1. エリジウム
《ネタバレ》 予告で思った通りの展開と出来でした。普通に面白かったです。 銃撃シーンや格闘アクション、世界観、武器、装着した器具のデザインが『第9地区』を彷彿とさせる感じで、ニヤリとさせられました。 でも大きな不満が・・・ラストで人々が『市民』となり、こぞって宇宙のエリジウムに向かいますが 最終的に人々が求めるのは『治療マシン』の性能だけに集約されてる印象に・・ エリジウムが凄いんじゃなくて、その『治療マシン』が凄い話になってるだけじゃね? あと治療マシンが別にエリジウムの環境じゃなければ機能しないとか、 そこになければいけないという理由もないので、じゃあ舞台が宇宙のエリジウムじゃなくてもよくね?と・・。 見終わるとエリジウムの存在意義が何か霞んで見えてしまいました。 そのマシン以外にエリジウムがいかに『特別』な場所か見えづらいんですよねぇ・・ なんか快適な風景の画だけ見せられても・・。 富裕層専用の治療マシンが何らかの理由で、あの街に置いてあって各立場の連中がそれの奪い合いする話でも成立するような気がします。 オチもそれで問題解決とは思えないんだよなぁ・・さらなる混沌の幕開けの気がしました。 7点付けた映画の感想とは思えなくなりましたが・・・不満に感じながらも、それなりに楽しんだのは確かです。 [映画館(字幕)] 7点(2013-09-21 03:06:35) |
2. マン・オブ・スティール
《ネタバレ》 重厚で見応えのある『スーパーマン』でした。 ヘンリー・カヴィルのスーパーマンは見事な肉体と気品も感じさせる顔立ちで本当に素晴らしかったです。 『スーパーマン』の戦闘アクションは後半まで抑えられています。 そしていざ始まったら、すごいシーンの連続で単純に『おおっすげえ!』と思いました。 ただ観ていて何か居心地の悪さが残りました。 今回の『スーパーマン』はやたら人が死ぬんですよね・・ 特に後半のビル街大破壊シーンは間違いなく数万単位で殺されてる(映画上リアルな感じなのに一般の犠牲者は殆ど見せない上にどれくらいの犠牲が出たかも触れていない)・・。 EDでは大破壊が何事もなかったように仕事とかしてますし(どれくらい時間が経ったか分かりませんが)・・。 トドメに『スーパーマン』がする、ある行為(もしくは選択)も流れ的には仕方がないとはいえ違和感が拭えず・・ 戦いの勝利が数々の犠牲で成り立っているという重みが、その後の展開から感じられないんです。 この映画の重厚なトーン故に余計に気になりました。 『スーパーマン』を今風のリアルで追及したら、そりゃこうなるだろうとは思いました。 実際に面白かったのは間違いないです。しかし今回の『スーパーマン』を手放しでは褒められない・・ もう少し時間が経ったら、また観てみます。 余談・今回のゾッド将軍は正直、野蛮なだけで何か物足りなかったです。 [映画館(字幕)] 7点(2013-08-31 20:35:51)(良:2票) |
3. ソーシャル・ネットワーク
《ネタバレ》 正直、フェイスブックやザッカーバーグについて殆ど知らなかったので、最低限の知識を事前に入れて鑑賞。展開はテンポよくサクサク進み全く退屈しなかったです。ただあまりに作品としてスピーディーな語り口なせいか、鑑賞後にそのままサーッと印象が流された感じが私は否めなかったので、一回だけの鑑賞では捉えきれないものがありました。ちょっとしたきっかけとアイディアと行動力でザッカーバーグは恐るべきスピードでフェイスブックを巨大化させていく下りはちょっと恐くなり戦慄すら覚えました。そしてそれによる代償と結果も同時に見せて『一体、何だったんだ・・?』と虚無感も感じました。ザッカーバーグ始め他のキャラクターの人間性の深いドラマ部分の描写に関しては、この映画の中では敢えてあまり見せておらず、色々な解釈の余地を残しており誰に特別、感情移入をする事無く冷静に各キャラを観れたのは良かったです。ザッカーバーグはいいヤツではないかもしれないが、すべて間違っているとは思えない、訴訟を起こした兄弟も共同設立者のエドゥアルドの言い分も最な所もあるし、ナップスターのショーンもドラッグ以外はすべてが悪いとは言えない・・巨大なうねりの中ですべての歯車が噛み合うとは思えないし、時には冷酷な判断を下すのは止む得ない所がある、誰が悪いかの善悪の判断は難しく、色々考えさせられました。ラストの五億人の友達を作ったと銘打たれた男のたった一人の『友達』の承認を待ち続ける姿は、淡々としていながら実に彼の孤独を的確に表した見せ方と感心しました。ラストのテロップ『登録者5億人、企業価値250億ドル』・・驚異的な事なのに、じんわりと虚しく響く・・ [映画館(字幕)] 7点(2011-01-16 16:57:17)(良:3票) |
4. アンストッパブル(2010)
