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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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1.  ウォークラフト 《ネタバレ》 
まずウーヴェ・ボルがゲーム会社に映画化を持ち掛けたものの、「お前にだけは絶対に撮らせない」と門前払いを受けたというちょっと良い話もあるこの企画。代わって高い評価を受けているダンカン・ジョーンズが脚本と監督を引き受けたことで、本作はかなりレベルの高い作品となっています。中世風の世界におけるファンタジー作品は『ロード・オブ・ザ・リング』関連を除けばほぼ失敗作ばかりであり、ハリウッドにとっては鬼門ともいえるジャンルなのですが、ジョーンズは原作ゲームのデザイナーを多数起用するとともに、ポストプロダクションに20か月もかけてビジュアルを練り上げ、なかなか見ごたえのある世界観を構築しているのです。 話の内容もかなりの熱量を持っています。テンションの高い合戦シーンに、多くの登場人物が誰かしら身内を失うという情念の入り混じったドラマ。また、きっかけは善意とは言え、禁忌とされる力に手を出して世界を危機に陥れたことを後悔しながら死ぬメディヴと、一度は責任から逃げ出したものの、師匠の臨終の場で守護者としての自覚に目覚めたカドガーのドラマには胸を打たれるものがありました。これまでセンス良い系として通ってきたジョーンズが、これほどストレートな娯楽作を作ったことは意外でした。 ただし問題点もあります。主人公の一人であるデュロタンはいち早く闇の陰謀に気づき、不毛な戦争をさせられそうになっているオークと人類を和解させようと奔走し、最後には非業の死を遂げるものの、彼の死が大勢にまるで影響を与えていないのです。彼が命をかけて挑んだ決闘ではオーク達の心を動かしたかのように見えたものの、結局は何も変わらないまま戦争が始まってしまう。同様に、人間側の王の自己犠牲もまるで報われておらず、一部のドラマがうまく流れていません。これらは続編へ向けた伏線なのかもしれませんが、単独作品としての満足度を下げる方向に作用しているのでは元も子もありません。またポリティカルコレクトネスへの配慮からか、ヨーロッパ風の甲冑を来た軍勢の中に黒人や東洋人が混じっていたことは、せっかくの世界観をぶち壊しにしています。有色人種の姿が見えないと脊髄反射的に難癖をつけてくる一部のクレーマーのせいで、映画の完成度が損なわれていることは残念でした。 以上の問題点が祟ってか批評家からは否定的なレビューが目立ち、興行成績は損益分岐点ギリギリという期待外れの結果に終わりましたが、これだけ素晴らしい世界観や高い技術、張り巡らされた伏線を捨てるには惜しい企画です。ダンカン・ジョーンズも続投を切望していることだし、お願いだから続編を作ってね、トーマス・タル。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2017-01-14 21:43:11)(良:1票)
2.  ウォーリアー
片や、難病にかかった娘を抱え、何が何でも金を稼がなければならない高校教師の兄・ブレンダン。片や、身内に恵まれず、新たな家族と慕った海兵隊にもある事情から居られなくなり、居場所を求めてもっとも得意なことに戻ってきた弟・トミー。この設定の時点でグっときました。どちらか片方の主人公だけでも充分に映画が成立するところですが、本作ではこの二人のドラマが同時進行で展開する上に、父と子の確執、兄弟の確執、家族愛、男の友情など縦糸、横糸が走りまくった重層的な構造となっています。『ロッキー』『レイジング・ブル』『シンデレラマン』の良いとこ取りをして一本に凝縮したような作品なのですが、これが破綻せずひとつのドラマとしてちゃんと成立しているという神がかり的な構成には驚きました。 兄弟のファイトスタイルは、それぞれの性格や歩んできた人生を象徴したものとなっています。格闘家としてのセンスは人並みであり、若い頃には父親からもトレーナーからも期待されていなかった兄は、相手の攻撃にひたすら耐えた後に一瞬のスキを突くというスタイルをとります。他方、天性の才能と恵まれた体格(トム・ハーディの肉体改造の凄さ!)を持つ弟は、出会い頭で一気に勝負を決めにいきます。どちらのスタイルも映画映えするのですが、本作ではこれを交互に見せられるので、2本のアクション映画をまとめて見たようなボリューム感がありました。 本作の要となるのは、兄弟それぞれのエピソードに絡んでくる父・パディですが、これを演じるニック・ノルティの演技は「素晴らしい!」の一言でした。トミーが自分を頼って戻ってきたことを喜んだものの、そのトミーの口から出て来るのは自分を非難する言葉ばかり。その度に曇るノルティの表情が印象的でした。一度破綻した家族関係をやり直せるかもという希望を抱いた分だけ、心を閉ざし続けるトミーの態度が彼に突き刺さります。基本的には消せぬ過去に追い込まれる非力な老人なのですが、時に、かつてメチャクチャした人間ならではの凄みを匂わせてくるというサジ加減も絶妙で、この人物を見ているだけでも楽しめました。
[DVD(吹替)] 8点(2015-08-31 01:24:11)(良:1票)
3.  ウルフ・オブ・ウォールストリート
