21. 歓喜の歌
突っ込みどころは多々あるけれど、映画(落語)の世界であれば許容範囲、というか、落語の映画化なんて画期的すごいと思う。ダブルブッキングというとんでもない問題発生にどう対処するのやらと見ていたら、優しさと暖かさで心を満たしてくれる。ママさんコーラスも、おばさんたちの暇つぶしではなく、仕事や家事の忙しさを忘れさせる大切なものだとわかる。ところで主題歌のあの鐘とは、除夜の鐘だったんだ。 [DVD(邦画)] 7点(2012-07-13 07:30:48) |
22. 鍵(1959)
何本か見た谷崎潤一郎の「鍵」だが、原作が発表されてまもなくの映画だけあって、これが一番しっくり来る。それどころか原作以上に文学的で、格調高いものを感じさせる 。 この映画は少年の頃予告編を見たのだが、そのときは裸のシーンやセックスという文字が飛び込んできて、何か見てはならない映画のように思ったのをしっかり覚えている。 しかし後の世に出てきた映画と比べるとその方面の表現はずっと柔らかで、むしろサスペンス的な雰囲気を漂わせている。日記や鍵の扱いが原作と違っているのが気になるが、北林谷栄の婆さんがおもしろい。 [ビデオ(邦画)] 7点(2012-04-13 07:28:24) |
23. 学校Ⅲ
《ネタバレ》 夜間中学から養護学校、そして今度は職業訓練校。こうしてみると「学校」というものは通常の普通学校だけでなく、実にいろいろな学校があることを教えられる。山田監督は、この通常顧みられない学校にスポットをあて、教育の本質に迫ったのかもしれない。 そうとは言え、今回の「学校Ⅲ」は前2作と比べ大変地味である。教育とはと振りかぶらず、淡々と物語っているのが実によい。むしろあちこちにありそうな自然の形に近いと思う。 それでも自閉症のむずかしさ、訓練校の現実をつぶさに描いている。紗和子さんと高野さんのロマンスはそれにちょっとだけ花を添えただけであり、決して不倫ドラマではない。 もともと大竹しのぶさんという女優さんは私の好きな女優さんの一人である。この映画を見てますます好きになったし、紗和子さんが乳ガン手術というつらい目に遭ったときは、私の妻のそれとも重なって、胸に応えた。なーんちゃって [DVD(邦画)] 7点(2011-08-23 06:05:07) |
24. 学校Ⅱ
夜間中学校から養護学校に変わっても精神は同じ、良い教師は生徒から学び、学んだものを生徒に返し高めていく。前回の映画以上に、胸に刺さることばの数々、多少説教じみてはいるが大事なことばばかりである。 映画の役者さんに混じって、養護学校の生徒や先生も多数出演しているのに驚き。驚きといえば、最初見たときは西田敏行さんの娘さんを誰が演じていたのかまったくわからなかった。この映画を見て一番大切なことは、偏見や差別をしないことだと思う。 [ビデオ(邦画)] 7点(2011-08-22 18:41:20) |
25. 影の車
《ネタバレ》 松本清張原作小説の映画は、「霧の旗」に続いて2作目の鑑賞であり、すでに小説の清張ファンであった私が、映画の清張ファンとなる衝撃的な映画であった。 普通の不倫ドラマは、夫と妻と愛人の三角関係である。その普遍的関係を男と女と子どもという、三角関係に置き換えている。したがってこの映画の妻役の小川真由美は何もしないし、夫を疑うことのないまま事件後知らされるだけ、そしてそれは映画の描写すらない。極端に言えば、小川真由美の妻は誰が演じてもよかったのである。 しかるに、愛人岩下志麻の子どもはまさに主役級、演技力がどうこうではなく、役作りした松本清張、野村芳太郎に頭が下がる。つまりこの映画は子どもの目から見ているわけで、それがラストの加藤剛の子ども時代6歳のときの魚釣りシーンと繫がって、この映画の主題となっている。子どもは本当に斧で殺そうとしたのか、それとも斧は持っていただけで、殺そうとしたのは妄想だったのか。 この映画の素晴らしいのは、加藤剛、岩下志麻の演技力もさることながら、事件後どうなったかを一切表現していないことである。小川真由美が団地にいられなくなって実家に帰ったこと以外、すなわち加藤剛の罪がどうなったのか、岩下志麻やその子どもがどうなったのか、すべてを視聴者の想像に任せていることにあると思う。 また蛇足ながら、今日DVDで再鑑賞するにあたり、映画の中の会話に出てくる「シャロン・テート事件」「三億円事件」「宇宙船アポロの月着陸」など、当時話題になったニュースに懐かしさを感じる。 [映画館(邦画)] 7点(2011-05-11 13:28:29)(良:1票) |
