郎みたいな政治家です。ギャレット・ウォーカーの大統領選に協力して見事ウォーカーを当選させたものの、協力の前提条件として約束されていたはずの閣僚ポジションが与えられなかったことから、ウォーカー大統領を失脚させるための策略を巡らせます。ただし、上司である大統領の首を直接取りに行くような危険な方法はとらず、表面上は忠実な部下として有能なところを見せながらも、こっそり裏で手を回してウォーカー肝いりの政策を潰したり、子飼いの議員を狙い撃ちにして破滅させたりといった陰湿な方法をとるのが面白いところです。そして、その過程をわかりやすくするために「ほら、バカが騙されたぞ」みたいな感じでフランクが第4の壁を越えて視聴者にホンネで話しかけてくるという演出が施されているのですが、ケヴィン・スペイシーの芸達者ぶりと相まって、これがまた面白いのです。 フランクはモラルをまったく持たない悪人なのですが、多くの視聴者は彼の非道に拍手喝采します。それは、フランクの戦いはまんま企業のヒエラルキーに当てはめて見ることが可能であり、ソリの合わない上司と自分を押し殺して付き合ったり、同期に先を越されたり、パっと出の若手からの突き上げを受けたり、社外から求められる責任に応えたりといった、世の中間管理職が抱えるストレスがこのドラマではまんま表現されているからです。ただし普通のサラリーマンと違うのは、自分の顔に泥を塗った相手をフランクは決して許さず、時間をかけてでも必ずやり返しにいくということ。しかも、自分の手は汚さないよう巧妙に小細工をしながら。そして、まんまと術中にはまって消えていくライバルに対して「騙されたお前が悪いんだ」と捨て台詞を吐く。こうした一連の過程が、このドラマに強烈なカタルシスを生んでいるのです。 また、モラルがないゆえに世の真理を突いた発言をフランクがすることも本作の見所となっており、実生活でも使いたくなる名セリフに溢れています。 ・権力の階段を上るゲームにルールはひとつだけ。狩るか狩られるかだ ・ライオンはシマウマを食べる前に許可なんて得ない ・権力者にノーと言うのは勇気がいる。だが敬意を勝ち取るには効果的な手だ ・正体を暴けば相手を言いなりにできる
[DVD(吹替)] 8点(2016-05-25 00:31:54)
10.  ベター・コール・ソウル
Netflixにて鑑賞。 『ブレイキング・バッド』の安易な便乗企画かと思っていたのですが、そこは天下のNetflixだけあってスピンオフでも一切手を抜かず、『ブレイキング・バッド』と同等のクォリティを維持しています。 一見するとインチキ臭い風貌でムダなおしゃべりが多く、何かにつけて「金、金」とうるさい印象はあるものの、ソウル・グッドマンは常に依頼人のために最善を尽くす男だったし、ウォルターやジェシーがどれだけ暴走してもまぁ何とかなってきたのは、彼がブレーンとして付いていたおかげだと言えます。本作に登場するのは弁護士になりたての頃のジミー・マッギル(ソウル・グッドマンの本名)ですが、当時のジミーは時系列的に後となる『ブレイキング・バッド』のソウル・グッドマンとは対照的に、弱者に味方する正義漢にして、筋が通れば無償での仕事も引き受ける熱血漢。本作では善良なジミー・マッギルが闇落ちしてソウル・グッドマンになるまでの物語が描かれます。 とにかく素晴らしいのがジミー・マッギルの人物像であり、前述の通りの正義漢ではあるものの、軽口を叩いたり、大きな目的のために小さな悪事を働いたりするため、正義の押し売りになっていないという点が絶妙でした。また、金が欲しいという本心は『ブレイキング・バッド』の頃と変わらないものの、本作のジミーは情に負けて損な仕事を引き受けてしまう人情家であり、頑張ってもなかなか報われない姿が笑いと哀愁を誘っています。ジミーを『ブレイキング・バッド』とはかけ離れた立ち位置に置きながらも、きちんと繋がった人物像としている点も素晴らしく、「ウォルターが変貌しすぎで、もはや別人格」との批判が一部にあった『ブレイキング・バッド』の反省はきちんと活かされているようです。 『ブレイキング・バッド』の良かった点も本作には活かされています。『ブレイキング・バッド』はキャラクター劇であり、息詰まる展開や、意外なドンデン返しという要素はあえて希薄にし、キャラクター達の物語をじっくり描くことで成功したドラマでしたが、本作も基本的には同様の路線を歩んでいます。ドラマの中心にあるものはあくまで人情劇であり、視聴者を煽るような急展開を入れていません。そのことが、本作に心地よいテンポと空気感をもたらしています。
