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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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81.  怪物團 《ネタバレ》 
「三人」「知られぬ人」から続くトッド・ブラウニングのサーカスもの。この「フリークス(怪物團)」は間違いなくブラウニングの最高傑作でしょ。  この映画には様々な身体的特徴によって差別され、それを跳ね返しながら生きてきた人間たちがひしめき合っている。彼等にスポットライトを当てたブラウニングの手腕、そして本当の怪物は「人間の心」だという事を教えてくれる素晴らしい映画だ。  肉体の繋がった双子の姉妹、腕だけで地面を駆ける男、脚だけで生きる女性、胴と頭を使って生きる男、女と男の間で揺れる者、吃音に苦しむ男、豊かな髭を持つ女、るいそうを芸に活かして生きる男、鳥のように生きる女などなど。  題名を引き裂くように現れる一人の男、狭い空間に押し込められ、それを見てある者は凍りつき、ある者は悲鳴をあげる。映画は見世物にされた者が何者なのかを語り始める。 サーカスのブランコで微笑む女性、それに羨望の眼差しをおくる小さな紳士と淑女。 垂れ幕の外に向けられる笑顔、内側ではドロドロした情念が渦巻く。女がわざと落とした上着を拾い、律儀にかける。彼は彼女を愛していたが、普通の人間たちと偏見の眼で見られる者たちの間にある心の壁。 サーカスの座長はそんな人々を暖かく迎え入れてきたのだろう。それを人々は奇異な眼を向け、嘲笑う。あのパーティー気分だった幸福なシーンを、彼女の言葉が凍りつかせる戦慄・失望。解ってくれる人は良い理解者になり、解らない人は一生解らない。  その魂を裏切った者たちへの復讐戦!雷雨が降り注ぐ中を走る馬車、それを包む不穏な空気。ギャングのように守る者たちの頼もしさ、走り続ける馬車に侵入する衝撃、ナイフ!雨は彼らの仕事を応援するように周囲を遮断する。復讐者が迫りくる恐怖…を応援してしまうクライマックスの畳み掛け。  完全版と編集された版では結末がかなり違う。彼らが和解するシーンがあるか無いかでまったく違う後味なので。
[DVD(字幕)] 9点(2016-08-26 08:10:22)
82.  ビフォア・サンセット 《ネタバレ》 
若者から大人へ。  前作とは何が違うか、どうか最後まで見て欲しい「サンライズ」の続編。  前は電車という街へ向かう道中、今作はいきなり街の中から、街角、路上、人々で賑わう街、書店、インタビュー、思い出す思い出は前作、キャメラの質感も前作の雰囲気を思わせる。  喋る喋る喋る、喋っている最中も動き出したくてウズウズ、ふと横を向いた瞬間に。  やはり歩いて歩いて歩く、時折悪態をつきながら再会を分かち合う、親しい友人か愛する異性か、子供から大人になった二人だけの秘密があの頃に戻してくれる。 「もっとあるよ(あと1時間くらい)」  二人にとって。会話の内容なんてどうでもいいのかも知れない。ただ互いを見つめ合いながら一緒に歩ければそれで。 過去は一緒にいるための話題として語られ消費される。街にこだまする音も。言葉は映画を彩る、二人の道中を飾る音楽のようになっていく。そう思うと音楽は鳴りっぱなしだな。  だがまさか10分もくっちゃべってる場面を延々と、前作とお~んなじように同じ俳優によって見せられるとは思わなんだ(褒め言葉)!誰にも話しかけねえ!前作のオッサン!!来てくれー!!!助けてくれー!!!!  年齢を重ねた二人、、二人にとっては至福、見守る人によっては苦痛を感じたり退屈に思う人も多かっただろうね。何故俺は退屈に感じなかったのだろうか。  指先が現す銃、カフェでも身振り手振りと舌は止まらない、食事。 「裸見ないと」 上着を脱ぎ、髪を下し、煙草をたしなみ、落ち葉、路地。おっと、ここまで頑張った観客に言いたい。どうかカフェで切らないで欲しい。  路地から歩道橋の上へ、公園を通り、短い橋を渡り、木漏れ日、ラフな格好は男を誘っているからなのか、上着は脱いだまま、性の話は女を求めているからなのか。  会話は前作とのギャップに戸惑う瞬間も。 突然椅子へ彼女を誘う、階段を下りたりすべり下りたり、川沿い。 黙ると死ぬのか!?船すら止まってやがる!!動け!動けってんだよこの野郎!!!動き出してくれてほっと一息。  船が動き続けることで髪と薄布もなびき続ける、船上でも男は姿勢を変え続け女も座る、橋はトンネルとなって影を落とし日も少しずつ傾く。 「細かいところに目がいっちゃうの」 そうなんだ、気をまぎらわそうとしてあらゆる仕草を見ざる負えない。車に乗っても喋り足りない。 運転手「うるせえなコイツら」  哀しそうな顔で触ろうとしてやめる手、路地を曲がる瞬間に雰囲気が明るく、抱擁、路地裏、猫、住人の紹介、自宅へ御招待、一曲、上着を脱いでくつろぐ、ギターを抱えて歌う、写真。 CDの音楽が流れ、二人は黙り…なんて思っていた瞬間が俺にもありました。  身振りでコンサートの様子を伝え、その後は二人だけが知っている。沈むであろう姿も映されて。
[DVD(字幕)] 8点(2016-08-26 07:38:04)(良:1票)
83.  ビフォア・ミッドナイト 《ネタバレ》 
大人から親へ。  「サンセット」の続編だが前二作とはかなり違う部分が多い。海に出るように開放的だ。  前は街に既にいた、今度は旅の始まりからすべてが始まる。 歩く二人、前作と違って今度はちゃんと出て映されるものと映されないもの、、やはり喋って喋って喋りまくり、空港、抱擁、彼女に語ったことが大体合ってたことが解る。  別れ、車で待つもの、海沿いの道、後ろに乗るものが誰なのか、彼女と彼の関係はどうなったのか気になる。 動き続ける車で回り続ける舌、娘、車内でじゃれ合う、写真、食う、盗品を渡した上に黙認、やはり会話だけで過去が語られる。  くっちゃべる二人の挙動を楽しむ姿勢は貫かれる、そこに車に揺られるものの挙動が背景として加わる、喋り方の真似、やつれた男と少しふっくらした気がする女、久々に二人に話しかける存在、尻にタッチするのは将軍に「了解」の合図、店、子供たちとサッカー、海辺。  二人は別れて様々な人々とも語り合う。会話が途切れるシーンも多い。 腰かけて動きが少ないはずなのにキャメラは動きまわり、会話に参加する人も増える、水着、「波止場」の話は面白かった、時間、かじられるリンゴ、家族どうしのしゃべくり、男が食事中に下品な話をするのは若い二人を刺激するため、、悪態や三文芝居をするのも親しさから。  本作の性に対する踏み込み振りときたらどうだ。さり気なく腰に手をやり胸を揉みしだく。全二作ですら自分の脚にのっけたりくらいだったのに。 それをやっても許される仲ということか。スカート姿や胸が強調されるの母親ではなく異性としてか。  本当にヤギも登場、食卓を去った後は前作を思い出すようにまた二人だけでしゃべり続けながら歩き続ける、映画、ポンペイ、遺体、白黒、50年代、遺跡、蝋燭。 聖人一同「十字斬ったぐらいで許されると思うなよ」  指を舐める、海辺の椅子、沈む夕日は会話と運動を止める、秘密はまだ共有する仲、作家として本にサイン、宿。  前二作でけして映されることのなかった情事が映される。 意外と胸があったのか(ry どんどんとんでもないことを言い始める二人、拒んだら求め、下着、求めたら拒んだり、ズボン、それが思わぬ口喧嘩にまで発展してしまう。 “弦”、どんどん現実的に生々しく、それとも今までが御伽噺のように綺麗すぎたのか。あんなに離れたがらなかった二人が…。  ドアは終わりを告げるのではなく、休ませずに延長戦をさせるため。 それでもあの場所で待ち続け、あの場所へ行く。向かい合わせが不意に距離を詰め、言葉が途絶えた瞬間、キャメラは静かに去っていく…。
