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ユーカラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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61.  スノーデン 《ネタバレ》 
インタビューから過去に遡り、ラストが講演会で、スピーチがあって、感動の拍手があって、というメッセージ発信型の定番の構成である。 この演説というのが大抵映画をつまらなくするところなのだが、ロボットの動きと、語り部の交代という仕掛けが奏功して スノーデン氏本人の寡黙な横顔がラストを静かな緊張で締めくくっている。  主義主張が前面に出そうな題材ながら、フィクションを大胆に織り交ぜたサスペンス演出が絶妙に中和している。 会議室の大画面に映し出される上司の威圧感。床に落ちたSDカードを巡る、同僚との視線劇と手話の 感動的なやりとり。そのカードをゲート外に持ち出すシーンの緊迫感と、外の世界の光。 そしてホテルから脱出する際の、メリッサ・レオとの別離のやりとり。特に映画後半はドラマティックなシーンの数々で盛り上がる。  監視の映画として、眼やカメラファインダーをモチーフとしたショットも充実している。
[映画館(字幕)] 7点(2017-01-31 23:37:22)
62.  不屈の男 アンブロークン 《ネタバレ》 
イタリア移民としての被差別、走ることとの出会い、そしてオリンピック走者としての活躍が回想処理によってまずは語られる。 ナショナリスティックな曇りを取り払い、映画的な主題に立ち返れば、走ることに対する抑圧と解放のドラマということになるか。  丹念に描写された前半の海上漂流は、踏むべき地面の無いゴムボート上では立つことも歩くことも出来ない、そういう意味での責苦でもある。 収容所では足・顔を殴打され、幾度も地面に伏すこととり、直江津では重い木材を担がされ、ひたすら直立させられることとなる。 単純化するなら、走ることで自己実現してきた者が走るという行為を奪われ、それを取り戻すまでのドラマ、となろう。  それだけに、エピローグでにこやかに走るザンぺリ-ニ氏の姿は感動的である。  ロジャー・ディーキンスの撮影は、実話の映画化といこともあって合理的な光源を基にした自然主義的なルックだ。 爆撃機のキャノピーの中を一瞬横切る太陽の入射光などの細部が画面にリアリズムを与えている。 直江津の石炭採掘場の見事な美術を舞台に展開されるのは、収容所長との視線の闘いでもある。 ここに至って、写実的な照明はより強度を帯び、二人は順光と逆光で対照化される。
[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2017-01-29 05:06:06)
63.  ザ・コンサルタント 《ネタバレ》 
ガレージのシャッターが上がるタイミングに合わせて、芸術的な呼吸で車を入庫させるベン・アフレック。 二度目のショットでは、シャッターに接触させてしまうことで、業務が不完全なまま解雇された動揺を仄めかす。 これがシャッターを利用したキャラクター描写の例。  デスクに伏して眠っているアナ・ケンドリックをわざと起こすためにガラスドアを少し乱暴に開ける、二人の初対面のシーン。 対するはソファに眠る彼女を起こさないように気遣いながら、彼女を見納めながらやさしく静かにホテルのドアを閉じる、情感豊かな二人の別れのシーン。 こちらはドアを反復活用した感情変化の描写の例だ。  冒頭の逆光のドアをはじめとして、車のドアやエレベータの扉や抽斗など、サスペンスにロマンスに、とにかくドアを駆使した映画ともいえる。  謎解きパートは少々長いし、ジョン・リスゴーも少々小者ではあるが、各キャラクターの設定を巧みに活かしたドラマはなかなか面白い。 会計監査業務をガラス壁やボードを使ったアクションとしてみせる、童謡などの伏線のあれこれも漏れなく活用するなど、巧妙だ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2017-01-29 05:01:08)
64.  沈黙 ーサイレンスー(2016) 《ネタバレ》 