[テレビ(吹替)] 8点(2016-05-24 09:08:19)
11.  ウエストワールド 《ネタバレ》 
【注意!豪快にネタバレしています】 映像作品では珍しく叙述トリックを使った作品となっており、同時進行で繰り広げられていると思い込んでいたドラマが、実は別の時系列の話でしたという大オチには心底驚かされました。映画を含めても、ラストでこれだけ驚かされた作品は近年なかったと思います。 ただし、本作について覚えているのは最終話の内容ばかりであり、見終わって数週間経ってからこのレビューを書いているのですが、他の9話はほとんど印象に残っていません。大オチのインパクトの強さはもちろんのこと、もっとコンパクトにできた話を10話という尺に拡大したために、中盤が妙に回りくどかったことも原因だったと思います。タンディ・ニュートンがラボで修理担当を手なづける件なんて、何度やってんだよって感じだったし。 世界観の脆弱性も気になりました。肝心のウエストワールドに「実在していたら、ぜひ行ってみたい」と思わせるような魅力がないし、高価なホストを毎日毎日ぶっ殺されて、それを直すために大勢のスタッフを雇っているような高コストのテーマパークがどうやって利益を出しているのかも見えてきません。客は1日4万ドルもの入場料を払わされているとは言え、どう考えてもそれ以上の運営費がかかってるだろという見栄えになっているのです。 また、これは日本版特有の欠点ではあるのですが、局部にボカシを入れるという処理は作品の価値を大きく棄損していました。テーマパーク内では人間同様に生き生きと活動していたホスト達が、バックヤードでは完全にモノ扱いされているという落差を表現するために局部モロ出しカットは重要だったのですが、日本国内でのリリースを担当しているワーナーはそれを隠しちゃっているのです。暴力描写や性的描写が多く、局部にボカシさえ入れれば視聴制限が大幅に緩和されるという素材でもないのに、なぜこんな無粋な加工をしたのか不思議で仕方ありません。
[テレビ(吹替)] 7点(2018-05-24 18:46:22)
12.  ゴッドレス -神の消えた町- 《ネタバレ》 
『マイノリティ・リポート』や『LOGAN/ローガン』等の名脚本家として知られるスコット・フランクが劇場用映画として企画していたものの、プロデューサーのスティーヴン・ソダーバーグから「人物描写を掘り下げるためにはドラマフォーマットの方が良い」という助言を受けて7話のミニシリーズとして制作したという本作。 合計7時間かけてひとつのドラマが描かれるという点が本作の特色であり、各エピソードに見せ場が仕込まれている他の連続ドラマとは根本的に異なった作りとなっています。この作りが、主に回想で構成された中盤辺りで猛烈に退屈させられる原因にはなっているものの、他方で最終話に向けて一直線に盛り上がっていき、ピークに達したところで大銃撃戦が始まるという娯楽作として理想的な流れを生み出せており、一長一短ある構成だったと思います。 内容は、流れ者がならず者集団と戦うという西部劇としてはオーソドックスなストーリーがあり、流れ者と女主人との交流や、腰抜け扱いされていた保安官の復権といった、これまたオーソドックスなサブプロットがあるという、まさに王道に従った内容ながら、炭鉱事故でほとんどの男が死に、女性だけとなった集落が舞台という点にオリジナリティを入れてきています。王道と同じなのに王道とはちょっと違うというこのサジ加減は絶妙だったと思います。 また、悪役のキャラが非常に立っているという点も本作の強みです。一つの集落を皆殺しにし子供にも容赦をしないという凶暴性と、行動パターンの不可解さとで、次の瞬間にどんな恐ろしいことを仕出かすのかが分からない大悪党・フランク・グリフィンがとにかく素晴らしすぎるのです。その生い立ちは凄惨を極め、実の親を惨殺したカルト教団が育ての親となったことでその精神や価値観を完璧にぶっ壊されて大悪党となったものの、また別の場面にて自身の身の安全も顧みずに天然痘患者の介抱をする様を見るに、本来の彼は善人であったことが伺い知れます。