[DVD(字幕)] 9点(2016-08-26 07:28:30)(良:1票)
84.  ダラス・バイヤーズクラブ 《ネタバレ》 
バッド・ベティカーの闘牛映画の如く、一瞬の生き様が刻まれた二時間。  闘牛、暗闇から見つめるもの、牛上での数秒と闘病での数年、彼等にとってはどちらもほんの数秒の瞬きなのかも知れない。  牛や馬のように性を楽しむ男女、地に伏すもの、金、エイズ、ロック・ハドソンはそれを我慢できなかった。 賭け、「北北西に進路を取れ」か。ありゃスパイ映画の大傑作だったな。  ロデオ、死と隣り合わせ、ピエロ、柵を乗り越え逃亡、保身のために警官殴って逮捕、馴染みかよw 友人思いだからこそ本気で殴る。だが男を支配するのは危ないことに突っ込みたい欲求。生き急ぎ病に蝕まれ破滅へと突き進んでしまう。  繰り返される咳 、みんないつ死ぬかわからない仕事に命を賭ける、電撃がくれたチャンス、病院でも死への近道、トランプ博打、甘いもの、宣告された余命で自分がくたばるかどうかすら賭ける気概。  続けられる破滅生活、セックス、ヤク、煙草、医者よりも信じられるもの、死への恐怖、図書館、医者たちの怪しい会議、思い当たる記憶、生への叫び、今までのツケ、豹変する知人たち。病への恐怖からでもあるけど、みんな自分が可愛い。  神にまで頼り始める窮地、、酒場で出会った者に求めるもと交流、今更続けてきたことを止めることもできない。 治す気あんのかないのか、酒をあおるように投薬を貪る、華麗にスルーだけして医者まで紹介してくれる良い奴、治療という名の尋問、ゲイへの抵抗は死への恐怖でもある。 男ではなく女としてふるまう、女性ものの服とストッキング、医者も無理には止めない、帽子とショットガンを持って帰還、落書き、カウボーイ気取り馬に乗るように車を走らせる!銃を掴み泣く孤独、死ぬこともできない。  徐々に衰弱していく、自分にとっての「快適」な病院探し、無免許医に、多様な人種、襲ってくれといわんばかりに脚を出すナース、点滴くわえながら小便、偽神父を押し通す場面は数少ない癒し、この大嘘つきめww、命を救うはずの薬ですら取引するのだからタフというか救いようがねえというか。生死すた楽しんでいるようだ。 嫌いな相手はカモにする、追跡と取引、免許医への挑戦、点滴片手に会社運用、食い物のキャッチボール、手のひら返ししやがったクソッタレへの返答は抵抗が薄くなった証でもある。胸熱シーンとして見ていいのかどうか。  懐かしい知人への挨拶、ビジネスとしての健康、日本にも乗り込むカウボーイ、大都会岡山(交差点は東京です)、、スーツを着込むビジネスマンという仮面、音によって迫りくるものを伝える、ビジネスのためならイスラエルや中国にも偽神父や偽飛行士に扮して行ってやらあ、写真を投げ捨てるのは嫉妬か心配か嫌悪か、患者の奪い合い、やめられないもの、贈り物、忌み嫌っていた者との対話。  酒場には保安官が出入りするように警官が監視を続ける、電気のスイッチをイジッて点滅させるのは勧誘するため、スーツを着るのは「息子」として家族に会い告白するため、彼の「彼女」で居続けるためのヤク、握手するのは愛情かビジネスか、実験室に閉じ込められた蝶の群、点滅、帽子を被せるのは視界を防ぐため 怒り、失ったものと逆戻り、涙、道化師。  この映画の医者は、法によって守られ犯されない襲われない傍観者でしかない。  金槌で殴りつけるのは贈り物を飾るため、耳鳴り、頭痛 、闘牛場に始まり闘牛場に終わる。
[DVD(字幕)] 9点(2016-08-26 07:07:49)(良:1票)
85.  シッコ 《ネタバレ》 
マイケル・ムーアの最高傑作として評価の高い作品。  とりあえずDVDで笑顔を見せるムーアを殴りたくなったのは俺だけ? 初っ端からブッシュの演説、脚の怪我をみずから治療医療保険を持つことができない人々の現状、指を失った者の選択、たらい回しにされる両親 、子供はただ泣くしかない、これみよがしに悲しそうな子供の顔を見せつけること。  老骨に鞭打つ仕事人、酷い理由で保険が下りない人々、赤い丸やラインを引き強調、著名なwwwww映画作家wwwww、一般人や保険会社、刺客、医師といった人間にもインタビュー。 リストを「スターウォーズ」のパロディで映すのに爆笑。  保険に入れた人々は幸せ…なんて思っていた時が私にもありました、、何故チャップリンのマッサージ、人種差別問題にも踏み込んでいく、過去を示すザラザラのフィルム、写真 、ホワイトハウス、椅子で足を組む男、ニクソン、クリントン、、赤狩り、ジョン・ベルーシ?、政治家どもの茶番、人を診るのに嘘を糞のように垂れ流し、主義もクソもあるものか!  ムーアの評価:カナダ最高 ま た カ ナ ダ か  もう結婚しろよおまえら、トミー・ダグラス、ソ連のプロパガンダ映画、労働、アメリカに当てはめる歌、ムーアは偏見に満ちたアメリカ人となってインタビューしまくる。 戦争を潜り抜けたイギリスだからこそ、イギリスを戦勝国呼ばわりするのは大間違いだ。 広大な植民地を失い、街も焼野原、チャーチルはボケナス、フランスは革命の国、薬のCM、奴隷のように、テロリストになぜ医療を、その癖イラクは空爆、直訴するための船出。 キューバ「訴訟も辞さない」 カストロ「誠に遺憾である」 治療を受ける人々、自分のアンチサイトまで取り上げるからこそムーアは強いのだと思う。そんな自分を楽しんでさえいるのだろう。  最後は命の洗濯を頼みに今日もムーアは歩き続ける。
[DVD(字幕)] 8点(2016-08-26 06:54:01)
86.  イントゥ・ザ・ワイルド 《ネタバレ》 
インテリ馬鹿が荒野を行くロード・ムービー。  親の心子知らず、子の心母知らず、過去と現代が行きかう前章+5章構成。 写真、息子、主人公は家族を見捨てきれない、ちょくちょく映される葛藤、起きる母親、父親、雪道、電車、冬の旅路、手紙の文字だけが画面に浮かぶ。  画面を文字が横切る光景はイライラする、書き綴られる日記、雪原の隅から車がグングンと近づくもの、上空、荷物を抱えた男が長靴を受け取り、別れの挨拶、文字が題名となって消えていく冒頭。面白い。  切り立つ山々を一人突き進む。空を奔る雲。ライフル片手に狩りをしながら生活していく生活に飛び込んでいく、捨てられた車両、探索、家作り 、男が何故旅を続けているのか・目的はなにか徐々に明かされていく。  自然や動物との出会い、一人遊び、親子を殺るほどの覚悟はまだない、二年前の過去へ。物語はしばしば現代と過去を幾度も行き来する。 飛び乗る者、空に放られるもの、ビデオカメラの映像、お祭り騒ぎで酒場に入っていく者たち、会話、強調される表情、窓から放られるもの、手紙、捨てられる写真、別れ、押入れに貼られた憧れは真っ二つに割れる。セルジオ・レオーネ「善玉・悪漢・無頼漢(続・夕陽のガンマン)」。  しがらみから解放されたい、自由気ままに走っていく、トラブルで奪われる「脚」、資金との決別、小川、河、砂漠、街、森、海、農場、滝、岩場、岩山、ヒッチハイク、トラック、貨物列車、旅人たちとの出会い、別れ、再会。フィルムが流れるようにスライド。 届かぬ思い、利用される思い、突然泳ぎだす二人は子供のようにじゃれ合う。