《ネタバレ》 物語そのものは実にシンプルなので展開も極力無駄なドラマを排しストレートなパニックものとして90分台に映画をまとめたのは好感を持ちました。主演が名優デンゼル・ワシントンですから、彼の存在感だけでもこのキャラクターの重みが感じられますのでOK!共演のクリス・パインも味わい深い存在感があり、なかなかの健闘振りでした。冒頭での職人達の仕事の些細なミスが後に障害として彼等に立ちはだかる所もいい意味でのイライラ感がつのって良かったです。暴走列車を止める対処そのものは大胆かつシンプルで単調になりがちですが、合間、合間に彼等の私生活のドラマが邪魔にならない程度に挟み込まれているので感情移入もスムーズで、彼等が危機を前に大胆な行動に出る時のハラハラ感がいい塩梅で出てると思いました(まぁ彼等の家族達のものすごい添え物的な見せ方は気にはなりましたが、潔くもあったかなと・・)。傑作とか名作の類ではないかもしれませんが、本編を『適度』にまとめて、『適度』な満足感を鑑賞後のお土産に出来たこの映画をとても好ましいと思いました。 潔さに8点献上します。 [映画館(字幕)] 8点(2011-01-09 13:48:13)(良:1票) |
5. エクスペンダブルズ
《ネタバレ》 まさにスタローン流男塾。『男は女を守らなければいけない』『女を殴るような奴は死ぬほど痛い目にあってもヨシ!』『男は仲間の為に命を投げ出す覚悟も必要だ』特に女性に関しては紳士といっていいようなスタイル!それを体現する役者陣がスタローンやバリバリの肉体派アクションスターが揃ってるから、存在だけで何か説得されてしまいそう・・はい、基本はとても楽しかったです。アクションの見せ方は往年の80年代で見られた肉体アクションを誇張した感じで、最近のCGを駆使したアクションと比べるとシンプルに見えますが役者の力で重量感ある生身のアクションが堪能出来ました。ストーリーも至ってシンプルでランボー的。間に部隊の仲間達の私生活や人間性の脆さも見えて魅力的に描かれているとは思いますが・・・何だろうなあ、過大に期待してたせいなのかトータルで見ると散漫な印象が拭えなかったです。まず前半でスタローンとステイサム二人が島の偵察の為に保護団体のメンバーとして潜入(それ以前に明らかに異常な雰囲気の二人が自然保護団体に見えないだろ・・ギャグか?)して、現地の案内人の女と合流しますが、ここはただ行って軍隊に見付かって逃げるだけで偵察にもなっておらず何がしたかったんだ?と感じになります。そこでアメリカに戻った後の展開は緊張感も展開も途切れてしまいテンションがグッと下がった印象で迫力のアクションがありながら冗長な感じがしてクライマックスにまで足を引っ張ってると感じました。再潜入からの終盤のアクションも何か単調でしたし・・うーん個人的には島に行ったら、島の中で最後まで展開させるか案内人の女とは別に仲間が捕らえられたかと緊張感が途切れず地続きに見せられたのでは?と思いました。物語の重要な要な筈の敵であった将軍と案内人の娘との間の葛藤も弱く感じて、取って付けたような印象でした。ドルフ・ラングレンのキャラの扱いもドルフ・ラングレン用の見せ場だけ用意されたような感じで取って付け感が・・色々惜しいです。でも前半のステイサムが飛行艇の先頭で決死のアクションをするシーンは文字通り燃えましたし、女を酷い目に合わす奴は徹底的に痛めつけられる所は痛快、男どものボンクラ仲間感はニヤニヤしますし、何と言っても名を馳せたアクション・スターがザッと集まっただけでテンションが上がるのは確かですので、やっぱり楽しくなるのが悔しいところ・・・。 [映画館(字幕)] 7点(2010-10-17 14:14:49)(良:2票) |
6. ヒックとドラゴン
《ネタバレ》 観ている間は小学生気分が甦ったのか、スクリーンに向けて『すげぇー』『危ない!』『うわぁどうなっちゃうんだよーヒック!』『頑張れトゥース!』『ああっお父さん・・(涙)』と心で叫んで終始ハラハラドキドキしてました。とにかく最高に楽しかったです。ヒックという少年は物づくりの才能はあるけど、軽口叩わ、弱っちくみんなからもバカにされるキャラクターだけどドラゴンのトゥースに出会ってから、自らの才能である創意工夫でトゥースを乗りこなすと同時に凶暴な生き物としか見られなかったドラゴンの本当の一面を知り、交流を深める過程は丹念に描かれてとても素晴らしい!ヒックがドラゴンの操り方を知るようになってからは今までバカにしていた連中もヒックに一目置いてこれまでの鬱憤が晴れたかのような楽しさはありますが、他の住民達は変らずドラゴンに対する敵意を持ち、複雑な思いのヒックをさりげなく描かれ、どこかこの先の展開の不穏さを感じさせる演出も見事です。