いかにもオリバー・ストーンが扱いそうな題材から経済ネタをスッパリと削ぎ落し、下品な男が成り上がり、そして破滅するまでを描く簡単な物語とした脚色が絶品でした。舞台は変わるものの、やってることは『グッドフェローズ』や『カジノ』とまったく同様であり、スコセッシは自分の得意とするフィールドに題材を寄せて来ているのです。『ソーシャル・ネットワーク』や『マージン・コール』等、出来の良い経済映画というものは経済そのものを扱わず、これを観客にとっても馴染みのある別の物語に置き換えます。本作もその点で成功を収めています。。。 本編で起こることは予告編で描かれた通りのことであり、あっと驚くサプライズや、後半での方向転換等は一切ありません。これほどシンプルな話でありながら、179分という大変な長尺を一瞬の緩みもなく見せ切ったスコセッシの絶倫ぶりには恐れ入りました。上映時間の8割を占めるのは成金による下品なドンチャン騒ぎであり、そこにはアクション映画のような視覚的興奮も、ドラマ映画のような深い含蓄もないのに、それでも観客の目を画面に釘付けにしてしまうのです。この演出のパワーは本当にトンデモないものだと思いました。。。 もちろん、締めるべきところは締めてきます。普段は愚かであっても、社員の前で演説をぶつ時の主人公の表情や言葉には大変な魅力と牽引力があって、「確かにこの人は成功するだろう」という説得力を持たせているし、その主人公が破滅に至った道についても、「ここで引いていれば助かっていたのに」という運命を分けたラインを観客にもはっきりとわかる形で提示したことで、諸行無常の世界を描き出すことに成功しています。。。 以上、本編は文句なしでしたが、ボカシ入りまくりの日本公開版の無惨な有様は何とかならなかったのでしょうか。本来、スコセッシは映画におけるヌードを嫌う監督です。「裸が映った途端に物語がピタっと止まってしまう」との理由から、『タクシードライバー』や『エイジ・オブ・イノセンス』のようなセクシャルな題材にすらヌードを登場させてこなかったのですが、本作ではその主義を曲げており、ここで登場する裸には明らかな演出意図があるのです。にも関わらず、これをボカシで勝手に隠してしまった日本の配給会社の判断には納得がいきません。18禁という厳しい年齢制限を設けているのだから、その規制で十分ではありませんか。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2014-08-04 01:21:14)(良:2票)
4.  運命の女(2002)
エロサスペンスの巨匠・エイドリアン・ライン監督によるエロサスペンスということで大した期待もなく見始めたのですが、これが目の覚めるほど面白い映画だったのでビックリこきました。脚本・演出・演技のすべてが高いレベルでまとまっており、大した見せ場がなくとも、それぞれのパフォーマンスの高さのみで2時間を見せきっているのです。。。 本作の脚本を担当したのは、『普通の人々』のアルヴィン・サージェントと、『アポロ13』のウィリアム・ブロイルズ・Jr。トップクラスの脚本家が二人も名を連ねているという、何とも豪華な布陣となっています。人物描写を得意とするサージェントは、主人公・コニーの心境を実に丁寧に描写しており、「不倫妻の自業自得」と思われては元も子もないこの物語において、観客に共感の余地を与えています。他方、複雑な物語の交通整理に長けたブロイルズは、幸せな家庭が徐々に追い込まれていく様をわかりやすい形で観客に伝えています。。。 このジャンルの重鎮であるエイドリアン・ラインによる演出は、抜群の安定感です。若々しくてはいけないが、おばさん臭くてもいけないという難しいポジションにある主人公を、誰が見ても美しいと感じられるように画面に収めているのです。『ナインハーフ』などと比較すると露出度はかなり抑え目であるものの、それでも濡れ場はかなりエロく撮られているし、何気ない日常の風景もいちいち美しく、本作は、彼のフィルモグラフィの総決算とも言うべき仕上がりとなっています。。。 主人公を演じるダイアン・レインは、賞とは無縁のこのジャンルにてオスカーノミネートという快挙を成し遂げましたが、確かに、彼女の演技はズバ抜けています。上述の通り、「不倫妻の自業自得」と思われてはおしまいとなる本作において、彼女はひとつひとつの感情を丁寧に表現することにより、不倫に溺れる主人公の心境を観客に肯定させているのです。彼女の相手役となるオリヴィエ・マルティネスの間男ぶりや、リチャード・ギアの小市民ぶりもそれぞれ板に付いており、登場人物全員が悪いんだけど、本当の悪人は一人もいないという本作の構図が、見事に形となっています。。。 ただし、意味不明な邦題だけは何とかならんのでしょうか。当時のフォックスジャパンは奔放すぎるネーミングセンスにより不評を買っていましたが、作品の本質をとらえない邦題をつけることはやめてほしいものです。
[DVD(吹替)] 8点(2014-01-08 01:43:16)(良:1票)
5.  ウェイバック -脱出6500km- 《ネタバレ》 