この複雑な悪党を演じるジェフ・ダニエルズのはまり具合も素晴らしく、20年前には『Mr.ダマー』でジム・キャリーと一緒にバカしてた俳優とは思えないほどの重厚感がありました。 他方で流れ者のロイ・グッドは類型的なヒーローにとどまっているため、やや魅力薄。ちょっと前までグリフィンの手下として悪行にも手を染めていたはずなのに、恐ろしい部分を全然覗かせないので平板なキャラクターとなっています。善人になろうと努力するものの、ふとしたきっかけでかつての凶暴性を垣間見せて周囲をドン引きさせるようなエピソードがあっても良かったと思うのですが。また、父親のように慕っていたグリフィンの元を離れた経緯もはっきりと説明されないために、二人の間のドラマがうまく流れていませんでした。
[テレビ(吹替)] 7点(2018-05-24 18:45:32)
13.  マンハント 《ネタバレ》 
ディスカバリーチャンネル製作の実録ものということで、エンタメに振り切れ過ぎず良い意味で生真面目な内容に徹している点に好感が持てました。時代の再現度や役者のなりきり具合はかなりのレベルに達しており、一目で「このドラマはレベルが違う」ということが分かります。  主人公はFBIのプロファイラーであるジム。事件から2年後、世捨て人の如く山奥に引きこもり、自給自足の生活を送るヒゲボーボーの男こそがジムであり、どうやら彼は何かに激しく憤っているということが分かります。次に物語は2年前へと遡り、FBIの訓練課程を最優秀で修了し、精鋭揃いのユナボマー対策チームにいきなり配属された前途洋々たるジムの姿がそこにあります。2年間でジムを変貌させたものとは一体何だったのか。かなり引きの強い序盤であり、ここで一気に心をつかまれました。 なお、ジムが修了した訓練過程は最近見た『マインドハンター』で創立された心理捜査課のものであり、舞台もマインドハンターと同じくクァンティコ。個人的にはこの時点でテンション高めになりました。「ホールデン、君の部署は立派に育ってるぞ」と。  捜査の過程では大掛かりな見せ場や息詰まるような展開はないものの、チームに配属された新人捜査官の苦悩が克明に描かれることから、職業ドラマとして非常によくできています。「君の手腕に期待している」と言われてチームに入ったのに、実務を開始すると自分の言うことを全然聞いてもらえない。それどころか地道なリサーチの末の提案に上司全員から一斉に噛みつかれ、自分はチームの邪魔をしているのではないかと思うことすらある。多くの人が経験するような新人の苦悩が描かれるため、ジムへの感情移入が非常に容易でした。 また、上司側の視点でも物語は描かれます。チームを取りまとめるアッカーマン主任捜査官にとってプロファイリングは犯人特定のための手法のひとつに過ぎず、それがすべてではないのです。そうした視点の違いこそが専門職員であるジムとの間に溝を作っているのですが、この摩擦もあらゆる組織で見られるものであり、組織論的な面で興味深く見ることが出来ました。 そんなFBIの組織論として最大の盛り上がりを見せるのが第4話であり、犯人の要求通り新聞に彼の論文を全文掲載し、新聞購入者という膨大な母集団を国中のFBI捜査官を動員して個別にマークするというFBI史上最大規模の作戦を実行するか否かの決断が下されるのですが、もし失敗すればFBIはテロリストの要求に屈したという汚点を残し、アッカーマンのキャリアは終わり。作戦の効力に対してのネガティブな見解も出ている中で、この大博打を打つかどうかの決断をアッカーマンは迫られます。失敗しても次がある下っ端の提案者と、代表者として組織を背負っているチームリーダーの立場の違いを思い知らされる回であり、絶対に成功すると確信している作戦の決裁がとれず苛立つジムと、失敗のリスクまでを考慮するアッカーマンの両方に激しく感情移入しながら見ることができました。  また、本作は犯人であるカジンスキーのドラマとしても優れています。本心では人を求めているもののうまく振る舞えず、高い自我との間の絶望的な差異を、他者を傷つけ優位に立つという行為で埋めていた孤独な男。そんな彼の心情が描写されたのが第6話であり、爆弾魔としての自分の実績を誇らしく思う一方で、もしその長い時間と膨大な労力を人間関係を改善させるという方向性で行使していれば、どれほど人生が豊かになっただろうかと後悔する様は、見ている者の心をも深く抉ります。  