黙って静かに見守り、許すのは成年への信頼の証、愛する男のもとへ真っ先に飛び込む、娘のよう、鳥、鳥、鳥、テントの灯りが消える瞬間に暗示されるもの。  リンゴに語り掛ける、自己暗示、季節、雪解け、資金稼ぎのための職業体験、バイト、様々なものから学び直す旅。 恩人を連れ去るもの、両親の真実は映像では語れらない、偽りの家族、電話しながら話し相手にもなる大変さ、親切、買い物かごに積まれた船、激流下り、手の込んだ自殺、雄大な河、イカレ野郎にイカレカップル、マスカラより先に胸隠して下さい、出会うのは夫婦だのカップルばかり。  小銭は電話が必要な人にだけあげる、刺激を求めるが故に自ら金を捨てる、馬と一緒に走ったり、待てませんでした、旅をするにもルールに縛られたくない、線路から穴倉を抜けた先に待つもの、初めて政治家と意見が合った瞬間、見知らぬ街・国、格差社会、思い出される過去の自分。  鉄道を守る男たちからの“ご挨拶”。「北国の帝王」みたいにゃいかないね。 徐々に血にまみれるようになり、過去の喧嘩が明かされることでスリルを増す旅。苦い記憶、黙って見守るしかなかったもの。 孤独な狩りは野生及び死への接近、獲物が倒される瞬間は映されない、獲物をかっきる、生きるために血肉を生々しく貪り、たかる虫、メモ、保存、独り言、家族の会話。 ヘラジカ「俺の生涯でもっとも悲しい出来事だったよ」 虫や獣が匂いに惹かれてやってくる。  家族(になる前にヤルること)、匂いから逃れるために水に裸で泳ぐ、ズボンを脱ぐことで誘う、それを抑えるための筋トレが逆に惹かれさせる。  メガネは学ぶ人としての自分、時折入るスローモーション演出は俺の腹筋に襲い掛かる、木や草を掴む生への執着。  ヌーディストビーチ、オーマイゴッド温泉まさかの実在、良識(国境を無許可で超える)、横から捉えられる斜面は一般人と彼の境界線のようだ。 ベルトに刻まれる思い出、、岩山での挑発と緊張、変化、なにもないはずの場所で談笑、なんでもありそうな大自然で「なんもねえぞ!」と乱射、炭には御用心、手放せない知識、誤る判断、馬鹿やっちまったと後悔、銃が枕代わりに、のたれ死ぬ自由、みな自由に生きようとする彼に惹かれてしまう。  親も味わう苦痛、震えは恐怖か歓喜か、手紙。  運動を止めたバスの中で、彼は空の彼方で今も旅を続けているのだろうか。空を移動し続ける雲のように…。
[DVD(字幕)] 9点(2016-08-26 06:48:00)(良:1票)
87.  ヴィンセント 《ネタバレ》 
「シザーハンズ」にも登場したヴィンセント・プライス、この頃からバートンワールド全開だ。  影、うねる木、猫、人形、ナレーション、服装が変わったり影に覆われたり、モンスター、ぶっとい母親、大釜で茹でる、実験、マッドスマイル、絵、本、後の「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」である、母親痩せた? 墓堀、、影、無数の腕、幻、悪夢、闇。
[DVD(字幕)] 8点(2016-08-26 06:30:21)
88.  フランケンウィニー(1984) 《ネタバレ》 
ジェームズ・ホエール「フランケンシュタイン」へのオマージュが捧げられた作品。  1984、白黒、古典へのオマージュ、サイレント映画期のコマ撮り、自主制作、人形、恐竜のように飾られた犬、火山、家族で仲良く上映会、犬、ボールの行方は・・・NO-!!  叫び声、墓場、雨かと思ったら散水ホース、人体模型、最愛の者を描いた絵、かえるの解剖 電気、閃きを忘れないうちに走って帰宅、家電をかき集め、ありあわせのもので作る「何か」、鎖、装置、屋根裏部屋、見逃す者、フランケンシュタイン、「ヴィンセント」でも墓掘ってたね、光、輝く時計、馬、トースター、生々しい傷跡、犬の視点、ゴミ箱をふっとばし、うねるホース、黒い影、悲鳴、扉、見てしまったもの、不信、押しかける人々 風車の滑り台 、足元はよく見ましょう、復活、ダイナミック手のひら返し、バチバチ、四方八方からロープで引っ張って八つ裂きにするのかと(そんなことを考えたのは俺だけですね)。
[DVD(字幕)] 8点(2016-08-26 06:27:21)
89.  スターシップ・トゥルーパーズ 《ネタバレ》 
バーホーベン最高のクソ映画(褒め言葉)。 ハイライン「宇宙の戦士」とナチスのプロパガンダ「意思の勝利」をエログロ肉片まみれで皮肉りまくる怪作。 個人的にバーホーベンはガキの頃から生理的に受け付けない&トラウマ受け付けられまくって大嫌いな監督だが、この作品の突き抜け振りは爆笑しながら拍手するしかない。二度と見たくないがな!  誇張しまくったこの馬鹿映画を見て右翼だの左翼だの言っている連中を見るとまったくお笑いだぜ。  これだけ気持ち悪い映像の暴力(大賛辞)を喰らわされて戦争行く気なんて起きてたまるかっ!もういい!もう沢山だ!トイレは何処だ吐いて来る状態。 パワード・スーツなんて便利アイテムなんぞ出すわきゃねえだろというバーホーベンの鬼畜振り。「3」ですら“もどき”だ!  軍隊が勢ぞろいし好青年、美少女、美少年が誘う入隊プロモーションの馬鹿馬鹿しさ、高らかかつ壮大な音楽が流れるニュース映像、現実を映す中継映像、巨大な未知の生命体が乗り込んだ兵士たちを次々に噛みちぎり鮮血を降らせる! 時は遡り真っ白い美男美女が揃ったアテツケの塊のような授業風景、片腕を失った教師、それの目を盗んで行う“手紙”の送信・返信。 充実した学生生活、訓練を兼ねた解剖授業、見るがい生徒どもが内臓を躊躇なく引きずり出す感覚が麻痺した姿を!いいや人間が死ぬのは生理的にきても憎っくき害虫どもがくたばる様を見て喜ぶ貴方も既に感覚が麻痺しているのかも知れない。 パゾリーニも酷かったがバーホーベンは極めなくてもいいところを無駄に極めすぎ(褒め言葉)。 ゲロイン。こっちまでゲロ吐きそう。これでもまだ平和な日々です。 見つめ合う野郎二人、ぶっ飛ばし合うスポーツに精を出し、家族と別れの挨拶を交わし、市民権のために命を投げ出しまくる訓練へ。  入隊、義手と失われた四肢が物語るもの、別れと友情。 子供に小銃と薬莢を与える狂気、公開処刑、バラバラにされ散乱した死体を見せつける悪趣味極まりないバーホーベンの真骨頂(賛辞)。  初対面でも腕をブチ折る教官、入隊テスト、流血も辞さない訓練、野郎も女も裸でシャワーを浴びる和気あいあいとしたカオスな空間、励ましのビデオレター、気分は旅行、テンションが上がるように宇宙空間を縦横無尽に飛び回る宇宙船。よそ見する度にヒヤヒヤだ。 メッセージと告白、深まっていく絆、事故の悲劇、去りゆく者、責任、鞭打ち。事故、小惑星、不吉な知らせ、復讐の決意・教官の心意気。 死んだ虫だけがいい虫だ。普通の虫ですら憎悪の標的に。敵は地球外なのに。 犬と虫に厳しい映画、侮辱には拳で返答、友情の証、戦場へ。誤情報、上陸、狩り…いや戦争という名の地獄の始まりだ! 光の弾をケツから吐き出すやつ、かぎ爪で串刺しにするやつ、火を噴く硬そうなやつ、飛行するやつ、大量の気持ち悪い巨大生物が押し寄せる恐怖、パニック、戦場カメラマンも人間も蟻のように容赦なく肉片をまき散らし殺されまくる地獄絵図。  驚愕の展開、思わぬ再会、空爆、荒れ地を突き進む反撃開始、返り血、ニューク弾でヒャッハー、焼け落ちる手、蛮勇、野営地での娯楽、ベッドの上での戦闘、粋な計らい。  扉に潜むもの、風穴。 籠城戦、多くの死を乗り越える成長、宇宙葬。 扉さん仕事しないで、頑丈すぎる脱出ポッド、最終決戦、俺の屍を超えて行け、ようやく仕事した超能力者との対話。  俺たちの戦いはこれからだっ!
