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1.  ダンケルク(2017) 《ネタバレ》 
明らかにアンリ・ヴェルヌイユ版のオープニングを踏まえたのだろう ビラの舞い落ちる街を進むトラッキングのショットから、構図は奥行きを意識し、 そこに描写されるのは誤射も飛び交う敵味方不明の銃弾、爆撃の恐怖である。 ビーチに突っ伏した主人公を手前に、画面奥から順々に着弾・爆発していくショットなどはなかなかの緊迫感だ。 が、担架を運び桟橋を渡って船に乗り込もうとするシーンなどで距離感やタイムリミットの提示に難があるのは毎度の事である。 あるいはこの距離感と計時感覚の失調こそがねらいかもしれないが。  三者それぞれの状況を音響などをブリッジさせることでクロスカットさせていくわけだが、 曇天・晴天、日の傾きまで編集で徹底出来ないなかでの時間軸の帳尻合わせは単に無謀である。 シーンの緊張を途切れさせて散漫にしている箇所も数知れない。  また評判の良いハンス・ジマーの劇伴だが、ほぼ全編というのもやり過ぎ。 サスペンスを阻害し、民間船舶集結シーンのヒロイズム煽情も過剰に思える。
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2017-09-12 20:42:20)
2.  ターザン:REBORN 《ネタバレ》 
格闘アクションのカッティングが雑で面白味が無い。 『レヴェナント』の熊の後では何とも見劣りしてしまう。 頻繁に挟まれる回想シーンの多さも、都度ドラマの流れを阻むばかり。淡々とした追跡劇だ。 クライマックスの大暴動のさなか、アクロバティックな動きでヒロインを救う主人公のアクションもセットの構造を活かして厳密に設計されてはいるはずなのに これまたどうも高揚感に欠ける。 二人の感情がスペクタクルの中でドサクサまぎれのように埋没してしまっている。  一瞬のアクションの快楽と同時にエモーションの昂ぶりが頂点となる、『天空の城 ラピュタ』中盤のヒロイン救出シーンを思い起こしたい。 あのくらいの、アクションと感情の融合が欲しい。
[映画館(字幕なし「原語」)] 4点(2016-08-04 22:34:04)
3.  007/スペクター 《ネタバレ》 
例によって、愛想の無いサム・メンデス。 その深刻ぶった語り口の割には、アクションは大ざっぱで物量頼みの旧態依然。 ヒロインの生命を守る、と誓ったはずのヒーローがいきなり雪山で彼女を巻き込みかねない無謀な突撃をやらかしてはまずくはないか。 列車での格闘にしてもアジトからの脱出にしても、盛り上がるべき箇所で盛り上がらないのは彼女を庇い、守りながら闘うというエモーションがアクションに欠如しているからでもあろう。オープニングのカメラからして技巧の披瀝にすぎず、カースタントを始めとするアクションは空虚なスペクタクルの羅列に留まっている。 二人のドラマにもう少し注力すれば、ラストの橋のシーンはもっと輝いたろうに。
[映画館(字幕なし「原語」)] 4点(2015-12-12 00:01:12)
4.  ダイバージェントNEO 《ネタバレ》 
この壁に囲まれたエリアに生きる人々という世界観。邦画でも洋画でも最近よく見かけるのは偶然か。 その舞台となるデストピアの細密な描写力がなかなかで、瓦礫混じりの都市の俯瞰などに眼を奪われる。  ヒロインの脳内イメージシーンであることを前提として展開されるビル崩壊やアクロバティックなアクションにサスペンスなど無いが、 その瓦解のスペクタクルで乗り切ってしまう。  そのイメージの中で、髪を切ったシェイリーン・ウッドリーがその澄んだ瞳と、凛とした美しい表情をみせる。  ロベルト・シュベンケ監督となって、120分を切ったのもいい。前作からの説明もそこそこにドラマは進むが、把握には困らない。
