1. パリは燃えているか
《ネタバレ》 映画の鑑賞前は必ず監督やキャストなどの情報はある程度頭に入れて臨むのですが、ズラリと並んだ豪華キャストの面々に、どんだけ人間ドラマ熱いんだと、期待してしまいましたが、この映画に関してはそこは期待すべきではない作品のようです。 自宅のテレビでの鑑賞なので時計も見ながらでしたが、ジャン=ポール・ベルモンドが登場するまで50分も待たされましたからね(笑)。 監督のルネ・クレマンがフランス人という事もあり、起用したキャストのほとんどがフランス人俳優で、また言うまでもなく、フランス側の視点でカメラを回していたのが特徴的です。 ドイツ兵に「美しい街だ」と言わせたり、市街戦でもドイツ軍を迎え撃つシーンが多かったりするなど、終盤にかけては言わずもがな。 また、昔の記録映像を織り交ぜながら語る手法は、映画のストーリーが史実に基づいたものだという事を表現していて、リアルに迫った説得力のある語り口として捉えることができると思います。 映画中盤辺り、ピエール・バネックはアメリカ軍へ、ベルモンドはフランス軍へそれぞれ掛け合い、ナチスドイツを退けようという動きが高まってきたところでインターミッションが入る構成も良く出来ているなという印象です。 ドイツ軍司令官のゲルト・フレーベ扮するコルティッツ将軍が上からのミッションに徹することができず、軍が人を統率することの難しさも描かれていて、映画を観終わった今、ウクライナに侵攻しているロシア軍もいろいろと上手くいかないことが多いのではとか考えを巡らせてみたりもしました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-10-14 02:41:38) |
2. 燃えよドラゴン
《ネタバレ》 ブルース・リー映画は初見。 映画自体の出来は、良く言えば素朴。いろいろとアラが感じられたかなと。 序盤で、ツカツカと弟子(?)が現れ稽古をつけるシーンから早くも迫力が感じられず、この先大丈夫かなと不安になりながら見ていました。 ストーリーのキモは、同門で修業したかつての同志が悪の道へ進んでいる事を知りそれを征伐するというコテコテの超王道ストーリーということもあり、ブルース・リーの存在感で何とか100分間持っていた感が否めません。 気になったのが、フィルムの早回しやスローモーションを用いている点なのですが、要所要所でというわけではなく、必要のない所で使っていたり、逆に肝心の所では普通に流してるしといった具合で、どうもその意図がよく分からず編集が下手だなぁと思ってしまいました。 主役のブルース・リーはやはり大物のオーラが感じられ、表情やフィジカルにおいてもまさにスターと呼ぶに相応しい風貌です。 自分が語るのもおこがましいですが、アクションももちろん超一流。相手の過度な受け身や打撃を食らった時のオーバーリアクションなどは、彼の前では逆に意味のないものに感じられます。 一方で、監督のロバート・クルーズという人は初めて聞く名前だったのでフィルモグラフィーを見てみると、やはり案の定という感じ。製作経験かそれとも才能かは置いておいて、ブルース・リーの他の出演作は未見ですが、是非とも他の名監督の下で活躍していてくれと願うばかりです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-07-24 01:13:17) |
3. 草原の野獣
《ネタバレ》 「何でこんなに性格違うのかしら・・・同じように育てたつもりなんだけどねぇ~」とは、同性の子を育てた母親のありがちなセリフ(笑) 普通は弟の方がやんちゃというのがよくある傾向だと思いますが、この映画は逆で、やんちゃなのは兄の方。 母親が登場せず、父親の子育ての寄与度が高いと逆転現象が起きるのでしょうか。 それはさておき、ストーリーは良く出来ているのは勿論、登場人物それぞれの演技も素晴らしく良い仕事をしていると感じられますが、どうしてもB級以上の映画には成り得ない悲劇の香りが漂う作品のように感じてしまいます。 