[DVD(字幕)] 8点(2016-08-26 06:04:38)(良:1票)
90.  スカーフェイス 《ネタバレ》 
再見。ハワード・ホークスの傑作「スカーフェイス(暗黒街の顔役)」のリメイク。 個人的に「アンタッチャブル」の方が密度と展開が速くて好きなのだが、本作は90分の高密度が3時間に引き延ばされて…いやブライアン・デ・パルマとオリバー・ストーンのヴァイオレンスと流血とセックスとF●ckの雨あられが叩き込まれ膨れ上がる。  ホークス版を飾ったポール・ムニのように、狂気を爆発させたジェームズ・キャグニーのように、死に全力疾走するハンフリー・ボガートのように本作のアル・パチーノは殺しの世界に染まり、野望のためにのし上がり破滅へと向かう。  女優にしてもホークス版がサイレント時代の名残りからかアイシャドウが濃すぎてちょっと不気味だったのに対し、コッチは女優レベルがハリウッド黄金期にまで回復した80年代。70年代のパルマだったらもっとエラの出た女優を使ったかも知れない。  カストロ議長、キューバの青い海、船、希望を求めてたどりつくアメリカ。 だらだらとした取り調べ、顔の疵(スカーフェイス)、手の刺青、人々が詰め込まれるバス、背景がスクリーン・プロセスなのもホークス版へのオマージュ故か。 高速道路の下に拡がるテント、殺しへの誘い。標的、収容所での暴動、騒動に乗じての暗殺、扉の向こうに待つ死。  悪友との下積み、憧れ、妬み、喧嘩腰で依頼を引き受けるやり取り、胸元の拳銃、マリファナ。エプロンを投げるのは仕事をやめることを告げるため。 かったるい会話は相手を油断させ銃を突きつけるチャンスを作るため、背後から近づく者、拳銃程度じゃビビらない、ビーチでナンパ、TVの中も大事件、こっちはチェーンソーで修羅場(あの「ファントム・オブ・パラダイス」でムチャクチャやってた男がバラバラにされる様子を映さない!)、血の雨、意地。 砕け散るガラスとともに飛び交う弾丸とブッ殺し合い、「ざまあ見ろ」。  ナイフが拳銃に、アロハシャツがスーツに代わっていく出世。 エレベーターから現れる美女、パーティー会場、兄弟や親子のような関係…それが簡単に壊れてしまうののがギャングの世界。 差別意識、葉巻、踊りながら口説き、友と語り合う「世界のすべて」を手に入れる野望。舌を出すナンパ講義大失敗、子供もドン引き、ドイツもコイツもマリファナ漬け、突然の接吻、不意打ちに弱い人々。  家族への挨拶、嘘、怒る理由、優しさ、一瞬滲み出る狂気。 電話、交渉人の交代、ヘリから吊り下ろす絞首刑、正直者、信用、ビジネス、疑心暗鬼、忠告、二人っきりで告白、妹への欲情・視線、警察とビジネスの先に映るもの、トイレ、平手打ち、ギスギスした関係・敵だらけ、机の下の獲物…を見せつけておいてそのタイミングで妹の話にするなよ気が散る。ことが終わって後でいいでしょうと。 銃撃戦と車の疾走…何だ追手が車で追いかけマシンガンの鉛玉ブチ込んだりとかはしないのか。  救援要請相手はパッキン巨乳と夜の戯れ中(ナイスおっぱい)。 電話、報復、見苦しい命乞い。  「暗黒街の顔役」がそうであったように、ビジネスとして殺しに打ち込む内はすべてが上手くいく。だが、マリファナと汚職にまみれた世界で仁義だの私情だの持ち出した時点で歯車が噛みあわなくなっていく。  増えていく札束と白い粉、幸せそうな結婚式を行う瞬間だけがキラキラと輝く。おっかない野生の虎は「獰猛な獣を手なずけてやったぞ」、伸し上がってやったぞという成り上がり根性の現れか。泡風呂に浸かってハングリーもクソもあるかw  恥さらしに仕掛ける罠、コンプレックス、欲情、車の追跡とこだわりが招く破滅、裏切り。  逆効果のサプライズ、嫉妬、力が抜け粉まみれの机に顔をうずめる。 監視カメラも見るやつがいなきゃガバガバ警備、侵入者たち、手際よく襲い掛かる報復の波、仕事人の一撃。特注のマシンガンでブッ殺しまくり叫びまくりプールにダイブして血の噴水!!  世界はあなたのもです。 殺し屋「お、おうそうだな」 ホークス&ベン・ヘクト「(゚Д゚)」
[DVD(字幕)] 8点(2016-08-26 06:01:33)
91.  ラッシュ/プライドと友情 《ネタバレ》 
F1を題材にしたレース映画、ひいてはロン・ハワード最高の映画がまた生まれたと俺は断言しておきたい。  野性的で豪快なジェームズ・ハントと論理的でコンピューターのようなニキ・ラウダ。性格のまったく違う二人の男。  あるレースをキッカケに互いを意識しはじめ、やがて強敵(ライバル)となっていく伝記映画。  実在したレーサーが如何にスピードに狂い、敵として意識し、憎み、誇りをかけて闘い、硬い友情を結んでいったのか。  レースシーンの迫力は地面を削ったり、目の前に弾丸が放たれるような臨場感!  レースの一瞬一瞬を積み重ねていく感覚、イメージトレーニング、一般車でブッ飛ばすところからレース場の場面に繋げる演出、クラッシュの死の臭い。  負傷なんかお構いなしに美女を見つけたら速攻S●Xに励むほどエネルギーに満ちた野生児ハント。  下半身(エンジン)のピストン運動やマフラー(マラ)の方がビンビンで強そうだ。何事にも激しい戦いを好む反面、嘔吐や疲労といった“反動”もデカい。ハントにとって事故は“早漏”か“寸止め”に等しいだろうね。エンジンがトラブれば女関係もトラブる。ハントが余りにご盛んすぎてこりゃ女にも嫌われるわな。スーツまで“S●X”まみれでもう勝手にヤッてろ。  ニキは論理的に考えず勘に頼るハントが気に入らない、ハントは機械的に物事を捉えようとするニキが気に入らない。  どっちもたまにブッ壊れて、どうしようもなく負けず嫌い。  ニキの「凸」による宣戦布告から二人の壮絶な魂のぶつけ合いがスタートする。それぞれの焔に包まれて。  レースの途中で散っていく仲間は同時にライバル同士でもある。  ニキが掛け替えの無い大切な物を得ていくのに対し、ハントは次々に離れ孤独になっていく。  恋人も、マネージャーも、“強敵(ライバル)”まで。  ニキが得た怪我の痛みよりも試合でハントと闘えない悔しさの大きさ、恐怖を乗り越えて闘いの場に戻るという意地、プライド。  ハントも強敵(ライバル)として己の誇りと意地にかけて迎え撃つ。  ニキの復活試合と“生か死か”を選ぶ瞬間は劇中屈指の熱さ!  ラストの雨の中のラストバトル。ハントにとっても、ニキにとっても“悪夢”が蘇る雨でもある。  ニキが得て失ったもの、ハントが得て失ったもの。本当に大切なものはどっちなのだろうか。そんな事を考えさせられる締めくくりだった。
[DVD(字幕)] 9点(2016-08-25 05:10:42)(良:1票)
92.  セッション 《ネタバレ》 