共産主義国家を地獄として描いている上に、独立国家だった時代のチベットが登場することがネックになったのか、世界的な巨匠の最新作であるにも関わらず完成から日本上陸まで2年も寝かされた挙句に、ロクな宣伝もなく捨てるように公開されてしまった不運な映画ですが、肝心の内容はメチャクチャによくできています。『マスター&コマンダー』でも歴史考証にこだわりまくったピーター・ウィアーが、ナショナルジオグラフィックの協力の下に製作した映画ですから、とにかく映像の迫力や説得力が段違い。さらには暑さ寒さや飢餓感・疲労感の表現も素晴らしいレベルに達しており、観客も過酷な旅を追体験することができます。。。 ドラマの構成も非常に自制的かつ良心的であると感じました。露悪的な描写は控えめだし、追っ手とのアクション等の娯楽的な要素もほぼ排除されており、グループ内での駆け引きや裏切り等も一切なし。意志の力で過酷な大自然に挑む人々の姿のみがフィーチャーされており、一秒たりとも企画の趣旨から脱線することがありません。さらに、ドラマの着地点も良いと感じました。主人公たちはゴール手前でチベットの優しい人々に出会い、「これからは厳しい季節になるから、しばらくここで休んでいきなさい」との好意を受けます。ボロボロになっていた仲間達はこの親切に甘えようとするものの、主人公だけは「ここで足を止めれば、ゴールを目指そうとする自分の意志が負けてしまって、二度と動けなくなる。だから僕は休まずに旅を続ける」と主張するのです。決して激しい口調ではないし、ドラマティックな演出も施されていないのですが、それでも内面に燃えるような意志を感じさせるこの場面には、思わず胸が熱くなりました。。。 以上、全体としては非常に優秀なのですが、細かな点では問題もあります。まず、上映時間を短くするためか序盤を詰めすぎているためにキャラクターの紹介場面が不足しており、旅の前半では誰が誰だかわからないという混乱が生じています。また、製作費の関係か、最大の難所であるはずのヒマラヤ越えがかなりアッサリとした描写に留められているため、尻切れトンボの印象を受けました。。。 ちなみに、本作は実話であるとのテロップが冒頭に出てきますが、原作の内容については疑義が指摘されており、これはフィクションとして観るのが正解のようです。
[DVD(吹替)] 8点(2013-04-04 00:19:38)
6.  ウォッチメン
原作既読です。コミックの枠を超え、アメリカ文学史上の傑作とすら言われる作品なのですが、これが実に338ページに及び、コマの中で一瞬うつる雑誌や貼り紙にも意味があり、さらに各章の最後には世界観を補足するためのこってりとした資料まで付属という凄まじい情報量。こんなものを2時間40分で処理できるのかと思ったのですが(原作者も、最初に映画化を試みたテリー・ギリアムも、一本の映画にまとめることは不可能と語っていた)、驚いたことに原作にあった要素はほとんど捨てておらず、かと言って駆け足感もなくて原作と同じようなテンポを再現しています(退屈だという意見もありますが、当の原作がこのテンポであり、そこまで忠実に作られているのです)。また、登場するキャラクターの印象も原作を読んだ時のまんま、ロールシャッハは相変わらずかっこよく、ナイトオウルは相変わらずのヘタレで、Dr.マンハッタンは相変わらずフルチンです。ミニッツメンとウォッチメンという新旧2つのヒーロー組織が登場し、それぞれのヒーローは本名とヒーロー名の両方で呼ばれるため非常に複雑、原作は何度も前のページに戻りながら読んだのですが、映画版はこの辺りの交通整理をうまくこなしており、はじめて見る人でも混乱しないように作られています。こうした秀逸な脚色の上に、監督のビジュアルセンスが炸裂。「ゾンビ」のリメイクでガンコな旧作ファンを返り討ちにしたツワモノだけあって、本作でも驚異的な仕事をしています。原作のカットを忠実に再現しつつ、実写ならではのアップグレードも加味。格闘時のロールシャッハの素早い身のこなしは原作を超えるかっこよさだし、火星に現れる楼閣の美しさは芸術的ですらあります。役者もよく選んできています。全員原作のイメージ通りであり、特にロールシャッハは、正義に執着することで生きている精神異常者で、背の低いブ男なのにマスクをかぶると猛烈にかっこいいという難役であったにも関わらず、これにハマる俳優を選んできているのが凄いです。以上、「ウォッチメン」の映画化としては完璧な仕上がりだと言えます。ただ、ここまで忠実だとどうしても原作ありきになってしまうので、さまざまな工夫がなされているとは言え未読の方にとっては苦しい出来なのも確か。一本の映画としてどう評価すべきかは難しいところです。とりあえず私は気に入ったので、高得点を付けておきます。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2009-09-17 19:00:41)(良:3票)
7.  ウォーリー 《ネタバレ》 
廃棄物の山となった惑星で時折吹き荒れる突風の危険に曝されながら残骸を拾って生活って、まんまカート・ラッセルの「ソルジャー」ではありませんか!ディズニーもカート・ラッセルのB級SFから映画を作る時代になったんですね!…というのは間違った見方だと思いますが、男子の好きなものにディズニー風の味付けをして新たな作品を生み出すピクサーの新作は相変わらずよく出来ています。SFやロボットへの愛情に溢れており、機械の細かいギミックの面白さや巨大宇宙船の仰々しさ、EVEの破壊レーザーなど押さえ所は外していません。惚れた女に逢いに宇宙船に乗り込むというエピソードⅣの物語を軸に、HAL9000のような赤いひとつ目コンピューターの反乱が絡む話自体に新しいものはないのですが、ピクサー印の徹底的に作り込まれた脚本によりこれら旧作の面白さがわかりやすい形で甦っています。そしてやっぱり凄いのが序盤の地球パートで、本当にセリフなしで物語をやってみせています。「ソルジャー」ではカート・ラッセルという生身の役者を使っても主人公の孤独を表現しきれなかったのに対し、本作はセリフのないロボットに性格を持たせ、観客に愛着を抱かせることに成功しているのです。思えば、擬人化されたキャラクターはこれまでのディズニー作品に大きな障害を与えてきました。キャラクターと人間をダイレクトに絡ませることができなかったのです。トイ・ストーリーでは「おもちゃは人間の前ではしゃべらない」という決まりを作り、カーズではすべてが車で構成された世界という荒業をもってキャラクターと人間社会に何が何でも壁を設けざるをえなかったのですが、本作ではついにその壁を破ったことでロボット達の物語と人類の物語の二層構造となり、単なるキャラクターの冒険物語を超え、人類の進化や文明とはといった大テーマまで含んだ作品となりました。地球を使い捨ててもまだ反省せず、宇宙でも便利さに甘えた結果歩くことも考えることも子育てすらもやめてしまった人類というヘビーなテーマを、ユーモアで包みながらもかなり真剣に扱っています。ロボット君の冒険物語だけならいつものよく出来たディズニー映画止まりでしたが、このパートのおかげで深い作品になったと思います。ラスト、WALL.Eが生き返ることは読めるので特に感動はしませんでしたが、ロボットと人類が協力して文明を築くエンドクレジットにはグっときました。