主役の兄エドは観る側からも良い印象を持たれずに終いには撃たれて死んでしまうし、父親リーも弟ダーヴェイもその脇役に過ぎずということで、ストーリー展開を考えるとどうしても大物俳優を並べられない矛盾を抱えた作品に思えてしまいます。(邦題もかなりビミョー過ぎるw) そのエドですが、ストーリー序盤では親父の手元にある缶を撃ったり女性に対しても乱暴気味に接したりと何となく悪ぶれている感が出ている様子。終盤にかけては看守を欺き人に向けて銃を放つようになったりと、段階を踏むように悪役に成り進む人物描写をするところにストーリー構成の上手さが出ていたように思います。 個人的には、馬の仲買人と父親リーとの駆け引きのシーンが好きで、法廷での証言を盾に欲しい馬を取っていく仲買人と悔しそうな表情をするリーでしたが、その後に銃で撃たれて瀕死の状態になった仲買人に対しては一転強気に出たりするなど、主役以外のところでもなかなか見ごたえのあるプロットのように感じました。 また、ごく自然に撮られている白馬が走るシーンですが、大平原の中で乗り手がいない馬の動きをしっかりとコントロールする調教技術や、それを追うブレないカメラワークも見事。 ラストは、エドが銃で撃たれる直前のリーの手元についてやや分かりにくい感があったところが残念でしたが、ダメ親父なりの判断で後々の死者を増やさないよう先手を打ったと解釈し、ハッピーエンドと捉えることにしましょう。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-07-23 15:59:11) |
4. 悪い種子
《ネタバレ》 ん~、邦題は何とかならんかったのか・・・ 音声は原語での字幕鑑賞だったのですが、seedを字幕では血筋と訳しており、だったら邦題も「悪い血筋」とした方が・・・とも考えましたが、それも露骨でイマイチ過ぎる。 ストーリー前半はローダは殺人を犯したのかというテーマで話が進みますが、遠足の現場の状況が一切画面に提示されないこともあり、観る側としては推理小説を読み進めていくように誘導されている印象を受けました。 やがて、モニカの精神分析論や犯罪に詳しい友人、実父のエピソードなどが乗ることで単なるミステリーでは片付かない様相を示します。 シンプルにローダの疑惑を解き明かすストーリーだけでも十分に良作になりそうなところ、上記の血筋のエピソードやそれによる母親の苦悩を重ね合わせることで、より深みのある物語として仕上がったと言えるでしょう。 ストーリー以外においても、子供vs母親、子供vs庭師のやり取りも脚本が良く出来ているのが感じられましたし、また室内メインの物語の中でも画面に奥行きを持たせる意図を持った人物配置による構図が多用されていたりと、カメラワークにおいても良い仕事をしているという印象です。 映画のラストは、子供にも容赦なく天罰を与えてしまうというショッキングな締め方でしたが、ここは原作を忠実に映像化するよりも上手くアレンジした落としどころはなかったのかと悔やまれるところです。 蛇足ですが、監督のマーヴィン・ルロイという人はどこかで聞いたことのある名前だなと思い調べてみると「オズの魔法使い」を手掛けた監督。子供の演技指導などはお手のものという事なのでしょう。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-07-21 17:54:23) |
5. フォート・ブロックの決斗
《ネタバレ》 主人公ラット・エバンス扮するドン・マレーが如何せん役不足。 もう少し華のある役者をキャスティングできなかったのかと思いますし、街で幅を利かせていたイエフの方が存在感が出ているように感じました。 ついでに言えば、ヒロイン役の二人も顔つきが似ていて、途中でどっちがどっちだか分からなくなってきてしまったり。 ストーリー前半は、名を上げたいと夢見るラットが荒馬を手なずけ牧場を手に入れ、同時に酒場で出会った女とも仲を深めるという展開で、まぁここまでは良い。 共同経営者の仲間が結婚することに反対するくだり。失敗しても何度でも再チャレンジできるのがアメリカの良さと思っていた自分としてはここはやや引っかかる所ではあります。 ラットとしては牧場経営者から議員になるという階段を上がるとなれば、やはり酒場で知り合った女性よりも育ちの良い女性と結婚した方が有利になるでしょうが、悲劇のヒロインのキャリーの献身ぶりを考えるといたたまれない気持ちになってしまいます。 勧善懲悪を完遂して終わる物語ではあるものの、街の顔役のイエフの前半の出番が少ないことも気になってしまい、やや抑えめの6点。 序盤に出てきたレースの疾走感や牛の大移動シーンは、迫力があり良かったと思います。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-11-18 18:42:52) |