他方、残念だったのがエピローグである第8話でした。前述した通り、本作は1997年を舞台にした現在パートと、1995年を舞台にした過去パートに分かれており、この最終話は現在パートに位置付けられるエピソードなのですが、第7話からの接続が悪いためか過去パートと繋がっているエピソードに見えてしまっており、しばらくは何の話をしているのか分かりませんでした。 また、第1話の掴み部分である、2年間でジムがなぜ世捨て人になったのかの説明が最後までなかったため、シリーズ全体を通した問題提起と結論がうまく整合していないという点も気になりました。何か重要な情報を見落としたのかと思って第7話から見返したものの特に見落としはなく、どうもこのドラマには一部の重要な情報が欠落しているようです。第7話までのクォリティが高かった分、ドラマを締めきれていない最終話の不出来が余計に目立っています。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-12-30 08:44:53)
14.  マインドハンター 《ネタバレ》 
ジャンルとしては猟奇殺人ものであり、かつ刑事ものではあるものの、犯人との息詰まる攻防戦や視聴者の目を楽しませるような大捕り物は皆無。本編のほとんどが会話劇である上に、視聴者をあっと驚かせるような展開があるわけでもなく、どこまでも地味な作風です。他の海外ドラマのようについつい一気見させられることもなく、1か月をかけてようやく全10話を見終わりました。 ではつまらなかったのかというと決してそういうわけではなく、不思議な魅力に満ちた作品だったと言えます。これはおかしな見方なのかもしれませんが、主題である猟奇殺人や犯罪プロファイリングにはほとんど興味を引かれなかった一方で、主人公ホールデンのサラリーマン的な面に物凄く感情移入しながら見ることができました。 ホールデンはFBI捜査官ではあるものの、アクション映画に出てくるようないかにもなエリート捜査官というタイプではなく、むしろ小役人のような雰囲気を漂わせています。そんな彼がプロファイリングを用いた捜査に着目し、ベテランではあるがほぼ窓際状態にあるビル捜査官と組んで心理捜査課を立ち上げるのですが、これがビジネスにおける社内ベンチャー立ち上げのようなのです。出会うほとんどの人に新しい試みを理解されないばかりか、「凶悪犯は人間の屑だ。そんな屑の心理を理解しようとすること自体が良くないことだ」とその趣旨を曲解された上で批判まで受ける始末であり、立ち上げ当初はかなり苦労させられます。この辺りは、新規事業立ち上げに参加した私自身の経験とかなり重なる部分もあって、他人事とは思えないほど感情移入させられました。 中盤以降はそんな彼らの努力が成果を挙げ始め、犯人逮捕への貢献や、他の機関からの注目を集め始めます。人手を増やしたくて募集をかければ誰を落とそうかと迷うほど採用希望者が殺到するのですが、これもまたベンチャーっぽいんですよね。そんな中でホールデンは自身の編み出した手法にかなりの自信を持ち、内面から溢れ出てくる意欲や行動力を抑え切れなくなります。何にでも「俺は俺は」と口を挟み、「現場での臨機応変」という大義名分を盾に上司からの指示や組織の決まり事を無視するようになり、さらには仕事での勢いがプライベートにまで悪い形で波及し、全方位に対してウザい奴になるのですが、恥ずかしながらこの辺りの心境も私はよく理解できました。仕事が乗りに乗っており、客観的な成果も出ている時って24時間アドレナリン出っ放しで、周囲に対する態度もついつい自己中心的なものになっていきます。本人は有能な自分が関与することが全体のためになっていると思って行動しているのですが、「俺の言うことだけ聞いてればいいんだよ」という本音を隠しもしない態度が周囲との軋轢を生んでおり、味方をどんどん失っていく。社会人をやっていると、こういう時期ってありますよね。 ホールデンのそうした逸脱がはっきりと露呈したのが第8話であり、シリアルキラーや犯罪捜査とは直接関わりのない異色回でありながら、私はこれが現時点におけるベストエピソードだと感じました。授業への協力でたまたま訪れた小学校で校長の異常行動を発見。