ドラマの流れは篠田正浩版(1971)同様、ほぼ原作に忠実だが、冒頭のポルトガルの場面やエピローグの「切支丹屋敷役人日記」の章が映像化されたことで 長尺となっている。特にスコセッシ流の解釈が施されたラストの十字架のショットは映画独自の表現となって印象深い。  1600年代を再現するランドスケープも厳選されており71年版に引けを取らないし、波音をはじめとする環境音の演出も充実している。 浅野忠信、塚本晋也らも安定の好演だが、イッセ―尾形はエキセントリックすぎて嫌味な印象だ。 岡田英次のほうが、穏やかな凄みがあった。  原作のクライマックスシーンは現国の教科書にも採用される有名な箇所だが、 その文章のもつドラマティックな迫力は、「白い朝の光が流れこんだ。」「朝方のうすあかりの中に」「黎明のほのかな光」「鶏が遠くで鳴いた。」などの 極めて映画的描写の充実にもよる。 篠田版は宮川一夫を撮影に起用してそれらの光を忠実に導入し、壁の「LAUDATE EUM」の文字を、踏み絵の図柄を、ロドリゴのシルエットを崇高に浮かび上がらせた。 遠藤周作が強く意識して描写しただろうその肝心な「夜明け」の光をなぜかスコセッシは映像化しない。 その代わりに、篠田版が賢明にも省略した「あの人」の声を聴かせてしまうという、この辺の感覚は違和感を抱かざるを得ない。 あるいは、スコセッシがあえてそのように処理して安易な審美性を拒んだというのは、現在の世界は未だ夜明けには至らないという諦念ゆえだろうか。  溝口的な、濃霧の中に浮かぶ小舟のショット。その視界不良で不穏な様も、全編を覆う曇天とともに何やら現実世界を連想させて、ぞくっとさせる。  異教と民族を巡る分断と排他主義が拡がる現在、時宜を得た公開ではある。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-01-23 16:31:54)
65.  トゥルー・クライム殺人事件 《ネタバレ》 
壁に投影される影や、揺れるレースカーテン越しの対話。 静かな出だしから次第に加速してゆくドラマのリズム。  ピアノやテーブルやレコード盤面への不安定な人物像の執拗な反射、その構図。 真正のノワールといった感覚に十分酔える。  曲がり道を猛スピードでカーブを切りながら暴走していく車のスリリングな迫力が素晴らしい。 そのままクライマックスのロケーションを活かしたカーチェイスに突入し、 ゴミ処理場での決着へと雪崩れ込む。  ラストのラジオ放送の苦味もいい。
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2017-01-09 14:41:39)
66.  ピートと秘密の友達 《ネタバレ》 
両親との死別をシンプルな画面処理で静謐に描写した出だしから、林間の木漏れ日をほどよく採り入れたドラゴンとの出会いがいい。 彫刻刀の滑るショットと一本道を走る車のショットのオーヴァーラップなど、スムーズな画面繋ぎによる前半の語りも快調だ。  俳優側の都合ではあろうが、ロバート・レッドフォードの回想談に無駄なフラッシュバックを用いず、彼の語りで見せてくれているのだから、 出来れば原語で聴きたかった。  前作に続いての「家へ帰る」映画であり、絵本の挿絵を使った寡黙な語りに打たれる。  ただデヴィッド・ロウリー、飛翔のアクションは不得手なのかも知れない。 夕焼けの鰯雲などのパノラマショットは素晴らしいが、クライマックスのアクションにはもう一つアイデアが欲しい。 橋が登場すると、水平ー垂直の展開が見えてしまう。
[映画館(吹替)] 7点(2017-01-04 00:10:03)
67.  スワンプ・ウォーター 《ネタバレ》 
水辺でウォルター・ブレナンが屈んだ瞬間、画面左端にいた蛇が不意に彼の右頬に飛びかかるショッキングなショットなど、 よく撮れたと思う。さりげない風に驚きを導入してくるルノワールである。 『南部の人』などにもあるが、殴り合いの格闘シーンもコマ落としとはいえ、シャープな動きと力感のあるショットも迫真だ。 カメラを振り回すばかりが脳じゃない、という手本のようである。  方や、ダンスシーンや沼地を進む小舟などの緩やかな横移動では、カメラによる運動感を堪能させてくれる。  アン・バクスターが一人ドレスを舞わせて踊るショットの何と情感豊かなことか。
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2016-12-30 22:07:35)
68.  ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー 《ネタバレ》 
雑多な種族が往来する街のシーンが二度ほどあるのだが、こういうシーンは美術セットやメイキャップの見せ場だろうに、 画面上は単に粗雑で目まぐるしいモブシーンでしかない。人物の対話シーンとなると、浅い深度のカメラによって後景はほとんどボケボケである。 折角のデザインスケープならば、その仕事を観客によく見せてあげればよいのに。美術の手抜き仕事を隠している訳じゃあるまい。  CG特撮を駆使したロングショットの奥行きとの落差が際立ってしまうわけで、そうした画面の単調さもドラマの足を引っ張る。 その観点では、ルーカス版よりは『帝国の逆襲』のカーシュナー版のスタイルであり、『GODZILLA(2014)』と同じ傾向である。 落胆させられるのは、いよいよクライマックスに向かいフェリシティ・ジョーンズに賛同してディエゴ・ルナらが集結するのだが、 彼の背後の仲間たちにもほとんどピントを合わせないことだ。 これは彼らの物語ではないのか。 カルチュラルスタディーズ的にもよく語られるこのシリーズ。この人種配置とrogue stateを連想させずにおかないこのタイトルなら、 彼ら一人一人の表情にもしっかりフォーカスしなければならぬのではないかと思うが。 このような細部こそ疎かにして欲しくない。