トゥースも最初は爬虫類そのもののような目をしてましたが、ヒックとの交流が深まると目が丸くなり・・単純に可愛い・・他のドラゴンもケダモノとして扱われていたのにクライマックスではもう愛すべき生き物・・この変化にグッときます。ヒックの仲間達も実に無駄ないというかそれぞれのキャラの特性があるのでクライマックスの戦闘で上手く行かされ無駄がなく、ヒックもトゥースとの飛行で培われた創意工夫が見事に生かされて最高!そしてヒックとのお父さんと深刻な関係の決着はこれ以上ないというくらいの素晴らしい見せ方で決着!お父さんとトゥースとの海中での決死の対面はウルッときました。エンディングは最高にスッキリとしていてもう『面白かった!』と叫びたい気持ちでした。大スクリーンの3Dで観るのが必須です。 [映画館(吹替)] 9点(2010-09-19 16:28:04) |
7. ソルト
《ネタバレ》 まずジョリ姐さんのアクションは美しく、時に血まみれのハードアクションもこなしていますので、それだけで感動の域には達しています。謎めいた妖艶なスパイって完全にハマり役ですよ。それだけでもスクリーンで観る価値はあります。ですが不満の方が大きかったです・・主役のソルトが初めにスパイの嫌疑を掛けられますが、ソルトが施設から抜け出す動機は自分の亭主の身を案じての事ですけど、その亭主の危険を匂わしてソルトの焦燥感を煽らせる描写が不十分なので、あんな無茶な方法で脱出するに至る動機に説得力が足りず、唐突に見えていまひとつ乗れませんでした。その段階でソルトに向ける視点はスパイ嫌疑に掛けられ、亭主を救いに行くエージェントというものになり映画は進んで行くと思ったら、中盤からニューヨークに向かいソルトの謎の行動が始まります。ここでソルトに向ける視点はあやふやになり、何か映画に対して地に足が着かない感覚になりました。そして『暗殺』実行後、ロシアのスパイ連中が捕まった亭主をソルトの目の前で殺しますけど・・ここねぇ・・亭主の顔が暗くて良く写されてないから最初、誰だか分かりませんでした。あそこは亭主の苦悶の表情のアップとソルトの見つめる表情を重ねるくらいのシーンは一瞬でも必要でしょ!それがあればその後のシーンがよりドラマチックになると思うんだけどなぁ・・。映画の見せ方としてはまだソルトの行動の真意は観客に完全には明かされず、ソルトがどう動くか分からない所にサスペンスを波及させたいんでしょうけど・・そこも上手く見せられているとは思えません。ドンデン返し的展開も継ぎ足し程度のものに見えましたし・・。ラストでソルトの真意が確実に分かりますけど、そこもなぁ・・そこまでに至る強い信念の描写がやっぱり足りない、だから折角のいいラストの余韻があっけないものとして写ってしまいました。この映画に関しては主人公の信念という主軸を物語で上手く見せた上で、色々な展開に発展させた方がいいと思うんだけどなぁ・・ [映画館(字幕)] 6点(2010-08-01 14:42:43)(良:2票) |
8. インセプション
《ネタバレ》 会話式レビュー。A『予告で流された凝った映像や粗筋で俄然に興味沸いたんだよ』 B『あと「ダークナイト」の監督の新作ですからね』 A『まずさ、主人公のディカプリオの演ずるコブの私的な物語と危険なインセプション計画の物語を絡ませているじゃん、でもそれがこの映画で上手く絡まってるように見えないんだよ』 B『そのせいでコブの奥さん話のくだりに入ると映画の流れが分離されて停滞してるように感じますね、作り手の視点がどっちを見せたいのかはっきりしていないように感じてしまいます。』 A『結果、150分なんて無駄に長い上映時間を費やすんだな。あれがなければインセプションのエピソードだけでスマートなアクションものとして120分以下に収まるよ。その間にコブの抱える問題を物語の中でもっとスマートに見せる事は絶対に出来ると思う』 B『そういう所で内容が阻害されて、折角の作り込んだ映像とかも見せ掛けにしか見えなくなります。』 A『他の部分だと、渡辺謙演ずる依頼人のサイトーってさ・・いくら計画遂行の確認とはいえ、わざわざあんな危険な夢の中に入るというのも無理があるよな・・実際、すぐに撃たれて別に大した役にも立ってないじゃん』 B『大実業家なのですから、普通なら依頼遂行まで安全圏で待った方が自然かと・・無理矢理、出番を増やした感もあります。あげく伏線っぽく見せた冒頭の老人の展開も関係ないように思えます』 A『あとは学生の設計士の女!行き成りコブの内面に割り込む、図々しいKYな小娘に思えてウザかった。こいつの設計した世界というのも大して物語で生かされてるとは思えなかったなぁ』 B『もう諸々がこんな調子ですから、今回のターゲットの息子の父親との決着も大仰に演出されてますけど、薄っぺらだったです。あれであの息子が会社を潰す決断に至るとは思えないですねぇ「親父より大きい会社にしてやるぜ」という決断した感じに見えなくもなかったです』 A『後半は退屈だった・・爆破とか銃撃とかガンガン始まったと思ったら、コブの奥さんが出ると映画の流れが完全にストップしちゃうんだよ、もう奥さん登場禁止!とまで思ったよ』 B『とにかく大風呂敷広げたような設定と物語が結局、しょぼいレベルでしか消化されなかった印象になります』 A『あー期待してたんだよマジで・・でも役者陣の熱演がせめてもの救いかな、ギリギリ5点』 [映画館(字幕)] 5点(2010-07-18 16:34:55) |