6. 禁じられた抱擁
《ネタバレ》 映画後半のセシリアの「二人が友達になってくれればいいのに」でデジャヴが舞い降りてきた。 観終わって調べてみると、だいぶ前に観たことのある「倦怠(1998)」と同じ原作とのこと。 自分にとっても17年前に観た映画なので内容はほぼ覚えていないのですが、男女の微妙な恋愛感情を描いた作品という印象で、本作の中でも例えば、カトリーヌ・スパーク扮するセシリアが一旦アトリエを出てすぐに引き返して戻ってきてキスをするという捉えどころのない感情表現が序盤から出てくるところからも難解な映画という印象で見始めたと思います。 ストーリーとしては、男女の恋愛話だけでなくお互いの両親も出てきたりするなど奥行きのある物語のように感じられ、また、序盤に出てきた実家の新人家政婦との“触れ合い”の描写も非常に官能的で上手いと感じさせる一方、野原で口論になった挙句に押し倒し金を握らせた途端に抵抗を止めたりする唐突な感情表現も出てきたりと、やや雑な部分も見え隠れしていた印象です。 終盤で、セシリアがアトリエを後にしたところでfineの文字が出るのですが、この直前の会話がまた微妙すぎて解釈に悩むところ。 映画全体で終盤のクライマックスらしきシーンが出て来ずに終わりを迎えてしまうというのはヨーロッパの映画ではよくありますが、本作はその中でも特に締め方があっさりとしていて驚きました。 原題「La noia」は原作と同じ「倦怠」だそうですが、邦題は個人的にはややいじくり回しすぎたかなと。 [映画館(字幕)] 6点(2021-06-24 03:09:09) |
7. カラミティ・ジェーン
《ネタバレ》 原題も主人公の名前のままだし、邦題もいじりなさすぎてセンスないなぁとか思っていましたが、調べてみるとこのタイトルで舞台やらアニメやらで多くの作品が作られているそうです。 主人公のカラミティ・ジェーンは絵に描いたような鉄火娘。 ホントにそんな奴いたのかよとかツッこみたくなりますが、こちらも調べてみると「平原児」でも同じ名前の役がいて、実在の人物とのこと。 序盤で大物女優を連れてくるくだりから若手女優(オードリー風で可愛かった)がストーリーに加わってラブストーリーに発展する流れは意外にも楽しく、カラミティの家に二人が行って女らしさを取り戻していく時のミュージカルのシークエンスが特に好きです。 誤解が解けるシーンも、観る側が実際の映像により真相を知っていたので素直に受け入れられるところも分かり易くて良いと思いました。 「違う、実は●●なんだよ」とか、セリフのみで誤解を解いてハッピーエンドに結び付けるというありがちな手法をやられてしまうと今ひとつピンと来ないまま終わってしまうのですが、本作はその点においてすっきりと締めてくれて良かったです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-06-05 17:44:43)(良:1票) |
8. 新・ガンヒルの決斗
《ネタバレ》 上映時間95分ほどのちょっとした小品のような作品。 出所した主演グレゴリーペックも薬莢を銃から外し、見張り役の方にも殺すなとの指令が出る。 おまけに、序盤から可愛い女の子が旅の相方となれば、本気の西部劇とは一線を画すような予感満載で物語が進んでいきます。 グレゴリーペックとしても裏切られた仲間に復讐することもないままで、また、女の子も新たな居場所を見つけられないままでエンディングを迎えてしまう。 観た人によっては消化不良が残るかもしれませんが、これは(お蔵入りした)何かの映画の外伝やスピンオフ作品として作られたような印象です(邦題もまさにそんな感じ)。 アメリカ西部の大自然の中で野生の馬を狩るペックも良かったし、夜のシーンの光の当て方なども的確で、更に終盤の対決シーンも見応えがあって、小品ながらも細部に至るまで抜かりなく撮られた佳作と言えると思います。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-05-28 15:42:30) |