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2015-10-25 20:31:40)
5.  大列車作戦 《ネタバレ》 
線路上で爆薬を仕掛けるバート・ランカスタ-。その奥に列車が小さく現れ、手前方向に迫って来る。 操車場のドイツ軍大佐(ポール・スコフィールド)。その奥の空に戦闘機が小さく現れ、手前方向に向かって飛行して来る。 いずれのショットも、遠方のアクションと近景のアクションとを同時進行させながらいずれの対象にも 焦点を合わせて一つの画面の中におさめたものだ。 航空機や車両が進行する方向と速度とタイミング。大量のモブ(群衆)の動き。さらには主要キャストの芝居。 それを的確に統制し、的確な構図で捉える労苦は計り知れない。  そこに、物語レベルに留まらないサスペンスが生まれる。  そうした奥行きの深さを活かしたスケールと難度の高いアクションシーンが満載だ。  少年が階段を登って屋根上へと移動するカメラの移動。 ランカスタ-が梯子を滑り降り、列車を追いつつ飛び乗るアクション。 同じく彼が傷ついた身体で山の勾配を登り下りする走り。 いずれも身体性と持続性、空間の垂直性と平行性を一体としてショットを形作っているのが素晴らしいのである。  オープニングの、無言の兵士たちが美術品をパッキングしていく具体的描写のリズム感。 360度方向のセットと密度の高いエキストラの間を縦横無尽に動くカメラ移動からして一気にドラマに引き込まれる。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2015-07-15 00:28:29)
6.  ターミネーター:新起動/ジェニシス 《ネタバレ》 
追う、追われるという第一作のシンプルなシチュエーションが恋しくなる。 下手に状況を複雑化させることで、小賢しい理屈付けで戯れる羽目になって ますます映画から遠のいている。  ここでは逃走のサスペンスよりも、真贋不明のサスペンスが主となるのだが、 小状況が一旦終了するとひとまず収監のパターンで切迫感が途切れ、 作品を貫くべき大きなサスペンスが持続しない。  そしてジェイ・コートニーはクライマックスにおいても全くの奮闘不足であり、 それが為にエミリア・クラークとのラブストーリーも淡白すぎて中途半端だ。 彼らのエモーションを核としてこそヒューマンドラマが成立すると思うが、 擬似父娘のドラマの比重を高くせざるを得ないのは スター俳優を偏重するシステムの弊害か。  ともあれ、『マッドマックス』最新作にしても本作にしても、 女性の強さがよりアピールされている ところが時代性とマーケティングの反映ともいえそうだが。  それから、殺人マシン同士が激突する金属音の良さは特筆したい。
[映画館(字幕なし「原語」)] 4点(2015-07-11 00:05:42)
7.  大脱出(2013)
映画冒頭の脱獄シーンの寡黙さがなかなか良いと思う間もなく、 シルヴェスター・スタローンの雄弁な種明かし演説が始まってしまう。 かと思えば、主舞台に移っても公衆の中で堂々と密談を続けている。  監視の中、いかにして相棒とコミュニケーションを取り合っていくか。 そこにサスペンスを生み出すのが、脱獄映画の基本だろうが、その辺りが相当杜撰だ。 共演がよほど嬉しいのか、二人の対話については明らかに台詞過多である。 ボルトがどうの、シフトがどうの、それは画面に語らせれば済む話であり、 安易に台詞に頼るべきではない。 主人公の観察眼については、序盤で説明済なのだから。  状況解説用のトラッキングはただ官僚的であり、 対話どころか殴り合いまでアップショット偏重で鈍臭く 面白味を欠いた画面は映画でなくてテレビだ。  二人共、銃を構えたショットだけはやはり様になっている。   
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2014-01-17 23:57:41)
8.  007/スカイフォール