この校長はサイコパスであり、今止めなければ凶悪犯罪を起こす可能性ありとホールデンは判断します。これまで直感に従い行動して成果を挙げてきたホールデンは今回も自分自身の勘に従うのですが、まだ何の事件も起こしておらず、かつ、社会的ステータスが高く世間一般では「信頼できる人」とされている校長の身辺調査をFBIの権威を行使して実施するなど前代未聞の事態であり、ホールデンは多くの批判を受けます。それでも彼は自身の判断を曲げることはなく、事件を起こしていない校長を社会的な破滅にまで追い込むのですが、ホールデンによって悲劇が未然に防がれたのか、それとも落ち度のない民間人の人生が無駄に奪われてしまったのかは誰にも分かりません。 このエピソードではホールデンの逸脱と同時に、予防の難しさも描かれています。例えば児童虐待やストーカー犯罪で悲劇的な被害が出た際に、児童相談所や警察は事前に相談を受けていたのになぜ防げなかったのかという批判がよく聞かれます。ただしそれは後知恵であって、事前の相談レベルで先を見通すことは非常に難しいし、予防に走り過ぎれば本来は変えてはいけない人生を狂わせる可能性だってある。そうした難しさが見事に描かれた普遍性の高いエピソードだったと言えます。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-12-19 17:20:53)(良:1票)
15.  ザ・ミスト 《ネタバレ》 
2007年のフランク・ダラボン版は密室で自制心を失っていく普通の人達の恐ろしさや、映画史上最恐クラスの鬱エンディングなど素晴らしすぎる作品であり、生涯見てきた映画の中でもトップ5に入るほどの重要作なのですが、そのダラボン版から10年を経て制作された本作にも興味津々でした。 世間的には非常に評判が悪く、シーズン2以降の制作がキャンセルされるほどの不評を買った作品なのですが、私は「どうやってもダラボン版を超えることは不可能」という期待値で見たためか、これが物凄く楽しめました。少なくとも、アメリカドラマの標準作のレベルにはちゃんと達していると思います。 ダラボン版との最大の相違点は、病院組・教会組・ショッピングモール組と舞台が3つに分かれ、多少の移動の自由もできたことから街全体の物語になったことであり、それぞれの舞台で狂気が同時多発的に発生していくことから、特に後半の怒涛の勢いには圧倒されました。ラスト4話は平日夜にも関わらず一気見してしまったほどです。おかげで翌日の仕事は上の空でしたが。 こうした舞台の広がりが最大限に活かされたのが最終話であり、3つの舞台の登場人物達が一堂に会したことによる最高潮の盛り上がりや、それまで閉鎖空間でそれぞれがおかしくなっていたところに、別の舞台の人間がやってきたことで「お前ら、そんなバカなことで揉めてんの」とお互い相手に対しては冷静な視点での批評が発生するという面白さがありました。特に、婆さんのインチキ宗教にハマっていたコナー署長が、舞台を変えて第三者と一緒にこの婆さんの説教を聞くとただの戯言であることに気付き、こんなものに自分は熱狂し、何人も殺した上に、息子まで失ったのかと呆然とする様には、「ほら、みたことか」という歪んだカタルシスがありました。この辺りの展開は、同じく一時期の混乱から冷静な判断能力を失って取り返しのつかないミスを犯した父親という点で、ダラボン版へのオマージュとして解釈しました。 問題点は、まず霧の規則性がよく分からないということ。巨大昆虫という分かりやすい脅威が発生していたダラボン版とは違い、本作の霧には潜在意識を具現化する機能があるようなのですが、苦手な知人や故人といった従前の人間関係に起因する脅威に襲われる者もいれば、虫や大蛇といった単純な脅威に襲われる者もいる。霧に入ってほんの数歩で絶命する者もいれば、霧の中でそこそこの距離を移動しても平気な者や、脅威に打ち勝って脱出できる者もいる。このように描写にムラがあるため、霧に入ることがどれほど危険なことなのかがピンときませんでした。 また、悪い人間は大勢いる一方で、感情移入可能な人間がほぼいないために、特に中盤には見続けることが苦しい回もありました。ヤク中の女なんて身勝手な行動が多くてイライラさせられるのですが、通常のドラマでは、前半で足を引っ張っていた人物が後半で大活躍したり、こういう人物のイレギュラーな行動が大きな転換点を作り出したりするものですが、彼女については一貫してただ邪魔をしているだけの味方。