9. アイアンマン2
《ネタバレ》 基本は楽しく観れた続篇でした。やっぱり役者達は主役級が出演しているので、それぞれのやりとりだけで映画が引き立って見えて楽しめたのも事実。ウォーマシンやブラック・ウィドー、そしてアベンジャーズへ繋がる伏線とか興味を惹かれる要素もありました。ただなぁ・・まず今回のトニーの最大の敵となるミッキー・ローク扮するイワンの扱いが不満に思いました。折角、冒頭であれだけのインパクトある登場したのに中盤から後半にかけては地味に座って開発してるだけで、クライマックスでの彼の計画遂行時にもちょこまかと無人アイアンマンを作動してるのがほとんどでやっとフル装備してトニーの前に現れたと思ったら、いとも簡単にボカーンと倒される・・あのぉいくらなんでもあっけなさすぎでは?個人的にはミッキー・ローク対ロバート・ダウニーJr.のアイアンマンのガチンコ対決を派手に見せるべきでしょう!これじゃミッキー・ロークをキャスティングしたかいがないもんなぁ・・。あとはトニーの命の作動源となるものが、自らの命を危険に晒し新たな代用エネルギーを探しているけどタメという話で、そこでサミュエル・L・ジャクソン演じるニックがトニーの父親なら何とかしていただろうとほのめかしますが、そこで彼が言いたいのは『トニー、お前は自分自身でその代用エネルギーを作り上げる事で偉大な父親と肩を並べる、もしくは越えるはずだ』という解釈に思いました。そこでトニーは本作での『成長』を見せるかと思いきや・・結局、父親の隠されたメッセージを見つけてそれを元に新元素を作ったのですから、それは成長でも父親越えでもないよなぁ・・と肩透かしでした。あと派手なアクションは前半と終盤にほぼ、集中しているせいか中盤でトニーが迷走していたくだりは冗長とも感じました。前作がかなり好きな私としては、今回は惜しいという感じの一作ですけど次も必ず行くぞという気にさせる出来にはなっていると思いました。 [映画館(字幕)] 7点(2010-06-27 19:22:01) |
10. マイレージ、マイライフ
《ネタバレ》 深刻な問題を扱っていますがテンポも良く、ユーモラスを混ぜてある上、主役のライアンの『リストラ宣告人』という憎まれ役になりがちなキャクターをジョージ・クルーニーの巧みな演技により軽妙で頼もしいキャラクターとなり映画に引き込ませてくれます。さらに見事なのは二人の女性キャラ登場でしょう。この重要な二人の女性が対照的なキャラなので演出によっては分かりづらい事になるかもしれませんが、ライアンに変化を与える過程を実にバランス良く丁寧に描いているのでどちらかが食われるという事になってなくしっかりお互い地に足が付いた魅力的なキャラに見えるのは感心しました。新入社員のナタリー役のアナ・ケンドリックの毅然とした隙のない女性に見えると思ったら、ちょっとした素振りがまだ脇の甘い新人っぽさとあどけなさが残って本当に可愛い!そしてライアンの『割り切った関係』のアレックス役のヴェラ・ファーミガはもう相変わらず素敵!まるでライアンの映し鏡のような存在な上、人生経験豊富だからこそ見に付けられる大人の女性ならではの色香。この二人の女性によってライアンの人生観が変り、合理化によって出張仕事がなくなり、ふと思うと自分にも人生を共に生きるパートーナーを欲しますが、普通の映画ならそのまま彼は、最良のパートナーを持ってハッピーエンドと、なりがちですが、本作はそうはいかせません。彼と同類だったアレックスはあくまでも割り切った関係以上に彼を求めず、変った彼を拒絶します。アレックスの家まで来たライアンに対しての困惑の表情は相当に切ないです。その上、前の目標だったマイレージポイント達成が皮肉な形で成立した時の彼の空虚感はズシンと重く響きます。トドメなのがライアン達がリストラ宣告した人達、あれほどライアンに悪態をついて絶望していたのが結果、家族の支えによって立ち直り新しい道へ踏み出したのに対し、ライアンも人生の転機を迎えるはずなのに彼の身近には『家族』がなく、手元に残ったのがバックパックだけ・・元の出張仕事に戻っても彼の気持ちは取り残され、再びマイレージを貯める日々、時刻表を見つめる何ともいえない彼の空虚の視線でズバンと本編が終わる・・ただこれを見たままの空虚なエンディングと捉えるか解釈が色々あると思いますが、彼は直前にバックパックを手から離すので、これから新たな人生を歩む決意したのではないかと私は解釈したい所です。 [映画館(字幕)] 8点(2010-05-16 17:25:39)(良:1票) |