序盤のウォーターフォールと終盤のスカイフォール。 幾度も己自身を見つめさせることになる鏡面あるいは水面と、 様々にメタ的な着想を凝らして内面描写というトレンドに倣っている。  公聴会での暗殺阻止からそのままクライマックスのアクションに なだれ込めばいくらでもテンションを上げられたところを、 内省やら回帰やらの要素を持ち込んで新味を出さねば気が済まないところが シリーズものの枷というところか。 例によって、本作の「小悪党」も卑小な内面ばかりを語りたがり、 犯罪の動機付けに汲々とする。ゆえに悪役に恐さがない。  高層階のネオンライトを背景とした シルエット同士の格闘などは実にスタイリッシュであったり、 籠城戦前の夕暮れから夜の闇へと推移する緊迫の描写も良かったり、 日本版予告編で使われたショットの数々も個々にはケレンがあって 様になっているのだが、いずれもが単発止まりである。  一連のアクションの繋がりとして見ると平板で うねりを欠いてしまうのが勿体ない。  いわゆる人間ドラマに比重が掛った結果だろう。 
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2013-01-06 08:00:04)
9.  ダークナイト ライジング 《ネタバレ》 
寓話はあくまで架空の都市のイメージの中で語って欲しい。 ノーラン版のシリーズとして一貫してはいるが、 そのままストレートに現実を意識させるロケーションや歌唱や、 テーマ語りはやはり安易で浅はかな印象しか与えない。  主要キャラクターそれぞれに見せ場を配分するのもわかるが、 かえってその場面転換がテンポを殺しているのもいただけない。  特に肝心な後半、緊張が高まるべきカウントダウンに向かいながら 4者のパラレルアクションが映画を寸断させ、間延びさせてしまっている。  画面も深度が浅く、表情芝居に頼った人物の対話場面などは 切り返しも配置もフォーカスもことごとく単調だ。  アクションの構図もアングルも貧しく、決死のジャンプシーンにも 絶望的な高低と距離の感覚が出せているとは云えず、 物語を絵解きするのに手一杯にみえる。  巻頭の航空機墜落をはじめ、地盤の崩落、橋梁の倒壊、幽閉溝の登攀、 背骨折り、氷上での処刑とノーランが拘るのは執拗な垂直落下のイメージであり、 その中でタイトルの主題系が立ち上がって来る仕掛けではあろう。 一方で、水平の空間移動をあえて省略してみせるあたりは潔いのだが。  『ダーティ・ハリー』の投げ捨てられる警察バッヂ、『M』の人民裁判、 『機動警察パトレーバー2』の雪降る水路・橋梁爆破の空撮ショットなど、 映画の参照ぶりは相変わらず多彩だ。 
[映画館(字幕)] 5点(2012-08-09 21:16:54)
10.  ダーク・シャドウ(2012) 《ネタバレ》 
アバンタイトルからベラ・ヒースコートが屋敷内に案内されるまでの流れは、あたかも彼女が主人公であるかのように思わせる展開だが、それは屋敷内の様子と登場人物を効率的に観客に紹介していくためのものであった事がわかる。  中盤からクライマックスにかけて彼女の影が薄くなるため、三角関係のドラマとしては些かバランスが悪くなってしまうのだが、そうした破綻とアンバランスさがバートン本来の病理的であやうい魅力と云えなくもない。  スタジオのしがらみが顕著な前作は、程よくユニークでウェルメイドで小器用で教訓的で無害でしかないが、本作の不健康ぶり・インモラルぶりこそ彼の本領に近い。  愛情と憎悪、煩悩と理性、異質な他者と一般人、その間で分裂するそれぞれのキャラクター。(エヴァ・グリーンの最期の表情の素晴らしさ。)  屋敷内や崖のシークエンスで印象的な、焦点深度の深い映像。(遠近を惑わすヒ―スコートと彼女の肖像画のパンフォーカスこそ、ラストの予告だ。)  伏線や整合性や現実的倫理といった小細工を取り払っているゆえに、作り手の特異な症候とその治癒への試みとでもいうべきものがバートン流「再構築」映画の中で際立つ。   