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2016-12-25 15:03:52)
69.  南部の人 《ネタバレ》 
ザカリー・スコットとベティ・フィールドの夫婦が玄関先のポーチに二人並んで腰を下ろして語り合うシーンが幾度もある。 空の星を、あるいは家の前の川をみつめながら。 暖炉の炎をみつめながら顔を寄せ合う家族のショットなどと共に、アメリカ映画的な情緒が溢れている。  雨が降り出す中、意固地な祖母はポーチの揺り椅子に座ったまま、屋内には入ろうとしない。 画面手前の屋内でテーブルを囲む夫婦と姉弟、そして画面奥で雨に濡れている祖母というルノワール的な縦構図のショットは、 そのうちに祖母が家族の輪に加わるだろうことを示す。  寄り添ったり、殴り合ったり、身体の触れ合いが充実した作品だが、それは人同士だけに限らない。  雨に濡れる、川に浸かって魚を獲る、土地を耕す、綿花を摘む、大地に突っ伏して嗚咽するなど、自然とのスキンシップも同等である。 河に流された牛を助けようと苦闘するクライマックスは、過酷さと共に『素晴らしき放浪者』的な大らかさも同居している。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2016-12-24 00:05:43)
70.  長い夜 《ネタバレ》 
舞台はアパート4階。その自室にヘンリー・フォンダが立て籠もる。表通り下方からのライトが屋内にノワール風に肥大化した影を作り出している。 時折唐突に乱射される銃による弾着によってシーンの緊張が高まっていく。同時にそれはひび割れた鏡を画面に導入させる役割を果たし、 銃撃のショックで半開きとなったクローゼット内に貼られたヒロインの写真や散乱した小物から回想シーンへと橋渡す役割をも担う。  部屋を包囲する警官隊の配置も、階段の高低差がとり入れられる事によって立体的な空間が組織されているのがいい。  ヴィンセント・プライスのアクの強い相貌とキャラクターがヘンリー・フォンダの実直なイメージと好対照を為し、不気味な存在感を放っている。 危険な階段落ちもこなして出色だ。そしてラストでビルを駆け上って行動するヒロイン、バーバラ・ベル・ゲデスも可憐である。  劇中で幾度も用いられる小道具である煙草もまたエピローグで印象的な使われ方をしており、実に粋である。
[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2016-12-22 00:12:23)
71.  裏切りの街角(1949) 《ネタバレ》 
しかるべき見所の数々はまぶぜ氏が以下に具体的に一通り挙げられているのだが、 とりわけ特徴的なのはやはり縦構図の効果的な取り方だろうか。 バーの長いカウンターが形づくる鋭角的なラインや、現金輸送車の出入りスペースと手前の控室との組み合わせ、駅の売店越しに佇むイヴォンヌ・ ダ・カーロなど、深い奥行きを構成して人物の相関を示し、ドラマに緊張をもたらしている。 単なるエキストラに見えた一通行人が、ふと違和感のある動きをする。後にその人物が意味あるキャラクターとして登場してくるという巧さ。 病院のベッドに固定され、身動き出来ないバート・ランカスターが鏡を使って死角である病院廊下を覗く。 そこに映った、ソファに座っている男。その距離感、鏡面の歪みが生みだすサスペンス感が堪らない。  ドラマ上の必然からレイアウトされた厳密な構図の数々に魅入る。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2016-12-11 23:47:22)
72.  浜辺の女(1947) 《ネタバレ》 
オープニングの波や、主人公の見る海中の悪夢、土砂降りの雨など、水のイメージの豊かさがまずはルノワールらしさだろう。 その悪夢の特撮風イメージも、『マッチ売りの少女』で特撮好きを表明しているルノワールの趣味が感じられ、 ハリウッドのシステムの中で、断片的ながらもその作家的特徴を記している。  浜に打ち上げられた難破船の中のジョーン・ベネットとロバート・ライアン。 船側の窓を通して、チャールズ・ビックフォードが手前に近づいてくるのに気づき、二人は画面右手に移って隠れる。 窓の内と外を捉えたルノワール的ショットにさらに素早い横移動が加わり、サスペンスフルだ。  水と対になるライターの炎とクライマックスの火事もフォトジェニックである。  画家の設定だが、話題となる絵を一切見せないあたりもさすが。