11. 運命のボタン
《ネタバレ》 謎の男が持ってきたボタンを押せば100万ドル得られる代償に、見ず知らずの他人が死ぬという話ですけど・・主人公夫婦が経済的に困窮した状態で目の前にそのボタンを押すか押さないのかの心理的葛藤が前半のメインで、そして様々な出来事を得て止む得ずボタンを押す決断をしたら、大金を得る代わりに思わぬ代償が襲ってくるサスペンス的展開を勝手に想像していたのが悪いのかなぁ・・何か冒頭で火星やらNASAが出てきた段階で『あれ?』と思いました。そして肝心のボタンはキャメロン・ディアス奥さんが思った以上に早い段階で簡単にボタンを押して『あれ?』。とはいえ押したら押したらで諸々の異変が生じて面白くなると思いきや、遠まわしな『思わせぶり』異変を延々とダラダラダラダラ繰り返して主役の夫婦が振り回されてるだけ・・別に思わせぶりがダメではなく、ただ単に展開がつまんないんですよ!中盤以降のまさかの超常現象っぽい展開が始まった時は完全に私は映画から取り残されました。ボタンを運ぶフランク・ランジェラの正体も小出しに明かされますが私がバカなのか良く理解が出来ず『どうでもいいや』になってしまいました。ボタンを押した事で見ず知らずの誰かが死んでしまい、次第に良心の呵責に苛まれる展開こそがふさわしいんじゃないの?だって前半はまさにそこを匂わす展開だったじゃん。フタを開けたら後半はボタンを仕組んだ側の秘密とそれに振り回される人間の成り行きを俯瞰で描かれるから感情移入も何もありゃしない。主役のキャメロン・ディアスなんて後半は置いてけぼりのキャラクターに成り下がり、ラストの展開では『はいはい分かりました勝手にどうぞ』と観てる私は投槍になりました。まぁ『全くの知らない他人だから死んでも気にならない』と赤の他人の命を軽視して目先の金の為にボタンを押し続ける人間の恐ろしさを救いなく描いたと解釈出来なくもないですけど・・でも映画自体がつまんなかったのでフォローするのも虚しいです。 [映画館(字幕)] 3点(2010-05-09 15:50:11) |
12. タイタンの戦い(2010)
《ネタバレ》 アクションてんこ盛りですし、サービス精神旺盛な所は好感を持ちます。主役のペルセウスのサム・ワーシントンはいいですね。不器用で優しく見え武骨な感じもする絶妙な面構えはペルセウスにふさわしいです。ただ半神という設定ですけど今まで普通の人間と漁師生活していたに過ぎなかったのに、いきなり剣さばきが優れているというのはちょっと・・その前にそういう片鱗があるとか、漁の合間に剣の練習していたとか見せれば大分、違うと思うんですけど・・半神だからという設定頼りで諸々、描写を省くのは如何なものかと。そしてペルセウスと一緒に戦う仲間たちは、あまり描写が行き届かないせいか誰がどういう奴かの区別も付かずに朽ちてしまったので彼等の死はあまり響かなかったのも残念です。『運命の守護神』の女もなぁ・・訳知り顔で主役達と同行しますけど『居ただけ』っぽいキャラになってる感じもします。そして結局、一般人が神々に対して不満に思い反乱を立てたらゼウスさんが激怒してやり返して戦争が始まったという筋書きですが、このゼウスが訳が分からないんですよ。ラストのゼウスは勝ったペルセウスの前に出て『まぁ俺が協力したお陰でもあるよな息子よ』と言いそうな感じで満足気。つうか元々、おめぇが悪いんだろーよ!兄貴のハデスに乗せられるのも迂闊だし、怒りに任せて大怪物を出させたのもおめぇーだろーよ!何、してやったり顔でペルセウスと会話してるの?はぁ?でも・・『そりゃ全能の神がその程度だから、人間は反乱起こすわな』という事を皮肉にも浮かび上がらせしまったような・・。最後に運命の守護神イオはゼウスによって甦りますけど、だったらペルセウスと共に命を掛けた仲間達も甦らせろよと思うのは私だけ?ご都合主義が全部、悪いとはいいませんけど今作は腑に落ちませんでした。 [映画館(字幕)] 5点(2010-04-25 14:53:37)(笑:1票) (良:1票) |
13. ウルフマン(2010)