26. 紙の月
多額の預金を横領するという事件については同じでも、夫の存在が薄くなって隅より子、相川恵子という映画独自のキャストが登場することによって、原作とは別の「紙の月」になったと思う。決して悪いという意味ではなく、小説は小説、映画は映画の良さがあり、物語性よりサスペンス性を重視したとも言えるし、ガラスを割るシーンにはびっくりと言うほかない。ただ表面的な動機はわかるような気はするが、監督の意図する爽やかに破滅するヒロインには着いていけなかった。 [映画館(邦画)] 6点(2014-11-25 18:34:02)(良:1票) |
27. 会社物語 MEMORIES OF YOU
今まで見たクレージーキャッツの映画とはまったく違う。無責任男も暴れん坊のバカもおっちょこちょいの課長も登場せず、定年を迎える男をひたすら演じる。何気ない風景や後ろ姿が映し出され、シーンもすごく断片的、最初はとまどいもあるがこういう映画の作りもあっていいし何となく心地よさも感じる。そしてクレイジー勢揃いのファイナルコンサートもまた良かった。 [DVD(邦画)] 6点(2014-06-30 20:03:32) |
28. 風の慕情
吉永小百合の松竹での初主演映画で、相手役は当時好感度ナンバーワンを誇った石坂浩二、今見るとやせていてびっくりするほどだ。さてこの映画、シドニーやマニラロケをふんだんに取り入れ観光旅行にもなるくらいだが、戦争の傷跡も残るサスペンス風ロマンなのだが、若干作りが甘いかも・・・。(見ず知らず人物について行ったり、女の一人旅など)しかし、こう言えるのは今だからこそ、見た当時は何もわからず見てしまったというところかな。 [映画館(邦画)] 6点(2013-01-22 22:50:29) |
29. ガラスの中の少女(1960)
ストーリーはともかくとして吉永浜田の若いカップルが何としても新鮮。そのはずで、浜田光夫にとっては映画デビュー作、いきなりの吉永小百合との共演で、配役字幕も浜田光曠となっている。映画は67分と非常に短いしラストがあっけない。純潔云々と言っても今の時代には通用しないか・・・ [CS・衛星(邦画)] 6点(2012-11-20 21:24:34) |
30. 悲しき口笛
映画自体は決してすばらしいとは言えないが、戦後の天才歌手美空ひばりの映画とあっては貴重そのもの。大人顔負けの歌は、歌謡曲演歌が好きでなかった私の耳にもしっかり残っている。日本全国が美空ひばりのファンのようだった。 [DVD(邦画)] 6点(2012-02-29 17:40:58) |
31. 神様のくれた赤ん坊
《ネタバレ》 父を訪ねて三千里は、世界名作劇場とは遠く離れた現実路線。「この子の養育費を」は下手すると恐喝という犯罪に近いし、安物の人情ドラマとは大きく違う。そして最後に「私たち考えていることは同じじゃない?」で締めくくるのが何とも味があって良い。 ところで父親の可能性のある男が、渡瀬恒彦以外の全員が尾道より西にいるというのは偶然か? 九州は今ではホークスだけど、この頃はもちろんライオンズ。私も少年時代からのファンで、この映画の頃は成績不振の時代が続いてとうとう埼玉へ身売り、それでもやっぱりライオンズの時代だった。 もうひとつ、この映画は鞍馬天狗で人気を博した嵐寛寿郎さんの最後の映画となった。 [映画館(邦画)] 6点(2011-12-11 22:16:19) |
32. 家族ゲーム