[映画館(吹替)] 8点(2008-12-19 00:41:00)(良:4票)
8.  ウォー・ドッグス
一応はコメディに分類されているものの、笑える場面はまったくありません。テーマがテーマだけにストレートに描いてしまうと怒っちゃう人もいるので、監督も俳優も「コメディで~す」と表面上は道化を装っているだけで、かなり真剣に作られた作品だと感じました。 軍需産業は金になる上に、有象無象が出入りするおかしな業界らしい。アンドリュー・ニコル監督の『ロード・オブ・ウォー』でも扱われていたテーマですが、このテーマは映画としては面白くなるようです。秘密の多い業界の内幕を垣間見ることができる上に、若者が一発逆転の大成功を収め、そして自滅していく様がドラマティックであり、盛り上がるポイントがとにかく多いのです。 また、当事者たちのモラルが低下していく様もうまく描かれています。主人公も彼女も「私は戦争に反対している。武器を売るなんてことに加担できない」と言っていたのに、武器取引で自分たちの懐にどれだけの大金が入ってくるかを教えられると、商売を肯定してしまうんですね。彼女に至っては、「武器を売ることではなく、私に相談がなかったことを批判してるの」とよく分からない論点のすり替えまでを始めます。大金を見せられればたいていの思想信条はひっくり返る。人ってそういうものだと思います。 ただし、前述した『ロード・オブ・ウォー』と比較すると仕掛けがひとつ足りておらず、実際に起こった事件の顛末を描くにとどまった内容になったことが、本作のリミッターになっています。よくできた良作というところでしょうか。
[インターネット(吹替)] 7点(2018-06-09 17:33:50)
9.  ヴィジット 《ネタバレ》 
『シックス・センス』の特大ホームランの反動からいまだ抜け出せておらず、新作リリースの度に観客や批評家から袋叩きにされるシャマラン。やまない批判に疲れたのか一時は雇われ監督に徹する方向性を模索したものの、『エアベンダー』と『アフターアース』が自前の企画をも超える批判を受けたことからその道も閉ざされ、製作・脚本・監督兼任というセルフ企画に出戻ってまいりました。ただし『レディ・イン・ザ・ウォーター』の15分の1、『アフターアース』の26分の1というローバジェットで製作されており、「要らん期待はなさらぬように!」とのシャマランの声が聞こえてきそうになります。 んで映画の内容ですが、これが抜群に面白く、製作規模を小さくして観客の期待値調整を図ったシャマランの戦略は吉と出たと言えます。そもそもシャマランの構成力や演出力は高いため、監督の能力がハッキリと現れる低予算映画ではその強みが十分に発揮されるのです。スリルとユーモアのバランスのとり方が絶妙であり、飛び上がりそうになるほど怖い場面の後では、全体の緊張感を壊さない程度のユーモアで観客を休ませるという緩急の付け方は名人芸の域に達しています。例えば床下のかくれんぼ。シャレにならん脅かし方で孫をドン引きさせたおばあちゃんが、「はっはっはっ、冗談よ冗談」なんて言っていつもの優しい表情に戻るのですが、後ろ姿を見ると半ケツ丸出しでまったくもって普通の状態ではないという、死ぬほど怖いんだけど笑うしかない演出は本当に見事なものでした。 もうひとつ特筆すべきは、明らかに異常なんだけど、場のメンバーが「良い祖父母と孫」を演じ続けることで辛うじて維持されている秩序がどこかで崩壊するのではないかという緩やかな恐怖が見事に演出されているという点です。かつてヒッチコックは、サプライズよりもサスペンスを重視するという旨の発言をしましたが、ヒッチコックを尊敬するシャマランもまた、異常者が暴れ回るというサプライズよりも、いつ異常者が本性を現すか分からないというサスペンスを作品の中心に置いているのです。結果、何気ない日常の光景にも緊張感が生まれ、観客は物語にグイグイと引き込まれることとなります。 一世を風靡したシャマランのどんでん返しも本作では健在です。ネタを明かされると「そりゃそうだよね」としかならないのですが、姉弟の母親と祖父母の間に普通ではないわだかまりがある様子であり、姉弟が彼らの秘密を探ろうとするという展開を入れることで、見事に真相を隠しているのです。観客をミスリードする技術についても、シャマランの腕前は鈍っていないようです。
[インターネット(字幕)] 7点(2016-09-12 21:35:45)(良:1票)
10.  裏切りのサーカス 《ネタバレ》 