《ネタバレ》 19世紀のイギリスが舞台という事で、何か古き英国の妖しさと美しさの雰囲気に頼りっきた感じにして、肝心の狼男はあくまでも主要キャラを動かす単なる『きっかけ』で地味なホラー風味の人間ドラマかと、勝手に思ってました。ベニチオ・デル・トロの新作という事で観に行ったのですが・・・思ったよりもアクション寄り、しかも人体破壊描写も容赦なく内臓ドバー、腕足ブシャー、顔面グシャー・・はい、なかなか楽しんでしまいました。ただ・・主役のローレンスや家族の描写は触れてはいますが、そこはあっさりとした感じです。映画の中で重要な役割と言えるヒロインのグエンはローレンスの殺された兄の婚約者ですが、ドラマが進むにつれ次第にローレンスに惹かれ最大の理解者になるという大筋の流れ以外は何も描かれてないと言っていいいキャラになっていて不満はあります・・でも、そういう人間ドラマのあっさり風味がアンソニー・ホプキンスやデル・トロと存在感ある脇役がガッシリ固めているので、アクション以外のドラマも深みが、それなりには感じて見られはしますが・・・クライマックス以降は惨劇がピークになります。それまでのキャラ描写を上手く見せ切れてないので悲劇としていまいち伝わって来ず、どこか淡々としていたのも不満でした。色々、書きましたが雰囲気だけのつまらない重い人間ドラマという訳ではなく、ホラー・アクションとして風通しを良くし狼男を凄惨に描いたのは好感が持てます。ラストの狼男同士の対決はもはや笑ってしまいましたが・・。一見、重苦しい雰囲気で敷居は高そうですがポップコーン映画として普通に楽しめる作品になっていると思います。 [映画館(字幕)] 7点(2010-04-24 15:54:01)(良:1票) |
14. アリス・イン・ワンダーランド
《ネタバレ》 予告編観る限りだと相当、ティム・バートン世界が炸裂してるんだろうなぁと思って楽しみにしていました。そして実際に観てると・・『悪くはないんだけど・・う~ん』という感じてした。まず主役のアリスがなぁ・・終始、怪訝そうな顔付きで睨みつける感じに見え、主役なのに大して可愛らしさが見えてきませんでした。あとワンダーランドではアリスは戸惑いながらも、徐々に変化、もしくは成長する過程を描くべきだと思いますが本編でアリスにそういう変化があまり見えてこないので、あの世界に彼女が行く必然が薄く感じられます。最後に現実に戻りますけどそこも演出の問題なのか冒頭より少し自分の主張が言えてる程度で大して成長も見えてきませんでした。ワンダーランドのストーリーに関してはキャラクターはズバ抜けて奇抜で変なのにストーリーは至って普通で決着もまぁ普通・・キャラの見た目とストーリーのバランスがあまり釣り合っているようには見えない感じです。よってキャラだけが前面に出るので、それだけでは映画の興味を最後まで持たせるのは厳しいのではないかと・・私は後半は少し退屈してしまいました。しかしワンダーランドの病的すら感じさせる異常な空間へ疑似体験出来たり、あの魅力的なキャラ達が飛び出て実在感を得られる感覚は3Dならではだと思うので、そこに関しては間違いなく一見の価値はある映画だと思います。 [映画館(字幕)] 5点(2010-04-17 15:44:53)(良:1票) |
15. シャッター アイランド
《ネタバレ》 観ているとシャッター・アイランドの閉鎖空間に主人公テディと共に呑まれそうな感覚になります。時折、挿入されるテディの内面が映し出され、深い迷宮に入るような感覚は嫌いではありません。正直、『つまらない』という言葉も出るほど退屈と感じた所もありました。後半で真相が分かりますが自ら犯した罪を思い起こし、何とか折り合いを付けようとした主人公の結末はどう感じていいか分からないモヤモヤした余韻を残します。一度、観ただけではこの映画をどう捉えたらいいか私にはまるで整理が出来ませんでした。ただ『あと何回か観てもいいな』と思わせる役者陣の演技とシャッター・アイランドのあの不気味で美しい雰囲気は見事でしたので、この映画に対する評価は今の所、『保留』という事にします。これは余談になりますが、この映画用に宣伝された謎解きキャンペーンや両方とも同じ長さの線図とか予告や映画の前に強調していましたが結局、これが本編を観るに当たってジャマになっているのではないかと思いました。だって謎解きとは言っているけど、あくまでも表面的なもので本筋は主人公のテディが孤島『シャッター・アイランド』を巡り自分の内面世界に向き合って答えを見つける話だと思うので、この宣伝方法はやたら謎解きミステリーものだよと煽りイメージを強調し、そのつもりで観たら肩透かしを食らうと思います。観終わった後でつくづく、うっとうしい的外れな宣伝だと思いました・・つうかスコセッシや関係者に失礼だろ! [映画館(字幕)] 6点(2010-04-11 15:18:05) |
16. 第9地区