[映画館(字幕)] 7点(2012-06-06 07:51:32)
11.  タイタンの逆襲(2012) 《ネタバレ》 
白熱する槍の衝撃などは、ハリーハウゼンのダイナメーションならばそれを持つ人間のリアクションをフルショットで撮って絶妙に表現したことだろう。 単に透過光処理に頼るだけの超常パワー表現にはまるで魅力がない。  『南の島に雪が降る』のニューギニア戦線の兵士たちが、紙製の偽物の雪に感動したのはそれが本物そっくりであったからではなく、あくまで理想イメージとしての雪とダブらせ、尚且つ人間が心を込めて手作りした触覚的な感覚を受け取ったからこそだろう。  前作および本作のCGIクリ―チャ―がいかにリアリスティックでも、1981年版『タイタンの戦い』のダイナメーションのもつ文化的感動に及ばないのも恐らくそれに近い。  キメラやミノタウロスの目まぐるしく「本当らしい」動きと慌ただしいカメラワークは結局のところ魅力的なキャラクターとして、あるいは印象的なショットとしては残ることはない。 アレスとペルセウス一騎討ちの単調な肉弾戦も同様だ。  3Dも含めたテクノロジーの飛躍は刺激と錯覚にのみ向かっている。 CGIが精巧かつ迫真であるほどに当然ながら失われてしまう人工的輝き。 そうしたパラドックスがここにも見られる。  
[映画館(字幕)] 4点(2012-05-11 02:02:37)
12.  TIME/タイム
荒唐無稽な物語を殊更に正当化しようとせず、当然の事のように語りきること。  その設定を、安易な説明ではなくまず具体の行動の積み重ねにおいて描写していくこと。  有体に云えば、ここでのストーリーや世界観やSF的設定などは、タイムリミットと逃避行(つまり時間と運動)のアクションを乗せて運ぶためだけに必要とされるに過ぎない。  その「時間と運動」のイメージこそ映画の要であり、荒唐無稽に徹する事こそ映画の知性だ。 静的な腕同士のバトルやカードゲームではなく、ただ「時間内に」走ることの動態によって主題論が体現されていく。  相対、並行、逆走、落下、その無軌道と乱脈の疾走の勢いによって画面は活性化し続け、その男女の走りと画面の疾駆とクレイグ・アームストロングのスコアとの一体化がラストの抱擁のエモーションに結実する。  役者陣の顔の素晴らしさに加え、二つのゾーンの格差を、それぞれの人々の行動習性とスタイル、そして抑制的ながら個性を持つデザインスケープによって視覚的に際立たせていく等の手際もいい。  「シルヴィア」と「限られた時間を生きる男女」の映画史からラングの『暗黒街の弾痕』を想起された「映画研究塾」は絶対的に正しく、『俺たちに明日はない』の結末の記憶と共に、死を孕んだ映画のサスペンスを最後まで維持している。 
[映画館(字幕)] 8点(2012-02-23 05:41:35)
13.  タイトロープ
黒の領域を目一杯とりながら、見せるべき身体部位や輪郭線は最小の光源によって的確に浮かび上がらせ、画面は常に見事な艶を保持している。  このB・サーティースのローキーによって、イーストウッドの顔面半分も濃い闇に塗りつぶされ、その中に潜む彼のオルターエゴを強く印象づけてくる。  仮面、覆面、ピエロ、人形もまた「裏面」を嫌でも意識させるモチーフだ。  そして、脱『ダーティ・ハリー』として自制されたガンファイトの代わりにクライマックスのアクション画面に閃くのは、稲光とヘリのサーチライト、操車場を走るレール面の照り返しである。 雷光に浮かび上がる犯人とイーストウッドの上下の切返しショット。その相似の表情が禍々しい。  次女が無邪気に語る卑語や護身用教材人形、娼婦の咥えるアイスキャンディー、ジュヌビエーブ・ビジョルドと向かい合っての筋トレで性をユーモラスに隠喩し、80年代ノワールとして倫理コードと戯れつつ、イーストウッド父娘はレイプ被害という過酷なエモーションをも担ってみせる。 