[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2016-12-11 15:48:30)
73.  天使の顔(1953) 《ネタバレ》 
裁判を有利に進めるために、弁護士はロバート・ミッチャムにジーン・シモンズとの偽装結婚を勧めるシーンがある。 すると、次のショットではいきなり病院のベッドサイドで二人の挙式が執り行われているので驚かされる。 これも撮影スケジュール上の都合だろうか、唐突な展開にも思えるが、その大胆な編集が却って二人の危うい関係と末路を強く仄めかすこととなる。  継母の乗る車が土埃をあげて転落するショットと、ジーン・シモンズがピアノを弾くショットがクロスカットされる。 ピアノの静かな調べと、事故の荒々しい轟音の対が見事である。  それが再び反復されるラストの断崖のショットもさらに凄惨さを増す。事故と入れ替わりで屋敷に到着するタクシーの静けさが余韻として効く。
[DVD(字幕)] 8点(2016-12-08 00:09:00)
74.  力と栄光 《ネタバレ》 
時間推移が、カメラをパンさせながらのオーヴァーラップや影を落とすエフェクト等で様々に表現されるのだが、それもあまり統一感はない。 技法というよりはドラマの語りの点で『市民ケーン』の原型だといえる。  成り上がった主人公スペンサー・トレイシーの浮気の告白、それを聞いた妻コリーン・ムーアの末路、息子の堕落。 そこから遡って、新婚時代の幸福なエピソードを見せていき悲劇性を際立たせたのはプレストン・スタージェスの巧さという事だろうか。  親友役のラルフ・モーガンが妻に語り聞かせる形式だが、顛末の全真相を語りきってしまうのも少々無理を感じさせる。 そうした諸々の改善の積み重ねが後のウェルズの達成に繋がったようにも思える。  新婚時代の夫婦の姿と、彼らの後景の窓外を走る汽車のショットなど、画面的に『市民ケーン』を思わせる断片も随所にある。
[CS・衛星(字幕なし「原語」)] 6点(2016-12-04 06:04:27)
75.  虎鮫 《ネタバレ》 
殊更な表現をするわけでもないのに、リチャード・アーレンとジタ・ヨハンの出会いのシーンは後に彼らが心ならずも 惹かれ合い、エドワード・G・ロビンソンを裏切ってしまうことになるだろう予感を強く感じさせる。 さらには陽気なエドワード・G・ロビンソンの邪気の無い雄弁が哀れみを誘う。  波をかぶる船側で漁師たちがマグロを次々と釣り上げていく漁獲シーンの荒々しく、力強いショット。 そのマグロを船倉から籠で釣り揚げ、漁港から加工場へとコンベアーで運んでいくショットのドキュメンタルな迫力。 本筋そっちのけで、その瑞々しい労働シーンに魅入られ、撮り続けてしまったのだろう撮影クルーを想像して楽しくなる。  船長の風貌や、船上からのライフル射撃などのディティールはやはり後の『ジョーズ』にも受け継がれたのだろう。
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2016-12-03 00:06:01)
76.  五本の指 《ネタバレ》 
中立国を舞台にしたスパイのドラマということもあり、無駄な殺しのシーンも無いが、頭から最後までサスペンスが目一杯詰まっている。 実話であること、実際の現場での撮影であることを冒頭で提示し、イギリス側、ドイツ側、そしてスパイのジェームズ・メイスンそれぞれの 思惑と駆け引きを観客にほどよく了解させつつ、ドラマを進める。 ファム・ファタルがいずれは裏切るであろうこと、金庫に仕掛けられた警報装置を出しぬいたつもりが手違いで鳴ってしまうだろうこと。 それを観客は、抱擁する彼女の表情のショットから察知し、上がったブレーカーを戻そうとする清掃係の行動によって焦らされる。 判らされているから、観客側はハラハラドキドキしてしまう。  次第に嫌疑をかけられていくジェームズ・メイスンの、それでもなお沈着冷静な表情と大胆な行動もさらにサスペンスを煽る。  イスタンブールの市街、マーケット、港湾などのロケーションを活かした追跡劇も生々しい迫力だ。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2016-11-30 03:24:41)
77.  突然の恐怖 《ネタバレ》 