《ネタバレ》 南アフリカで宇宙船が飛来しエイリアン(エビ)がスラム地区へ隔離・・そして20年後。もう粗筋を聞いただけでそそられました。そして鑑賞してみたら、もうとにかく面白かったです!観てる間、幸せでした。まず冒頭はいかにエイリアンが醜悪で野蛮で近辺の人間が多大な不快感を示しているか描かれ、観てる側もエイリアン側に対して嫌悪を示しています。そして主人公の企業の立退きの交渉も至極当然で応援すらしてしまいますが・・・主人公が黒い液体をかけられた時に事態が急変し、次第に嫌悪の対象が人間に変ってきます。ここで描かれる企業側の人間のあまりのド外道っぷりはエイリアンよりも恐ろしく戦慄。主人公はやむなく第9地区へ逃走しエイリアンに助けを請う・・そこで観客はエイリアン側にも知的な考えを持つ者もいて、企業の人間よりもよっぽど真っ当に写ってしまい、あれほどグロテスクなエイリアンに親近感さえ抱いてしまいます。 そして後半からは怒涛のアクションの洪水・・主人公は葛藤を抱えながらも、自分自身を何としても取り戻したい為に極悪な人間側に銃口を向けていく・・って何だか『アバター』だなぁ・・と感じましたが、ぶっちゃけ映画としての描き方はこちらの方が数段上でしょう!そして最後の結末の流れも十分に納得しますし、問題は何一つ解決せず、またエイリアンと人間の緊迫の関係が続く・・これほどの問題を安易に解決させなかったのも良かったです。終わったの後の複雑な余韻が残りますが、『映画』を観た満足度は非常に高く良かったです。現実にこういう事が起こったら十分、映画のように有り得ると思わせるリアリティさも秀逸。主人公なんて全然、冴えない平凡な男なのに後半からものすごいヒーローに見えてしまう見せ方もたまりません。これは面白い!傑作だと思いました。 [映画館(字幕)] 10点(2010-04-10 14:34:28)(良:4票) |
17. フローズン・リバー
《ネタバレ》 人によっては『地味』『起伏がない』だからつまんないの一言で片付けられそうな映画だと思います。けどカナダとアメリカの国境近くの町並みを見ただけで骨身に染み渡る荒涼さが伝わり、その雰囲気だけでもこの映画の魅力を高めていると思います。何と言っても主演のレイ役メリッサ・レオの確かな演技と諸々の感情の軋みがシワに深く刻まれた、あの顔が物語のすべてを語っているようで本当に素晴らしい!相手の先住民の無表情だけど子供を義母に奪われた悲しみを一瞬、垣間見せた絶妙な演技を見せたライラ役のミスティ・アップハムも見事な存在感でした。二人がお互いを少しずつ知り、次第に関係を深めますが、そこの見せ方もあくまで淡々として静かにじんわり伝わってきます。金銭的に困窮してるからやむ得ず不法入国に加担してしまったレイですが、それによって得た大金をすっかり頼りにしてしまう脆さ・・最終的にはライラを強引に説得し最後の不法入国者の運びを続け、トラブルに巻き込まれます。ハッキリ言ってレイのあの行動や発砲行為は目先の金に焦っての軽率行為で片付けられますが・・この金を手に入れたら新しい家を得て、少なくとも今よりはマシな子供達との生活を手に入れれる上、ライラの子供を取り返して彼女もやり直せる、自分とライラの為に切迫した願望の表れが、ある意味頼もしくもあり悲しくも見えます。最後のレイの決断は自分だけでなく、ライラとの今後を考えた最良の決断に思え基本的には悲しい出来事ですが、ポジティヴにすら感じました。ただ1回観ただけではすべてを把握出来るとは思えない深みがあるのでDVDが出たら再び見て新しい発見とか解釈をして味わう映画になると思います。 [映画館(字幕)] 8点(2010-03-28 15:45:31)(良:1票) |
18. ハート・ロッカー
《ネタバレ》 低予算だけど、全然チープさを感じさせない力のある映画とは思いました。大半の人が言うであろう爆弾処理の緊迫感、周りのイラクの人が写るたびに敵か味方か判断も付かずにそちらもハラハラします。そして最大の見所の中盤の狙撃戦は本当に素晴らしい!砂漠地帯での長い静寂のやりとりは、今までの映画の狙撃シーンでもベストに位置してもいい程と思いました。エンターテイメント映画として結構、楽しんで観たのは確かですが・・不満もあります。そもそもこの映画はどのキャラクターの視点で見ればいいのかです。冒頭は主人公のジェームスを仲間のサンボーン達のように俯瞰の視点で見るのかなと思ったら途中から物語がジェームス側の視点になり正直、戸惑いました。そこまでジェームスに対して俯瞰で見てた訳なので大して感情移入出来ない状態で(狙撃のシーンとかでの協力シーンとか、起爆装置を持っていく習性で人間性は描かれてましたけど)、ジェームスの視点で物語を見せられても・・ですから彼の行動の理解もよく分からず『ええっ?お前ってそういう奴だったの?』と思いました。後は一時、アメリカに帰って父親として普通の生活しますが結局、最後はイラクに戻り堂々と爆弾処理に向かうジェームスの姿がありますけど、そこはちゃんと対比として描くべきでは?アメリカで平和に生活しているジェームスがイラクの地獄のような戦場にいる時よりよっぽど『まともじゃない』もしくは『何かしら狂ってる』感を見せないとこの男の本質の悲劇が際立たないと思います。それを描いていればもっと最後の堂々と歩くジェームスにアメリカのイラク侵攻そのものの空虚さと絶望感が感じられたと思うんですけど・・。あとは爆弾で吹き飛ばされて肉片になった人間の惨状とか他の死体を大して見せてないのはちょっと、このテーマを描くのに抜けているのも不満です。色々不満はあるのですが、なかなかの力作であったのは認めます。しかしこれがアカデミー作品賞級かというと首を傾げてしまいます。僕個人としてはあと一歩及ばずです。 [映画館(字幕)] 7点(2010-03-27 15:10:31) |