物凄くイライラさせられました。その他、「幼い娘を亡くした母親から自分は相当な恨みを買っている」という重大な認識を持たずにフラフラと勝手な行動を繰り返し、案の定危険にさらされる主人公の娘や、意図を説明せずに強硬策をとるために娘やその彼氏の反発を受けて余計に事態を悪化させる主人公の嫁など、バカな人がバカなことをしでかした結果として物事が進んでいくという、この手の作品でやって欲しくない展開が多いので疲れてしまいました。 あと素朴な疑問なのですが、3つの舞台において物資面でもっとも恵まれているはずのショッピングモールでまず食料が底を突いたのはなぜなんでしょうか。それに付随して、食料が底を突き、このままここに留まっても後先はないことが分かりきっている状態で、主人公一家をモールから追放する、しないでひと悶着している様が理解不能でした。 前述の通り、本作はシリーズ継続がキャンセルされたのですが、まだまだ多くの構想はありますよという状況で終わってしまったことは残念でした。アラも多かったものの、致命傷レベルの問題ではないのでシーズン2以降で軌道修正はできただろうし、できれば続きも観たかったです。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-11-04 01:02:02)(良:1票)
16.  ヴァイキング~海の覇者たち~ 《ネタバレ》 
Netflixの『ラスト・キングダム』が面白かったので、同時代をヴァイキングの側から扱った本作も視聴しました。 主人公のラグナル・ロズブロークはスカンジナビアの伝説的な英雄。ただしその実在性はかなり疑わしく、日本で言う卑弥呼みたいな位置づけにある人物なのですが、歴史と伝説の狭間の存在という点が読者・視聴者のロマンを余計にかき立てるのか、過去にも様々な媒体で扱われてきました。本シーズンでは農民出身のラグナルが首長になるまでの物語が描かれます。 「首長、今年はどこを略奪しましょうか」と、えらく物騒なことを村人全員で話し合う第一話からヴァイキング感全開。デカくて不潔で豪快で、「己の命よりも武勲を優先」という真っ正直な戦士達が基本ガハガハ言ってる内容なのですが、武勲を上げる中で村内での注目を集めるようになったラグナルと、そのラグナルに対して警戒心を抱くようになった現首長との対立が鮮明になった辺りから、ドラマは一筋縄ではいかなくなります。 この首長からラグナルへの嫌がらせがとにかく卑劣で、豪快な戦士に対してどんな汚いことをやってくるんだとイライラさせられました。対するラグナルは純粋一直線。この時点では権力欲や名誉欲はほとんどなく、だからこそ自分が首長から狙われている理由もよくわかっておらず、二度目の略奪では「これだけの財宝を持ち帰るのだから、首長からも褒めてもらえるはず」などと呑気に考えているわけです。それ逆だから。ラグナルが成功すればするほど、首長は焦ってラグナルへの攻撃を強める。もし二度目の略奪が失敗に終わっていれば、首長は彼へのマークを緩めたはずです。 ドラマの進行とともに、首長の背景も明らかになってきます。元はラグナルのように勇猛果敢な戦士であり、おそらくは実力でのし上がってきた人物だったが、息子二人を失ったことから守りの姿勢が強くなり、そのうち己の弱体化を周囲に悟られることへの恐怖心から謀略を張り巡らす人物になってしまった。盛りの過ぎたベテランと伸び盛りの若手という、多くの組織に見られる対立構造を持ち込んだことで、本作は歴史ドラマでありながらも時代性に縛られない普遍性を獲得しました。決して褒められたものではないものの、首長の立場にも一定の理解ができるのです。 また、本作はヴァイキングという世界史上でも特異な存在の理解にも役立ちます。彼らの信仰・文化・風俗が克明に描かれているし、セットや小道具はかなりよく作り込まれています。スカンジナビアの自然や冬の厳しさもきちんと捉えられており、これまで教科書などでしか読んでこなかった存在を、目で見ることができます。これは見ごたえがありました。 問題は、上記の通りヴァイキングの生活の描写に予算が費やされたためか、戦闘シーンが恐ろしく安っぽかったこと。前述した『ラスト・キングダム』ではウェセックス軍vsヴァイキング軍の大合戦が見られたのに対して、本作では数十人のヴァイキングが英国の海岸線を脅かすのみ。これだけこじんまりとした相手なら英国側も簡単に撃退できただろうと思う程度のスケールであり、侵略者としてのヴァイキングの描写には不満が残りました。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-08-05 22:49:35)