[DVD(字幕)] 8点(2011-10-26 21:13:31)
14.  大列車強盗(1903)
駅舎の中、駅員が拘束される画面右手奥の窓に映る「列車の到着」。または強盗が行われている貨車の側面扉の奥を水平方向に流れていく木々の光景。  画面の前景・後景それぞれに常に動態が取り入れられ、重層的画面は固定化することがない。  原野のロケーションを背景にした列車や馬の疾走、そして車上の格闘はパースペクティブを活かした縦構図の中に捉えられ、乗客降車のモブシーンや、躍動的な群舞シーンは画面を賑やかに活気づける。  林の中を逃走する強盗団の1人が落馬するショット、そしてクライマックスで画面奥の保安隊と手前の強盗団の間で交わされる銃撃戦を延々と捉える固定ショットもアクション性豊かだ。 その乱戦の活劇感覚がとてもいい。 画面のあちこちにに突発的に白い硝煙が広がる瞬間、馬たちが驚き、怯える様はそこにある「音」をも強烈に感じさせる。   
[ビデオ(字幕)] 8点(2011-08-27 00:56:04)
15.  台北の朝、僕は恋をする 《ネタバレ》 
夜の車道を縦移動で捉えるドライヴ感や、鮮やかな色彩感覚、椅子に拉致された男女のシチュエーションなどは、師の『カップルズ』へのオマージュといったところか。  ネオンを反射する濡れた街路の艶。夜市の賑わいや、地下鉄駅構内での追っかけのゲリラ撮影的な臨場感覚がいい。  カイ(ジャック・ヤオ)のトラブルに巻き込まれながら、次第に彼をリードしていくスージー(アンバー・クォ)。互いに淡い恋情を意識し始めながら、それを決して表出させないナイーヴな男女像を演じる二者が共に瑞々しい。  追われる側から、スクーターを駆って追う側へと転じるショット繋ぎの鮮やかさ。男を後部座席に乗せて運転する彼女がみせる凛々しい表情は本作の忘れ難いショットの一つだ。 彼を見送った後、一人朝方の部屋に戻り、逆光の窓辺でコップの水を飲む彼女の寂しげなシルエット。その引き気味の1ショットの情感もどことなくエドワード・ヤンの趣を淡く漂わす。  そしてエピローグの横移動がいい。自分を呼ぶ声に、流れる書架の合間から覗くアンバー・クォの固い横顔に次第に微笑が差していく。爽やかな再会のエンディングも『カップルズ』的だ。 
[映画館(字幕)] 8点(2011-04-03 19:04:16)
16.  タイタンの戦い(2010)
序盤で、船上のペルセウスらがゼウス像を見上げ感嘆する場面がある。本来ならここに像の表情と威容を人間側からの仰角で捉えたショットが続くのが一般的だろうが、この映画は、なぜか天上から像の肩越しに船を俯瞰するショットを入れる。映画を最後まで見ていくと、どうやらこれは3Dの視覚効果だけに専心した結果の画面構成らしいことがわかる。つまり海面を背景に、画面手前にある像の頭部の立体感を強調するだけが目的の画面ということ。神々のドラマでもあるわけだから、こうしたいわゆる神の視点があっても良いわけだが、もちろんこれは視点の演出などではなくその場限りの立体感覚狙いでしかない。その立体感は、縦構図に様々に被写体を詰め込み配置することが必要なため、画面は逆に狭まり、スケール感を失っていく(一例:神々の集う広間の場面)。3Dありきの画面は縦移動を多用するが、これらは主人公の主観と一致するわけでもなく、心理の同化作用に至らない(例:硬貨の水切り、メドゥーサの落下)。『アバター』の高所感覚との大きな違いはここだろう。結果、ドラマと画面は同調せず随所で違和感すら生むこととなる。映画の低調なエモーションはこうした場当たり的3Dショット主義のみならず、もちろん作劇の怠慢にも起因する。オリジナルでは、荒れるペガサスを手懐けるまでの丁寧なストップモーションがあってこそクライマックスの疾駆と移動のシンクロが素晴らしい詩情を生むのだが、この映画はその辺りまるで理解がないらしい。猟師家族や、共闘する同志たちの人間関係描写もそうだが、これらは省略ではなく、単に欠落しているだけだ。