19. TEKKEN 鉄拳(2010)
《ネタバレ》 ゲーム版はプレイしてたので設定は知っていました。ですからあのゲームキャラが実写で登場する所は思ったよりは上がりました。色々展開があるので90分は飽きません。風間仁役のジョン・フーは二枚目で筋肉の付け方もバッチリの格闘体で華がありました。他キャラもまぁいいでしょうという感じてす。そして中身、冒頭の暗闇の逃走シーンは画面がゴチャゴチャしてたださえ暗くてキャラの把握が難しいのにゴチャゴチャとカット割ったりして見づらかったです。格闘シーンも画面が不自然にカットが変って逆に格闘シーンの迫力が損なわれていると思いました。アクションシーン盛りだくさんなのに後半からどんどん尻つぼみになってクライマックスの二試合も大した盛り上がりもなく終わるし・・特に父親の一八との決着はひどい!一八が斧持って仁を襲いますけど、最後こそタイトル通り『鉄拳』でケリ着けろよ!しかも最後、ラスボス一八が仁に1回サッと腹切られてあっけなく終わるって・・せめて拳でボコボコにして終われよ!そもそも主役の仁が何であんなに強いか冒頭で書くべき所をまるで描いておらず最初の仁は身軽で小生意気、彼女とイチャつくチンピラにしか見えません。でもいざ格闘場に入ったら行き成り強いという・・(ここは鉄拳ファンならこいつが強いという事は知っているよね?という暗黙の了解部分なのか)あとは最後に一般代表の仁が勝ちますけど、それでその日の内に三島グループ崩壊になったり、クリスティが参加企業の覇権を賭けた代表者なのに対戦相手になるであろう仁とあっという間に仲良くなり、元にいた彼女の放ったらかしぶりと諸々のご都合主義。クレジット後のドンデン返しも見せ方ショボイよ。重箱の隅なのですがメインのキャラ達が主に日本人という設定なのに英語しか話さないので、これはアメリカ映画だから仕方ないよなぁと思ったら主役の仁の母親(風間準)が少しだけ片言の日本語を話してびっくり、あんた片言だけど日本語話せんじゃん!敵の兵隊も片言の日本語『ウゴクナ』って・・あの日米共同制作なんだから日本語話すなら、まともな日本語ぐらい吹替えでもいいから付けろって。まぁこの手の映画にこんな突っ込みは野暮過ぎるでしょうけど、言わずにはいられなかったので。もし他のシーンに弱点があっても、メインの格闘シーンの凄さで私のような小うるさい奴を黙らして貰いたかった・・過去の優れた格闘映画のように。 [映画館(字幕)] 4点(2010-03-22 14:57:36) |
20. 狼の死刑宣告
《ネタバレ》 愛する家族の一人が理不尽に殺され、その父親がギャングどもに復讐を始める・・従来の映画なら復讐の相手をぶっ殺して何とか救われて終わりのような構図が多いように思えますが、この映画はひたすら復讐の連鎖の泥沼に入って取り返しの付かなくなる構図を容赦なく描かれます。ケビン・ベーコン演ずる息子を殺された父親の復讐にまで駆り立てる気持ちは痛いほど伝わります・・しかし後先考えず感情的に加害者のチンピラを殺してしまい、自分の家族にまで危害が及ぶ事態になった原因である父親は愚かに感じられます。劇中で父親が『実際になってみないと分からないぞ』というようなセリフがありますが、あんな事件が起きたら人はケダモノに変る事も有り得ると言っているようでゾッとしました。そして父親は最終的に自らもギャングと対等の姿になり決着を付けますが、ギャングのボスが最期に父親に対し『その姿、俺達と同じだぜ』と見事すぎるセリフを語ったときはズシーンと重く響きました。結局、復讐しても父親は失ったものは多いのに何も得たものはなかった・・個人の復讐の割の合わなさの漂う無力感が素晴らしかった。あとはアクション・シーンが見事!駐車場前後の逃走シーンのカメラワークやクライマックスの激しい銃撃戦の緊迫感は手に汗握り、重い雰囲気の映画なのに片時も目が離せずにいました。ジョン・グットマンの脂っこい拳銃のり売人のエグさも素敵・・。まぁ警察の無能っぷりや、父親が自宅でギャングに撃たれるのが腹に一発だけって・・あと2発くらい撃たなきゃ物語の流れから見ると不自然では?と色々不満も無い訳ではないですが、実に素晴らしくて実に悲しいアクション映画だと思いました。 [DVD(字幕)] 9点(2010-03-21 21:30:37)(良:1票) |