9. 終着駅
《ネタバレ》 話が冗長で散漫。観ていてイライラさせられます。 別れを題材に、それに特化した映画と割り切って観れば観れなくもないですが、彼らがそれまでにどんな恋愛をしてきたのかも知らされないままでの2時間弱は、やはりキツいのひと言。 演出も大味で、音の緩急(奥のテーブル席に着いた途端に完全に無音になるところなど)もかなり雑だし、線路を横切るモンゴメリー・クリフトと電車のニアミスのシーンの大音量の音楽や、その時のクリフト・ジェニファー・電車・周囲の人々のカット割りも何かイマイチな気がしました。 この時代の映画って、公共の場で何かあるとすぐに大勢が駆け寄ってきて一斉に注目するシーンがよく出てきますが、当時は本当にあのようにすぐに人だかりができたのでしょうか? それよりも何よりも、鉄道会社の車両管理がちゃんとしていなくて逮捕するとかの流れになって閉口させられるし(鍵くらい掛けとけっつうの!)、更に上役の判断待ちとかの話になった時点で、自分の中では即終了。 一応、惰性で最後まで観ましたが、エンディングも横移動するカメラが柱と交わった所でThe Endを出してしまうというセンスのなさ。 ていうか、別れのシーンだけでこれだけ最初から最後まで引っ張ってしまうと、落とし所に苦労するのも当然でしょう。 [映画館(字幕)] 4点(2016-07-06 21:32:23) |
10. イントゥ・ザ・ワイルド
《ネタバレ》 序盤の家族間の会話のシーンまで見てこの映画ダメだと思ったけど、大自然という良質な素材があれば誰が撮ってもそれなりの映画が出来てしまう、そんな一本。 冒頭で車を降りて雪原を歩くシーンの不可解な視点による奇妙な構図でハナっからセンスのなさが出てしまった上に、無駄にスローモーションを多用したかと思えば、家族間の会話のシーンではほぼ全てのショットがクローズアップという有様。 ただ、猟をして獣の肉をさばいたりするアドベンチャーっぽい場面や、革のベルトに自分の旅を一大絵巻のように描いたりするアイディアは面白いと思いましたし、最後のチャプターでの老人との交流は心温まるような一節になっており大自然の雄大さのみならず人間性を丁寧に描いていたところは凄く良かったと思いました。 旅の最終目的はアラスカに行く事だったようでしたが、最初に廃バスに辿り着いてそこを拠点にして生きているように見え、且つ、そこで最期を迎えていたことから移動感が感じられず“アラスカに向かう”という大局的なテーマが薄らいでしまっていた事がちょっと残念に感じました。 [映画館(字幕)] 6点(2015-10-17 13:32:10) |
11. コールド・フィーバー
《ネタバレ》 両親の供養をするという旅の目的がいい。 永瀬の運転する車が危険地帯に入り込んでしまい、立ち往生してしまったところで不思議な力を持った少女が奇声を上げて車を直してしまったりするシーンを見るに、この映画は恐らくファンタジーなんだろうと思います。 ただ、ストーリーとしては非常に好感が持てるのだけど、画面作りやストーリー進行における演出が凄く下手。 ゴルフボールがリモコンに当たると両親のビデオレターがパッと流れるくだりなんか失笑モノだし、アイスランドの空港を出てスーツケースを他のツアー客と一緒に持って行かれたシーンなんかも、他のサスペンス映画などと比べてしまうと歴然とした差を感じてしまったりして、序盤では特にそういった不自然さのようなものが顕著に出ていたと思います。 