「セッション(ウィップラッシュ)」。 ドラムの猛烈な連打に始まり、廊下の向こうでひたすら打って打って打ちまくる青年の演奏からすべてが始まる。 扉は誰かが聞きに来るのを待っているかのように開け放たれており、音に誘われ接近する存在、師と弟子…いや音楽のために争い憎み合う宿敵同士が出会うのである。 男が上着を脱ぐのは暑いのではなく魂に火がついたことを告げるため。  夢が詰まった写真に想いを馳せ、恋人たちを羨み実力が中々認められない方が幸せだったかも知れない日々。 選ばれ勇気を出した途端に笑みがこぼれる手応え。ニーマンはただ音楽が好きなだけだったのに。だがその「音楽」が彼を狂気のドラムマシーンへと変えていってしまう。  クソ野郎は嘘つき、向うからやって来たチャンスは地獄への誘い、薄暗さが息苦しさを伝える練習場所、秒針が揃った瞬間に黙り視線を避け静止する演奏者たち、張り詰める緊張。 機関銃の如くツバと暴言を浴びせまくる鬼教師フレッチャー。打ち震わせながら両手を振り上げ、椅子を投げ付け、平手打ちを浴びせまくり、ドラムを投げ飛ばし蹴り飛ばし、大恥をわざとかかせて精神的に追い詰める。「フルメタル・ジャケット」のハートマン軍曹もここまでしねえ。 かと思うと涙を浮かべて悲しみ寂しげな姿を見せたりもする。その二面性が怒りを爆発させ襲い掛かる恐怖をより引き立てるのである。  ニーマンも青春、友情、恋愛、学生生活…すべてを破壊するようにドラムを叩き続ける。無数の弾痕の様に刻まれたドラムスティックの痕。彼がBフラットで締め、打ち込めば打ち込むほど周囲の人間への関心は希薄になり、恐怖に怯える群衆の一部と成り果てる。 フレッチャーの生徒たちが他人を責めるのも「自分が殺されるではないか」という恐怖からだ。犯人がわからないというのが一番怖い。みんな巻き込まれるのが嫌だから敬遠し、奏者たちの孤独が加速していく。  手や指をマメだらけにし、それを絆創膏で潰すかのように貼り付け、痛みに耐えながら音の一つ一つを肉体に刻み叩き込んでいく。怒り狂いドラムを叩き壊し、血まみれになろうが氷水の中に手を突っ込んで冷やしてまで打って打って打ち続ける。リチャード・ブルックス「最後の銃撃」を思い出すような狂い振り。  家族の団欒も罵り合いで台無し、映画を親子で見ても気分はそれどころじゃねえ(ジュールス・ダッシン「男の争い」の音楽がちょろっと聞こえてくるだけ)、トラックとぶつかり血まみれになろうがこの音楽キチガイを止める事はできない。  不意に現れるライバルと過酷なドラムス争い、喪服のように彼等を包み込む正装、動かない手を無理やり動かし続けようとする痛ましさ、涙、滝のような汗、シンバルに飛び散る鮮血を流し自らを燃やし尽くす壮絶な演奏。音楽を楽しんでいる余裕などない。 野郎を黙らせてやる!俺の音楽で叩きのめしてやる!!ブチ殺してやる!!!…そんな憎悪すら感じさせる。  すべてを失い氷の様に冷め切った姿、思わぬ再会、謎の密告者、悪魔の誘い、席に座った瞬間に戻り出す感覚と手応え、騙し討ち、追いかける者、見守ってくれていた者、クソッたれへの反撃の合図!それに演奏で、シンバルをぶつけて、目玉をくり抜くどころか手助けし、真剣な眼差しを送り、上着を脱いで応える!! 理由なんてもうだうだっていい、誰のためでもない、ただただ音楽が大好きだからこそ笑い、演奏を、指揮を続け、肉体の、魂の、すべてのエネルギーを注ぎ込む。 キャメラはそんな男のドラムスティックを追いかけ回し、楽器が生き物のように力強く動く様を、雨の様に注がれる汗をフィルムに刻む。   ●セッション(短編) 長編「セッション(ウィップラッシュ)」の原型となった短編。 ドラムと無数のスティック痕、扉から近づく者の姿、おもむろにシンバルを撫で椅子に座る。そこには期待と夢を見る青年の笑みが浮かぶ。 雪崩れ込む演奏者たち、挨拶、Bフラット、秒針が合わさるとともに姿勢と視線を正す。 上着を脱ぎ、視線を交え指導が始まる。 唖然としてページめくりに遅れ、水を吹き出す楽器、汗を流す奏者たち。 部屋の白さがまだ息苦しさをあまり感じさせないが、視線を合わせないのは恐怖の現れ、追い付こうと必死に楽譜と睨めっこ、アドバイス、自信を持たせるようなことを言って徐々に苛烈になっていく指導、椅子を投げつけ暴言とツバと平手打ちを浴びせまくり徐々に息苦しく胃のキリキリするような空間に。 厳しい現実の前に涙を流し途方に暮れる青年…しかし本当の地獄はここからだった。
[DVD(字幕)] 9点(2016-08-24 16:15:59)(良:1票)
93.  エイリアン2/完全版 《ネタバレ》 
「初代」と「2」でどっちが好きかって?どちらかと言えば「最後の一人になるまで戦ってやらあ」って「初代」が一番好きだ。 が、キャメロンのガテン系武闘派リプリーも大好き。男勝りなリプリーが頼もしい。 「バイオハザード」はコレと「ゾンビ」の影響を強く感じさせる。 前回の戦いから何十年とさまよい、ようやく回収されたリプリー。だが目覚めた先でも“悪夢”は続く。リプリーは前回の経験から誰も信じられずにいた。しかし、事情を呑み込みハラも決めたリプリーは共に危機を脱したジョーンズ(猫)を残して新たなる戦いの場へと赴く。もう完全にヒロインではなく主人公の面構えです。 自分たちを殺そうとしたエイリアンの星を、人類が植民という名の“侵略”をしようとする。 当然、彼ら(エイリアン)も“侵略者”には容赦しない・・・! キャメロンのうなるようなメカニック描写やバトルを盛り込んだ演出は見応えがある。この頃のキャメロンは本当最高だね。 今度のアンドロイド・ビショップは誰よりも頼りになる奴だ。ナイフの芸の時も地味に仲間の手をかばっての作業。 助け出される唯一の生存者、変わり果てた人々の姿、エイリアンクイーンの圧倒的な存在感。 いつ何処からエイリアンの大群が現れるかハラハラドキドキの連続だ。 仲間のためなら強行突破に轢き逃げアタック! しかしいくら強力な武器を揃え様と奴らもタフだ。次から次へとキリが無え。 「アンタは本当ダメな男ね」 まんざらでも無さげな表情で散っていく仲間たち。 リプリーも娘の面影が重なるニュートのため、仲間たちのためにフル装備で単騎突入! “人質”をとってクイーンと渡り合うしたたかさ、邪魔するガッデムエイリアン共はブッ放せ、焼き払えっ!! いや~もうアレですね。何と言ってもラストバトル! 突然の襲撃、倒れ込む仲間、絶体絶命、そこに重武装で対峙するリプリー。 リプリーの「FU●K YOU」は気持ちが良い。 リプリーが相手に「F●CK YOU」と言う時は確実に野郎をブッ飛ばす時だけだぜ。 「初代」のリプリーは震えながら「F●CK YOU F●CK YOU(クソ野郎クソ野郎...)」と呟くリプリーが、 「2」ではクイーンに向って「SON OF A BITCH(クソババア!!)」 しかしマジで化物だなリプリーって。普通血管が破裂して死ぬぞアレは…まあ映画だからご愛嬌、いや本当にリプリーが化物なのか。