17.  ラスト・キングダム 《ネタバレ》 
展開のスピーディーさは前シーズン以上となっており、毎回のように見せ場のある作風にはより磨きがかかっています。とにかく娯楽性が高くて楽しめるし、忍従を重ねた末に憎き敵を成敗するという時代劇特有のカタルシスにも溢れており、全8話があっという間に過ぎました。例えば主人公が味方の裏切りによって奴隷の身にまで落とされ、「さて、どうなる」となっても、次の回には救援が始まるという手際の良さ。かといって描写が不足しているわけでもなく、視聴者に伝えるべき感情はきちんと伝えられており、時間の使い方が上手いなと感心させられました。 また、ドラマ面においても本作は充実しています。前シーズンでは一匹狼だった主人公が成長して組織人となるのですが、上司とうまく折り合えずに実力を発揮しきれないという点には、多くのサラリーマンが共感できるのではないでしょうか。他のサクソン人とは異なるアイデンティティを持つという自分自身では変えようのない背景から、前シーズンでの態度の悪さという自分の行為のツケとも言える要因に至るまで、実に多くのしがらみが彼を苦しめ、窮地に追い込みます。また、「あいつは実力があるのだから使い続けましょうよ」と支持を表明してくれる同僚もいれば、批判者側に回って敵以上に厄介な障害となる味方も現れる。この辺りもあらゆる組織に当てはめて見ることが可能であり、ドラマの間口の広さにも感心させられました。 問題点は前シーズンと同じく、英国史に名を残す名君・アルフレッド王に威厳やカリスマ性が感じられないこと。感情的な理由から優秀な主人公を邪険に扱っているようにしか見えないのですが、実際には、七王国を束ねるためにキリスト教というすべてのサクソン人に共通する精神的支柱を強く押し出すという大きな戦略が彼にはあり(だからこそ、バイキングであっても後に改宗した者には寛大に接しているわけです)、そうした文脈の前では、頑なに異教を手放さない主人公を重用するわけにもいかないという事情があったはず。善悪では割り切れないそうした難しいジャッジを視聴者にも突き付け、「あなたがウェセックス王ならどうしますか」と考えさせることでより深みのあるドラマになりえたのに、そこが放棄された点は勿体ないと感じました。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-08-05 22:48:28)
18.  ストレンジャー・シングス 未知の世界
スピルバーグプロデュース作品を連想させる少年の冒険物語と、高校生の男女が超常現象に挑むというSFホラーにありがちな構図を組み合わせ、それらをジョン・カーペンター風の音楽でデコレートした「ザ・80年代」なSFドラマ。しかも大人陣営にはウィノナ・ライダーとマシュー・モディーンという80年代青春映画の大スター達を起用する念の入れようであり、大きなお友達を喜ばせる作風に徹しています。 数本分の映画を一つにまとめて違和感なく再構成したような内容であり、ダファー兄弟の構成力の高さには感心したものの、反面、定石通りに進んでいくためミステリーものの割には展開に意外性がなく、あらすじを聞いただけでおおよその人が連想する予定調和なオチとなってしまった点はマイナスでした。 今年のハロウィーンにシーズン2がリリースされる予定となっていますが、こちらについては21世紀のストーリーテリングで80年代の作品を再構築するような大胆な作風を期待します。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-07-01 09:40:42)
19.  FARGO/ファーゴ