非常にややこしいという評判は聞いていたので事前に粗筋を確認、さらには人物相関図を手元に置いてこれを眺めながら鑑賞を進めていくという重装備で臨んだのですが、ここまでの準備をしていればさすがに映画の理解はスムーズに運ぶもので、この苦み走った大人のサスペンスを存分に楽しむことができました。銃撃戦もカーチェイスも熱い舌戦もなし、ひたすらに淡々としたドラマが続くだけなのですが、これが異常なまでに面白いのです。役所から文書一枚持ち出すだけでひとつの見せ場を作ってしまうのですから、この監督の演出力の高さには驚かされます。また、国際的なスパイ戦争を舞台としながらも、非常にパーソナルな着地点を設けてみせた意外性ある構成も面白いと感じました。硬派な官僚ドラマとドロドロの愛憎劇をうまくブレンドしてみせた脚本家のバランス感覚は非常に優れています。。。 以上、大変に満足のいく鑑賞ではあったのですが、やはり気になったのが本作の不親切さ。各キャラクターの紹介場面は一切なしのままいきなり本筋が始まり、キャラクター達はコードネーム、ファーストネーム、ファミリーネームの3通りの名前で呼ばれます。現在、ちょっと前の過去、随分前の過去の3つの時系列を舞台としながらも、服装やメイク等で視覚的な変化を付けるようなことはしていません。おまけに、死んだとされていた人物が実は生きていたという展開がサラっと流されたりするので、予備知識なしでの鑑賞はほぼ不可能という壮絶な状態となっています。巻き戻しのできる自宅での鑑賞ならともかく、一度でも遅れをとった時点で即終了という映画館での鑑賞は、もはや自殺行為。映画館での鑑賞を想定していない映画を評価していいものかと悩んでしまいます。。。 考えてみれば、本作の主要キャラクターは10名程度。実は007やミッション:インポッシブルよりも少ない人数しか動いていないのです。いくらでもわかりやすく作れたであろう話なのに、それをわざわざ複雑に撮った理由が理解できません。
[DVD(吹替)] 7点(2012-11-15 01:45:39)
11.  宇宙人ポール
『ホット・ファズ』のチームが手掛けただけあって、相変わらず丁寧な娯楽作に仕上がっています。スピルバーグ愛全開ではあってもオマージュやパロディは「わかる人がわかればいい」という程度に抑えられていて、80年代SF映画に関心のない人でも楽しめる間口の広い内容としている点には好感が持てました。娯楽作としてのバランスの取り方は絶妙で、速すぎず遅すぎず観客の生理に合わせた映画となっています。登場人物は多彩なのですが、振り返ると主人公2人以外のキャラはドン底とも言える人生を歩んできた暗い人たちばかり。ポールは60年間監禁生活を送り、脱出時には解体手術を受ける寸前のところだったし、かつてポールを助けた少女はキ◯ガイ呼ばわりされて60年間を孤独に過ごし、ヒロインとなる女性は30歳を遠に過ぎているのに家の外のことをほとんど知らず、イカれた父親から性的虐待を受け続けていることが暗に仄めかされています。こういうビターな設定を加えたおかげで映画は独特の味わいを得ているし、同時に「宇宙人騒動に参加する人間がマトモな社会人であるはずがない」という説得力ある設定にもつながっています。職を失い、妻子を捨ててまでUFO騒動にのめり込む男の姿を描いた『未知との遭遇』に違和感を覚えた私としては、本作のこの設定には大いに納得できました。。。 とまぁ全体的には満足できたのですが、不満な点が二つほどあります。一点目は、脚本が教科書的すぎて、伏線が見え見えになってしまっていること。作り手が意図したサプライズが観客にとってのサプライズになっていない場面がいくつかありました。二点目は、クライマックスに登場する宇宙船が手抜きだったこと。例えば『ギャラクシー・クエスト』は、クライマックスに本家『スター・トレック』をも超えるスピード感ある見せ場を準備して「SFは最高だ!」という思いを観客にも抱かせることに成功しました。このチームの前作『ホット・ファズ』も、クライマックスにバカバカしくも壮絶な銃撃戦を準備して観客を興奮させました。本作のラストにも、本家『未知との遭遇』と同等かそれ以上のスペクタクルが必要だったと思います。スピルバーグ映画を観た時と同じ感動を観客に味わわせてこそ、真のリスペクトであるはずです。
[DVD(吹替)] 7点(2012-08-07 01:10:51)(良:1票)
12.  宇宙戦争(2005) 《ネタバレ》 
前半は本当にすばらしかった。ビグザムを思わせるトライポッド登場のシーンはすごすぎて爪先がつりそうになりましたよ。「激突」より、スピ演出の真骨頂は目線をまったくぶらさないことにありますが、その集大成とも言える名場面。「マイノリティ・リポート」前半の追跡劇といい、流れをもったアクション演出においてスピに勝てる監督はいないでしょう。そのぶん、スポットでの破壊力に欠けるのがスピの弱点。思えばスピルバーグ、彼は娯楽映画の王者とされながらも、今まで大量破壊映画を撮ったことがないんですよね。正直、私はそんなスピにスペクタクル描写ができるのだろうかという不安があったのですが、その不安は的中してしまいました。この映画には、「宇宙戦争」に当然期待される荒唐無稽なまでにとんでもないシーンってのがないんですよ。「ロストワールド」でも、せっかくT-REXをサンディエゴに上陸させながら、都市で暴れ回らせず郊外を散歩させるだけだったスピ。意図的にやってるのかと思うほど、彼はここぞというスペクタクルシーンを見せてくれません。軍隊総攻撃など、全然描写が足りませんでしたよ。軍隊がめっためたにやられるシーンまできちんとあれば、もっと絶望感が出たと思うんですけどね。一方で地下室の場面とかはムダに長すぎ。ティム・ロビンスの役が必要だったとはどうしても思えないし。ノコノコと宇宙人が出てくる必要もありませんでしたね。「ブーン」ってお時間のチャイムが鳴ると、すごすごとトライポッドへ帰っていく宇宙人さん達。観光に来たんですか?問題のクライマックスもカタルシスなさすぎ。ウィルスで弱った宇宙人を10人程度の兵隊さんがバズーカで攻撃。「うちの町でもトライポッドを倒したんですよ」みたいな終わり方では、ねぇ。やっぱり、形勢逆転に乗じてこれでもかってくらいの地球側の大反撃が見られれば、お腹いっぱいにはなれたでしょうに。こうして考えると、「インデペンデンス・デイ」とかぶることを極端に避けてるような気がしてきますね。都市の破壊、宇宙人相手に歯が立たない軍隊&ラストの猛反撃。「宇宙戦争」と聞いて誰もが連想する見せ場が、この映画からはことごとく排除されています。意図的なまでに。まさか、これがスピにも目覚めた巨匠のエゴの結果だったら、それはちょっと残念ですね。彼には、最高の技術を持った映画少年であり続けて欲しかったんですけどね。