[映画館(字幕)] 3点(2010-05-03 13:19:09)
17.  第9地区 《ネタバレ》 
インタビューや実況報道画面、ビルや店舗の監視映像の多用は、メディアが歪める個人の実相といったような何らかの主題に絡むのかとか、後半の追跡劇の中に包囲網などとして活かされるのかと思いきや、単に実録風を強調する為だけの機能らしい。ビルへの突入までを大胆に省略した手際などは良しと思うが、ビルから第9地区までの逃走経緯は活劇の映画として本来アイデアとアクションの見せ場のはず。最も工夫を凝らすべき肝心な危機脱出場面をあっさり流すので拍子抜けさせられてしまう。全体を覆ういわゆる社会派風知性主義がことごとくアクションの邪魔をしているのではないか。後半の戦闘場面になると、今度は実録風としてはあり得ない心理主義的ショット(装甲スーツ内の主人公のアップ等)が連発しバランスの悪さを露呈する。密閉された内部の表情などみせる必要全くなし。片膝をつき、よろけながらも奮闘する外面的動作だけで十分感情は伝わるのだから。ミサイルキャッチのロングショットだけはそれゆえ感動的なアクションといえる。最後はオマージュ的に当然「Watch The Sky」であり、シャルト・コプリーは良い表情で空を見上げているが、豆粒のようなCG群衆が空を見上げている俯瞰ショットと報道ナレーションは今一つ気に入らない。  
[映画館(字幕)] 5点(2010-04-22 12:52:12)
18.  第七天国(1927)
甘美なロマンスムード一辺倒ではなく、後半では第一次世界大戦での塹壕戦の描写なども手抜きがない。中盤の出征のくだりからは街路や戦場での大掛かりなモブ(群集)シーンが俯瞰気味で捉えられ、またかなり凝った特撮も組み合わされており大作の風格すら感じさせる。厳然たる戦場(地獄)に正面から向き合ってこそ対位的に強調される「天国」。その対比に関連するなら、恋人たち二人の身長差を始め、高層アパートや階段、地下水路といった舞台設定や台詞の中など随所に高低差が意識されており、見上げる・見下ろす・昇るといったモチーフに活かされている。下降―上昇―下降―再上昇という物語構造は現代なら宮崎駿監督なども意識して用いる普遍的な作劇であり、具体としての垂直方向の身体アクションが説話と融合することで、ドラマへの強い感情移入と感覚的高揚を可能にするのではないか。観念的な意味ではない、具体的な「上を見上げる」という行為の美質に溢れた作品である。
[DVD(字幕)] 9点(2009-10-27 20:39:12)
19.  大自然の凱歌
最後のシークエンスなどは、「階段」からしてもウィリアム・ワイラーの担当場面だとわかるが、特に前半から中盤にかけての快調なテンポと演出はまさしくハワード・ホークス印といえる。ウォルター・ブレナンの飛びつき。「オーラ・リー」の合唱。エドワード・アーノルドの叩き下ろす豪快なパンチ。フランシス・ファーマーがみせる粋なマッチの擦り方。登場人物たちの織り成す視線劇の面白さ等など。その何れもが魅力的だ。撮影担当二者の布陣も凄いのだが、労働者をしっかりとフレームに納めながら森林伐採から材木搬出、切断加工までを捉えた冒頭の迫力あるロケ撮影はやはりグレッグ・トーランドだろうか。豪快な躍動感のみならず、巨木と労働者のスケール対比、そして人間の労働を明確に描出したロングショットが素晴らしい。冒頭の飯場、酒場の乱闘シーン、終盤のパーティのシーン等でも個々の人物に満遍なくフォーカスを当てた撮影により群衆場面の活気をさらに盛り上げ、一方ではレースのカーテンの薄い影が揺れる「女優フランシス」の横顔のソフトな美しさを一際艶やかに浮かび上がらせる繊細さはやはり、G・トーランドの真骨頂というべきか。
[DVD(字幕)] 9点(2009-09-27 20:47:36)
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