[DVD(字幕)] 9点(2016-08-11 23:09:20)(良:2票)
94.  エイリアン 《ネタバレ》 
人類と異星人(エイリアン)の最悪のファースト・コンタクトを描いた傑作。 単なるパニック物に終わらず、人類が宇宙に拡がっていく開拓という名の「侵略」。 「本当のエイリアンはどっちだ」という作品だ。 スピルバーグの「ジョーズ」におけるテーマと似ている。 人間が生活を拡げる過程において蔑ろにした自然。 住処を追われた動物は、やがて人々のテリトリーに「戻って」来る。 この映画のエイリアンは「侵略者」と呼ぶには相応しくない。 正しく言えば「報復者」と言っても良いだろう。 自分たちの領域を犯そうとする者への・・・。 エイリアンを「生物兵器」として利用しようとしたのは人間なのだから。 まあリプリーたちにして観ればとんだトバッチリだがな。 宇宙空間という「密室」、他の生命に寄生して成長する化物、逃げ場のない恐怖・・・一人、また一人消えていく命。 最初この物語は「群像劇」だったが、生き残った者がこの物語を動かす「主人公」となる。この二段構え。 そして仲間を殺された者が抱くのは復讐心・・・恐怖を乗り越える人間の恐ろしさと強さ! 終盤もまた「二段構え」の死闘。 作り込まれたセットと言い、今見ると時代錯誤な装置も巧みな演出で違和感を感じず楽しめる。 これぞ娯楽映画よ。  エレン・リプリーは好きなキャラの一人だ。 仕事を最優先にする傍ら、誰よりも仲間思いの熱い女性。 男勝りな勇気と行動力、悲鳴をあげながらもエイリアンと戦い抜いた気丈な女性像。 猫の「ジョーンズ」のためにもう一度戻って来る姿・・・そこに惚れた。  エイリアンに「糞野郎...糞野郎・・・糞野郎!!!!!」と言いながらダスト・シュート&止めの一撃! 女戦士エレン・リプリーの誕生である。  「テルマ&ルイーズ」でもそうだったが、リドリー・スコットは「ケツ」で女を語る。  良い女は尻もビューティフル。 二段構えのある映画は本当に面白いです。「駅馬車」しかり「黄金狂時代」しかりしかり。
[DVD(字幕)] 9点(2016-08-11 23:08:45)(良:2票)
95.  ダーティハリー 《ネタバレ》 
個人的にシーゲルは「殺し屋ネルソン」が最高傑作だと思うが、イーストウッドとのコンビはコレがベスト。 赤狩り(レッド・パージ)の嵐が吹き荒れる時代から戦い続けてきたリベラル派シーゲル、そしてスパゲッティウエスタン(マカロニウエスタン)を経てアメリカに戻ってきたアンチ・ヒーローが結んだ師弟関係。その二人が70年代に蘇らせる刑事アクション。 輝くバッヂと法の文章、ドス黒いサイレンサー付きライフル、スコープに映る標的、襲い掛かる凶弾…! 黒いサングラスで威圧するように登場するハリー・キャラハン。 ハリーは手がかりを得るためにひたすら歩き壁をよじ上る。どんなにボロボロになり砂の山に埋もれようとも。ペンが拾い上げる証拠、残される犯人からの挑戦状。ここからクソ野郎スコルピオとハリーの孤独な戦いが幕をあけるのである。  やさぐれ警官がやさぐれたのも腐った世の中で自分の意思を貫き続けたためであろう。むしろ汚名を背負ってまで仕事を、肌の色に関係なく平等に嫌い、思いやり、鉛弾をブチ込み、理由なく殺された人々の無念を晴らそうとするハリーを俺は心から応援してしまった。その姿勢は映画監督として「許されざる者」や「グラン・トリノ」といった傑作でも貫かれる。  食事中に事件が起きればマグナム片手に車ごとブッ転がす!水道が噴出する中をゆうゆうと、のしのしと歩き、撃ち尽くした拳銃の銃口を向けてショットガンに手をかけようとする犯人に警告を示す。犯人はそのことを知らない。 「ホラ、入ってないだろ?」って笑顔がたまらない。  対するスコルピオの次の標的を物色し不気味な笑みを浮かべる狂気。 ヘリによる捜索、夜の市街を淡々と走り、窓から覗くもの、窮地と救助、イーストウッドが監督したビルにおける説得場面。殴りつけて必死に抱え込む姿が面白い。 捜査とはいえ堂々と覗くハリーもやっぱり男。でも前の奥さんを気遣ってか再婚もしない。 ボルトアクションライフルによる狙撃とマシンガンによる銃撃戦、夜の暗闇で影が蠢き、あらゆる閃光が照らす。  脚に仕込むナイフ、バッグを抱えて公衆電話から公衆電話への移動、走り続ける追跡、トンネルでのひと悶着、銃撃戦、ナイフ。 恐怖の鬼ごっこ、人の人権踏みにじっといて弁護士呼べとか言ってるクズの脚の傷を踏みにじって何が悪いというのか!人質最優先で手掛かりを得るために殺さない、あるいは警察という組織を信じているからこそ法の裁きに委ねようとしたのかもしれない。 ボロクソになっても諦めないスコルピオのしぶとさもたまげたもんだ。  あの明け方に哀しそうに、疲れ切ってたたずむハリーの姿といったらないぜ。病院への見舞いとレディ・ファーストな気遣いは数少ない癒し。  信じていたものに裏切られる絶望、悪魔が世に再び解き放たれ再び犯罪が繰り返されるやるせなさ。  バイソンの群れ、バスという密室で子供たちに狂気を振りまき、橋の上から走行する車両に飛び乗り一騎打ちへ! 工事現場の狭い道におけるジリジリとした追跡のスリル、石を運ぶレール、開けた空間に見つける切り札あるいは逃げ場を失う選択か。冥途の土産に弾丸も星もくれてやる。  「真昼の決闘」のゲイリー・クーパーは、自分でまいた種によって民衆にも仲間からも見捨てられたことを“認めて”か、バッヂを地面に捨て自分を信じてくれた若妻と一緒に去っていく。 本作のイーストウッドは民衆を信じ、腐敗した警官と法に対しての怒りをこめバッヂを投げ捨て独り寂して去っていく。 「荒野のストレンジャー」で「真昼の決闘」のifを描いたイーストウッドだ。あの場面は完全に当てつけです(褒め言葉)。
[DVD(字幕)] 9点(2016-05-08 22:59:25)(良:1票)
96.  キングスマン 《ネタバレ》 