[映画館(字幕)] 7点(2005-07-03 01:27:05)(良:1票)
13.  ウォーカー(1987) 《ネタバレ》 
伝記映画と見せかけつつ、自国の利益のためであれば他国の主権を平気で侵害している80年代当時のアメリカを批判した作品。オリバー・ストーン監督の『サルバドル/遥かなる日々』と同一のテーマを扱った作品ではあるものの、『サルバドル』が強力なドラマ性によって時代に囚われない価値を有していることと比較すると、本作は今見ると古臭さを感じさせられました。 主人公・ウィリアム・ウォーカーは代表的なフィリバスターであり、作品は彼が私設の兵を用いて勝手にソノラ共和国を作った後に国軍により鎮圧される場面から始まります。独特の真っ赤な血糊やスローモーションの使い方がサム・ペキンパーっぽいなぁと思っていたのですが、後から調べてみるとアレックス・コックスはペキンパーの大ファンということでした。 その後、本国で裁判にかけられるも無罪となり、また彼の履歴に注目した富豪から、運河が通ると噂されているニカラグアの政権を取ってこいとの話を受けるウォーカー。彼を引き留めていた聾唖の婚約者もコレラで亡くなり、ウォーカーは再び中米に戻ることを決意します。この通り、序盤の段階でまぁいろいろ起こるわけですが、ここまでドラマ性ゼロ。監督は話を前に進めることのみに専念しており、ウォーカーの心情に触れようという気はビタ一文ないわけです。ソノラ共和国の挫折からウォーカーはどうやって立ち直ったのか、また婚約者の言葉を彼はどう消化していたのか、そもそも彼はなぜ他国への軍事介入をライフワークとしているのかなど気になる点は多いのですが、そこにまったく触れてくれないのでドラマに入り込めませんでした。 中盤以降もウォーカーの心情にはほぼ触れられず総合的には失敗した映画だと思うのですが、他方で司祭のような黒服を着て、銃撃戦の最中でも気にせず大通りのド真ん中をズンズン歩いていくウォーカーの、自殺願望があるんだか神の使いか何かだと勘違いしてんだかよく分からない姿などは妙に印象に残りました。どちらにしてもウォーカーはイっちゃってる人ではあるのですが、これにエド・ハリスが実によくはまっています。常にまっすぐ前を向いてはいるものの、どこに焦点を合わせているのかはよく分からない視線の動かし方や、ほとんど中身のないことを自信タップリに話す様など、信念を持ったキ〇ガイ演技がなかなか堂に入っているのです。 傀儡政権がどうも言うことを聞かなくなったということでこれを処刑して自ら大統領に就任したり、部下の反対にも耳を貸さずに奴隷制を復活させたりと問題行動が目立つようになったことから、ウォーカーは最終的にアメリカ政府からも富豪からも切られるのですが、ウォーカーの人となりは冒頭から何ひとつ変わってはおらず、問題が大きくなるまではこんな異常者を重宝していたアメリカの政府や財界こそがおかしかったのではないかという結論で映画は締めくくられます。時代劇でありながらリムジンやヘリを登場させる場面には、これが現在のアメリカの物語であることを示すための演出意図があったとのことですが、これらの演出がどうにもあざとすぎるように感じました。また、制作時点から30年以上経った今となると、これらのメッセージも古臭く感じられました。
[DVD(字幕)] 5点(2018-05-08 19:02:51)
14.  ウォール・ストリート 《ネタバレ》 
全盛期のオリバー・ストーンは本当に凄かったんです。脚本家出身のストーンはセリフの洪水と巧みな構成によって密度の高い物語を次々と作り上げ、それが3時間越えの大作であっても、一瞬たりとも観客を飽きさせることはありませんでした。社会問題の扱いにも長けており、映画によって社会を騒然とさせることもしばしば。そんなストーン全盛期を象徴する作品こそが前作『ウォール街』であり、どうやっても映画のネタにはなりようのなかった金融戦争を真正面から扱い、これを堂々たるエンターテイメントに仕立て上げた手腕は驚異的なものでした。。。 そんな『ウォール街』から四半世紀を経て製作された『ウォール・ストリート』ですが、これが完全な凡作であり、ストーンの才能は完全に枯れしまったことが本作ではっきりとしました。社会派映画としての見応えはなく、本作におけるストーンは世界中の人々が遠の昔に知っている話をただ復唱しているのみ。小さなニュースサイトに暴露記事を掲載しただけで巨悪が倒れるという安易な決着に至っては、『JFK』で保身に走る時の権力の手強さを描いたストーンとは思えぬ手の抜きようでした。おまけにドラマの密度も低く、2時間強というストーン作品としては短い部類に入る上映時間ながら、途中で飽きてしまいます。サブプライムの扱いなどは本当に勿体ないもので、この爆弾がいつ爆発するのかという大きな山場を作り損ねています。さらには劇中のキャラクター達にも魅力がありません。特にマズかったのがキャリー・マリガン演じるウィニーを単なるヒステリックな女にしてしまったことで、マネーゲームに溺れるキャラクター達が入り乱れる本作において、一般人の代弁者たる立場にいる彼女の個性に難があるようでは、ドラマに説得力が生まれるはずがありません。彼女は拝金主義を毛嫌いしながらも、その実、大金を奪われたことがきっかけで婚約者をフったり、あれだけ嫌っていた父親が大金持参で詫びに来れば笑顔で許したりと、まさに金中心の振る舞いを繰り返します。その筋の通らなさ・薄っぺらさには唖然とするのみでした。