《ネタバレ》 奇妙な映画だった。物語の最初から変である。テーブルに横一列に並んで食事、大事な会話は車の中で・・・。 おそろらくは家族の絆というものをテーマにしたのだろう、それが受験によってもろく崩れていく。そういった受験戦争の無意味さを皮肉った映画なのかもしれない。 人間の価値は、むろん学歴や学校の成績で決まるものではないし、それは誰もが知っている。しかし、受験戦争を仕方がないと追随してあきらめる者が、何と多いことだろう。 松田優作演ずる家庭教師は決して有能なわけではない。そばについて図鑑を見ているだけだし、茂之君にちょっとした刺激を与えただけだろう。それを志望校に合格したからと言ってお祝いし、茂之君の兄には学校に最近行っていないと父親は非難する。 ついに家庭教師は頭に来たのだろう、最後の食卓をひっくり返しめちゃめちゃにした。 この場面だけが本当に痛快である。後始末を家族全員でやっていたので、変化が見られるのかと思ったら、ラストはまったくの無気力、ますますおかしな家族になってしまった。 [映画館(邦画)] 6点(2011-09-26 06:19:44) |
33. 風の又三郎(1957)
小学生の頃、学校で見た映画。50年以上経っても「どおっどど、どどど」で始まるあの歌は、鮮明に覚えていた。DVD化され再鑑賞したのだが、原作のいくつかのエピソードが省かれている以外ほとんど忠実に再現化されている。 児童劇に近く、演技も決して上手とは思えないが、宮沢賢治の「風の又三郎」を知る上で、格好の材料になると思う。 複式学級の先生役を若い加藤嘉さんが演じているし、あの懐かしき左卜全さんも見ることができる。主役の山内賢さんは当時は久保賢という名前だった。 ところで鑑賞環境分類で困るのは、学校や公民館あるいは研究集会などで見た映画はどれに入るのだろう? とりあえず、試写会ということにしているが・・・。 [試写会(邦画)] 6点(2011-06-06 06:12:07) |
34. 亀は意外と速く泳ぐ
不思議なドラマですね。笑えるところ満載、だから何なのだは度外視して、最後まで釘付けしてしまう映画です。 [DVD(邦画)] 6点(2011-01-26 18:07:13) |
35. 風の中の牝雞
小学校のすぐそばに曖昧宿があるとは大変驚きだが、小津映画らしからぬ異色さを発揮する内容にはさらに驚き。しかし「あんなことをなぜ」に代表される「あれ」「これ」「それ」がふんだんに出てくるのもやっぱり小津映画。戦後ほどない混乱期、女が一人で生活して難しさがわかるような気もする。 [DVD(邦画)] 5点(2014-02-06 21:03:22) |
36. 風の視線
好きな松本清張作品だが、複雑な人間関係を描くという謳い文句よりもネチっとした展開が気になるし私向きではない。新珠三千代、岩下志麻というキャストも好きなんだけど・・・。この映画で特筆すべきは清張自身も出演していること、それもヒッチコックみたいにちらっとではなく、きちんと台詞のある役として。 [DVD(邦画)] 5点(2013-12-12 20:45:06) |
37. 風立ちぬ(1976)
不治の病結核に学徒動員、友和百恵云々をさておき、戦時中を色濃く映し出したラブストーリーだ。調べてみると原作の小説とはどうも時代設定が違うようだが、戦争を知らない我々にとってはなかなかの感動のストーリーなのだが、映画はどうだろうか。アイドル山口百恵が女優の道を進み始めたとしてもいまいち物足りない。他の方も指摘されているとおり、結核患者にはどうしても見えないのが難。 [DVD(邦画)] 5点(2013-07-30 06:43:45) |
38. 海峡
同じトンネル工事の映画でも先に「黒部の太陽」を見ていたから、さほど感動はわかなかった。トンネルの距離やかかった年数など、黒部の関電トンネルとは比べようもないほど長いのに、インパクトでは負けてしまう。八甲田山の森谷司郎監督であればもっと壮絶なものにできただろうにと思うのだが残念。 [映画館(邦画)] 5点(2013-05-12 06:40:31) |
39. 彼女と彼(1963)
団地アパートに住む夫婦の日常を描きながら、微妙な心理劇の様相を見せる。また団地近くに存在するバタヤ集落との対比が、いかにも左翼思想家の社会派ドラマらしい。ベルリン映画祭特別賞の映画らしいが私にはなじめにくかった。 [映画館(邦画)] 5点(2012-08-21 06:35:45) |
40. カーマ・スートラ/愛の教科書
カーマ・スートラとは性の奥義書らしいが、この映画はその要素は少ない。それよりも"A Tale of Love(愛の物語)"という感じが強い。これを愛の教科書という邦題にしたのはいかがなものか。いかにも女性監督らしいイメージの映画だ。 [DVD(字幕)] 5点(2012-07-29 15:43:48) |