中盤でも、アメリカ人カップルの男が売店の中で銃声を響かせた後でカウンターにいた女の子が外まで追いかけて来なかったりするのも見る側への配慮に欠ける感じがありますし(撃たれてしまったのかと気になってしまう)、その時に車内では女が永瀬の首元にナイフを突き付けていたのも当の本人は気が付いていない様子で、映画の至るところで不徹底さが垣間見れる作品という印象です。 また、1ショットの中で画面の色調が少しずつ変化していくのも、もし故意でやっているとすればセンスを疑うし、そうでなければ無頓着と言わざるを得ないでしょう。 ラストの川辺のシーンでも、遠くから永瀬の行動を見つめている人がいましたが(送ってくれたおじさん?追いかけてきた?何故?)、おじさんから永瀬を見ているカットが入っていないものだから二人の位置関係がわからず、最後まで素人が撮ったような映画を見せられていた感じでした。(て言うか、おじさんを登場させる意味ないし。) [映画館(字幕)] 6点(2015-10-12 15:41:19) |
12. 地上より永遠に(1953)
《ネタバレ》 まず、タイトルと内容が合致しているようには思えない。 地上を「ここ」、永遠を「とわ」と2箇所も読み方をいじるのも如何なものかと思いますし、語呂も悪くなっている気がします。 本題ですが、バート・ランカスターが不倫をしていましたが、彼の上官が奥さんとの間に何かいろいろと出来事があったらしく、夫婦間の口論の時に「あれは事故だったんだ」とか言っていましたが、それを深く掘り下げることなく物語を進めてしまっていたのは良くなかったのではと思いました。 一方で、モンゴメリー・クリフトの方はというと、ラッパで見せ場はありましたが、いろいろと嫌がらせを浴びており、自分としては営倉という言葉に馴染みがなくそこがどんな状況なのかわからずにいたため、映像で少しでも描写があれば物語に入り込めたかもしれません。 どっちにしろ、軍隊での上下関係で繋がりはあったもののプライベートの話が並列して黙々と進むために映画全体での面白さはほとんどなかったのが残念に思えました。 終盤で真珠湾が攻撃を受けた辺りから物語が動き出すかと思いきやペースは全く変わることはなく、とうとうラストまで来て二人のヒロインが最後に顔を合わせた所でようやく接点ができますが、その瞬間に「The End」。これははかなりいただけません。 映像的にも、逢引のシーンでは逆光のまましばらく撮り続けていたし、路地裏での営倉主との格闘シーンでも敗者が先に画面に出てきちゃイカンですし、おまけに飲み屋の女の名前が源氏名だったとかハッキリ言ってどうでもいいです。 [映画館(字幕)] 5点(2015-02-21 19:33:31) |
13. ナイアガラ
《ネタバレ》 ストーリーはハッキリ言ってかなり微妙。 オープニングからズレまくっていて、朝早くナイアガラの滝を一人で見に行くシーンで「この滝を見ていると自分が如何にちっぽけな存在かを思い知らされる」などと呟いていましたが、映画を最後まで観て振り返ってみると、ハァ?という感じにしか思えない一コマでしょう。 滝は確かに上手い撮り方をしていて、カメラを上へ向けて撮ったときに水飛沫がレンズに付かないように撮っていたりと工夫が見られるのですが、人物描写とストーリーの構築においては悪い部類に入るのではと思います。 滝から帰って来たジョセフ・コットンは戦争から帰ってきてPTSDに苦しんでいるとの事ですが、その苦悩の描き方がかなり雑で掘り下げが甘い。 マリリン・モンローが主役と思いきや中途半端にシリアスな殺され方でお役御免になってしまい、逆にマリリンの陰に隠れていた方の女がヒロイン役になってしまうというミスキャストぶり。 最後も、船で逃走して救出して終わりというだけで、事象を描くのみで片付けてしまっているために人間ドラマが希薄で物語に全く深みが出ていないように思えます。 ヘンリー・ハサウェイの作品は初めてで、ストーリーテラーとしては本作を観る限り三流であることは間違いないのですが、モノクロを経験している監督なだけに、部屋のブラインドを下げて光を遮り画面全体を光と影の二色にして人物をシャドーで見せるシーンなど、スタイリッシュなショットが見れたのは良かったですし、やはりお尻フリフリのモンローウォークとベッドの中でもシャワー中でも真っ赤な口紅をつけたマリリンの存在感は際立っていたと思います。 [映画館(字幕)] 5点(2015-01-31 01:02:07) |