[DVD(吹替)] 5点(2012-11-03 17:37:34)(良:2票)
15.  ウルヴァリン:X-MEN ZERO
監督:ギャヴィン・フッド…誰だよ?と思って調べてみたら『ツォツィ』の監督でした。初のハリウッド大作、しかも大ヒットシリーズのスピンオフという重大な企画を任されながら、かなり落ち着いた仕事ぶりを披露しています。。。 おかしな格好のキャラが暴れ回る一方で深刻なドラマが展開されるという、他のアメコミ映画と比較するとバランスの取り方の難しいのがX-MENシリーズなのですが、この監督はなかなか器用に作品をまとめています。アメリカが経験した近代戦のすべてを渡り歩いてきたウルヴァリンの半生を冒頭5分で一気にまとめたかと思えば、妻との穏やかな日々や親切にしてくれた老夫婦とのつながりも短時間で簡潔に片付けています。この手際は見事なものだと思いました。見せ場の作り込みも上々で、ミュータントならではの激しいアクションは迫力十分。残念なのは後半になると映画のテンションが一気に下がってしまうことで、ウルヴァリンがストライカー大佐の陰謀を追いはじめてからは、作品が急激に失速します。忍従を重ねた末にいよいよアダマンチウムの爪を出すところがウルヴァリンの見せ場の王道なのですが、そんな彼が積極的に敵を追いはじめると、どうしてもこのカタルシスが半減してしまいます。。。 【2012年7月30日ブルーレイにて再鑑賞】 あらためて鑑賞すると、”ドラマを簡潔にまとめている”という点が本作を中途半端な出来にしているように感じました。ウルヴァリンの人生は悲惨なものです。実の父親を自らの手で殺害し、長い長い人生の大半を戦場で過ごし、唯一血を分けた兄とは敵味方に分かれて殺し合っている。この映画はそんなウルヴァリンの痛みを観客に伝えるべき作品だったのに、ドラマを駆け足で終わらせてストライカーとの確執を中心に据えてしまったために、感情的にピンとこない出来となっています。『X-MEN』第一作の冒頭にて初登場したウルヴァリンの背中にはこの”業”というものが確かに見えていたのですが、本作はその深い闇をすっかり矮小化してしまったという印象です。
[映画館(字幕)] 5点(2009-09-14 23:18:10)
16.  ウルヴァリン:SAMURAI
現在まで6本制作されている『X-MEN』関連作品の中では、間違いなく一番の駄作。おかしな日本描写にはこの際目をつむることにして、それでもまったく面白くありません。と言うか、おかしな日本描写を笑うことくらいにしか楽しみを見出せないという状況となっています。。。 そもそもX-MENからウルヴァリンを独立させたことの趣旨は、観客にウルヴァリンの大暴れをタップリと見せるためだったはず。それなのに、本作では「ウルヴァリンが強すぎると映画が成立しないから、彼から力を奪ってしまおう」という、完全におかしな方向性で話が作られているのです。生身の人間になってしまったウルヴァリンことローガンが、異国の地で逃避行を続けているうちに現地の美女と恋に落ちる。ウルヴァリンは弱くなっているから、アクションは控えめ。アメコミ映画でこんなものを見せられてもなぁという感じです。
[ブルーレイ(字幕)] 4点(2014-04-03 01:08:19)(良:1票)
17.  ウィッカーマン(2006) 《ネタバレ》 
併せてオリジナルも鑑賞したかったものの、ステイングレイ社からリリースされていた特別完全版はネットで何万円もの高値が付いているため手が出ず、現在入手可能なユニバーサル版は誤訳・珍訳の嵐でお馴染みのスタジオカナル仕様であるためせっかくの歴史的カルト作とのファーストコンタクトには相応しくないと考え、結局、オリジナルの鑑賞は諦めました。オリジナルに思い入れのある方からは恐ろしく不評の本作ですが(ラジー賞5部門ノミネート+IMDBでのスコアが3.6点)、意外や意外、少なくとも前半部分は楽しめました。謎に包まれた冒頭の事故、見るからに怪しげな島民達、助けを求めてきた元カノすら隠し事をしているという孤立無援感、さらには不快度数の高い雰囲気作りにも成功しており、なかなか見応えがあるのです。人の良さから厄介に巻き込まれてしまう中年警官役にニコラス刑事がピタリとハマっており、特に悪いところが見当たらない程よく出来ていました。前半の時点では。。。 後半、謎の正体が明らかになると、映画のテンションは一気に下がります。【ムラン】さんが詳しく書かれておりますが、島民達の計画に納得感が少なすぎるのです。ニコラス・ケイジが警官隊を引き連れて島にやってきたらどうするつもりだったのか?、携帯していた銃をぶっ放すというリスクは考えなかったのか?、そもそも、生贄にするつもりの男を数日間泳がせていたことの理由がまったくわからないetc…、もうちょっと設定を煮詰めた方がよかったと思います。冒頭の事故や、主人公が見る幻覚も伏線として機能しておらず、どうやって話を畳むのだろうかとあれこれ考えながら観たことを後悔しました。。。 あとは文化的な背景の問題ですが、キリスト教徒が土着信仰から復讐されるという筋書きにも恐怖を覚えませんでした。お寺と神社が共存している我が国はかなりレアな事例であり、世界的には一神教が土着信仰を否定し、破壊するという歴史が一般的です。布教の過程で、キリスト教徒は血なまぐさい事件も少なからず起こしており、そのツケを払わされる日がくるのではないかという恐怖が本作の根底にはあるのです。ただし、キリスト教徒ではなく、宗教を巡る血なまぐさい歴史も経験していない日本人としては、この感覚がピンときません。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2013-03-04 00:47:21)