シーズン1を奇跡的な傑作だとすると、このシーズン2は普通に面白いドラマ。充分に面白いものの、奇跡が二度は続かなかったようです。 内容はシーズン1とほぼ同じ。ヤクザ同士の抗争と、思いがけずその抗争に巻き込まれる一般人、そして地域の治安を守る保安官という3つの物語で構成されています。さらに、キツめのバイオレンスと、笑っていいのか悪いのか分からないタイミングで繰り出されるユーモアという味付けもシーズン1と共通しており、シーズン1を気に入った人に提供されるおかわりとしては適正な内容となっています。ちゃんと楽しめました。 ただし、一般人の物語を主・ヤクザの物語を副としたシーズン1とは対照的に、ヤクザの物語を主としている点が本シーズンの大きな特徴であり、この変更のために、やんごとなき事態に巻き込まれて抑え込まれていた本性が爆発する小市民というシーズン1における重要な要素が丸ごとなくなっています。 また、感情も人間として積み重ねてきた歴史もなく、単なる暴力のかたまりでしかない殺し屋・マルヴォという絶対悪がシーズン1の異様な空気に大きく貢献していたのですが、本シーズンのヤクザもの達には全員それなりの事情や背景があり、ちゃんと人間として描かれている点も、本作を平凡にする要因となっています。マルヴォに相当すると思われるハンジーにおいても、彼を強力な殺し屋に変貌させた背景がちゃんと説明されるために、その存在からは超越性や神秘性が失われています。さらには、UFOやロナルド・レーガンといった突飛なアイコンもうまく本筋と絡んでおらず、企画倒れに終わっている要素がいくつか見られました。 良かった点としては、シーズン1と繋がった世界観であり、何人かの登場人物はシーズン1と共通しているものの、本作単独でもまったく問題なく成立する内容であり、1年前に見たシーズン1の復習が必要なかったという点が挙げられます。最近は前シーズンの内容を細部まで覚えておかないと新しい情報を理解できないドラマが多く、好きなんだけど途中リタイアを余儀なくされる作品も出始めているため(「ゲーム・オブ・スローンズ」「ブラッドライン」)、1シーズンを一まとまりとした本作の作りには大変好感を持てました。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-07-01 09:39:32)
20.  ラスト・キングダム 《ネタバレ》 
NETFLIXとBBCの共同制作ということで堅苦しい時代劇を予想していたのですが、これがスピーディーな展開で見せるライトな作風であり、全8話をサクっと見ることができました。とはいえ、ブリトン人・アングロサクソン・バイキングの関係性や、アルフレッド王の史実上の功績が頭の片隅にないと何の話をしてるんだか分からない部分もあり、中世以前の英国史の勉強をさせられてこなかった日本人にとっては厄介な題材であることに変わりはありませんが。私は第一話を見終わった時点でwikipediaを見に行きました。 主人公はサクソン人の出自だがバイキングとの生活で人格形成されており、どちらの社会においてもよそ者扱いを受けてアイデンティティに苦しむ・・・のかと思いきや、何事にも動じない大胆な性格と、どこに行っても仲間がおり、行く先々で恋に落ちるというリア充ぶりから、悲壮感は物凄く少ないです。わずか8話中でヒロイン格の女性が3人も次々に登場し、それぞれとマジ恋愛するという中世のジェームズ・ボンドぶりは只事ではなく、かつ、どの恋愛も悲しい結末を迎えるものの、すぐに次の恋が起こるから重くなり過ぎないというロマンスパートの味付けはかなり独特でした。 戦闘パートは素晴らしい迫力だし、アングロサクソンとバイキングの戦い方の違いも視覚化されていることから、情報量が多くて楽しめました。毎回のように山場が設けられているというサービス精神も嬉しく、NETFLIXの安定した仕事が光っています。 問題点は、英国史上に燦然と名を残すアルフレッド王のカリスマ性がやや不足していたことと、宗教の扱いに不整合が見られた点です。キリスト教に対してはやたら批判的な姿勢をとる一方で、ケルト人の土着宗教は普通に奇跡を起こしたりと、宗教を否定したいのか肯定したいのかよく分からない点がマイナスでした。あと、アルフレッドの奥さんウザすぎ。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-06-29 13:17:51)
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