14. 赤い河
《ネタバレ》 ウエスタン+ロードムービーの淡々とした物語という印象。 街へ向かう道中で仲間割れや牛の逃走、赤い河を大挙して渡ったり女と出会ったりと様々な出来事が起こりますが、どれも皆過程の一部にしか感じられず、盛り上がる要素に乏しい感じがしました。 ダンソンは勿論、彼を取り巻く仲間たちも皆悪意のある人物はおらず、仲間割れはあるとはいえ男気プンプン漂う雰囲気は決して悪くはないと思います。 要は、遠路はるばる牛を引き連れて仲間と共に大移動する苦労が伝わって来れば良いわけで、そこはコントロールし切れない牛の大群を追いかけるシーンだったり、インディアンの襲撃を受けるシーンを見れば勿論わかるのですが、キートンやほかのウエスタン映画でも似たようなシーンを見たことがあるからなのか、自分にとってはワクワクドキドキしたり唸らされたりといった事が少なく、楽しさという点では他のウエスタン映画に譲らざるを得ないという評価になってしまいました。 [映画館(字幕)] 6点(2015-01-29 00:02:12) |
15. レディ・イヴ
《ネタバレ》 冒頭のアニメーションや一つ一つのコメディなど色々と面白い場面が満載なのですが、それよりも何よりもほぼ全編オールロケーション撮影という事が、多くの楽しいコメディや優れたストーリーなどを支える土台となっており、こういった手抜きのない姿勢こそが評価されるべきではないかと思います。 スタジオ撮影で済ませられそうな客室のシーンでさえもちゃんと船を動かしながら撮られているため、窓の奥に見える水面の揺らぎがしっかりと収められているところなどは、自分にとってついつい目がいってしまうポイントなのです。 また、序盤でのコンパクトに映る一連のアクションと台詞も面白いですが、台詞を重ねるタイミングがバッチリすぎるところに妙な面白さを感じてしまいますし、ヘンリー・フォンダのクラッシュ3連続も、2度のクラッシュの後に白の上着に着替えて出てくることで更なる大クラッシュを予感させておいて、コーヒーを頭から浴びてしっかりと期待に応えてくれたり、ポーカーで親父のイカサマを阻止する娘との攻防など、楽しさ盛り沢山で終始に渡り飽きさせません。 ただ、最後がやや唐突な終わり方で、部屋のどこかから蛇が出てきたら面白いだろうなと思っていましたが、実際の締め方でも悪くないと感じましたので、総じて良い映画だと言えると思います。 [映画館(字幕)] 7点(2015-01-24 16:06:40) |
16. 脱出(1944)
《ネタバレ》 冒頭の検問所での露骨な人物紹介と釣りのシーンの手抜き加減からして、それ以降は全く期待せずに観てましたが、全体的なストーリーは把握できたものの、単調な会話の連続に早々とノックアウトされてしまい、全体の半分以上は惰性での鑑賞になってしまったと思います。 良かったのは、終盤で引き出しの中から銃を撃つのが斬新で驚かされた所くらいで、時折出てくる音楽にも印象深い旋律は皆無でしたし、こちらも時折(ていうか、回数多すぎ)出てくるマッチの火に照らされる表情にも美しさは見出せず、また、死んだ蜂に刺されたというネタも4回くらい出てきた割には何かしらのメタファーが隠されているわけでもなく、ただ単調さに拍車をかけるのみで終わってしまっているように感じました。 渋くて格好良い雰囲気を感じられるか否かで評価が大きく分かれる作品なのでしょうか。自分はそういう所は感じられませんでした。 [映画館(字幕)] 4点(2015-01-10 16:21:53) |
17. ニノチカ