18.  運命のボタン 《ネタバレ》 
一歩間違えれば『フォーガットン』になりかねなかった内容を、終始バカっぽくなくまとめあげた監督の手腕は評価します。観客に先読みさせない構成もよく出来ており、ミステリー映画としてはそこそこの完成度だと思います。ただし、視覚的な見せ場がほとんどなく映画としての面白みに欠ける上に、膨大な量の伏線を追いかけることにも疲れてしまい、中盤以降は観ていることが苦痛になりました。観客にネタが割れた時点でさっさと話を閉めればよいものを、その後もダラダラと映画を続けたために、ムダに冗長となっている点もマイナスです。。。 一方、ドラマ作品としては完全に赤点。序盤とクライマックスで主人公の性格に顕著な変化が見られないし、「自分ならどうするか?」と観客に考えさせる内容にもなっていません。これについては、ボタンに係る突飛なルールを主人公が簡単に受け入れてしまうという不自然さをカバーできなかったことと、大金に目がくらんだ主人公のイヤらしさを描けていないことが原因だと思います。この映画は導入部に命をかけるべきだったのに、ここを疎かにしてしまったために全体がダメになったのです。
[DVD(吹替)] 4点(2012-09-18 18:50:38)(良:1票)
19.  ウィンターズ・ボーン
これは典型的な”評論家からは支持されるが、一般客は対象となっていない映画”です。質の高い演技、自然を背景とした美しい撮影、独特の空気感、そして重々しいテーマと、高く評価される映画に必要な要素はすべて備えており、「これは何か賞をやらなければ」と思わせる完成度を誇っています。しかし、展開があまりに淡々としていて物語に山も谷もないので、正直言って面白くありません。ジョン・ホークス演じるティアドロップが出ているところだけは妙に映画っぽいのですが、それ以外は役者と監督の技見せに付き合わされたという印象です。私は楽しめませんでした。。。 あと、”おきて”の扱いにも疑問を持ちました。本作における”おきて”は、いわゆるマクガフィン的な扱いを受けており、その内容は最後まで明らかにされません(集落全員が似たような顔つきをしているので、ある程度の察しはつきますが)。しかし、「思いがけず村のおきてと戦うこととなった少女」という物語にあって、そのおきての正体が最後まで伏せられたままというのは、ちょっとズルいかなという気がしました。
[DVD(字幕)] 4点(2012-05-07 00:47:47)(良:1票)
20.  ウォーターワールド
90年代を代表する大コケ映画と言われていますが、1億7500万ドルの製作費に対して興行成績は全世界で2億6400万ドル(1995年の公開作中第9位)とそこそこのヒットとなっており、コケ方で言えば同年の「カットスロート・アイランド」の方が遥かに上。にも関わらずこの映画が(悪い意味で)私達の心を掴んで離さないのは、その出来があまりに惨たらしいからでしょう。。。作品を見る限り、脚本の出来はそれほど悪くありません。問題は監督とプロデューサーの腹が座っていなかったことで、本来はエッジが立っていたであろう脚本の良さをことごとく潰しています。破滅後の世界を扱った本作はダークに描かれるべきであり、その点、女性が物々交換の対象となっていたり、ミュータントに凄惨なリンチが加えられたりと、脚本上はきちんと毒が描かれています。しかしベラボーな製作費にビビったのか、監督とプロデューサーは観客に嫌悪感を抱かせかねないこれらの描写を中途半端に終わらせてしまい、そのために全体が締まらない印象となっています。また前半と後半でまったく別の映画となっていることにも違和感を覚えたのですが、これも主人公を観客から好まれるキャラクターにしようと後半で方向転換してしまったプロデューサーの判断ミスであり、前半の冷たいキャラクターで通すべきだったと思います。この方向転換を巡っては監督のレイノルズとコスナーが対立してレイノルズは途中降板、後半部分をコスナーが監督したことも後半が浮いてしまった原因となっています。。。さらに本作の足を引っ張っているのがSF感覚の欠如で、これも脚本レベルではそれほど悪くなかったにも関わらず、監督がSFオンチだったことが問題でした。衣装や小道具がとにかくカッコ悪く、そのために映画全体がダサくなっています。この手の映画はカッコ良いことがポイントなのに、そこで観客の心を掴めなかったのでは、いかにスペクタクルにお金を注いでも映画は良くなりません。コスナーが突貫工事で手を入れはじめた後半になると設定にも矛盾が発生しはじめますが(紙は高値で取引されていたはずなのに、後半ではまとまった量の雑誌が出てくる。前半では「俺達の先祖が世界をこんな風にした」と言っているのに、後半では過去の文明を知らないことになっているetc…)、SFにおいて細部に矛盾が発生するような雑な作りでは、観客に見透かされてしまいます。
[DVD(字幕)] 4点(2010-08-17 22:06:33)(良:1票)
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