時間を可視、可聴化する振り子運動のオープニング。その予告通り、クライマックスは極上の時間のサスペンスである。 モノクロ画面の光と影と音響が相乗して緊迫感を盛り上げ、後半はもう目が離せない。  部屋に設置されていた録音機が録音していた、ジャック・パランスとグロリア・グレアムの密通と共謀の会話音声が流れる室内。 音声のみであることが、それを聞くジョーン・クロフォードの絶望感を際立たせる。 グレアムの部屋に侵入し、家探しするクロフォード。突然鳴り出す電話の着信音や、郵便配達員の影と呼び鈴にこちらもドキリとさせられる。  結婚の歓びから一転しての困惑、悲嘆、絶望、そして復讐までの神経症的な感情の流れを的確に表現するヒロインの素晴らしさ。 照明のオン・オフを駆使して黒い陰影を投げかけるチャールズ・ラングのカメラもまたその感情表現を画面に乗せている。 クローゼットに隠れた彼女の額に浮かぶ冷や汗、真っ暗なベッドの上に光る彼女の妖しい眼の光など、異様なまでに優れた出来栄えだ。  ラストのアクションもまた、坂道や隘路などの工夫を凝らしたロケーションが不安定なノワールムードを醸す中、 ジャック・パランスが次第に狂気を帯びて最後までスリリングである。  別荘の崖路を下り、階段落ちを演じ、坂道を逃げ降ったクロフォードは、ようやくラストで夜明けの陽を浴びつつ坂道を登り始める。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2016-11-23 21:19:07)
78.  ジャック・リーチャー NEVER GO BACK 《ネタバレ》 
収監されるもあっさりザル警備の隙をついて脱出してみせるトム・クルーズ。それはいいのだが、序盤からこうもタスクの難度が低いと その後の展開に不安を抱いてしまう。アナログなりの知略をもう少し披露して欲しいところである。  ハロウィン・パレードの混雑の中、パトリック・ヒューシンガーを見つけ出し追跡するシーンも同様に今一つ盛り上がりきらない。 壁を伝って階上へと追っていくトム・クルーズのアクロバティックなスタントをもっと見せてクライマックスへ向けてのテンションを高めて欲しい というのは酷な望みか。地味なアクションを指向しているのは承知だが。 派手な銃撃戦からは、コビー・スマルダーズとの連携プレーを見せていくわけだが、アップの多すぎが逆効果になっている。  ラスト、一旦は別れた娘が踵を返してトム・クルーズに駆け寄り、抱擁を交わすのだが、このショットも想定通りすぎてあまり巧いと思えない。
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2016-11-19 00:02:40)
79.  その女を殺せ 《ネタバレ》 
正味71分ながら、スピードとスリル感が満載である。 護送されるマリー・ウィンザーが二階部屋から出るとネックレスがほどけ、真珠が階下に落下する。その真珠が散らばる床は二階からは死角となっており、 その陰の中に殺し屋の足元が浮かぶ。その音響と陰影が生むサスペンス感。パースをつけた階段の縦構図の素晴らしさ。 その手狭な感覚は、舞台が列車に移るとさらに強調され、その通路やコンパートメントを忙しなく移動し、格闘するチャールズ・マックグローの 動きによって全くテンションを途切れさせない。  ジャクリーン・ホワイトとの対話シーン、マリー・ウィンザーの撃たれるシーンなど、窓ガラスの反射やドアによる遮蔽が効果的に 使われており、本物-偽物の主題を提示しつつクライマックスのドア越しの銃撃戦に巧く繋げている。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2016-11-16 23:52:20)
80.  湖中の女 《ネタバレ》 
監督・主演のロバート・モンゴメリーがまずはカメラに正対して長広舌を披露する。視線をほとんど逸らすことなく長台詞を軽やかに語る彼の 眼にまずは吸い込まれるのだが、そこからその彼の眼がキャメラと化してドラマが進行していく。 いわゆる一人称キャメラである。 煙草の紫煙が画面の下手から立ち昇り、鏡の反映が絶妙なアングルで映し込まれ、オードリー・トッターの顔が間近まで迫る。 難儀しただろう撮影上の苦心や技法の方につい関心が向きすぎてドラマにいまいち入り込みづらいのと、画面の動きの乏しさでさすがに中盤には 飽きがきてしまうのがやはり難点か。 と、その辺りは想定したらしく、地味ながら車の尾行やクラッシュなど活劇的見せ場の配置も忘れてはいない。  路側に停車している不審車の横を抜け市街へと車を進行させてゆくフィリップ・マーロウの視点。フロントガラスを緩やかに流れていく夜の街路。 バックミラーに視線が移ると、不審車のヘッドライトが次第に迫ってくるのが判る。  ノワールムード香る、一人称のカメラが良く活きるシーンである。
[ブルーレイ(字幕なし「原語」)] 7点(2016-11-10 23:43:47)
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