ヘリの攻撃に始まり扉の開閉で締めくくられる死屍累々スパイ映画の快作。歴代のスパイものを彷彿とさせる遊び心と活劇性、そのエンターテインメントへの挑発もふんだんにブチ込む反骨精神。 「キック・アス」から本作でも描かれる親子・師弟関係・何処にも属さず己の道を突き進む強靭さ・復讐・乗り越えるものと受け継がれる意思。 ある者は自分を命懸けで救ってくれた者のために、ある者は自分に進むべき道を示してくれた恩師のために。  スパイという情報を集め、時に非情な選択を迫られる生きるか死ぬかの大仕事。どんな手段を使っても孤軍奮闘で目的を遂げようとするプロフェッショナリズムと魅力的な隠し武器たち。 洋服屋を重火器の詰まった秘密基地に、空を飛び交う飛行機が地上に留まり最前線基地に、酒を毒酒に、眼鏡を盗撮カメラに、傘を鈍器と射撃武器に、時計を麻酔に、指輪を電撃に、ライターを爆弾に、靴をナイフに、義足を刃に変えて全力で駆け抜けブッ殺し合う!  ダイナミックお邪魔します&いらっしゃいませ一刀両断、盗んだ車で逆走チェイス、屋根から屋根へ飛び乗る逃走劇、傘で不良軍団フルボッコ、命懸けのスパイ養成学校、突然襲い掛かる水水水、犬に厳しいスパイ業界、犬に優しく裏切者にゃ容赦なし、壇上に飾られた“相棒”が覚悟を物語る、車を操るのは無駄な争いをさせたくないから。 教会から全世界、全人類、全性別が人種や言葉の壁を越えて殴り合う大スペクタクル!腕があったら取っ組み合い、木材があれば打ち下ろし、刃物があればドアを破壊し投げつけ、頭の中に爆弾あったら大爆殺!!!一体何回爆発すりゃ気が済むんだこの映画はっ!?(褒め言葉) ダイナミック不謹慎花火大会で俺の腹筋も木っ端微塵になってしまった。 鏡も人工衛星もブッ飛ばし、美女の穴の中にも潜りこ(ry  「ジェームズ・ボンド?ジェイソン・ボーン?」 「ジャック・バウアーさ」  夢も希望もなく生きていた不良少年が、生きる道を見つけたスーツに身を包むエージェントになっていく成長振り。エグジーが覚悟を決めた瞬間だ。でも根っこが変わらないところがいい。 スーツに返り血を浴びた後にその場で酒瓶を掴み女をくどきに行っちまうんだからwwwロキシーとのフラグなんてなかった。 あと訓練から裏方、ライフル抱えて援護射撃までこなすマーリンの頼もしさ&気遣い振りに惚れる映画です。
[DVD(字幕)] 9点(2016-05-07 01:44:54)(良:1票)
97.  エド・ウッド 《ネタバレ》 
ティム・バートンがエド・ウッドことエドワード・D・ウッド・Jrへのリスペクトを捧げた、笑って泣ける素晴らしい映画だ。 ウッドの映画は微妙、でもソイツの人生は最高に面白い。  雨が降りしきる夜、雷鳴、不気味な館の窓が開かれると、棺から起き上がり御挨拶を披露するグリズウェルの御登場だ。 バートンはウッドを愛するが故に忠実にウッド映画の一場面一場面を再現し、愛するが故に“違い”を入れる。 「ナイト・オブ・ザ・グールス」のグリズウェルはカンペを読み、本編のジェフリー・ジョーンズはちゃんと演技をこなしてしまっているではないか。ジョーンズもカンペを読んでいたら受賞していたかも知れない(冗談です)。  OPも稲光が墓場を照らす雰囲気たっぷりの演出、墓石に刻まれた名前、滑らかに動くタコの触手と戯れる円盤!グレードアップしすぎで完全に別物(この辺はレイ・ハリーハウゼンへのリスペクトもありそう)。  憧れのオーソン・ウェルズやトッド・ブラウニングの「ドラキュラ」といった映画のポスター、情熱を燃やしてひたすら創ることにエネルギーを注ぐウッドと愉快な仲間たち。ウッドはいつも天使が上から降りて話しかけてくるような出会いを待ち望み、自分の夢のための闘いに挑み続ける。 どんなに落ち込んでも元気をくれる夢と仲間とミンクのセーター、眠るように登場するベラ・ルゴシ(ルゴシ・ベラ)、残念ロバート・テイラーやベイジル・ラスボーンでもない、「恐怖城(ホワイト・ゾンビ)」、ドラキュラ<<<歯、「もっと上を行く作品が作れる(Z級)」。  「女の格好してよく平気でいられるわね!」 ケイリー・グラント「そうだね」  ペギー・リー「表出ろオカマ野郎」、NGワード:カーロフ、ウッドの映画よりも絶対面白いプロレス興業、生々しい注射器の跡とルゴシが語るハリウッドの闇、「ヴァンパイア・ショウ(The Vampira Show)」を盛り上げるヴァンパイラ(マリア・ナルミ)たちとの数奇な出会い、喧嘩と資金集めパーティー(に参加)、こそ泥シーンの愉快さ、ウイスキーのキャッチボール、タコとの格闘(手動)、完成記念の余興、ダンス、引き留める説得力皆無の恰好、右手に握るもの、病院、彼女の面影、お化け屋敷、アクシデント、映画館、観客の盛大な“歓迎”、ポップコーン、最期の演技と旅立つ前のルゴシを映したフィルム、引き取った犬、ダイナミック人選ミス、巨大ブーメラン。  事実とフィクションの融合によってバートンからルゴシやウッドたちすべての映画人に贈られるエール。 ウッドにとっての夢であるオーソン・ウェルズとの出会いをプレゼントまでしてくれるんだぜ?夢のために闘え!  押し寄せる観客を他所に雨の中の告白と出発…ウッドの冒険は果てなく続く。たとえウッドが去った後も、その魂を受け取った多くの人間が今も冒険を続けているのだから。
[DVD(字幕)] 9点(2016-03-19 02:11:04)(良:1票)
98.  ボウリング・フォー・コロンバイン 《ネタバレ》 
マイケル・ムーアという映画監督は、ただありのままを映そうとするタイプのドキュメンタリーは撮らないらしい。 あの芝居がかった行動の数々で映画のようなやり取りを見せつけ、一つの事件を通してあらゆる要因を羅列し引きずり出して注目させようとする。今回は銃社会のアメリカに潜む問題のようだ。   自ら俳優のように出まくり映画を引っ張る肥えた肉体。 オーソン・ウェルズのように悪の権化としてずんぐりむっくりの体で威圧感を出すワケでもなく、西部劇で偉そうにのしとのしと歩く腹の出たガンマンの如くムーアは登場してくる。マイナスイメージをあえて前面に出すことそのものが壮大な“当てつけ”なのだ。当てつけしないと死んじゃう病なのかも知れない。だから意地でも痩せないんだと思う。 表情はコメディアンのようにどこか微笑みを称え、銀行で得たライフルを抱えて買い物を済ませる“日常の光景”を映す。 時にインタビュアーとして執拗に問い詰める時もあれば、手を肩にやって同情するような場面も物凄くわざとらしーく見せつけたりする。当事者の目の前でそれをやるのだからつくづく胆の座った奴だわ。  インタビューをした人々の顔もこれみよがしに見せる。銃に狂った老人のギラギラした眼、銃を握りしめ高々と掲げる演説者チャールトン・ヘストンの笑顔、無責任なマスゴミや報道陣の笑み、恐怖に怯える顔、失望と怒りの顔。  幼きムーア少年はおもちゃの拳銃の引き金を引きまくり、現在のムーアはけして銃弾を発射せず、銃を撃つ市民や銃弾を喰らう人々の姿を映しまくっていく。 映像が得られなかったものの代わりに何かを映し、得られた映像の使い方も強烈だ。  ボウリングのピンの件でハワード・ホークスの「暗黒街の顔役」についても語られるかと期待したがそんなことはなかった。あの映画のようにデカデカと書かれた文字が語る社会の矛盾、ピンと人が薙ぎ倒され横たわる光景が幾度も映される。  事件現場の校舎や街、弾痕、道、事件当時の一部始終を捉えた監視カメラ、殺人者と殺害者を明確に示すように光が人物を覆い、助けを求める悲痛な叫びは机の下に伏せる人々の叫びを聞かされるようだ。  「マトリックス」を守るエージェントの「Non!」、「駅馬車」やウィリアム・S・ハートといった西部劇、「國民の創生」の人種描写、「サウスパーク」の冬、企業コップのイメージに何コレ超見てえ、アニメーションで描かれるよくわかる人種差別&銃社会アメリカの歴史に爆笑、細い男の服の中から次々に銃が出てくる瞬間の戦慄。 様々な国で引き起こされた虐殺、銃のゲーム、まばゆい光の中に突っ込んでいく“買物”、当事者たちのすべてをぶつける闘い、ダイナミック営業妨害、毒には毒で、極端には極端で、メディアにはメディアで殴りつける。  右足をソファーに突き付けてインタビューに応えるマリリン・マンソンの職人意識。 彼が取材を受けるのはどんな時でも己を貫く姿勢を示すため。ムーアも黙ってそれを受け入れたのだろうし、一人去っていく者へ黙って写真だけでも置いて去っていく。それ以上の追及をあえてしないのだ。  アメリカとカナダの同じ銃社会でも意識の違いがハッキリしているのは興味深い。 日本も昔は日本刀だの槍だの鉄砲だの世界有数の銃社会だったからなあ。日本人も黙って見過ごせない問題ですよ。