《ネタバレ》 自分は特に親ロシア派でも反でもないのですが、ロシア人の、つまりグレタ・ガルボ扮するニノチカの人物描写が余りに露骨で辟易してしまい、時代的な背景を考慮しても、ニノチカの少しずつ変貌していく様を見ても結局最後まで好きにはなれない映画でした。 ヒロインはさておき、レオンという男も主役を張れる存在感に欠ける印象がありましたし、扉の裏の状態を声のトーンで表現したりという演出もな~んか古臭くて好かないです。 序文の「サイレンが空襲ではなく美女のための・・・」も、後になって振り返ってみると意味が解りませんし、ラストでみんな揃って亡命してロシアンレストランを世界中に開こうという所までは良い終わり方だと思ったのですが、「○○は解雇された」というのを出す必要性が見いだせず(理解してないだけかもしれませんが)、映画のあちこちにハァ?とかポカーン…となってしまう作品なのでした。 [映画館(字幕)] 5点(2015-01-04 22:39:59) |
18. キートンの蒸気船
《ネタバレ》 オープニングのパンニング。 小川のボートを捉えるカメラが左へと移動し、2隻の蒸気船を写し出す。 ここが映画的でカッコイイなぁと思ったのですが、前半ではあまりコメディとしての面白い個所が見つけられなかったです。 船長である父親とキートンが出会うシーンで「きっと俺より大きくなっているに違いない」と、ギャグの前フリをしっかり立てているからには当然その期待を越えなければ二流以下である訳ですが、ネームプレートを見て察知し乳母車の中の子供をあやしている姿に唖然としているだけでは、ギャグとしてはちょっと物足りなさがあるように思いました。 帽子を選ぶシーンもやはり今ひとつという印象で、他にも抜きん出た見どころは少なかったのですが、やはり最後の空撮ならぬ風撮のスケール感は見事と言えるでしょう。 前半でチョロっと出てきた水にドボンと落ちるのは、あれはあくまでも前フリ。 留置所ごと流されて父親がアップアップしたり、建物のセットを吹き飛ばすほどの風量ってどんだけデカい扇風機使ってんだというくらいの大胆なクラッシュでしたし、大木ごと飛ばされるシーンもクレーンで吊ってる事は分かり切っていながらも楽しく見れたと思います。 最後の牧師さんを救うというオチが若干弱かった感じもあり、6点止まりとさせて戴きます。 [映画館(字幕)] 6点(2015-01-03 21:31:54) |
19. バグダッドの盗賊(1924)
《ネタバレ》 ストーリーに込み入った所がないので、頭を空にして観ることが出来る痛快冒険活劇と言えるでしょう。 空飛ぶ絨毯や怪獣とのバトルなどファンタジーの要素満載で、非常に楽しめる作品だと思います。 ダグラスが冒険に出たプロットで、海底で導かれるように岩の隙間に入ってみると豪華絢爛な部屋に綺麗な女性がいたという場面ですが、澤登翠さんの活弁によると竜宮城にたとえられておられましたが、日本の浦島太郎の物語に類似した話が外国にも存在するという事なのでしょうか。興味深い所であります。 [映画館(吹替)] 8点(2014-12-30 00:06:50) |
20. 果てなき船路
《ネタバレ》 出港するまでが長い。沖に出てからの激しい嵐は確かに迫力があって目を見張るものがありますが、そのすぐ後の病人を看病するシーンもこれまたやたらと長い。 停泊している時は船上からの主観ショットなどで状況を提示するなどといった工夫もなく、ただ街からの喧騒を聞かせるのみという安易な方法に逃げていた感があり、話に面白味がないばかりか、話が一向に進まず、全体を通して退屈極まりない印象のみの映画だったと思いました。 また、空から襲われるのはいいとして、敵機を画面上に一度も見せないのは不自然極まりないですし、受けた銃弾の間隔が狭すぎるのも空から撃ってきたようにはとても見えずリアリティを欠いているために当然迫力なんぞは皆無であり、船が爆破されるかもしれないというスリルは海中のプランクトンほども感じられなかったのが痛い。何のために爆薬を積んでいるのか?? 上陸しても、ローポジションを多用するカメラワークや濡れた石畳ばかりが前面に出るのみで、酒場でもジョン・ウェイン扮するオルセンを陥れようとする意図は場の雰囲気から察してあげられることは出来るものの、脚本の拙さ故なのか、その場に張り詰めるはずの緊張感も限りなくゼロに近い弛緩した雰囲気のみが記憶に残ってしまいます。 何故、ジョン・ウェインの見せ場を後半にしか出さなかったのか?何故、ジョン・フォードがこんな駄作を作ったのか? いくら考えても自分にはわかりません。 [映画館(字幕)] 4点(2014-07-20 13:03:39) |