[DVD(字幕)] 8点(2016-01-30 00:52:14)
99.  ブリッジ・オブ・スパイ 《ネタバレ》 
スピルバーグとコーエン兄弟が組んだのは西部劇「トゥルー・グリット」以来だろうか。 今回は久々にB級的感覚でスパッと撮ってきたような、懐かしい感覚に満ちた娯楽映画を引っ提げて帰ってきたようだ。弁護士が国境を越え交渉人として立ち回る冒険の面白さ。  この映画は脚本の映画だと思うけど、それでも冒頭における追跡のワクワク感よ!これぞ映画だ、セリフではなくアクション(動作)によって語られる追う者と追われる者が繰り広げるスリル。 おもむろに自画像を描く男とその理由、部屋から地下鉄、公園と椅子、再び部屋へと戻っていく追跡の後に待ち受ける展開、コインに隠されたメッセージ、それを守ろうと仕事人として己を貫く姿勢は独房の中でも続けられる。ポケットに手を入れるだけでも射殺されそうな緊張は持続され、観客に寝る暇を与えない。劇中で揺さぶられ続ける人々のように。 法廷から学校の「起立」へ、書類から新聞へ。  冷戦下における疑心暗鬼の時代、信頼を重んじる弁護士に転がり込むトラブル。 かつて「シンドラーのリスト」という映画で労働力としてユダヤ人を雇い、やがて仕事に打ち込む同じ人間として彼らの信頼に応えたくなった男がいた。 この映画の弁護士は最初からスパイではなく、命がけで職務を全うしようとした“仕事人”を助けようと孤独な闘いに身を投じていく。「信頼」を守ろうとする行動に対する弁護士なりの礼として。 信じるが故に涙を流したり勉強に励む子供、信頼に応えるが故に叫び声を押し殺し耐える者、最愛の人を見送る者、依頼を引き受ける者、偽物の不気味な笑みと行進をする者、偽りだったとしても本物の何かを込めた者。  冷戦下における情報戦、これが戦争であるならば先に手を出した奴が殺される。 弁護士にも訪れる追跡者の恐怖、雨粒を防ぐはずの傘は居所を知らせてしまい、寒さから身を守るはずのコートは飢えた若者たちの標的となり、窓にまでかかる水は扉の外にいる監視者の視線を示し、車を猛スピードで飛ばすのは獲物を逃がさずに捕まえさせるため。 壁が敷かれるのは人々を引き裂き、逃亡者を阻み処刑させるためだけでなく、新たな交渉相手の登場を予告するため。戦争の傷跡が生み出す信頼しきれない原因(ソ連がやりやがったベルリン、連合軍がしくさりおったドレスデン虐殺)、黙って見ていることしかできない無力さ。 日常の平穏を破った警告の銃撃が、仕事先でも命を奪いとる。次の銃撃は依頼人にも向けられるかも知れない・・・信頼に応えるため、己の意思を貫くために弁護士も諦めない。 マスコミのフラッシュの嵐は地面に転がる電球を踏み砕くように流し、壮大な釣り、ダイナミック朝飯おごり、風邪をこじらせようがハンカチで何度もぬぐい耐えるように待って待って待ち続ける!  軍人と軍人の、学生と国の存在を賭けた駆け引き、アメリカ軍のフラグ建設作戦と迅速なフラグ回収、恐ロシア。  橋における束の間の再会、別れ、抱擁の有無。   いやーマジで続編出ねえかなー。次はキューバ危機辺りで・・・!
[映画館(字幕)] 9点(2016-01-30 00:47:30)
100.  白鯨との闘い 《ネタバレ》 
捕鯨問題で揺れるこのご時世、長い時間をかけて本作に挑んだロン・ハワードに敬意を表したい。 個人的には中々の力作。あの精悍な漢たちをげっそりするほど追い込み練り上げたのだから!  映画は冒頭の海中を突き進む主、男がある宿に訪ねてくるシーンから始まり回想形式で過去の“闘い”について語っていく。 窓の外で手紙を見せ、小説の創作ヒントを求めて瞳を輝かせる若き作家、過去を封印する老人、扉の外でそれを見守る長年連れ添ったであろう妻。  男たちを海に誘う未知への恐怖と冒険への好奇心、生活を支える脂や肉、名声。野望を抱く男たちの船出は、死にゆく者を送り出すような人々の喪服と鎮魂歌で包まれる。  序盤の冒険へのワクワク感。ヒヨッ子船長に船乗りの身のこなしをアピールする対抗意識、船酔いの荒療治、張り合おうと嵐に突っ込む無謀さ、ベテランと新米の対立、船上で人種や身分を超えて海を生きる者たちの競争・意気投合、銛を打ち込んで海を駆けるような狩り。 経験者は語り、未体験への好奇心が海の男たちを狂わせ、復讐者と冒険者たちを引き合わせる。  勇ましいハンティングの後に描かれる血肉の生々しさが、息をしている者の横に転がる変わり果てた無言の船員が、仲間同士で喰らい合った地獄を容易に想像させる。鯨の臓物を引きずり出して脂を得意気に掻き集めていた男たちですらだ。 富となるはずの脂がもたらす“灯り”、近代兵器が何の役にも立たない大自然で人間も鯨も関係なく平等に殺し合い、くたばり果てる。キャメラも激しく動く船乗りたちを追いきれずに振り切られたり波に飲まれたりと忙しすぎてこっちまで酔いそうになった場面も。  そんな極限状態でも腐りきらないプロフェッショナリズム。 野獣の如きむしゃぶりつき、尊厳も何もかも投げ捨てられ失ったはずの男たちが得たもの、求めるもののため、獲物を発見した瞬間に水を得た魚のように息を吹き返す瞬間!そこにはどんな状況でも最善を尽くそうとする意地が彼らを奮い立たせる。  彼らを支えるエネルギーはなんなのだろう。愛する妻が渡したお守り?生き残るチャンスをかなぐり捨ててまで貫きたかったもの?様々な支えが彼らを散々危険を味わったはずの海原に旅立たせてきたのだろう。過去を背負う老人にしても机の上に刻み込まれた地図! 鯨にとっても大勢の仲間を串刺しにして殺しやがった憎っくき仇。何度も繰り返したであろう怒りの頭突きの痕、執念深い追跡。  “あの眼”を見た男は、一体何を思ってすべてを終えたのだろうか。
[映画館(字幕)] 8点(2016-01-30 00:36:45)(良:1票)
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